著者
熊本 忠彦 伊藤 昭海 海老名 毅
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.167-168, 1994-09-20

我々は,対話によってユーザの計算機利用を支援するシステム(以下,支援システムと呼ぶ)を開発している.ユーザは,何らかの障害/問題が発生したとき,支援システムに助けを求めることができる.支援システムは,ユーザの発話(話し言葉)を理解し,そのときの計算機の状態に合わせて適切な応答を生成する.ある発話意図を話し言葉で表現しようとするとき,その表現方法は多様である.しかしながら,その多様性の多くは,命題情報そのものではなく,モダリティ情報の表現方法に起因しているものと考えられる.従来の意味解析手法は,発話文の命題情報とモダリティ情報を混在して取り扱うため,モダリティ情報の表現において観測される多様性の影響を受けやすい.本稿では,発話文から命題情報とモダリティ情報を個別に抽出し,それらを並列に解析する手法を提案する.但し,抽出されたモダリティ情報を解析する手法はすでに別稿で提案しているので,本塙では,命題情報とモダリティ情報の個別抽出法,および抽出された命題情報の解析手法を提案する.
著者
本間 幸子 伊藤 昭治 古藤 高良 池上 晴夫
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.98-107, 1992-02-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
23
被引用文献数
2 6

加速度脈波と血圧の関係および加速度脈波の各波の生理的な意義を明らかにすることを目的として, 男子学生5名を対象に, 上腕圧迫によって末稍血流が変化する際の指尖容積脈波, その二次微分波および指動脈圧波をbeat-by-beatに測定した.得られた結果は以下の通りであった.1.収縮期血圧の上昇によって加速度脈波のa波は上昇し, bおよびe波は下降するのに対して, 拡張期血圧の増大によってa波は下降し, bおよびe波は上昇する傾向にあった.また加速度脈波は細動脈弾性率によっても大きな影響を受け, 弾性率がノ1丶さいほどa波は上昇し, bおよびe波は下降する傾向にあった.2.加速度脈波のcおよびd波は収縮期血圧の上昇によって下降し, 拡張期血圧および細動脈弾性率の増大によって上昇する傾向があるが, それらの3要因では十分に説明できず, ほかに影響をおよぼす要因の存在が示唆された.3.収縮期血圧が上昇する場合でも, それが血流量の増加に起因する場合には加速度脈波の波形パターンはG→Aに変化するのに対し, それが末梢抵抗の増加に起因する場合にはA→Gに変化するものと考えられた.これらの結果から加速度脈波と血圧の関係は単純でなく, 血圧構成因子である血流量や末梢抵抗によって大きく影響される.したがって加速度脈波と血圧を併せて測定することが末稍循環状態をより正しく評価する上で有効であると考えられる.
著者
伊藤 昭 矢野 博之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1998, no.12, pp.1-8, 1998-02-05
被引用文献数
3

対話とは,即興性と創造性とを兼ね備えた本質的に創発的な活動である.我々は創発的な対話の性質を分析するため,協調作業時の対話の収録・分析を行ってきた.そこでは,共話といわれる対話者が共同して一つの話を作っていく現象がみられ,単純な質疑応答型の対話管理ではとらえられない側面を持っている.ここでは共話に焦点を当てることで,創発的対話のモデルを検討する.Dialogue is essentially an emergent activity endowed with both improvisation and creativity. In order to investigate emergent dialogues, we have collected and analysed dialogues made under cooperative tasks. In the collected dialogues, we found that kyowa phenomena - dialogue participants work together to make a sentence or story - were often observed. In the paper, we investigate the model of emergent dialogues focusing on this kyowa phenomena.
著者
伊藤 昭 矢野 博之
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能 (ISSN:21882266)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.271-278, 1995-03-01 (Released:2020-09-29)

