著者
久保田 稔 茂吉 雅典 中村 義秋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.61-68, 2002-05-15 (Released:2010-06-15)
参考文献数
10
被引用文献数
2

諏訪湖は江戸時代での干拓と共に湖面面積が減少し、さらに諏訪湖南側の低湿地の度重なる浸水被害に苦しんできた。諏訪湖沿岸部での浸水被害を軽減するために、江戸・明治時代に、湖尻 (釜口) の開削を行いさらに浸水被害住民と製糸工場側との話し合いによって、浸水被害も徐々に少なくなって来た。ところが昭和の時代に入り、西天竜一貫水路建設に端を発し、湖尻を境に、上・下流域住民さらに天竜川を挟んだ竜西と竜東側の下流住民の間にも争いが発生した。この争いを鎮めた大きな一歩が釜口水門建設である。本論では、浸水被害状況を1983 (昭和58) 年の「58災害」より概観した後に、諏訪湖湖面面積の減少と大正年代での浸水被害の減少を図より概観する。
著者
川合 伸幸 久保(川合) 南海子
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.378-391, 2008 (Released:2010-02-15)
参考文献数
64
被引用文献数
6 7

It has been demonstrated that there are many similarities between Pavlovian conditioning in nonhuman animals and causal judgment by humans, such as conditioned inhibition, overshadowing, and blocking. However, there was a notable difference in empirical studies between animal Pavlovian conditioning and human causal judgment: lack of retrospective inference (i.e., backward blocking) in animals. Although human participants showed symmetrical results for forward and backward blocking procedure in causal judgment, researchers failed to obtain backward blocking in animal conditioning. In the case of forward blocking, a cue is first paired with an unconditioned stimulus (US) (e.g., A+), and the first cue is then presented together with a target cue and the US (e.g., AX+). In the case of backward blocking, the compound cue is learned first (AX+), and then the competing cue alone is paired with the US (A+). In subsequent tests, human participants inferred in both cases that X is not a cause of the outcome, whereas the response of animals to X alone was “blocked” only in the forward blocking procedure but not in the backward one. In this article, we review the existence studies on retrospective inference in humans and animals including our ongoing primate study and explore a possible role of retrieval deficits in memory for retrospective inference in animals.
著者
久保 雄生
出版者
全国農業構造改善協会
雑誌
農業経営研究 (ISSN:03888541)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.12-22, 2013-09-25
参考文献数
11

我が国における農業者の高齢化と担い手の減少は歯止めがかからず,荒廃した農地は2010年農林業センサスで39.6万haに達し,農山村を取り巻く環境は深刻さを増している。このような状況のもと,地域農業の担い手として集落営農法人が脚光を浴びており,本稿の対象とした山口県では177法人が設立されている(2013,1末時点)。しかし,農業集落における中核的な担い手としての役割を果たすためには,若い人材を受け入れ,法人経営の核となる後継者として育成する仕組みが必要だが,法人の中には,法人化の前から後継者問題を抱える組織も散見される。また,受入れた人材の能力向上を図るうえで,法人経営の部門構成や日常的な業務の偏りは能力形成や資質向上を左右する可能性があり,法人に受入れた人材の就業実態は,その後の行政支援のあり方・進め方にも少なからず影響するほか,後継者として認知し育成した場合でも,将来の法人経営を担う代表者としての定着に繋がらなければ,法人の組織としての存続や集落の農地活用等にも支障がでるため,法人内部での就業実態の把握や後継者の代表者としての動機付けとなる要因の抽出は不可欠である。この中で,農業分野における後継者問題を扱う研究には,建設業等の農外企業や個人農業者,農業生産法人を対象として,労働条件や雇用就農者の活動実態を明らかにする事例や就業意識の形成過程を整理した事例,また,農業技術や知識を雇用就農者等の第3者に継承する際の課題及び手法を扱う研究等,多くの領域で蓄積がみられる。しかし,調査対象を集落営農法人における後継者に絞り込み,法人毎の確保状況や就業実態,集落への定着条件をもとに,後継者による将来の代表就任意向を規定する要因にアプローチした研究はない。そこで本稿では,山口県内における集落営農法人への就業者のうち,代表者から将来を担う後継者として認知された者を対象としたアンケート調査から,法人への就業経緯や方法,集落への定着条件等を整理するとともに,将来の法人代表者としての就任意向を規定する要因を明らかにする。
著者
久保 亮治
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.76-84, 2011 (Released:2011-05-31)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

