著者
堀川 英則 伊藤 涼太郎 小出 哲哉 大橋 博子 武山 桂子 加藤 賢治 安藤(小島) 寛子
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.61-68, 2019-05-31 (Released:2019-09-01)
参考文献数
36
被引用文献数
1

愛知県長久手市内のイチゴほ場で採取したナミハダニ黄緑型の雌成虫に対し,明期開始2時間後処理区,明期開始後10時間後処理区,および全暗条件での暗期処理区として,異なる時刻での処理による各殺ダニ剤の感受性の比較を行った。その結果,エマメクチン安息香酸乳剤,ミルベメクチン乳剤,還元澱粉糖化物液剤,アセキノシルフロアブルでの死虫率が明期開始後2時間処理区で他の2処理区に比べて低い傾向が見られた。一方,シエノピラフェンフロアブル,シフルメトフェンフロアブルでは死虫率が明期開始後2時間処理区で他の2処理区に比べて高い傾向にあった。ビフェナゼートフロアブル,硫黄については,各処理区間で差は無かった。なお,全ての処理薬剤において明期開始後10時間処理区と暗期処理区との間で死虫率の差は明瞭ではなかった。また,愛知県蒲郡市内のイチゴほ場で採取したナミハダニ黄緑型の卵に対し,気門封鎖型農薬を中心に処理したところ,高度精製マシン油乳剤,マシン油乳剤が大きく孵化を阻害した。次いで,なたね油乳剤,脂肪酸グリセリド乳剤,調合油乳剤に孵化阻害効果が認められたが,プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル乳剤,ヒドロキシプロピルデンプン液剤では,孵化阻害効果はほとんど認められず,化学合成農薬であるエトキサゾールフロアブルは感受性の低下が疑われた。
著者
伊藤 操子
出版者
特定非営利活動法人 緑地雑草科学研究所
雑誌
草と緑 (ISSN:21858977)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.3-11, 2016 (Released:2017-05-31)
参考文献数
16
被引用文献数
1

除草剤の存在は世界の食糧生産を支える上で不可欠だが,生活圏の雑草問題である衛生被害の回避,環境保全,インフラ保護にとっても重要である.しかし,未だに除草剤への拒否反応がはびこる日本の現状に鑑み,今日あるような除草剤がなぜ生まれ,科学・技術としてどう発達し,現在どういう段階にあるのか,世界の流れを振り返る.化学物質で雑草を撲滅するという発想は19世紀中頃から始まり,手取りや機械で防除できない多年草に大量の無機物質の投与が試みられた.一方,本格的な除草剤の発展は,1940年代初頭の選択的有機除草剤2,4-Dから始まった.これは世界の雑草防除自体のありようを一変させた画期的出来事である.その後1080年代にかけて,作物―雑草間の選択性の追求,新規作用点の開発,低処理薬量・低残留性,新規剤型の開発等が世界的に進展し,効果,作物や環境に対する安全性において優れた多くの除草剤が生まれた.しかし,その後徐々に縮小されて今日に至っている.理由は,除草剤のマーケットが成熟し,既剤を上回るものを開発しにくい,安全性試験へのコストの増大,グルホサート抵抗性遺伝子組換え作物の普及で,対抗できるインセンテイブが低下したなどである.化学的防除の著しい発展は,他方で,雑草防除実施者が創意工夫の意思の喪失,簡単に成果が期待できるという思い込みを生んだ.その最も顕著なしっぺ返しは,未だに止むことのない世界的な除草剤抵抗性雑草の増加である.
著者
伊藤 文人
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.28-39, 2020-11-30 (Released:2021-02-09)
参考文献数
50