The social sanction mechanism against unfair deals is investigated in a society of autonomous agents. The mechanism is realized by disclosing the contract histories of all the agents. To simulate the situation, each agent is made to engage in the deal equivalent to the "Prisoner's dilemma" problem repetitively, each time changing the other party of the deal. Optimal deal strategies are searched under the condition that the contract records will be disclosed and open to all the agents. Several deal algorithms are taken up, and their behaviors are investigated by matching them under various conditions. Based on the results, the condition for optimal deal strategies of the agents are discussed.
著者
黒木 直美 宮下 奈々 日野 義之 茅嶋 康太郎 藤野 善久 高田 幹夫 永田 智久 山瀧 一 櫻木 園子 菅 裕彦 森田 哲也 伊藤 昭好 森 晃爾
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.49-59, 2009 (Released:2009-10-08)
参考文献数
28
被引用文献数
2 1

小規模事業場において良好実践を行っている事業者の産業保健ニーズに関する質的調査:黒木直美ほか.産業医科大学医学部公衆衛生学―本研究では,小規模事業場における事業者の産業保健ニーズあるいは良好実践の動機を把握することを目的とした.これまでの調査では小規模事業場における産業保健活動の遅れが報告されている.これらの知見は主に質問紙調査から得られたものである.しかし,小規模事業場には事業者の意識が直接反映されるという特徴があり,積極的に産業保健活動に取り組んでいる事業場も存在している.このような小規模事業場の良好実践例において,事業者のニーズを分析した研究はこれまでにない.産業保健に対する事業者の動機を明らかにすることは小規模事業場間に良好実践を水平展開する一助となると考えられる.そこで,我々は産業保健活動の良好実践が行われている小規模事業場10社の事業者と半構造化面接を行い,その逐語録をKJ法を用いた質的手法で分析した.その結果,事業者はもっぱら「よい会社」,「よい経営」を強く意識していることが明らかになった.「よい経営」のための要素には「人材確保」,「取引先の信用」,「社会的信用」,「社長自身の健康」という4つがあった.事業者はこれらの要素を達成するため職場の安全,従業員の健康に関する活動は当たり前であると考えていた.さらに,具体的な活動には「コストの問題」,「担当者の問題」,「時間がない」,「外部資源」という既知の制約があった.調査結果から,経営と安全衛生活動を関連づけることが小規模事業場における安全衛生活動の向上に寄与すると考えられた. (産衛誌2009; 51: 49-59)
著者
山内 厚志 寺田 和憲 伊藤 昭
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第27回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.240, 2011 (Released:2012-02-15)

単純なデバイスで実現可能な人工物(ロボット等)の感情表出として,発色の色相と,輝度の時間的変化に関するパラメータ(点滅周期と点滅波形)の 3要素により感情を表出する手法を提案した.この手法の有効性を直感的に伝えるために,作成したロボットと参加者がインタラクションするデモを行う.インタラクションでは,参加者の行動に応じてロボットの感情が変化するという想定で,感情の変化を発色や身体動作によって表出する.
著者
出村 克彦 伊藤 昭男 瀬戸 篤
出版者
日本農業経済学会
雑誌
農業経済研究 (ISSN:03873234)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.192-201, 1995-03-28 (Released:2018-02-19)
参考文献数
15

This paper is a comparative study based on the 1985 edition of the International Input-Output Table, published by Japan's MITI (Ministry of International Trade and Industry), conducted to analyze the cost structure of the dairy industry in Japan, the USA, the UK and France using two analyses in the table. The first is a cost-share analysis in the dairy industry in the table. The second approach is a price simulation model. Both analyses are based on an aggregated Input-Output Table for eight industries. The results of the study in the four main industries indicate that, if Japanese dairy industry is to survive as the country opens its market, it must cut production costs in order to close the price gap between domestic and imported products. This, in turn, will require lower milk production costs as well as cost reductions in related sectors such as distribution and services. The results of the first analysis show that the Japanese dairy industry has a relatively low cost input structure; it is similar to France and the UK in terms of general costs. It has a low input structure compared with the USA, the UK and France in terms of the costs of raw materials (i.e. milk). With respect to the cost of services and distribution, the Japanese market has a high cost input structure compared with the other three countries. The second analysis is aimed at clarifying the effects of price fluctuations in individual sectors on the industry as a whole. Results indicate that Japan's influence to the price fluctuations in the milk production (material) sector is lower than that of USA, however, is larger than that of UK and France. In Japan, lower prices of raw materials have little impact on the retail price of dairy products, while cost reductions in other sectors such as manufacturing, services and distribution influence dairy products' end price.
著者
林 健太郎 柴田 英昭 江口 定夫 種田 あずさ 仁科 一哉 伊藤 昭彦 片桐 究 新藤 純子 谷 保静 Winiwarter Wilfried
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