生命にとって自己と外界を区切るバリア構造を持つことは,生体内部のホメオスターシスを保ち,生命活動を維持するために必須である.我々の身体の表面,すなわち皮膚の最外層では重層扁平上皮のシート(表皮)とその表面を覆う角質層がバリアとして働いている.上皮細胞シートにおいては,細胞自体を物質が通過しようとする場合(transcellular pathway)は細胞膜がバリアとして働き,細胞と細胞の隙間を物質が通過しようとする場合(paracellular pathway)は細胞間を密に接着するタイトジャンクション(TJ)がバリアとして働く.角質層とTJによるバリアの内側には様々な免疫系の細胞が存在し,外来物質の侵入に備えている.表皮内にはランゲルハンス細胞と呼ばれる樹状細胞が存在し,表皮細胞間に網目のように樹状突起を張り巡らせている.ランゲルハンス細胞は通常,TJバリアの内側に留まるが,活性化すると表皮TJバリアの外側に樹状突起を伸ばし,樹状突起の先端部分より抗原取得を行う性質を持つことを,我々は見出した.外敵との闘いの最前線における索敵活動のように見える本現象について詳しく解説する.
著者
久保田 泰考
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.213-216, 2011 (Released:2017-02-16)
参考文献数
20

近年の複数のメタアナリシス・レビューによれば,成人の双極性障害患者における特性的(trait-like)な認知障害として,注意・処理速度,エピソード記憶,遂行機能が強調されている。これらの認知障害は前頭葉-線条体,および中側頭葉-系の神経システムの機能不全を示唆すると考えられ,寛解期においても患者の社会的機能に大きな影響を及ぼしている。児童の双極性障害における認知障害についての知見は最近急速に増加しており,成人例と共通した特性的な認知障害の報告が相次いでいる。児童の双極性障害の認知研究は,診断概念におけるコンセンサスの不足,高い AD/HD の合併率,多剤併用治療の認知に対する影響といった混乱要因と不可分であり,結果の解釈には注意を要するが,これまで得られた知見は児童の双極性障害と成人例が連続した臨床実体であり,遺伝的・神経発達的異常を反映しているとの見方を支持すると考えられる。
著者
久保田 功
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.510-515, 2017-03-10 (Released:2018-03-10)
参考文献数
10
著者
久保田高吉 編
出版者
博交館
巻号頁・発行日
vol.第2編, 1894
著者
柳井 悠希 伊香賀 俊治 川久保 俊
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.77, no.676, pp.533-539, 2012-06-30 (Released:2012-07-27)
参考文献数
29
被引用文献数
1 7

In order to clarify the effect of classroom environmental quality on students' health and learning performance, field measurements, assessments using CASBEE-School (Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency for school), and questionnaire survey for students and their teachers were conducted in 12 elementary schools. From the results of the survey conducted in both summer and winter, a significant correlation was observed between score for Q1 (indoor environment) category of CASBEE-School and students' satisfaction with their classroom in each school, and effectiveness of assessments by CASBEE-School was validated. However, there is still room for further improvement of assessment system in detail. In addition, a significant correlation between students' satisfaction and both of physical conditions and concentration was observed in this study.
著者
久保 愛恵 田原 敬 勝二 博亮 原島 恒夫
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.137-147, 2020-03-31 (Released:2020-09-30)
参考文献数
44

