著者
伊藤 雅之
出版者
独立行政法人農業環境技術研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

メタンの吸収源としてのみ評価されてきた森林土壌について、メタンを放出しうる湿潤な地点を含めてメタン吸収・放出能の評価を行った。その結果、比較的乾いた土壌では既往研究の報告と同様にメタン吸収が主だったが、斜面下部の湿潤な土壌では、特に夏期の高温時にはメタンの放出源として機能した。また、渓畔の湿地では夏期に非常に大きなメタン放出が観測され、メタンの生成過程が降雨条件等の水文条件に規定されることが示された。
著者
伊藤 雅広 奥村 拓朗 岡出 美則 近藤 智靖
出版者
日本スポーツ教育学会
雑誌
スポーツ教育学研究 (ISSN:09118845)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.53-69, 2022-11-30 (Released:2023-02-28)
参考文献数
27

The purpose of this study was to conduct a lesson unit for fourth graders focusing on divergent and convergent thinking in flag football strategy planning, and to analyze changes in the students’ strategy planning before and after the lesson unit. The participants were 64 fourth-grade students. We conducted a paper-based strategies planning test before and after a lesson unit consisting of eight flag football physical education (PE) classes. During the first half of the lesson unit, we set goals for students to present their ideas and plan various strategies, and during the second half, we provided specialized instructions in selecting and modifying effective strategies. The strategies planning test was analyzed from the perspectives of divergent thinking i.e., number and concreteness of plans, and convergent thinking i.e., number and appropriateness of plans.The main results following the strategies planning test are below:(1) The number of strategies planned by the students increased.(2) Furthermore, the number of strategies on how to decoy players and the defensive players’ moves led to an increase in the percentage of concrete strategies.(3) The percentage of strategies on attacking places without defensive players increased.These results confirmed that the students were planning more concrete strategies through the lesson unit and thus, their divergent thinking had improved. In addition, the students came together to plan a strategy, assuming they would attack a place without defensive players and thus, their convergent thinking had improved. Therefore, it can be said that the lesson unit was an example of effective methods to promote divergent and convergent thinking of strategy planning by children.
著者
伊藤 雅
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.I_621-I_628, 2013 (Released:2014-12-15)
参考文献数
7

路面電車の軌道緑化は,都市景観の創出,ヒートアイランドの緩和,騒音の抑制など様々な効果をもたらしている.本研究では,2007年度から本格的に軌道緑化がなされ,2012年度末には道路延長にして8.9kmの併用軌道区間全ての緑化が完成するという,日本で最も整備が進んでいる鹿児島市の路面電車沿線住民を対象として,軌道緑化に対する住民意識に関するアンケート調査を実施した(有効回答数327世帯).その結果,軌道緑化の整備が進むにつれ市民の評価意識は高まり,公的事業としての軌道緑化事業の実施推進や税金利用に対する意識の向上を促していることがわかった.また,アンケートによる支払意思額にもとづいて軌道緑化の環境価値を推計したところ,年間数億円程度の便益がもたらされている可能性を示した.
著者
井土 哲志 大井 あや 三輪田 勤 富貴原 紗侑里 笠井 貴敏 伊藤 雅子 赤羽 貴美子 吉岡 修子 井上 裕康
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.331-338, 2020-05-30 (Released:2020-05-30)
参考文献数
11

【症例】42歳女性【既往】14歳Basedow病(以下GD),35歳 緩徐進行1型糖尿病,40歳 側頭葉てんかん【現病歴】X年2月に歩行時ふらつきを自覚,4月にシックデイとGD悪化で入院.改善し退院したが,6月に眼振と小脳失調症状を認め再入院となった.血清・髄液抗GAD抗体と血清抗グリアジン抗体陽性から自己免疫性小脳失調症と診断した.血漿交換,ステロイドパルス療法及びプレドニゾロン内服,グルテン制限食などの治療により改善し独歩退院となった.プレドニゾロン内服のためインスリンは増量となったが,血漿交換後にGDは改善し抗甲状腺薬は中止となった.【考察】多腺性自己免疫症候群(以下APS)3型の経過中に自己免疫性小脳失調症を発症した貴重な1例で,治療経過と併存症への影響について報告する.自己免疫性内分泌疾患を背景に持つ患者が小脳失調症状を呈する場合,本疾患を疑い早期に精査を行うべきである.
著者
伊藤 雅剛 霧生 拓也 枇々木 規雄
出版者
一般社団法人 日本金融・証券計量・工学学会
雑誌
ジャフィー・ジャーナル (ISSN:24344702)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.76-99, 2019 (Released:2019-04-18)
被引用文献数
3

