著者
佐藤 洋太 藤田 耕史 井上 公 砂子 宗次朗 坂井 亜規子 對馬 あかね Podolskiy Evgeny A. Berthier Etienne Kayastha Rijan
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

Glaciers in High Mountain Asia are valuable indicator of climate change, and their meltwater have an important role for the regional water resources (e.g. Pritchard, 2019). We thus need to estimate Himalayan glacier fluctuation. However, the lower part of large Himalayan glaciers is generally covered with debris mantle, which makes the melting process complicated. Several previous works pointed out a role of ice cliffs that promote local enhancement of the ice melting (e.g. Sakai et al., 1998; Brun et al., 2018). The ice cliff’s spatio-temporal distribution and their dynamics (evolution and decay) are important to understand debris-covered glaciers melting process.In this study, we generated high resolution digital elevation models (DEMs) and orthomosaic images from aerial photographs taken at four different times at the Trakarding glacier, Nepal Himalaya in order to trace ice cliff dynamics.In-situ observations and aerial photogrammetry surveys were carried out in 2007, 2017, 2018, 2019 post-monsoon seasons over the entire debris-covered area. These photographs were analyzed using Structure from Motion technology and created high resolution (0.2 - 2.0 m) terrain data. From each image, about 500 ice cliffs were extracted and analyzed these ridge lengths, slope areas, gradients, aspects and spatial distributions.DEM differencing indicate that the surface mass balance has been strongly negative (-1.65 m w.e. yr-1) from 2007 to 2019. Spatially, we observed that the more significant surface lowering happens, the higher cliff density is remarked. The result suggests the ice cliff locally enhances glacier melting. In addition, a significant correlation between ice cliff length and its slope area was observed, which means that it is possible to estimate the slope area of cliff from the cliff length using coarser satellite data. Analysis of ice cliff aspect elucidated that north-west facing ice cliffs are predominant. And their aspects had heterogeneous distribution. Finally, we estimated ice cliff dynamics and its mechanism from the results of spatial cliff density, aspect and elevation change analysis in Trakarding Glacier.
著者
杉村 大輔 木谷 クリス真実 岡部 孝弘 佐藤 洋一 杉本 晃宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.93, no.8, pp.1512-1522, 2010-08-01
被引用文献数
1

本論文では,特徴点軌跡のクラスタリングに基づいた人物追跡手法を提案する.混雑環境下において頑健に個々の人物を区別するために,本手法では歩容特徴と局所的な見えの時間変動の一貫性という二つの指標を追跡の枠組みへ導入する.周波数領域における歩容特徴は,生体認証の分野において頻繁に利用されている指標であり,個人を識別するための重要な手掛りであることが知られている.また,局所領域における見えの時間的な変化は,人物の動きが周りと類似する傾向のある混雑環境下において個々の人物を区別するための効果的な指標となる.このような動きと見えの異なる種類の指標を利用することにより,混雑環境下においても安定な追跡を実現することが可能となる.実環境における実験により本手法の有効性を確認した.
著者
江川 翔一 瀬島 吉裕 佐藤 洋一郎
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
pp.TJSKE-D-18-00069, (Released:2019-03-29)
参考文献数
31
被引用文献数
5 6

In human face-to-face communication, not only verbal messages but also non-verbal behaviors such as facial expressions, body movements, and gazes are conveyed; these non-verbal behaviors can express human affect. In addition, it leads to sharing of empathy unconsciously in human interaction and enhancing intimacy between humans. In particular, cognitive empathy as well as emotional empathy play an important role in sharing of empathy. Therefore, it is expected to evaluate emotional empathy based on the features of affect for enhancing intimacy. In this study, for the basic research of evaluating emotional empathy, a method that estimates the emotional centroid based on the coordinate system in the Russell’s circumplex model was proposed. In addition, the experiment was conducted to evaluate the proposed method. The results demonstrated that the method has a possibility to estimate the features of affect.
著者
佐藤 洋一郎 伊藤 敏雄 加藤 鎌司 河原 太八 藤岡 利生 万年 英之 鞍田 崇 西田 英隆 細谷 葵
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

「人類世」という新しい地質年代を提唱されているが、これは産業革命以降の急速なエネルギー消費により、人間活動が地球環境に大きな影響を及ぼすようになったことを、地質学的にも記述すべきとの判断による。しかし、環境の歴史を丁寧に調査すると、人間活動の影響は産業革命のはるか前から、われわれの想像を超えてはるかに大きかったことがわかってきた。
著者
河原 一彦 志道 知行 佐藤 洋
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.317, pp.31-36, 2007-11-09
被引用文献数
2

