著者
能登 勝宏 柏原 早苗 庄司 和行 小久保 武
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1045-1048, 1999-09-15

アンジオテンシンI変換酵素(ACE)は,イントロン16に存在する287塩基対の有無により挿入(I)アレル,欠失(D)アレルと表現されII,ID,DDの3型が存在する.今回筆者らはインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)患者において,この遺伝子型と合併症との関連を検討した.正常対象群とNIDDM患者の遺伝子型頻度はほぼ同じであった.糖尿病性網膜症,高血圧症合併患者においては非合併患者と比較してアレル頻度に差はなかったが,糖尿病性腎症,冠動脈疾患合併患者は有意にDアレル頻度が高かった.このことはNIDDM患者における腎症および冠動脈疾患の発症とDアレルの関与を示唆した.
著者
杉岡 陽介 久保 明 三井 理恵 福原 延樹 加藤 倫卓 仁瓶 史美 竹田 義彦
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.537-542, 2016 (Released:2016-11-01)
参考文献数
26

【目的】加齢とともに増加する終末糖化産物(AGEs)の蓄積が、骨格筋のタンパク質の機能を変化させることが報告されている。本研究の目的は、皮膚組織におけるAGEsの蓄積と骨格筋量との関係を調査することである。【方法】対象は、健康診断を受診した中年および高齢の男女70名(58±10歳、男性55%)とした。対象の背景として年齢、性別、body mass index(BMI)、合併症および血液生化学検査の情報をカルテから調査した。皮膚組織におけるAGEsの蓄積の指標として、AGE Readerを用いてskin autofluorescence(SAF)を、骨格筋量の指標として、2重エネルギーX線吸収測定法を用いて骨格筋指数(SMI)を、筋力の指標として、握力を測定した。SMIと各調査項目との関係を、Pearsonの積率相関係数とSpearmanの順位相関係数を用いて解析した。また、SMIに独立して関係する因子を抽出するために、SMIを従属変数、年齢、性別、血清クレアチニン(Cr)、グリコヘモグロビンおよびSAF等を独立変数としてステップワイズ重回帰分析を行った。【結果】SMIと有意な相関があった項目は年齢、性別、BMI、中性脂肪、Cr、握力およびSAFであった(それぞれ、r=0.312、P=0.011;r=-0.692、P<0.001;r=0.607、P<0.001;r=0.302、P=0.028;r=0.464、P<0.001;r=0.741、P<0.001;r=-0.413、P<0.001)。重回帰分析の結果、SAFと性別が独立してSMIと関係する因子として抽出された(それぞれ、P<0.001)。【考察】中年および高齢の男女において、SAFは性別と共に独立してSMIに関係する因子であった。
著者
大久保 堯夫
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.319-326,I, 1967-10-30 (Released:2010-03-11)
参考文献数
6

Physiological reactions during the tunnel driving under various illumination conditions were studied to assure the safe driving. Heart rate of the driver increased by 60-80% of the resting level while driving through the tunnel.If the tunnel lights were experimentally turned off but immediately put on again, no significant increase of heart rate was observed. Heart rate increase was as low as 10-20% if the switching-off of the lights was short and had been expected.Unexpected turning off of the illuminaton some-times caused abnormal rise of heart rate, accompanying inadequate driving performances. It was concluded that the poor illumination, abrupt change of the brightness or lack of emergency power supply are relevant to higher accident rate and should be avoided.
著者
中井 順二 駒沢 正夫 大久保 泰邦
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.96, no.4, pp.185-200, 1987-08-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