Ross (2015) は,リスク中立分布からforward lookingな実分布を推定する定理としてRecovery Theorem (RT)を導いた.近年,RTの状態推移に関する斉次マルコフ性の仮定を緩和したGeneralized Recovery Theorem (GRT) がJackwerth and Menner (2017)およびJensen et al. (2017)によって示された.GRTを用いることで,状態推移に関する仮定に起因するバイアスを解消し,原資産の価格変動をより現実的に表現できる.しかしながら,GRTを用いた推定の過程において非適切問題が出現するため,得られる推定値が不安定になることが先行研究において指摘されている.そこで本研究では,任意の先験情報を与えて解を安定化することで,実分布を推定する新たな方法を提案する.先験情報の設定方法としては様々な方法が考えられるが,オプション価格データに内包される情報を用いて設定する方法を提案する.さらに,仮想データを用いた数値分析の結果から,提案法では従来の方法と比較して,精度の高い推定値が得られることを示す.また,米国のS&P500オプションデータから実分布を推定し,推定される分布の特徴について示すとともに実現値に対する予測力について統計的な検定手法を用いて検証する.検証結果から,推定された実分布は(1)実現値に対して予測力があるという仮説を棄却できないこと,(2)リスク中立分布や従来の方法で推定した実分布よりも予測力が高くなること,が明らかになった.
著者
伊藤 雅春
出版者
一般社団法人 日本計画行政学会
雑誌
計画行政 (ISSN:03872513)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.15-20, 2022-11-15 (Released:2022-12-19)
参考文献数
7

Mini-publics are often criticized for causing democracy with shortcuts. In response to this criticism, we have turned to community spheres in order to broaden trust in the forum of deliberation. We thought that by repeatedly holding mini-publics in a community area, a “deliberative community” would be born. A “deliberative community” should be the foundation for achieving deliberative democracy. Next, we sorted out the types of community deliberations. There are two types of deliberations in the community sphere: “deliberation over the community sphere” and “deliberation by the community sphere.” Mini-publics held in the community area provide legitimacy to the deliberations of the community sphere. Mini-publics in the community sphere have the role of connecting the community sphere to the public sphere. In addition, mini-publics can connect multiple community spheres to create a larger “we.”
著者
宇田川 信之 高見 正道 自見 英治郎 伊藤 雅波 小林 幹一郎 須沢 徹夫 片桐 岳信 新木 敏正 高橋 直之
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.64-69, 2001-03-31 (Released:2012-08-27)
参考文献数
10

破骨細胞は高度に石灰化した骨組織を破壊・吸収する唯一の細胞である.骨吸収を司る多核の破骨細胞はマクロファージ系の前駆細胞より分化する.この破骨細胞の分化と機能は, 骨形成を司る骨芽細胞あるいは骨髄細胞由来のストローマ細胞により厳格に調節されている.大理石骨病を呈するop/opマウスの解析より, 骨芽細胞が産生するマクロファージコロニー刺激因子 (M-CSF) が破骨細胞前駆細胞の分化に必須な因子であることが示された.更に最近, 骨芽細胞が発現し破骨細胞の分化と機能を調節する腫瘍壊死因子 (TNF) ファミリーに属する破骨細胞分化因子 (osteoclast differentiation factor, ODF/receptor activator of NF-κB ligand, RANKL) がクローニングされ, 骨芽細胞による骨吸収の調節メカニズムのほぼ全容が解明された.骨吸収の調節は, Ca代謝調節ホルモンと共に局所で産生される各種のサイトカインが重要な役割を担っている.骨吸収促進因子は骨芽細胞あるいは間質細胞に作用してRANKLの発現を促進する.しかし, TNFαやIL-1は破骨細胞前駆細胞や破骨細胞に直接作用し, RANKLのシグナルを介さずに破骨細胞の分化や骨吸収機能を促進することも明らかにされた.さらに, 骨形成因子 (BMP) をはじめとするTGF-βスーパーファミリーに属するサイトカインがRANKLの存在下で破骨細胞の分化と機能を促進する結果も得られた.現在, これらのサイトカインとRANKLとのシグナル伝達のクロストークに関する解析が活発に行われている.
著者
加藤 皓健 野村 健太 竹村 裕 曽我 公平 横田 秀夫 伊藤 雅昭 後藤 直人 西澤 祐吏
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集 2016 (ISSN:24243124)
巻号頁・発行日
pp.1A1-02a3, 2016 (Released:2017-06-19)

