著者
上野 雄己 髙橋 亜希 小塩 真司
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.104-109, 2020-05-30 (Released:2020-06-05)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

This study aimed to examine the relationship between sensory processing sensitivity and subjective well-being, in terms of life satisfaction and self-esteem, in 4,333 Japanese adults (2,625 men and 1,708 women; mean age=49.05 years, SD=10.84, age range=20–69 years). A one-way ANCOVA indicated that participants in the high sensitivity group had lower life satisfaction and self-esteem than those in the low sensitivity and medium sensitivity groups. After controlling for age, sex, educational level, household income, and marital status, the levels of low sensory threshold and ease of excitation were significantly negatively associated with life satisfaction and self-esteem. Further, there was a significant positive association between aesthetic sensitivity, life satisfaction and self-esteem. These findings suggest that highly sensitive persons in Japan tend to have low subjective well-being, which corroborates the findings of previous foreign studies, whereas the sub-dimensions of sensory processing sensitivity have a different relation to subjective well-being.
著者
上野 淳子 松並 知子 青野 篤子
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要 (ISSN:18833497)
巻号頁・発行日
no.66, pp.91-104, 2018-09-25

従来のデートDV 研究は,暴力行為を受けた経験のみを被害と見なしてきた。本研究では,デートDV 被害を暴力行為とそれがもたらした影響(恋人による被支配感の高まり,自尊感情の低下)から成るものとして捉え,デートDV 被害の実態と男女差を検討した。大学生を対象とした質問紙調査の結果,恋人からの暴力行為のうち“精神的暴力:束縛”,“精神的暴力:軽侮”,“身体的暴力・脅迫”は男性の方が女性より多く受けており,“性的暴力”のみ男女で受ける割合に差がなかった。しかし,恋人による被支配感は男女差がなく,自尊感情は“身体的暴力・脅迫”を受けた女性が低かったことから,男性は暴力行為を受けても心理的にネガティブな影響は受けにくいことが示唆された。多母集団同時分析の結果,男女とも“精神的暴力:軽侮”および“性的暴力”を受けることで恋人による被支配感が高まり,恋人による被支配感は自尊感情を低下させていた。しかし同時に,暴力行為の影響には男女で異なる点もあった。暴力行為だけでなく恋人による被支配感も含めて暴力被害を捉える重要性が示された。
著者
嶌田 理佳 上野 範子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.2_87-2_99, 2002

アメリカやイギリスでは1990年頃までにほとんどの施設でナースキャップが廃止された。 私服導入を含めたユニフォームの変遷と共に必然的に廃止に至ったと考えられるが,この背景にはナースキャップの表現する看護婦像が専門職のものとしてふさわしいかどうかを議論したフェミニズムの視点もあったと考える。 歴史的に欧米でも女性は主体的に生きることは許されず,一生を男性に捧げるものとされてきたが,看護が伝統的に女性の職業であったために,1960年代まで看護婦は医師や病院経営者ら男性による支配をうけてきた。 その後,女性のみに着用が求められるナースキャップは,差別的であるとの指摘や伝統的女性観を想起させ,新時代の看護婦のイメージとして不適切との主張がナースキャップ廃止に影響を与えたのではないかとみられる。 この論文では英米の文献を参考に看護史と女性史に基づき,ナースキャップの表現する女性性と看護婦像について考察した。
著者
横山 伸 井上 梓 北澤 沙池加 村上 奈月 長澤 祐美 長瀬 緑 西 綾子 高橋 あつ子 内山 ちえみ 上野 順子 山本 詠子 杉山 英子
出版者
長野県短期大学
雑誌
長野県短期大学紀要 (ISSN:02861178)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.37-44, 2005-12-27

日本のマンガの持つ内容の広さ、豊かさ、洗練性および画像表現の自由度は、読む者のボディイメージに強い影響を与える可能性がある。マンガにおける若年女性の体形の描かれ方に関して、ジャンル別(男性向け一女性向け、成人向け-子供向け)の体形の特徴、物語上の役割や人物の性格が体形に及ぼす影響、作者の性別と作品のジャンルの関係について検討した。描かれた身体像は、現代日本の若年女性の標準体形と比較して、若年女子短期大学生らの視点から評価した。男性向けのマンガではやや細いウェストと大きなヒップを持った若年女性が描かれているのに対して、女性向けのマンガではウェスト・ヒップ共に細い若年女性が描かれていた。作品中の若年女性の役割や性格と体形の関係では、女性誌において女性性や母性がいずれも細い身体像と結びつき、また依存性が太いウェストと結びついていた。男性向けのマンガを男性が画いている一方、女性向けのマンガは女性が画いていた。これらの結果から、マンガにおいては非現実的な「やせ理想像」が、女性読者を対象として、女性マンガ家により作られていることが示された。
著者
上野 雄己 飯村 周平 雨宮 怜 嘉瀬 貴祥
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.397-414, 2016 (Released:2018-03-21)
参考文献数
143
被引用文献数
2