小論の目的は,二木立から故高島進へ提起された政策研究の分析枠組(analytical framework)に関する批判に応答することである.小論では,二木の政策研究の有効性を検証するため両者の政策研究の方法論的特質をその射程とダイナミズム―分析枠組・イデオロギー批判・対案―に焦点を当てつつ批判的に再検討した.高島は社会福祉の全体性=歴史(理論)を踏まえた,中長期的展望に価値を見いだすコミュニストとしての政策研究を行い,二木は政策の前提条件を原則的に問わない,短期的な実用主義に価値を見いだすプラグマティストとしての政策研究を実施したといえる.新自由主義の席巻する文脈で今日の社会福祉政策を捉えるには,二木の研究上の貢献を尊重しつつ,高島の政策研究への再評価が必要になるだろう.
著者
伊藤 曙覧
出版者
北陸石仏の会
雑誌
北陸石仏の会研究紀要
巻号頁・発行日
no.3, pp.12-17, 1999-10
著者
丸岡 知浩 伊藤 久徳
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.283-296, 2009 (Released:2011-07-26)
著者
伊藤 厚子 馬場 薫 田中 幸子
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部看護学科
雑誌
東北文化学園大学看護学科紀要 = Archives of Tohoku Bunka Gakuen University Nursing (ISSN:21866546)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.1-11, 2020-03

本研究の目的は、病院で看護職が受ける職員間暴力・ハラスメントの実態と抑うつとの関連を明らかにすることである。400床以上500床未満の3病院、1,107名の看護職を対象に質問紙調査を行い、抑うつ状態の評価はCES-Dを使用した。職員間暴力・ハラスメントを受けた者のうち、所属長に報告した者は32.7%であり、言葉の暴力・いじめ・パワハラを受けた者は受けたことがない者よりCES -D得点が高いことが明らかとなった。職員間暴力・ハラスメントの中でもいじめを受けた者は特に抑うつ傾向を誘発しやすいことから、管理者は職員の人間関係に注意するとともに、職員が報告や相談をしやすい環境や関係作りの必要性が示唆された。
著者
伊藤 操子
出版者
特定非営利活動法人 緑地雑草科学研究所
雑誌
草と緑 (ISSN:21858977)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.45-52, 2011 (Released:2017-06-30)
参考文献数
12

トクサ属(Equisetum)はシダ植物トクサ綱に属しているが(1綱1属),雑草とみなされているにはスギナとイヌスギナのみである.作物への雑草害だけでなく,家畜への障害もある.スギナの最大の生物的特徴は,他の雑草類に例を見ない地下器官系の大きさであり,発達した集団では現存量の70~90%を占める.地上部については早春に胞子茎(つくし)が発生し,続いて栄養茎(すぎな)が秋季まで(本州中部以西では4月~11月)次々発生・生長する.地下部は横走根茎とその一部の節に付着する塊茎ならびに地上茎につながる垂直根茎からなる.根茎分布はむしろ30 cm以下に多く,1 mに及ぶことも稀ではない.根茎には地上茎と同様に5~9本程度の稜と溝があり,これらと同数の維管束とともに通気孔がよく発達しており,地下深くまでの生存に適応している.シダ植物であることから,繁殖は本来有性生殖(胞子の発芽により形成された前葉体につくられた精子と卵子の受精で栄養茎ができる)もあるはずだが,野外ではめったに起こらず,栄養繁殖が主体である.繁殖体は根茎断片と塊茎であり,10℃前後の比較的低温でもよく萌芽する.定着した集団の一般的防除法は除草剤による以外になく,比較試験からはアシュラムの6月処理が最も有効であった.
著者
大泉 伝 斉藤 和雄 Le DUC 伊藤 純至
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.98, no.6, pp.1163-1182, 2020 (Released:2020-12-17)
参考文献数
34
被引用文献数
5

