著者
三浦 麻子 楠見 孝
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.49-59, 2014 (Released:2018-02-02)
参考文献数
8

本研究では,投票を高度な意思決定過程を伴う社会的選択行動としてとらえ,個人的態度との関連を検討した。有権者を対象とした2波のオンラインパネル調査を実施し,次の2点,すなわちまず,投票の有無や投票に際しての熟慮,正確な投票行動(Correct voting)の自己認知と批判的思考態度の関連を,政治意識や他の心理社会的要因をふまえて検討した。また,選挙ごとの投票先の記憶と実際の投票先の一致・不一致にもとづいて同定した主体的Swing voterの特徴に注目して検討した。Correct voting認知に対する批判的思考態度の正の影響や主体的Swing voterにおけるリスク回避傾向の低さなど,投票行動やそれについての認知と個人的態度の関わりの一端が明らかとなった。
著者
藤井 浩之 道下 一朗 井澤 朗 三浦 元宏 梅田 研 松下 和彦 元田 憲
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.102-106, 2000-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
8

症例は,72歳,女性.1998年2月初旬より感冒様症状があり,近医で内服治療を受けていた.2月9日胸痛が出現し同医院を受診したところ,心電図上ST上昇を認め心筋梗塞の疑いにて当院に救急搬送された.心筋梗塞を疑い冠動脈造影を施行したが,異常所見を認めなかった.スワンガンツカテーテルにて心拍出量の低下および心臓超音波検査による壁還動のび漫性低下の所見を合わせ急性心筋炎による心不全(フォレスターIII度)と考え,昇圧薬と利尿薬による心不全治療を開始した.第3病日突然に心原性ショックに陥ったため,大動脈内バルーンパンピング法,経皮的心肺補助装置による補助循環を開始した.心機能の回復がなく,第5病日に人工呼吸器管理,さらに第8病日には腎不全のため透析を開始したが,第12病日に多臓器不全のため死亡した.ペア血清でインフルエンザA型(H3N2)のウイルス抗体価の有意な上昇を認めた.さらに剖検心組織からRT-PCR法によりインフルエンザA型ウイルスが検出された.97年度はインフルエンザが流行した.そのインフルエンザウイルス感染が原因で心筋炎を発症し激烈な経過をたどり,剖検心筋組織からウイルスが証明された症例を経験したので報告する.
著者
三浦 光哉 千葉 愛莉
出版者
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター
雑誌
宮城教育大学特別支援教育総合研究センター研究紀要
巻号頁・発行日
no.3, pp.47-58, 2008-06

空間認知能力の低いアスペルガー障害児に対して、小学校で学習する時期に合わせて、ひらがなとカタカナの文字指導を試みた。最初に心理検査など実態調査を実施し、認知処理様式の特性を詳細に分析した口その後、強い能力を活かした教材( 部屋分けしたマス、ひらがなの手本、カタカナの手本) を開発して、段階的に文字指導を行った。その結果、最終的に小学校1年生で通常使用しているノートの大きさである25mm×25mmのマスの中に、ひらがなの清音46文字を計14回の指導で、カタカナの清音46文字を11回の指導で正確に字を書くことができ、鏡文字や極端に線が曲がる文字等が改善された。また、視知覚発達検査で、10ヶ月の遅れがあった「形の恒常性」と「空間関係」が、3ヶ月の遅れに改善してきた。さらに、対象児の認知処理様式の特徴を担任教師や保護者に伝えることで、その後に指導や対応に活かすことにつながった。
著者
加納 裕也 井上 裕康 櫻井 圭太 吉田 眞理 三浦 義治 中道 一生 西條 政幸 湯浅 浩之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.750-755, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
14
被引用文献数
1 5

75歳男性.構音障害,左口角下垂で受診.頭部MRIで右中心前回に拡散強調画像で高信号病変を認め,脳塞栓症として入院したが,症状は悪化し画像でも病変の拡大も認めた.髄液JCウイルス(JCV)-DNA PCR検査は4回施行し陰性だったが,進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)に矛盾しない経過と画像であり,初診から2ヶ月後に脳生検を行いdefinite PMLと診断した.基礎疾患は特発性CD4陽性リンパ球減少症のみで,非HIV-PMLとしてメフロキンとミルタザピンの併用療法を行い,初診から約29ヶ月という長期生存の転帰であった.髄液JCV-DNA PCR検査が繰り返し陰性でも,脳生検が診断に有用なことがある.
著者
三浦 太郎
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.393-401, 1998-03-26