This paper presents a needle shooting device at high-speed for the puncture treatment. Problems of the puncture treatment are a curving of needles and a moving of organs because doctors puncture a needle at low speed. We assumed that puncturing a needle at high-speed can solve these problems. The needle with thread is used for inserting treatment instruments into the body. Coil-gun and Railgun were used for the small needle acceleration. We measured relations between the voltage and the velocity on Coil-gun and Railgun. In the case of Coil-gun, the velocity do not monotonous increases as the value of voltage increases. In the case of Railgun, the velocity monotonous increase as the value of voltage increases. The experimental results show that a needle with thread can be accelerated by Coil-gun and Railgun.

1 0 0 0 OA 入信の社会学

著者
伊藤 雅之
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.158-176, 1997-09-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
37
被引用文献数
1

本稿の目的は, 新宗教に参加する個人に焦点をあてた社会学的諸研究を批判的に概観しながら, 入信プロセスの包括的な理解にむけての有効なアプローチを究明することである。筆者は, 社会的に規定されながらも意味探求をする存在としての信者像を前提とした上で, 多元的な諸要因を包括する入信モデルを構築する基礎固めを目指す。具体的には, 約30年前に提案された古典的入信モデルの再評価と批判的修正を行いながら, 今後入信研究を発達させていくための理論枠を確立し, また実証研究をする際の鳥瞰図を提示することを試みたい。本稿ではまず (1) 社会学的な入信研究の対象および入信に影響を与える諸要因を概観し, 次に, (2) 入信の主体である個人の捉え方をめぐる2つのアプローチ (社会・心理決定論と能動的行為者論) を批判的に検討する。以上の議論をふまえて, (3) 入信プロセスを総合的に理解する1つの手がかりを, ロフランド=スターク・モデルに求め, モデルの再評価を行う。最後に (4) このモデルに必要な修正点を検討しながら, 新しい入信モデルの可能性を探ることとする。
著者
柴田 英寿 工藤 隆一郎 伊藤 雅
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.10, no.7, pp.24-27, 2011-04-19

柴田英寿さんは、大手企業で働きながら、朝に自分の時間を創出し、『「お先に失礼!」する技術』など仕事術の本を多数執筆し、毎週水曜日の朝食会を10年以上も続けている。その柴田さんが、既に早起きはしているものの、時間を有効活用できていない読者2人を指導する。
著者
赤松 友成 今泉 智人 西森 靖 王 勇 小河 慎二 伊藤 雅紀 松尾 行雄
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.203-207, 2018-02

生物系特定産業技術研究支援センターの援助を受けてすすめられた「イルカ型対象判別ソナーの開発」(2007-2011)では,広帯域型と従来の狭帯域型の差は一目瞭然であり,カタクチイワシの密な魚群中でもエコグラムが一尾ずつ分離してみえた。このような高精細魚群探知機は研究用途だけでなく,すでに商用として普及し始めている。2016年の夏,古野電気(株)が広帯域スプリットビームシステム(FCV-2100)を発売した。また本稿では触れないが,広帯域散乱では反射強度いわゆるターゲットストレングス(TS)の周波数応答を計測することができる。すなわち,対象の大きさだけでなく,形やインピーダンス差を反映した応答スペクトルが得られると示唆される。これを魚種判別に用いる試みがなされており,懸垂状態の水槽実験ではよい成果を挙げているが,野外への応用にはまだいくつかハードルが存在する。広帯域技術は,研究段階から応用段階に入り,その精細なイメージと反射スペクトルの特性から,いかにして役立つ情報を取り出すかが今後の焦点である。本稿ではとくに養殖業への展開を踏まえて,現段階で利用可能な広帯域技術の応用について述べる。
著者
山川 修 黒田 祐二 伊藤 雅之
出版者
福井県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

学習者の内部状態が,フレドリクソンのポジティビティとネガティビティの比率(P/N比)で測定をすることで,安定的に測定できることがわかった.そして,P/N比が高い(1を越える)学生と低い(1を越えない)学生の間で学習行動に違いが見られることがわかった.さらに,ポジティブ心理学が教えるポジティビティをあげる取組を学生に実行してもらったところ,ポジティビティがほとんど全員で向上していることがわかった.ただ,この結果は,この授業内の学習コミュニティがうまく機能していた結果とも考えられるので,取組とポジティビティ向上の因果関係は,今後のさらなる研究が必要である.