Bouguer anomaly map of the Kanto district was compiled. On the whole, gravity anomalies are high in Tsukubasan areas, and low in the central parts of the Kanto plain. Negative anomalies in the Boso peninsula and the Tama hills suggest the basement structures of the sedimentary basins. The Kanto mountains district is bounded on the east by steep gradient of gravity anomaly. The above gravity features can be recognized in the map of the upward continuation. The gravity trend along Narashino, Sakura and Omigawa is more clearly indicated in the map of the first derivative, and the tectonic line covered by sediments can be supposed.In the Izu peninsula and the Tanzawa mountains district, gravity anomalies are rather high and low anomaly zone is recognized between these two areas. The northern border part of this zone correspond to Kannawa fault and Kozu-Matuda fault.Aeromagnetic map was compiled with the data obtained by New Energy Development Organization and Geological Survey of Japan.Generally, the Kanto district is surrounded by intense magnetic anomalies with short wavelength which are distributed along Nasu volcanic zone and Fuji volcanic zone.In the central part of the Kanto plain, weak magnetic anomalies are scattered zonally in the E-W direction. According to the geological and well data, this zone seems to be corresponded to Sambagawa metamorphic belt and these anomalies are presumably caused by the basic or ultrabasic rocks.The Hakone mountains district has sharp anomalies with short wavelengths, and the maximum amplitude of the anomalies reachs 900nT. Low anomaly zones are recognized arround this high anomalies. The source of this low anomalies is not clear, but it is of great interest geologically and geophysically.
著者
久保 倫子 由井 義通
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 = Geographical review of Japan (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.460-472, 2011-09-01
参考文献数
21
被引用文献数
8

本研究は,「メジャーセブン」と呼ばれる主要なマンション事業者によるマンション供給の特性および供給戦略を分析し,1990年代後半以降の東京都心部におけるマンション供給の変化を明らかにすることを目的とした.1990年代後半以降,東京都心部においては「コンパクトマンション」と呼ばれる小規模世帯向けの分譲マンションが供給されるようになった.メジャーセブンによるコンパクトマンションの供給は2000年以降単身女性向けに始まった.2005年以降は,単身男性や核家族による都心部でのマンション需要が顕在化したことを受けて,事業者によって,超高層マンションの供給を中心としコンパクトマンションをこれに取り込んだものや,高級なコンパクトマンションに特化したブランドを確立したもの,さらに東京周辺区部での比較的安価なコンパクトマンションの供給を進めたものなどに分化していった.事業者によって,コンパクトマンションの供給地域や販売価格,対象とする世帯が異なるため,東京都心部においてはコンパクトマンションの供給戦略は多様化した.これによって,東京都心部においては,住宅タイプによる居住分化がより複雑化したと考えられる.
著者
村上 三郎 中島 三恵 吉田 裕 橋本 大樹 辻 美隆 大久保 雄彦 浜田 節雄 平山 廉三
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-6, 2004 (Released:2009-06-05)
参考文献数
32
被引用文献数
6 3

血液透析治療中に繰り返し発症した宿便性大腸穿孔症例を経験したので,文献的検討を加えて報告する.症例は76歳,女性.慢性腎不全にて血液透析治療を受けている.3年前に宿便性S状結腸穿孔にてHartmann手術を施行されている.今回,突然の腹痛が出現し再入院となった.腹部X線写真および腹部CTで,freeairおよび多数の宿便を認め,宿便性大腸穿孔の再燃と判断し緊急手術を行った.S状結腸に穿孔を認め,その近傍に宿便を認めた.前回のストーマ造設部に新たなストーマを造設してHartmann手術を行った.水分摂取の制限を要した血液透析患者で宿便性大腸穿孔が発症したことを考えると,圧迫壊死という物理的因子以外に便塊表面の粘稠度の充進や腸粘液分泌減少などによって便塊が大腸粘膜へ強固に付着すること,さらに,それに続く大腸壁の局所循環血流障害などが本疾患の発症に関与している可能性がある.
著者
久保田 健彦 冨田 尊志 濃野 要 阿部 大輔 清水 太郎 杉田 典子 金子 昇 根津 新 川島 昭浩 坪井 洋 佐々木 一 吉江 弘正
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.109-116, 2015 (Released:2015-05-07)
参考文献数
28