音源信号の音色の主観評価に関する研究は多くあるが,それらの研究においてスピーカの特性が主観評価結果に与える影響については,充分に研究されていない.本研究では,スピーカ特性の印象評価のための形容語の選別を行った.また,それらの形容語をもちいて,スピーカ再生音に関する印象評価の試行実験を行い,主成分分析により4つの主成分を得た.第1主成分と第2主成分の二次元配置図において,音源信号の主観的印象は,音源信号の影響をうけるが,スピーカの影響もうけることがわかった.また,スピーカのパラメタを変化させると,音源信号の印象が変化する場合があることがわかった.
著者
栗本 鮎美 粟田 主一 大久保 孝義 坪田(宇津木) 恵 浅山 敬 高橋 香子 末永 カツ子 佐藤 洋 今井 潤
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.149-157, 2011 (Released:2011-07-15)
参考文献数
30
被引用文献数
195 213

目的:高齢者の社会的孤立をスクリーニングする尺度として国際的に広く使用されているLubben Social Network Scale短縮版(LSNS-6)の日本語版を作成し,信頼性および妥当性の検討を行った.方法:総合健診を受診した地域在住高齢者232名に面接式質問紙調査を行い,日本語版LSNS-6とともに,基本属性,主観的健康感,運動機能,既存のソーシャルサポート質問項目,日本語版Zung自己評価式抑うつ尺度(日本語版SDS),自殺念慮等に関するデータを得た.日本語版LSNS-6の内的一貫性についてはCronbach α係数,繰り返し再現性についてはSpearman相関係数,評価者間信頼性については級内相関係数を用いた.構成概念妥当性の検討には先行研究の結果との比較,併存妥当性の検討には日本語版SDSおよびソーシャルサポート質問項目との関連を検討した.結果:Cronbach α係数は0.82,繰り返し再現性に関する相関係数はr=0.92(P<0.001),評価者間の級内相関係数は0.96(95%信頼区間0.90~0.99)であった.日本語版LSNS-6の平均得点は同居世代数が増えるほど高く(P=0.033),自殺の危険性がある群で低く(P=0.026),主観的健康感不良群で低下する傾向(P=0.081)を認めた.日本語版LSNS-6の得点は日本語版SDSと有意な負の相関を示し(P<0.001),ソーシャルサポートに関する5つの質問項目のうち4項目において,ソーシャルサポート「あり」群で日本語版LSNS-6の平均得点は有意に高かった(P<0.05).結論:日本語版LSNS-6の信頼性と妥当性は良好であった.我が国における高齢者の社会的孤立のスクリーニングに日本語版LSNS-6が有用である可能性が示された.
著者
佐藤 洋輔 宇野 カオリ 沢宮 容子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.94.21239, (Released:2023-02-01)
参考文献数
39

This study aimed to develop the Japanese version of the Lesbian, Gay, and Bisexual Identity Scale (LGBIS). The original scale was designed to assess the acceptance of one’s identity as an LGB person. We examined the reliability and validity of the translated Japanese version using data from 703 Japanese LGB people. The results of exploratory and confirmatory factor analyses showed that the Japanese version of the LGBIS has a four-factor structure, in contrast to the eight-factor structure of the original version: negative image and affect toward LGB identity, identity centrality, identity affirmation, and identity uncertainty. Furthermore, internal consistency and test-retest correlations indicated that the scale has good reliability. The four subscales correlated with various identity-related measures. The correlations between indicators of mental health and both negative affect and affirmation about LGB identity were mostly consistent with the current theory of minority stress, which provide evidence of good validity for the Japanese version of the LGBIS. Thus, the Japanese version of the LGBIS is suitable for the assessment of identity acceptance among the Japanese LGB population.
著者
佐藤 洋美 島田 万里江 佐藤 友美 シディグ サーナ 関根 祐子 山浦 克典 上野 光一
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第40回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.150526, 2013 (Released:2013-08-14)