20世紀はじめに大気中の窒素分子(N2)からアンモニア(NH3)を合成するハーバー・ボッシュ法を確立した人類は,反応性窒素(N2を除く窒素化合物)を望むだけ作り出せるようになった.化石燃料などの燃焼に伴い発生する窒素酸化物(NOx)を合わせると,人類が新たに作り出す反応性窒素の量は今や自然起源の生成量と同等である.しかし,人類の窒素利用効率(投入した窒素のうち最終産物に届く割合)は人間圏全体で約20%と低い.必然的に残りは大気・土壌・陸水・海洋に排出され,地球システムの窒素循環は加速された状態にある.反応性窒素には多様な化学種が含まれる(例:NH3,NOx,一酸化二窒素[N2O],硝酸態窒素[NO3–]など).環境に排出された反応性窒素は形態を変化させつつ環境媒体を巡り,最終的に安定なN2に戻るまでの間に,各化学種の性質に応じた環境影響をもたらす(例:地球温暖化,大気汚染,水質汚染,酸性化,富栄養化,これらによる人の健康や生態系の機能・生物多様性への影響).この複雑な窒素の流れと環境影響を窒素カスケードとも称する.現在の人為的な窒素循環の加速は,地球システムの限界(プラネタリー・バウンダリー)を既に超えていると評価されている.窒素は人間社会と自然の全てを繋いでめぐっていることから,人間活動セクター(エネルギー転換,産業,農林水産業,人の生活,廃棄物・下水処理,貿易)と環境媒体(大気,土壌,地表水,地下水,海洋)をどのようにどの程度の量の窒素が流れているかを把握することが,窒素カスケードの実態を把握する上で望まれる.これが窒素収支評価である.欧州の窒素収支評価ガイダンス文書によれば,窒素収支評価の必要性と有用性は以下のとおりである:窒素カスケードの潜在影響を可視化する,政策決定者の意思決定に必要な情報を提供する,環境影響や環境保全政策のモニタリングツールとなる,国際比較の機会を与える,および知識の不足(ギャップ)を明らかにして窒素カスケードの科学的理解の改善に貢献する.地球環境ファシリティの国際プロジェクトであるTowards INMS (International Nitrogen Management System) では国別窒素収支評価の手法開発を進めており,我々もその一環として日本の窒素収支評価に取り組んでいる.国別窒素収支評価の手法として,欧州反応性窒素タスクフォースのEPNB (Expert Panel on Nitrogen Budgets) ガイドラインや,中国で開発されたCHANS (Coupled Human and Natural Systems) モデルなどが先行しており,我々はCHANSモデルの日本向けの改良を進めている.CHANSモデルは主要セクター・媒体をそれぞれ一つのプールとし,プール間を結ぶ窒素フローを定量する.日本向けの改良では以下のプールを設けている:エネルギー・燃料,産業,作物生産,家畜生産,草地,水産,人の生活,廃棄物,下水,森林,都市緑地,大気,地表水,地下水,沿岸海洋.プールの中には必要に応じて複数のサブプールを定義し(例:産業の中に食品産業,飼料産業,その他製造業など),サブプール間の窒素フローを求めた上で,プールごとに集計する.このうち,特に生物地球化学の知見が求められることは,人間活動プールと環境媒体プール間のフロー,環境媒体プール間のフロー,および環境媒体プール内のストック変化である.具体的な課題として次のフローやプロセスが挙げられる:1) 人為による大気排出,2) 人為による陸域への投入,3) 人為による地表水の利用と地表水への排出,4) 人為による地下水の利用と地下水への直接・間接の排出,5) 人為による沿岸海洋への排出,6) 大気-陸面相互作用(多くの過程を含む),7) 陸域内プロセスと蓄積,8) 地表水-地下水-沿岸海洋のフロー,9) 沿岸海洋-外海間のフロー.本発表では,日本向けCHANSモデルの概要と,上記の課題の現状の算定方法を紹介し,生物地球化学の観点からの精緻化について参加者と議論したい.
著者
熊本 忠彦 伊藤 昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.422-432, 1999-02-15
被引用文献数
1