In the Edo period, among Japanese people who went abroad there were some who were keen about the difference between Western and Japanese libraries. Okataro Morita created the word "Shojaku-kwan (or Shoseki-kwan)" in order to express huge scale of the Western library. Then Seiryu Ichikawa used the word to give expression to a new library which would be open to the public and overcome the limit of the previous Japanese governmental library, Momijiyama Bunko, whose use had been restricted to the tycoon as a rule. The idea "Open to the public" was realized in 1875 when the Tokyo Shoseki-kwan was established as a free public library.
著者
三浦 玲 梶原 健吾 八木 喜崇 坂本 和香奈 芹川 亜実 西山 景子 吉井 隆一 西口 佳彦 山本 紗友梨 中村 朋文 梶原 奈央 藤本 歌織 尾上 友朗 富田 正郎 向山 政志
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.395-399, 2018 (Released:2018-06-28)
参考文献数
14

本邦における2型糖尿病患者数は増加の一途をたどっている. メトホルミンの単独療法では低血糖のリスクは低く, 他の血糖降下薬にて懸念される体重増加も少ないうえに, インスリン抵抗性の改善を期待でき心血管保護作用もあいまって, その適応は増加している. メトホルミンの極めて稀な副作用として乳酸アシドーシスがあるが, 致死率が非常に高く迅速な対応を必要とする. 今回, われわれは53歳の患者におけるメトホルミンを原因とした重症乳酸アシドーシスに対し, 点滴加療を施行するも改善不十分であり, 血液透析にて救命することができた1例を経験したため報告する. 乳酸アシドーシスは発症すると重篤であるため, ハイリスク患者ではあらかじめ投与を避けることや, 脱水, シックデイ, 過度のアルコール摂取など患者への注意指導を行うことで発症自体を予防することが重要だが, 発症した場合は遅滞なく透析を含む積極的治療介入を検討する必要がある.
著者
松田 涼 隈元 庸夫 世古 俊明 三浦 紗世 濱本 龍哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0316, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに】近年,非特異的腰痛に対する運動療法として,立位での体幹伸展運動が推奨される。しかし,運動時における腰背筋群の生理的変化を検討した報告は少なく,その運動効果の機序は明確ではない。本研究の目的は,体幹伸展運動時の腰部脊柱起立筋(腰背筋)と腰部多裂筋(多裂筋)の血液循環動態と筋活動について検討し,腰痛に対する理学療法の科学的根拠に一助を得ることである。【方法】対象は健常成人男性13名(年齢22.0±3.0歳,身長170.0±5.1 cm,体重62.4±6.9 kg)とした。課題運動は体幹伸展運動とし,測定肢位は両手を両腸骨稜後面に位置した立位と座位とした。測定条件は,仙骨に対する腰椎の角度を電気角度計(ノルアングル,Noraxon社製)で計測し,座位では0°,10°,最大伸展(max)の3条件,立位では0°,10°,20°,maxの4条件として,それぞれ10秒間保持させた。座位と立位の各測定条件における腰背筋と多裂筋の血液循環動態は,近赤外線分光法(NIRS,Dyna Sense社製)を用いて,酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb),脱酸素化ヘモグロビン(deoxy-Hb),総ヘモグロビン(total-Hb)を計測し,平均値を算出した。また腰背筋と多裂筋の筋活動量は表面筋電計(TeleMyo2400,Noraxon社製)を用いて計測し,各測定条件での積分筋電値を最大等尺性収縮時の筋電値で正規化し%MVCを算出した。なお,血液循環動態および筋活動量は,後半5秒の値を採用した。左腰部で筋活動量,右腰部で血液循環動態を同期測定した。検討項目は座位と立位における測定条件間での血液循環動態(oxy,deoxy,total-Hb),筋活動量(腰背筋,多裂筋)の多重比較とし,Holmの方法を用いて検討した。なお有意水準は5%とした。【結果】座位での腰背筋のoxy-Hbはmaxが他より,10°が0°より高値を示し,total-Hbはmaxが0°より高値を示した。deoxy-Hbは差を認めなかった。座位での多裂筋のoxy-Hbとtotal-Hbはmaxが他より高値を示し,deoxy-Hbでは差を認めなかった。立位での腰背筋のoxy-Hbは20°とmaxが0°より高値を示し,deoxy,total-Hbは差を認めなかった。立位での多裂筋のoxy,deoxy,total-Hbは差を認めなかった。座位と立位の筋活動量は腰背筋,多裂筋ともに差を認めなかった。座位における腰背筋の筋活動量は1~16%MVC,多裂筋の筋活動量は1~12%MVCの値であった。立位における腰背筋の筋活動量は0.9~14%MVC,多裂筋の筋活動量は1~16%MVCの値であった。【結論】体幹伸展運動は腰背筋群の高い筋活動を伴わず,立位では腰背筋,座位では腰背筋と多裂筋の血中oxy-Hbの増大を期待できることが示唆された。よって,座位は立位よりも多裂筋を含めた疼痛緩和を望める可能性が考えられた。今後は腰痛症者を対象とした検討が必要である。
著者
戸出 一郎 三浦 一恵 深山 治久
出版者
日本歯科医史学会
雑誌
日本歯科医史学会会誌 (ISSN:02872919)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.153-166, 2009-09-15