【目的】医薬品の中には、対象疾病の受療率に男女差があり、男女のどちらかに偏って使用されるものが少なからず存在する。また、薬物動態や薬効・副作用の発現に性差の存在する薬物も多々存在することが報告されている。そこで、安全な医薬品の開発及び個々人に対する医薬品の適正使用に還元されることを目的として、本検討においては、申請資料概要が提出済みの既承認医薬品の中で、女性が組み込まれている臨床試験を実施したものがどの程度存在するかを調査し、解析を行った。【方法】独立行政法人医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency: PMDA)のホームページから検索を行った。2001年4月から2011年12月に承認審査された医薬品のうち、申請資料概要が入手可能な医薬品を対象に調査し、臨床試験における各相の女性の組み込み等について解析を行った。【結果】承認審査された医薬品のうち、国内または海外における第Ⅰ相~Ⅲ相試験及び臨床薬理試験のいずれかには女性は非常に高い割合で組み込まれていた。しかし、第Ⅰ相試験や臨床薬理試験に関しては、女性の組み込み率が低かった。女性を組み込んでいても男女別のデータを区別している医薬品はさらに少なかった。一方、女性が組み込まれ、データを区別している医薬品の添付文書において、性差に関する記述が記載されている医薬品は極めて少なかった。【考察】第Ⅰ相試験や臨床薬理試験の女性の組み込み率が低いことより、薬物動態や薬力学的作用における性差の概念が浸透していないことが考えられた。また、男女のデータを区別している医薬品において、性差に臨床的意義がない場合は添付文書にその旨を記載していないことが多いが、臨床効果に性差がなかったことを記載することは医療現場における安全な医薬品適正使用に貢献すると思われる。
著者
久保 尊洋 瀬在 泉 佐藤 洋輔 生田目 光 原井 宏明 沢宮 容子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.173-182, 2022-05-31 (Released:2022-07-28)
参考文献数
27

本研究の目的は、動機づけ面接の中核的スキルはスマートフォン使用についてのチェンジトークを引き出すかどうかを明らかにすることであった。実験参加者50名に対し、スマートフォン使用の問題を標的行動にし、OARSと呼ばれる動機づけ面接の中核的スキルを用いるOARS条件と、標的行動に関する思考、感情、そのほかの行動について共感的に聞く非OARS条件を設定し、1回の面接で交互に条件を変えて介入を行うABABデザインで実験を行った。実験参加者の発言の頻度に対するチェンジトークの頻度の百分率(以下、チェンジトーク(%)とする)を条件ごとに算出し比較した。結果、OARS条件のほうが有意にチェンジトーク(%)が高かった。同条件では、問題改善の重要度が高いとチェンジトーク(%)も高いことがわかった。動機づけ面接の中核的スキルは、スマートフォン使用についてのチェンジトークを引き出すスキルであることが示唆された。
著者
黒川 修行 佐藤 洋
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.163-166, 2015-08-25 (Released:2017-07-28)

It is widely accepted that the growth of children is a general marker of the health of children in a community. Moreover, it is assumed that the secular changes are affected by environmental conditions such as inadequate nutrition and poverty. Increases in stature of school children living in Sendai diminished at the end of the 20th century, although they remained taller and heavier than those in the preceding years after World War II. Because there was a reacceleration in growth after a reduction in acceleration, further study is required to confirm whether these secular trends are changing or not.
著者
佐藤 洋子
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.502-511, 2017 (Released:2017-11-28)
参考文献数
102

目的:障害者総合支援法の理念となる障害者基本計画では障害者の意思表示やコミュニケーションを支援し情報アクセシビリティを向上することが示されている.コミュニケーションに障害をもつ人が,その人の残存能力に応じて意思を伝える方法をAAC(Augmentative and Alternative Communication;拡大代替コミュニケーション)といい,情報アクセシビリティが整備された環境づくりを進めるために障害種別ごとのAAC手法の体系的な分類が求められている.本稿では学術論文を中心に障害種別ごとに求められる支援手法に関する文献レビューを報告する.方法:学術論文の検索は国内医学文献データベース医中誌ウェブ等を用い,AAC関連検索語による検索式を用いて検索した.得られた文献からタイトル・要約・本文内容に基づき適切な文献を選択し,対象障害ごとのAACを抽出した.対象障害は視覚障害,聴覚障害,盲ろう,発達障害(自閉症を含む),知的障害,高次脳機能障害(失語症),ALSなど総合支援法の対象となっている難病,その他とした.結果:最終的に98件の文献が得られた.視覚障害( 7 件,7.1%)では視覚機能の補強,聴覚情報および触覚情報への変換という観点から,聴覚障害( 7 件,7.1%)では聴覚機能の補強,視覚情報および触覚情報への変換という観点からAACを分類した.発達障害(10件,10.2%),知的障害( 7 件,7.1%),高次脳機能障害(11件,11.2%)についてはそれぞれにおける意思疎通の困難さの特徴に応じ,視覚情報や聴覚情報への変換,およびそれらの併用という観点で分類した.重度身体障害を引き起こす難病(46件,46.9%)におけるAACでは運動機能の補強という観点,および症状の進行に応じた分類を行った.考察:障害種別ごとに必要とされるAAC分類を行ったところ,障害種別を超えたAACの応用の可能性が明らかとなった.本来,AACは障害の名称によって分類されるものではなく,意思疎通が困難な原因やその程度に合わせて提供されることが望ましく,情報アクセシビリティの向上や環境づくりを目指すうえでは,今後はこのような観点からAACアプローチに関する研究が進むことが期待される.
著者
春名 弘一 昆 恵介 稲垣 潤 佐藤 洋一郎
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.17-23, 2019-01-01 (Released:2020-01-15)
参考文献数
15