数値気象予測モデルの要素が豪雨のシミュレーションに与える影響を調べるため、広い領域を対象とした超高解像度実験を2014年8月の広島の豪雨事例で行った。本研究はPart 1 の2013年10月伊豆大島での研究に続くものであり同様の実験を行った。これらの研究から豪雨のシミュレーションにおいて広い領域で高解像度モデル(解像度500m以下)を用いる有用性を示した。 広島の事例では降水帯の位置や強度はモデルの解像度に影響を受けることがわかった。解像度2kmの実験では降水帯は再現されたがその位置は北東にずれていた。解像度500mと250mの実験ではこの降水帯の位置ずれは軽減された。最も降水帯の位置と強度をよく再現したのは解像度250mの実験であった。降水帯に対する境界層スキームの影響は小さく、この点は伊豆大島の事例と異なっていた。 本研究では対流コア数のモデル解像度依存性についても調査した。モデルの解像度に対する対流コア数の変化率は解像度500mで小さくなる事がわかった。この結果は、対流コア数は解像度500mより高解像度になると収束する可能性を示す。
著者
野村 雅昭 伊藤 菊子
出版者
計量国語学会
雑誌
計量国語学 (ISSN:04534611)
巻号頁・発行日
vol.11, no.7, pp.p306-311, 1978
被引用文献数
1
著者
小林 健一 筧 淳夫 伊藤 昭 糸山 剛 河口 豊 郡 明宏 辻 吉隆 森本 正一 柳 宇
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.16, no.34, pp.1099-1104, 2010-10-20 (Released:2010-10-20)
参考文献数
8

In the current laws and ordinances, the matter to accommodate the tuberculosis patient who is an airborne infectious disease is not exhibited. In this study, we discussed the building standard of the medical institution which accommodate tuberculosis patient, for the purpose of showing recommendations. The medical institution to accommodate tuberculosis patients needs to keep building facilities corresponding to the airborne infection, and it is necessary to perform use based on the latest scientific evidences.
著者
木村 祐哉 亀島 聡 伊藤 直之
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.29-38, 2020-11

日本国内では1割以上の世帯が何らかのペットを飼育していると推定されるが,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴うペット飼育者への影響は定かではない.そこで我々は,人や動物への病原性・感染性,生活スタイルや経済状況に与える影響のイメージをLikert尺度で,COVID-19の影響による飼育方法の変化,不安,困っている点を自由記述で訊ねるオンライン調査を実施した.2020年5月20日から6月3日の14日間で,特定警戒都道府県61名とその他の地域14名の,計75名から有効回答が得られた.規制が強かった場合には,動物病院やペットショップなどの利用が困難となることで,飼育・健康維持に影響が及んでいた.また,人や動物への感染による病原性への不安があるだけではなく,動物の外出制限など飼育形態が変化し,家族が感染した場合の預け先の確保が課題となっていた.このような心理・社会的困難は,COVID-19に限らず,今後起きうる未知の新興感染症の流行時や,また時には自然災害発生時など,生活スタイルの変化を余儀なくされる状況において共通にみられると推測される.
著者
望月 龍也 石内 伝治 伊藤 喜三男
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.1000-1006, 1999-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

遺伝的に多様なトマト30品種・系統を供試し, 完熟果実におけるグルコースおよびフルクトース含量の作期および果房位による変動特性の差異を検討した.トマト品種・系統間における両成分含有量の相対的関係は, 栽培・環境条件の変動に対して比較的安定していた.また全体を通じてグルコース含量とフルクトース含量には高い正の相関がみられたが, 糖含量が高くなるほど全体に占めるフルクトース含量の比率は低くなる傾向がみられた.全品種・系統をこみにした作期・果房位ごとの平均値に対する, 対応する作期・果房位における糖含量の回帰分析から, 供試材料は, (1)作期・果房位ごとの糖含量が全供試材料の平均値とほぼ平等して変動する品種・系統, (2)作期・果房位間の変動が全供試材料の平均より大きい品種・系統, (3)作期・果房位間の変動が小さく安定した糖含量を示す品種・系統, (4)回帰直線への回帰が有意でなく糖含量変動が全供試材料の変動傾向と異なる変動を示す品種・系統が認められたが, 糖含量が高くかつ変動の小さい品種・系統は見出せなかった.
著者
伊藤 将円 井川 達也 原 毅 丸山 仁司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.450-458, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
31