鎌倉時代を代表する梶原性全は「頓医抄」並びに「万安方」の著者として有名てある.今回の目的は,両書から口腔領域に関する部分を抽出して,我が国口腔医史学における両書の位置を推察し,価値を顕彰して今後の研究資料とすることである.「頓医抄」は正安四年(1302年)から嘉元二年(1304年)に書かれた.中国の先進医術を日本の大衆に広め衆生救済が編纂目的であり,全体をわかりやすい和文で書かれている.参考文献としては,「諸病源候論」「太平聖惠方」をはじめ,中国古医書からとられている.基本的医学観は経絡を軸とし陰陽五行説を背景とした内経医学であり,仏教的慈悲の心も随所に認められる.「万安方」は正和二年(1313年)頃から書かれ嘉暦二年(1327年)に完成した.参考文献はほとんど「聖済総録」からである.編纂目的は「頓医抄」の場合と異なり,医術を自家の家学として伝え保存するためであり,全体は漢文で書かれ,他見を禁じている.
著者
内川 隆志 阪本 是丸 加藤 里美 成澤 麻子 長谷川 祥子 山田 正樹 大橋 美織 笹木 義友 三浦 泰之 山本 命 宇野 淳子
出版者
國學院大學
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

公益財団法人静嘉堂文庫に収蔵されている松浦武四郎旧蔵古物資料約900点の整理が完成した。本研究は近代初期において松浦武四郎に代表される当時の好古家達が蒐集対象とした古物(文化財)の内容を直裁的に示すと共に、明治4(1871)年の太政官布告である「古器旧物保存方」の示す保存すべき器物の内容とも一致することを明らかにした。また、箱書きや文書の翻刻によって古物をとりまく人的ネットワークの実態を明らかにした。
著者
内川 隆志 三浦 泰之 長谷 洋一
出版者
國學院大學
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