対話は対話者同士による協同作業であるため 発話の形式や内容だけでなく 対話の進め方なども話し相手によって大きく異なる. しかしながら 機械である対話システムとの対話においてユーザがどのように振る舞うのか ヒューマンファクタに関する解析は十分とはいえず 頑健な対話システムを開発する際の妨げとなっている. 対話システムにユーザとの対話を通して何らかの課題を解かせ その課題を解くまでの対話量を競うというコンテスト(DiaLeague'97)がWWW (world-wide web)ページを介して行われた. 本稿では当コンテストで得られた対話(728対話)のうち 最も頑健であった対話システムとユーザとの対話(141対話)を中心に分析し 機械である対話システムとの対話においてユーザがどのように振る舞うのか 特に対話システムの頑健性に関する要因に焦点を当て調べた. その結果 (1)ユーザはデス・マス調で発話する (2)ユーザは間接的な発話形式を採用することがある (3)ユーザ発話数の増加にともない 異なり形態素数は対話の順番に関係なく増えているが 発話パターン数はユーザ先手のときの方がハイペースに増えている (4)ユーザはシステムの発話パターンをまったくそのままの形では再利用しない (5)ユーザは文脈から外れた予想外のシステム発話に対しても好意的に振る舞う (6)「わかりません」というシステム発話やシステム発話の反復に対して ユーザは 自分の発話を修正して言い直すことよりも 発話内容そのものを変え まったく別のことを発話する方を好む (7)発話理解や対話処理に失敗したときにはシステム発話の繰返しという対話戦略が有効であるといったことが分かった.A dialogue is a collaboration between dialogue participants. Therefore, identification of a conversational partner influences not only the form and contents of an utterance but also the context and expansion of a dialogue. The human factors in a man-machine dialogue, however, are not obvious enough to understand with regard to how people talk with a dialogue system. DiaLeague'97 was the second dialogue contest in which a natural language dialogue system engaged in a dialogue with a human to solve a specific problem. Each of the dialogue systems that participated in the contest obtained a score according to the amount of dialogue with a contest participant. this contest was held on the WWW (world-wide web) pages for one week, and the five dialogue systems had 728 dialogues with Internet users. We analyzed mainly the 141 dialgues between the users and the robustest dialgue system, and investigated the dialogues at the utterance and dialogue levels. As the results, we found the followings: (1) users talked to a dialogue system in a polite manner, (2) users did not always make a sentence using the direct speech, (3) the number of different words increased similarly either in user first or system first, and the sentence patterns observed in a dialgue were richer in variety when the dialogue began with a user question or request, (4) users were not influenced by system sentence patterns in making a sentence,(5) users did not ignore an unexpected system utterance, (6) users preferred to change the contents of their utterance rather than to express it differently when the dialogue system said "I don't understand," and repeated a system question, and (7) dialogue confusion which was caused by the failure of spoken language understanding and dialogue processing was often recovered by repeating a system question.
著者
因田 恭也 坪井 直哉 伊藤 昭男 辻 幸臣 山田 功 七里 守 吉田 幸彦 山田 健二 三輪 田悟 平山 治雄 前田 聰 栗山 康介
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.27, no.Supplement6, pp.54-60, 1995-10-25 (Released:2013-05-24)
参考文献数
6

