- 著者
 
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             金井 健吾
             
             岡 愛子
             
             赤松 摩紀
             
             渡部 佳弘
             
             上斗米 愛実
             
             北村 寛志
             
             今西 順久
             
             野口 佳裕
             
             岡野 光博
             
          
 
          
          
          - 出版者
 
          - 日本鼻科学会
 
          
          
          - 雑誌
 
          - 日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
 
          
          
          - 巻号頁・発行日
 
          - vol.62, no.2, pp.300-309, 2023 (Released:2023-07-28)
 
          
          
          - 参考文献数
 
          - 26
 
          
          
        
        
        
        嗅覚障害は,感冒罹患,鼻副鼻腔の慢性炎症,外傷,薬物や毒物の吸入,神経変性疾患や脳血管疾患などによって生じる。原疾患のコントロールを行うことで改善することもあるが,治療に難渋する症例も経験する。最近では新型コロナウイルス感染症に罹患し嗅覚障害を生じる症例も存在する。嗅覚機能検査として,T&Tオルファクトメーターを用いる基準嗅力検査や静脈性嗅覚検査などが一般的に施行される。嗅覚障害に対する新しい治療法として,患者が嗅素を積極的に嗅ぐことで,嗅覚の再生を促す嗅覚リハビリテーション(嗅覚刺激療法)が注目されており,欧州では安全で有効な治療法として診療に取り入れられている。嗅覚刺激療法は当院倫理審査で承認され,リハビリテーション科医師の指導の下で言語聴覚士が行っている。当院を受診し嗅覚障害と診断された患者を対象として,嗅覚刺激療法を3か月以上行い,治療前後の嗅覚を比較した。1日2回(朝・夕)4種類の嗅素(バラ・レモン・ユーカリ・シナモン)を一つの嗅素につき10秒ずつ嗅ぎ,3か月後には4種類の嗅素をラベンダー・オレンジ・ヒノキ・バニラへ変更している。治療前後の嗅覚の変化において,基準嗅力検査(平均認知域値と検知域値)では有意差は認めなかったが,日常のにおいアンケート,嗅覚に関するQOL質問紙,VASでは有意に改善を認めた。日本人にとって,より有効で統一的なプロトコールが確立されることが期待される。