① 「物産会」研究プロジェクトでは、石水博物館所蔵資料(山本亡羊・榕室主催「読書室物産会」他)の調査、西尾市岩瀬文庫調査を実施し、事業計画に明記した関連文献の調査を実施した。② 1) 好古家蒐集古物資料の調査研究プロジェクトでは、静嘉堂文庫・松浦武四郎記念館その他における松浦武四郎関連古物の調査研究を実施した。武四郎が出版した調査日誌に挿まれた絵画や詩歌、武四郎が文人などの様々な人びとから揮毫してもらった渋団扇などを通じて、武四郎による好古家ネットワーク形成を探る調査を実施。合わせて函館市中央図書館所蔵資料の調査も実施した。静嘉堂では、特に連携研究者の川村佳男氏による静嘉堂所蔵中国古代青銅器の調査を実施した。2) 好古家ネットワーク研究プロジェクトでは、近代初期の好古根岸武香関係資料調査のため熊谷市の根岸家と同市江南文化財センターにおいて関連資料調査を敢行した。③シーボルト父子蒐集古物調査研究プロジェクトでは、昨年度実施した大英博物館収蔵のH.v.シーボルト蒐集日本考古関連資料の整理と関連情報の収集を行った。平成30年度は、好古家松浦武四郎生誕200年、北海道命名150年にあたり松浦武四郎ゆかりの北海道、生誕地の三重県で大きなイベント、展示会が開催され本科研メンバーも多くの講演会やシンポジウム、フォーラムに登壇した。特に分担研究者の三浦泰之は、北海道博物館・松浦武四郎記念館・帯広美術館において実施した連携展示「松浦武四郎 - 見る、集める、伝える」の企画を担当し、本科研の成果を発信した。平成30年9月29日には三重県生涯学習センターにおいて、本科研メンバーによる公開研究会「武四郎研究の最前線」実施し、その成果を『好古家ネットワークの形成と近代博物館創設に関する学祭的研究Ⅱ』(平成31年2月28日)として刊行した。
著者
三浦 輝 栗原 雄一 山本 政儀 坂口 綾 桧垣 正吾 高橋 嘉夫
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2019年度日本地球化学会第66回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.195, 2019 (Released:2019-11-20)

福島原発事故により、放射性セシウム(Cs)を含む不溶性微粒子(Type-A)が環境中に放出された。Type-Aは134Cs/137Cs放射能比などから二号機もしくは三号機由来であると考えられている。その後、一号機由来と考えられる新たな不溶性微粒子(Type-B)が報告された。本研究では放射光X線を用いた分析により、Type-A、Type-B中に含まれるそれぞれのUの化学状態を調べることを目的とした。分析の結果、Type-B中のU粒子の大きさは数ミクロンであり、Ochiai et al. (2018) で報告されたType-A中のUを含むナノ粒子よりも大きいことが分かった。この違いはType-A中のU粒子が蒸気から生成されたのに対し、Type-Bではメルトから生成された可能性を示唆する。Type-Bにおいて、Uが検出される部分では燃料被覆管に用いられているZrも検出されることから、Type-BでもType-Aと同様にUはZrと共融混合物を形成していると考えられる。
著者
久保田 強 小森 和男 藤井 泰一 三浦 律彦
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.52-60, 1995-05-01 (Released:2013-04-26)
参考文献数
5

首都高速中央環状王子線の飛鳥山トンネル新設工事における街路交差点下のトンネル躯体工は, 仮設のパイプルーフ直下に近接施工するもので, 多数のH鋼等が障害となり頂版コンクリートの打設が困難な状況にあった。そこで, 頂版のコンクリートに高流動コンクリートを採用し, 締固めが不可能な状況の中でも完全な充てんが得られるように頂版の施工を行うこととした。本稿では, 工事の概要と高流動コンクリートの配合選定の手法, および打設時の品質管理結果について述べるものである。
著者
東 亜弥子 三浦 哉 石川 みづき
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.153-157, 2019-04-01 (Released:2019-03-16)
参考文献数
31

As well as active smoking, passive smoking is associated with a high risk of developing cardiovascular disease. The antioxidant vitamin C may inhibit the unfavorable effects of passive smoking. In this study, we investigated the effects of vitamin C ingestion on changes in the flow-mediated dilatation (FMD) at the brachial artery in patients exposed to transient passive smoking. The study participants included seven healthy adult males who were examined by high-resolution ultrasonography of the brachial artery before and after 15-minute of passive smoking. FMD was used to examine the endothelial function. Randomized crossover controlled trial, measurements were performed on two different days 120-minute after the oral administration of 1000mg of ascorbic acid (VC trial) or a placebo (P trial). Although the FMD values decreased after passive smoking in both trials, the FMD values of the VC trial were higher than those of the P trial, with significant differences between the trials observed immediately and 30-minute after passive smoking. The results of this study suggested that the ingestion of vitamin C may suppress the decrease in the vascular endothelial function caused by transient passive smoking.
著者
三浦 宏文
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学短期大学部紀要 = The bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:21896364)
巻号頁・発行日
no.38, pp.63-72, 2017