症例は69歳男性.約2週間の便秘があり,その後1~2分の意識消失発作を頻回に繰り返すため当院に入院した.入院後,咳嗽や嘔吐の後に,意識消失発作を繰り返した.ホルター心電図で発作の時間に一致して洞停止を認めた.洞停止は,時に補充調律を伴わず,最高40秒の心休止を呈した.VVIペースメーカーを植え込んだ.この洞停止の発作は一過性であり,1週間の間に頻回に発作がみられたが,その後は全くみられなくなり,ペースメーカーが作動することもなかった.冠動脈造影では有意狭窄を認めず,スパズムも誘発されなかった.心臓電気生理学的検査では洞機能に異常を認めなかった.頸動脈洞マッサージ,チルトテストにても心拍,血圧に異常な変化を示さなかった.洞停止が頻回にみられた時期の心拍変動は日内リズムが消失しており,高周波成分,低周波成分ともパワーの不規則な乱れを示した.長い洞停止の発作直前の心拍変動は高周波成分,低周波成分ともに徐々にパワーの増大を示した.洞停止の原因として自律神経の異常が関与していたことが推察された.本症例では数週間の経過で一過性に自律神経の異常をきたし,それが補充収縮を伴わない長い洞停止を引き起こしたと考えられた.いわゆる洞機能不全症候群とは異なり,補充調律の抑制されるこのような症例では突然死に至る危険性が高いと考えられた.
著者
小嶋 秀樹 伊藤 昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.482-489, 1997-03-15
参考文献数
14
被引用文献数
7

本論文では,単語間の意味距離を文脈依存的に計算する手法を提案する.各単語は,英語辞書から抽出された多次元ベクトルとして,意味空間と呼ばれるベクトル空間における点に写像される.文脈から独立した意味距離は,このベクトル間の距離として計算すればよい.文脈に依存した意味距離は「意味空間のスケール変換」によって計算する.文脈の手がかりとして単語(キーワードなど)の集合が与えられると,この単語集合が均整のとれた分布を持つように,意味空間の各次元のスケールを拡大・縮小する.このスケール変換によって,意味空間における任意の2単語間の距離は与えられた単語集合の意味的な分布に依存した値となる.先行テキストに基づく後続単語の予測によって本手法を評価した結果,本手法が先行テキストの文脈をよくとらえていることを確かめた.This paper proposes a computationally feasible method for measuring context-sensitive semantic distance between words.The distance is computed by adaptive scaling of a semantic space.In the semantic space,each word in the vocabulary is represented by a multidimensional vector which is extracted from an English dictionary.Given a word set C which specifies a context,each dimension of the semantic space is scaled up or down according to the distribution of C in the semantic space.In the semantic space thus transformed,distance between words becomes dependent on the semantic distribution of C.An evaluation through a word prediction task shows that the proposed measurement successfully extractsthe context of a text.
著者
伊藤 昭
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.77-87, 1999-03-01 (Released:2008-10-03)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Recently, mindreading ability is the topic of intensive investigations, fired by the “Theory of Mind” research by Premack & Woodruff. Few researchers, however, tried to define “mindreading” algorithmically. We mindread other people everyday, and think we know what mindreading really is—e.g. to reproduce in ourselves the “thought” existing in other's mind. Unfortunately, this definition cannot be applied for machine systems. Even for human beings or animals we cannot examine the thought in other's mind directly, and there is no method to verify the coincidence. We propose a definition of “mindreading” independent of the inner representation (thought) of mindreaders and mindreads. Next, Multi-player Prisoner's Dilemma Game (MPD) is proposed as a task where mindreading is expected to be effective for the survival of the players. Computer simulation shows “(by our definition) mindreading programs” are actually acquired through evolution in the MPD society. Lastly the validity of our definition of mindreading, the implication of our definition, and condition for the emergence of mindreading are discussed.
著者
上井 雅史 平野 弘之 伊藤 昭 田中 隆晴 伊東 馨
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C4P1153, 2010