Stress-related research in psychology has traditionally focused on both understanding and reducing stress responses. This paradigm has changed in recent years to more detailed studies on recovery from extreme stress responses and on growth. Therefore, in addition to paradigms of the past, it has become necessary to develop a process model that includes recovery from psychological maladaptation and trauma, as well as growth. Such a model is expected to facilitate new approaches to both maintaining and promoting well-being during the total lifespan of an individual, as well as to preventing the recurrence of maladaptation. This study focused on “resilience,” “posttraumatic growth,” and “mindfulness,” which are areas that are attracting the attention of researchers working in fields related to stress research. Moreover, a model of recovery from and growth after difficult situations is suggested by applying these concepts.
著者
長谷川 啓一 上野 裕介 大城 温 神田 真由美 井上 隆司 西廣 淳
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.79-90, 2016-07-28 (Released:2016-09-05)
参考文献数
33
被引用文献数
9 3

本研究では,移植による保全の難易度が高いと考えられる種(移植困難種)について,全国 179 の道路事業の移植事例の整理・分析を通じて,移植困難種の保全に関する現状と,移植後のモニタリング結果から生活型別の活着状況を整理した.また,工夫をこらした効果的な移植方法や移植後のモニタリング手法を抽出し,整理した.その結果,移植対象となっていた移植困難種は,8 科 26 種であり,樹幹に着生している種が 4 種,岩場に着生している種が 6 種,混合栄養植物が 9 種,菌従属栄養植物が 7 種であった.移植後の活着状況は,岩場に着生している種はいずれも良好であったが,樹幹に着生している植物と混合栄養植物では,活着率がほぼ 100%を維持している種と,ほとんど確認されなくなる種に 2 分される傾向が見られた.菌従属栄養植物では,地上部が発生しない年があるために正確な生存率を評価することができなかったが,1 ~ 2 割の事例で移植後に地上部の花茎が確認された.移植後の活着率を高める工夫として,樹幹に着生している種では,移植個体が着生していた元の樹皮や枝ごと移植する手法が,岩場に着生している種では,ヘゴ棒を基盤とすることで着生を促し,植生ネットを用いて脱落を防ぐ手法がとられていた.菌根菌との共生関係にある混合栄養植物や菌従属栄養植物では,土壌ごと移植する手法やコナラ等の樹木の根元へ移植する手法などがとられていた.今後は,移植困難種の株移植についての知見蓄積・技術向上とともに,株移植に依らない種子などの散布体を用いた保全・移植技術や,持続的な地域個体群の保全手法の研究・確立が重要と考えられた.
著者
上野 行良
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.112-120, 1992-03-10 (Released:2016-11-30)
被引用文献数
6

Humor phenomenon can be defined in terms of expression and perception of funny stimuli, such as jokes. Various studies of humor phenomenon are reviewd, and types of humor are categorized in this paper. First, theories and hypotheses on humor are briefly reviewd; the theories discussed are superiority theory, incogruity theory, theories by Freud and Berlyne, theoretical thinking in humanistic psychology, and stress-moderating hypothesis. Each theory along with related studies is examined and characterized in terms of the humor phenomenon framework. It is suggested that the past research in the field has focused mainly on three subjects: 1) motivation behind expression of humorous stimuli, 2) cognitive processes for perceiving such stimuli, and 3) psychological consequences of humor perception. Finally, a new classification scheme for humor in terms of motivation is proposed, with categories of playful, aggressive and support-relief humor, for clear and coherent understanding.
著者
上野 敦子 布田 伸一
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.257-264, 2019 (Released:2020-04-02)
参考文献数
35

In recent years, the waiting period until a heart transplant has been increasing. Therefore, the need for rehabilitation after heart transplantation to patients who had severe heart failure before transplantation has been widely recognized. Cardiac rehabilitation is a type of comprehensive disease management including exercise therapy, patient education and counseling. Several reports have shown that even if the left ventricular contractility of the transplanted heart is normal, exercise tolerance is hardly improved. This involves such factors as mechanisms of exercise intolerance in chronic heart failure and deconditioning, denervation of transplanted hearts, and immunosuppressants. It is important to perform rehabilitation after transplantation with understanding of the conditions before transplantation, the specificity of the transplanted heart, type of rejection, and immunosuppressive therapy. In practice, starting from the ambulation in the postoperative acute phase, exercise therapy is performed with the aim of acquiring daily activities equivalent to or greater than those before transplantation and improving exercise capacity. Furthermore, patient education by a multi-disciplinary team is required so that self-management centering on complications of medication, dietary guidance, and infection prevention can be performed. Such comprehensive management is expected to improve exercise tolerance, prognosis, and quality of life (QOL).
著者
上野 修司 高橋 勇 黒岩 丈介 白井 治彦 小高知宏 小倉 久和
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.130, pp.41-46, 2006-12-09
被引用文献数
2