目的 : 超高齢社会の現代において, 咀嚼・会話・審美に不可欠な歯を喪失する最大の原因となっている歯周病を防ぎ健康増進を図ることは, 歯周病が糖尿病や直接死因につながる循環器・脳・呼吸器疾患などと密接に関係することからも国民にとって急務である. 本研究は, 抗炎症効果を有するホエイペプチド (WHP) 配合流動食摂取が臨床的歯周組織検査項目, 唾液および歯肉溝滲出液 (GCF) 中の生化学的マーカー・炎症性サイトカインレベルに及ぼす影響について調べたものである.  材料と方法 : 本研究は新潟大学倫理審査委員会の承認を得て, 新潟大学医歯学総合病院にて実施した. インフォームドコンセントが得られた36名の慢性歯周炎患者 (男性24名, 女性12名, 66.8±11.7歳) を対象とし, WHP摂取群 (n=18), Control群として汎用流動食 (Control) 摂取群 (n=18) に無作為に振り分けた. 実施方法は評価者盲検法とし, 摂取前と摂取4週間後に臨床検査としてPlaque Control Record (PCR), Gingival Index (GI), Probing Pocket Depth (PPD), Bleeding on Probing (BOP), Clinical Attachment Level (CAL) の測定, さらに生化学的検査として最深歯周ポケット部位よりGCFを採取し, 炎症性サイトカイン (TNF-α, IL-6) 量, Alanine Transaminase (ALT) 量, Asparate Transaminase (AST) 量, 唾液中遊離ヘモグロビン (f-Hb) 量を測定した. 群間比較にはMann-WhitneyのU検定, 群内比較にはWilcoxonの符号付き順位検定, 相関分析はPearsonの積率相関分析を用い, 有意水準は5%に設定した.  結果 : GCF中の生化学的パラメーターでは, TNF-α, IL-6はWHP群においてのみ有意に減少した. Control群では有意差は認められなかった. ALT, ASTは両群ともに有意差は認められなかった. 臨床パラメーターは両群ともにPCR, GI, BOPにおいて改善傾向が認められた. PCRの低下したControl群でのみ, 有意にGI, BOPが減少した. PPD, CALは両群ともに有意な変化はなかった. 唾液中のf-Hb量は両群ともに有意差は認められなかった.  結論 : WHP群, Control群ともに, 4週間の摂取により歯周病臨床パラメーターが改善されることが示された. 特に, GCF中のTNF-α, IL-6がWHP群でのみ有意に減少したことより, WHPに含まれるホエイペプチドがGCF局所での炎症性サイトカインレベルに影響を与えた可能性が示された.
著者
伊坪 徳宏 久保 利晃
出版者
日本LCA学会
雑誌
日本LCA学会研究発表会講演要旨集 第7回日本LCA学会研究発表会
巻号頁・発行日
pp.93, 2011 (Released:2012-02-16)

東日本大震災による影響を受けて発生した福島原子力発電所の事故は大量の放射性物質の放出を招いた。放出された放射性物質は大気中で拡散され、吸入や食物等を経由した暴露を誘発する。LCIAで用いられるモデルを利用することで、放射性物質の発生から暴露量の増分、潜在的な健康影響を試算することができる。 本研究ではLCIA手法を用いて、今回の福島原子力発電所の事故に伴う健康影響を試算した。結果は損失余命(DALY)で算定される。
著者
唐 方 野田 裕司 吉村 昌雄 久保 道徳 阿部 博子
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.833-839, 1995-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
12
被引用文献数
1

亜鉛欠乏マウスに大量の硫酸亜鉛を投与すると, 投与1時間後の血清亜鉛濃度は正常対照マウスに比べて著しく増加し, 小腸粘膜病変も増悪するが, 漢方薬 (〓香, 紫蘇, 木香, 陳皮, 知母, 鶏内金) 投与した亜鉛欠乏マウスでは血清亜鉛濃度の上昇が抑制されると共に小腸粘膜の障害も軽減されることが見出された。
著者
金久保 正明
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.2495-2506, 2011-08-15

近年,いわゆる「ことば工学」の一環として,駄洒落,なぞなぞ等の言葉遊びをコンピュータで自動生成する研究が始まっている.駄洒落を謎解きとするタイプのなぞなぞ生成システムもすでに研究開発事例はあるが,なぞなぞ質問文のテンプレートが決められ,それに特化した単語データベースが用いられている.そこで本論文では,概念の上位下位の体系や格フレーム等の一般的な概念データベースからなぞなぞ生成を試みる.具体的には,格フレームの連結に相当する文型を定義し,一般的な概念体系を用意する.駄洒落を形成する2語のそれぞれから上位概念をたどり,共通する文型があれば,答えとすべき単語は上位概念で伏せ,質問文を提示する.難度を高めるため,提示する方の単語を異音同義語で隠したり,謎解きに英語読みを用いたりする等した.被験者に解答してもらう実験では,人間が作成するなぞなぞと同等以上の難度を有し,面白さと意外性を持つなぞなぞが生成されることが確認された.
著者
藤野 孝介 久保田 伊知郎 本岡 大和 池田 公英 森 毅 鈴木 実
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.670-674, 2013-09-15 (Released:2013-10-01)
参考文献数
11