【目的】変形性膝関節症(以下膝OA)は関節組織の慢性の退行性変化と増殖性変化のため、関節の変形をきたす疾患である。老化現象に機械的な影響が加わり関節軟骨や骨の変形、半月板の変性、磨耗、筋萎縮、筋短縮、結合組織の変性がおきる。関節変形が初期から中期までの場合、保存治療が選択される場合が多い。膝OAに対する一般的なリハビリテーション(以下リハ)の内容は筋力強化が中心で、姿勢調整、動作パターンの改善、減量および生活指導などが行われる。近年では股関節周囲筋の筋力訓練を行うことで歩行能力や姿勢アライメントが改善するという報告がある。大腿四頭筋強化に股関節周囲筋の強化を加えて実施することがすすめられる。運動リハは可動域訓練、筋力訓練など痛みや疲労を伴う。敬遠される場合も少なくない。筋力強化のプログラム内容の増加が患者の負担になり、リハの継続を妨げる可能性がある。膝OAの運動療法は長期にわたるとリハ脱落群の増加が増える。モチベーション維持が大切である。今回、当医院の膝OA患者に大臀筋強化を実施した。その結果、実施前に比較し疼痛の軽減をみた。大臀筋訓練の影響を、文献的考察を交え検討した。<BR>【方法】対象は当医院に通院する、屋外歩行が自立レベルの患者11名14膝。通常の訓練後、歩行時VASを測定し大臀筋トレーニングを実施後、歩行時VASを測定しその前後で比較した。大臀筋トレーニングをMMT測定と同じ腹臥位、膝関節を90度程度屈曲した状態で行った。1クール10回を3セット実施した。腹臥位をとれない患者には側臥位で実施した。疼痛はVisual analog scale(VAS)を使用し0から100の目盛りを患者に示してもらい測定した。統計処理の手法にはt検定を用いた。<BR>【説明と同意】今回の研究は、内容、意義を説明して了解を得た患者に対してのみ実施した。<BR>【結果】大臀筋強化トレーニング実施前のVAS値が2.36±2.84であったものが、実施後には1.64+2.23と実施前に比較し減少(p<0.05)していた。<BR>【考察】膝OAの運動療法は、数多くの研究によって有効であることが知られている。いくつかの前向き、無作為の研究でSLR訓練をはじめとする膝関節伸展筋の強化で、それ単独でも膝OAの疼痛とADL障害の軽快に有効であるといわれる。その効果はNSAIDに優るとも劣らない。大殿筋の強化も骨盤帯の安定性増加や、関節軟骨の変形による股関節内転モーメント減少を緩和し、下肢、膝関節の姿勢アライメントの改善が期待できる。一方、運動療法で一定の効果を得るには、比較的長期の継続が必要である。時により疲労や筋肉痛をともない、長期にわたる筋力強化はモチベーションが大切となる。今回の研究で、大臀筋トレーニング実施前後で、VAS値が2.36±2.84から1.64+2.23と減少を示し、短期でも疼痛の軽減に有意な効果があることがわかった。一時的であっても、膝OAの主症状である疼痛の緩和によって、リハの満足度の向上、モチベーションの維持につながる可能性がある。大臀筋トレーニングは膝関節自体にストレスがない利点もある。疼痛緩和の継続が短いなどの意見や、運動方法、運動強度の設定などがあいまいだともいわれ、今後、比較検討が待たれる。<BR>【理学療法学研究としての意義】膝OAは日本全体で高齢化が進む中でますます増加しつつある。本研究は、大臀筋強化訓練による疼痛の一時的軽減が、膝OA患者のADL維持および、人工関節への移行時期を遅らせるための運動療法の継続を促すと考え行った。
著者
伊藤 昭博 工藤 紀雄 吉田 稔
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.190-194, 2017

<p>がん細胞の運動や浸潤に重要な働きをするアクチン結合タンパク質であるコータクチンの活性は、アセチル化などのさまざまな翻訳後修飾によって制御されている。筆者らは、酸化ストレス応答転写因子Nrf2の負の制御因子であるKeap1をコータクチン結合因子として同定し、Keap1によるコータクチンの新しい活性制御機構を明らかにした。さらに、Keap1-コータクチンシステムを介したアセチル化による細胞運動制御機構を明らかにしたので紹介する。加えて、コータクチンの脱アセチル化酵素として同定したSIRT2の阻害薬は、がん浸潤、転移の治療薬になる可能性があることから、SIRT2阻害薬探索研究を実施し、複数のヒット化合物を得ることに成功した。得られた阻害薬とSIRT2複合体のX線結晶構造から、SIRT2の新しい酵素活性の制御機構の存在が明らかになったので併せて紹介する。</p>