【目的】高齢者における歩行器・歩行車の種類の違いによる膝関節内反モーメント(以下,KAM)の変化を明らかにし,どの補助具が関節負担の軽減に有用か明らかにする。【方法】対象は65 歳以上の高齢者19 名とした。各対象者に独歩,車輪付き歩行器,椅子付き歩行車,前腕支持台付き歩行車の4 条件を計測した。KAM 最大値,膝関節内反角度,床反力を条件間で比較した。【結果】KAM は,補助具すべてで独歩と比較し有意に減少,椅子付き歩行車と前腕支持台付き歩行車が車輪付き歩行器と比べ有意に減少した。膝関節内反角度は椅子付き歩行車,前腕支持台付き歩行車が車輪付き歩行器と比較し有意に減少した。床反力鉛直方向成分は補助具すべてで独歩と比べ有意に減少,前腕支持台付き歩行車は車輪付き歩行器,椅子付き歩行車と比較し有意に減少した。【結論】椅子付き歩行車と前腕支持台付き歩行車は独歩や車輪付き歩行車と比較してKAM の減少を認めた。
著者
尾縣 貢 高本 恵美 伊藤 新太郎
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.573-583, 2003-09-10 (Released:2017-09-27)

本研究の目的は,上肢の無気的作業能が400m走中の走速度逓減およびパフォーマンスに及ぼす影響を検討することであった。400m走50.70±1.38秒のタイムを持つ十種競技者10名を対象に,400m走中の40m毎の速度変化,ゴールタイム,30秒間のペダリング中およびクランキング中の最大パワー,平均パワー,パワー低下率,それぞれの運動5分後の乳酸値を測定した。主な結果は次の通りであった。1)クランキング後乳酸値/400m走後乳酸値と400m走タイムとの間には,有意な負の相関関係が認められた。この結果から,高い強度の無気的運動に耐えうる上肢の能力を高めることが,400m走のパフォーマンスを高めることにつながるものと考えられる。2)400m走では,10名全員が80m地点通過後に速度逓減を示し,ゴールまで逓減を続けた。80m以降の速度逓減は直線回帰式で表すことができ,その傾き(絶対値)を速度逓減指標とした。この速度逓減が緩やかな者ほど,400m走タイムは短いという関係が認められた。3)320-360m区間(第8区間)から360-400m区間(第9区間)への速度逓減は,上肢のパワー低下率および下肢のパワー低下率との間に有意な正の相関関係が認められた。これは,上肢のパワー発揮の持続力に優れることがゴール前の速度低下を小さく抑えることにつながることを示唆するものである。以上のことから,上肢のパワー持続能力がゴール前の速度逓減に影響を及ぼしていることが明らかとなった。
著者
伊藤 幸郎
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.69-75, 2004-10-18 (Released:2018-02-01)

What is meant when a doctor says, "You are healthy" after the health examination? Is it possible to diagnose a person to be healthy? In fact, this question comes from a confusion between science and values. Health is not a scientific term but a value-laden, normative concept. So your doctor can only say "I couldn't find any disease," not "You are healthy." Clinical medicine textbooks describe many diseases, but they never give a working definition of "health". There are many diseases to be diagnosed but only one "health." "Health" is unique for each person and stands outside any medical investigations. When one tries to define health he will tend to fall into a circular discussion: Health is an absence of diseases and disease is a lack of health. One typical definition of health has been given by the WHO (1946). The WHO defined health as a state of complete physical, mental and social well-being. Some critics say that the WHO definition merely replaced the word "health" with "well-being." Many philosophers have proposed non-circular, positive definitions of health. However, like the WHO, they eventually fall into theories of happiness, which are very important, but cannot be applied to medicine as science. In contrast to clinical, the textbooks of public health education have rich descriptions of health. Public health officers also stress the importance of health. As shown in the slogan "health promotion," the health and disease of a population is recognized as a quantitative concept which may increase or decrease. In conclusion, health examinations don't diagnose a person as being healthy. All we can do is a massscreening of diseases. The true meaning of health depends on each person's view of happiness and as such, it is not a pure medical problem.