本稿では、明治期の哲学者・仏教学者・教育者であり、日本で初めて妖怪学を研究したという多彩な顔を持つ井上円了(1858~1919)の哲学者としての側面に注目し考察を加えた。円了の哲学は、民衆が極端な思想にとらわれることなく自らの頭で考え判断していくことを促すことをねらいとしていた。したがって、妖怪学研究も民衆の迷信を取り除くためのものであった。あくまで哲学を民衆とつながったものとしていく所に、円了の在野の哲学者としての真骨頂があったのである。
著者
小林 好紀 川井 安生 山内 秀文 土井 修一 則元 京 佐々木 光 OHTA Shosuke ITO Ryosuke 三浦 泉
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

木材乾燥の前処理として古くから行われている水中貯木処理が、乾燥性や水分透過性の改善に寄与する理由を科学的に解明し、難乾燥材とされるスギ材の実用的な乾燥前処理技術として利用するために、6年間に及ぶ長期間の研究を行った。得られた結果は以下の通りである。(1)水中微生物の木材への活性水中貯木過程において、3ヶ月ごとに貯木池より回収したスギ素材丸太内における水中微生物の消長を追跡観察した。その結果、水中および散水貯木の開始とともに、まず辺材含水率が増加し、続いて移行材のそれが増加し、18ヶ月後には心材含水率が約150%近くまで増加し、水中微生物を含んだ貯木池の水分が丸太内部まで浸透したことを意味している。(2)貯木処理開始とともに辺材への水中微生物の侵入が観察された。移行材への浸入は貯木処理開始後2週間で観察され、辺材および移行材へ水中微生物が容易に浸入することが明らかになった。しかし、心材への浸入にはばらつきが見られた。水中貯木期間の長期化に伴って、すなわち、水中微生物の素材丸太中への浸入に伴って、参謀内のデンプン粒の減少、有縁壁孔の崩壊など木材組織に変化が生じた。(3)水中あるいは散水貯木処理期間に比例して、遠心分離機による脱水性の向上が見られた。とくに辺材と心材におけるそれの増加が大きく、含水率増加、組織構造の変化と関連があることが推測された。しかし、繊維方向あるいは放射方向のいずれにおいても吸液量の大きな増加は見られなかった。(4)長期間にわたって水中貯木されたスギ丸太内から7種類の水中微生物が観察され、それらが細胞内容物の消滅あるいは有縁壁孔壁の崩壊に関与している様子が確認された。水中微生物をスギ材にアタックさせると乾燥性が改善されることが明らかになった。とくに3年以上の貯木処理によって乾燥速度が著しく増加した。水中貯木期間の増加に比例して乾燥速度が増加した。とくに、48ヶ月以上の処理によって乾燥日数は約1/2に短縮された。(5)乾燥期間が長くなることによって、材色の変化が観察された。明度が向上するが赤みが減少し、また、黄味が増加した。したがって、長期間の貯木処理はスギ特有の心材色を失うことになる。しかし、長期間の水中貯木処理による強度の低下はほとんど観察されなかった・
著者
戸田 善治 竹内 裕一 姜 雪婷 三浦 輔 宮田 知佳 山本 晴久 和田 敦実
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.133-143, 2013-03

本稿は,2011年度に社会科教育教室が開講した大学院授業「授業研究(社会)」における大学教員と大学院生の共同研究の報告である。日本政府は1990年に「入管法」を改正,すべての外国人を就労可・不可にはっきりと区別し,不法就労外国人に対する取り締まりを開始した。一方で,「定住者」資格を認めたブラジル・ペルー出身の日系人に就労を許可し,さらに「研修・実習」制度を中小企業にも活用しやすいように規制緩和し,事実上の就労を認め,この制度の目的が「途上国への技術移転,人材育成」であると一貫して主張してきた。これに対して,受け入れ企業は「単純労働力確保」,中国人実習生は「カネ稼ぎ」を目的とし,この両者間ではWIN-WINの関係にあり,日本政府のいう制度の目的とその運用実態には大きな乖離がある。そこで,この乖離状態に着目し,「外国人技能実習制度」の是非及びその改革案について考える授業を開発した。