近年、聴力検査は正常であるが聴取困難 (聴覚情報処理障害:APD) を示す幼児の存在が報告されているが、その実態は明らかになっていない。そこで本稿では、まずAPDの定義を整理し、APD症状を示す幼児の実態をまとめた。APDはその病態が明らかにされておらず、APD症状を示す幼児の実態も事例ごとに背景要因の分析を丁寧に行い、検討を積み重ねる必要がある。次に、APD症状の中から雑音下聴取困難に着目し、幼児における雑音下聴取能力や評価方法、背景要因について整理した。幼児は成人よりも雑音下聴取困難を抱えやすいという結果は共通して得られており、幼児の中には雑音下聴取の成績が特に低い幼児が存在することも指摘され始めている。その背景には注意等の認知的要因が考えられるが、実際に雑音下聴取困難を示す幼児を対象とした検討はなされていない。今後は雑音下聴取困難を示す幼児を抽出し、注意機能や音韻意識等の観点より背景要因の検討が求められる。
著者
水野 紀子 大村 敦志 早川 眞一郎 小粥 太郎 澁谷 雅弘 久保野 恵美子 嵩 さやか 桑村 裕美子 阿部 裕介 石綿 はる美
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

本研究は、相続法の立法的提言を主たる目的としたものであったが、研究開始後に本研究に対する社会的要請は急激な高まりを見せた。具体的には、新信託法と相続法の矛盾の露呈、東日本大震災に関する相続問題、生殖補助医療の進展や実親子法に関する新判例の続出、非嫡出子に関する最高裁判例に基づく相続法改正作業などが挙げられる。本研究メンバーは、こうした社会的要請に応えて、相続法に関する数多くの専門書、研究論文等を刊行し、日本私法学会シンポジウムにおいて発表を行うなどの学術的研究を進めるのみならず、これらの研究成果を生かして立法作業において大きな貢献をした。
著者
森川 剛 久保田 健 寺島 孝徳 岡澤 香津子 湯本 みゆ紀 柄澤 裕 塚田 晃裕
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.768-775, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
18

目的:当院の夜間緊急入院対応病棟における薬剤師業務において,薬剤関連入院の実態を調査し,また薬剤師の介入による医療経済的評価を行った。方法:対象は,2016年4月〜 2018年3月までの2年間で,夜間緊急入院対応を主とする病棟で薬剤管理指導を実施した1,754例とした。薬剤師の介入によって薬剤関連問題が原因の入院であると医師が診断した症例とその入院費,処方中止・減量を提案した薬剤のうち費用最小化分析が適応できる症例を調査した。結果:薬剤関連問題による入院と診断された症例は3.6%(64例/1,754例)あり,その入院医療費は計約5,454万円であった。薬剤師による中止・減量提案は410薬剤あり,費用最小化分析が適応できる医薬品削減費は計約710万円であった。結論:入院早期に薬剤師が介入することで,薬剤関連問題が明確化され,医療経済効果も明らかとなった。
著者
久保田 真敏
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.283-288, 2016 (Released:2016-12-28)
参考文献数
20
被引用文献数
1

米は日本において主食であり, エネルギー供給源としてだけでなくタンパク質の供給源としても重要な食品である。それにもかかわらず, 米タンパク質の生理学的機能性に関する研究は非常に限られている。著者らはこの米タンパク質に着目し, 栄養生理学的に基礎となる消化性ならびに機能性に関する研究を行った。その結果, 我々が摂取している精白米のタンパク質の1つであるプロラミンの消化性は炊飯処理で低下することを明らかにし, 逆にアルカリ抽出により精製した米胚乳タンパク質 (AE-REP) 中のプロラミンの消化性が高いことを in vivo レベルで証明した。さらに AE-REP を用いて機能性に関する検討を行ったところ, AE-REP は血漿総コレステロール, 肝臓中総コレステロールおよび中性脂肪の低下作用を有し, 糖尿病モデルラットでは AE-REP の摂取が糖尿病性腎症の進行を遅延させることを明らかにした。