肺切除後の気漏や手術を避けたい気胸患者に対して50%ブドウ糖液を使用した胸膜癒着術を施行し良好な成績を得ているので報告する.方法は,50%ブドウ糖液200 mlと1%キシロカイン10 mlを胸腔内に注入する.2012年4月から7月までに11例に施行し9例で成功し,2例は不成功でありOK-432による胸膜癒着術に変更し気漏の消失に至った.この2例は高度の肺気腫を伴い気漏の量が多い症例であった.本法はOK-432と比較すると胸膜癒着効果は弱い可能性があるが,十分に胸膜癒着効果を認め,また,胸痛や発熱などの副作用は非常に少なく,間質性肺炎の患者2例でも安全に使用できた.以上より,本法は簡便かつ安全で有効な治療法であり胸膜癒着剤として最初に試みてもよい方法であると考える.
著者
寺内 文雄 久保 光徳 青木 弘行 橋本 英治
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.45-52, 2005-03-31
被引用文献数
3

近年の環境問題において、モノを長く使うことに対する意識の低さが、問題解決に向けた障害の一つとなっている。本研究においては、モノの長期使用を念頭に置き、生活者の意識面における問題を解決するための方策として、モノに対して抱く愛着に着目した。そして、モノが有する様々な感性要素と愛着の発生に関わる因果モデルを、構造方程式モデリング手法を用いることにより構築した。また、モノに対する生活者の志向態度を因子分析とクラスター分析手法を用いてに四タイプに分類し、各タイプの因果モデルを検討することにより、その特徴と特質を明らかにした。最後に、これらの検討結果を踏まえて、愛着を誘発するための人工物設計指針6項目 : 完成度の高い造形処理、素材の特性を生かした質感表現、頭に馴染む使い勝手のよい機能、使い込むことによって見いだされる新たな仕組みの導入、愛着感構成要素の実現、本物感を満たすブランド価値の確立、を導いた。
著者
青木 弘行 久保 光徳 鈴木 邁 後藤 忠俊 岡本 敦
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.96, pp.47-54, 1993-03-01 (Released:2017-07-25)

エレクトリックギター用材料に適した新しい材料選択基準を求めるため、音色に強い影響を与えるヤング率、振動損失、密度、そして周波数スペクトル分布に代表される物理特性と、エレクトリックギターの音色としての「ふさわしさ」に対する評価尺度である感覚特性との相関関係について検討した。木材、プラスチック、金属に対する打撃振動、および振動音測定実験を行い、物理特性および音響特性の解析を行った。感覚特性は、これらの振動音の、エレクトリックギターに対する、相対的な「ふさわしさ」であるため、一対比較法を用いた官能評価実験により解析を行った。本研究によって解析された物理特性と感覚特性との関係を明確にするため、典型的な楽器用材料選択基準による評価を行うと同時に、これらの特性の相関式を、重回帰分析法に従って求め、エレクトリックギター用材料選択基準の検討を行った。これらの検討より、選択基準の説明因子である密度、特にその値の対数値とヤング率の影響が重要であることが明らかとなった。さらに、密度やヤング率を操作できる材料である繊維強化複合材料(GFRP、CFRP)の、エレクトリックギター用材料としての有効性について検討し、高剛性、低密度であるCFRPの利用可能性を確認した。
著者
阿部 裕子 楠本 誠 久保田 善彦 舟生 日出男 鈴木 栄幸 加藤 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.141-144, 2012
参考文献数
6

本研究は,「ごんぎつね」のクライマックス場面のマンガを,Voicing Boardで作成した.マンガ作成による視覚化と,児童の情景及び心情理解との関連を明らかにすることが,研究の目的である.その結果,以下のことが示唆された.物語の語り手の視点にある登場人物の心情は,マンガ作成の有無にかかわらず,理解しやすい.語り手の視点にない登場人物の心情は,マンガの作成を通してその視点が獲得できるため,理解が向上しやすい.複数の構図を想定できる場合は,情景理解が曖昧になり,マンガ作成による心情理解の効果を得にくい.