本研究では 我々は複数のWebページから剽窃した学生レポートを発見するためのシステムを提案する.このシステムを実現するために 我々は検索エンジンを用いて学生レポートの剽窃元になったWebページの検出と剽窃の可能性を評価する際の二つの問題を解決した また これらの新しい手法を用いたシステムを実装し システムの有効性を検討するため2つの実験を行った.その結果 複数のWebページから剽窃したレポートの発見支援が可能であることが示された.In the present investigatiou, we prpose a system in supporting facultures to out the leaner's report plagiarized from, several WEB pages. In order to realize the system, we have solved mainly two problems; (i) How to find out original WEB pages from which learners plagiarized by means of a certain WEB search engine?, and (ii) how to evaluate possibility of plagiarism? We implemented the new two algorithms in the system, and performed two experimentes to show the their effectiveness. From the results, we have almost succeeded to fond out the reports plagiarized from several WEB pages expect for a few reports.
著者
伊関 千書 鈴木 雅雄 古田 大河 佐橋 佳郎 鈴木 朋子 金子 明代 上野 孝治 三潴 忠道
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.131-139, 2015 (Released:2015-08-12)
参考文献数
39
被引用文献数
1

症例は45歳女性で,X-2年4月より全身性疼痛,発熱,倦怠感,冷え,下痢,食欲不振,めまい,頭痛,不眠などを発症し,X-1年5月に当センターにて線維筋痛症と診断された。X 年5月に入院時,慢性疲労症候群も合併していると診断された。手の少陰経と太陽経に発汗と血管攣縮を伴う疼痛発作が毎日出現しており,複合局所疼痛症候群(CRPS)と診断された。通脈四逆湯(乾姜9g,甘草4g,烏頭6g)を処方後,ほとんどの症状の軽減がみられ,CRPS 発作には大烏頭煎(烏頭1g,蜂蜜10g)の頓服が有効であった。鍼灸治療では,心気血両虚証と心庳証に対し,神門,内関,三陰交,太衝,足三里,陰陵泉,心兪,肩中兪,風池へ配穴し低周波鍼通電治療(1~4Hz)を併用し,手の少陰経と少陽経へは子午流注経絡弁証も用いたところCRPS 発作頻度が減少した。湯液と鍼灸の併用は,難治性の疼痛症候群合併症例に有効であった。

10 0 0 0 OA 生体と磁気

著者
上野 照剛
出版者
一般社団法人 日本生体医工学会
雑誌
BME (ISSN:09137556)
巻号頁・発行日
vol.2, no.10, pp.643-650, 1988-10-10 (Released:2011-09-21)
参考文献数
11
被引用文献数
2

MRI, SQUIDによる生体磁気計測および磁気の生体作用に関する研究領域はバイオマグネティックスと呼ばれ, この新しい境界領域の進展には各方面からの関心が寄せられている. ここでは, バイオマグネティックスの最近の動向を概観し, 今後の展望を述べる.
著者
上野山 勝也 松尾 豊 大澤 昇平
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

経済の成熟に伴いベンチャー企業への期待が高まっている. 一方で,ベンチャー企業の成功要因の分析はその重要性から多く行われてきたが,情報が限られていた. 本稿ではWeb 上に近年増加する人材情報を活用し成功の予兆を発見する新たな手法を提案する. Cruchbaseという人材データベースを活用し人材の転職履歴情報を元に2 万社に対し人材の転職情報を元にベンチャー企業の評価を行った
著者
上野 光弘
出版者
公益社団法人 日本水道協会
雑誌
水道協会雑誌 (ISSN:03710785)
巻号頁・発行日
vol.91, no.8, pp.5-16, 2022-08-01 (Released:2023-08-01)
参考文献数
15

人口減少社会では、消火能力の確保と残留塩素濃度の確保がトレードオフの関係であるように、管網再 構築において従来型手法の踏襲だけでは対応が難しいものがあり、新たな考えを加え適応させていく必要がある。 本論文が導き出すのは、人口減少社会においてのトレードオフの関係も含まれる複数の要求事項である課題を複 合して達成できる具体的な手法である。管路の特徴として経済的、能力的なスケールメリットがあるが、実際の 管網の口径割合と組み合わせて検討し、この特徴を最大限に発揮させることで管網の水輸送能力(バックアップ 能力の向上、残留塩素の確保、直結給水区域の拡大、消火用水の確保)と経済性(総費用の抑制)を両立できる ものである。これは幹線の水輸送能力を維持または強化し、その能力によって末端側を減径する事で成り立つも のである。本論文では理論証明のほか、実管網のデータを用いたシミュレーションによって効果を検証した。また、 複数の要求事項の達成を目的とした水理解析は、より多くの作業時間が必要となることから、解析技術の効率化 を併せて研究し成果を得た。