動作の改善を目的としたリハビリテーションにおいては,運動の客観的な記録は有用である.しかし,臨床現場で三次元動作解析を実施するには経済的,空間的,時間的障壁が存在し現状では十分な臨床での普及には至っていない.本稿では,これらの障壁を解消する手法として近年注目されているマーカーレスモーションキャプチャによる三次元動作解析について活用事例もふまえて紹介する.マーカーレスモーションキャプチャによる動作解析は,従来から活用されている光学式カメラを利用したモーションキャプチャ手法やモーションセンサ手法に対して,身体に体表マーカーやモーションセンサなどの貼付が不要で,煩雑な計測準備が不要である.また,骨格認識が自動化されているためソフトウェアが扱いやすく,臨床現場での有益性が高い手法であるといえる.一方で,従来法と比較して計測精度は低いのが欠点であるが,センサや骨格認識技術の改良などにより今後はさらに計測精度が向上すると考えられる.
著者
畑 元 小池 英樹 佐藤 洋一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.1152-1161, 2015-04-15

本研究では,ユーザに気づかれない視線誘導を目的とした手法の提案を行う.人の視覚の特性から画像の動的な解像度制御を提案する.具体的には,誘導したい領域を高解像度,それ以外の領域を人が気づかない範囲で低解像度にすることで,高解像度領域へと視線の誘導を行う.2つの被験者実験を通して提案手法がユーザに気づかれないで視線誘導を行える可能性が示唆された.
著者
佐藤 洋介 高尾 昌幸 近藤 拓也 大森 茂樹 斉藤 剛史 三宅 英司 門馬 博 倉林 準 八並 光信
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ca0271, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 我々は、第46回日本理学療法学術大会でバドミントン選手において、股関節内転可動域は立位での回旋動作に影響することを報告した.体幹の動作解析は、前後屈における腰椎骨盤リズムなど矢状面上の解析が多く報告されているが、回旋動作の動作解析を報告したものは少ない状況である.体幹の回旋動作は日常生活、スポーツでも頻繁に行われる動作であり、同動作で症状を訴える症例は臨床でもよく経験する.それらの症例を前にして、体幹の回旋動作に影響する因子を知っておくことは、障害予防・パフォーマンス向上においても重要であると思われる.本研究は、健常成人を対象に回旋動作の2次元動作解析を行い、メディカルチェック(以下、MC)との関連性を明らかにし、評価・治療の一助とすることを目的とした.【方法】 対象は立位における体幹回旋動作で痛みが生じない健常成人47名(男性37名、女性10名、平均年齢25.4±3)とした.静止画撮影は、デジタルカメラ(HIGH SPEED EXILIM EX-ZR 10BK、CASIO)を用い、反射マーカを両側肩峰・両側第5肋骨・両上前腸骨棘の計6点に貼り、正面から行った.運動課題は、足隔を肩幅に開いた静止立位から体幹の立位最大回旋動作を行った.運動課題時は、体幹回旋時に肩甲帯の前方突出を防ぐため、上肢を固定した.さらに口頭にて足底全面接地、両膝関節伸展位保持を指示し、確認しながら計測を行った.得られた画像に対して画像処理ソフトウェアImageJで各反射マーカの座標を求め、肩峰・肋骨・上前腸骨棘レベルにおいて静止画像と体幹回旋後の画像から左右のマーカの直線距離を算出し、三角関数を用いて回旋角度を求めた.MCは、関節可動域表示ならびに測定法:日本リハビリテーション医学会(以下、ROM)に準じた方法で、座位体幹回旋、股関節内転、股関節内旋(背臥位)の可動域を測定した.さらに腹臥位で膝関節90度における股関節内旋(以下、股関節内旋(腹臥位))可動域を測定した.得られた座位体幹回旋、股関節内転、股関節内旋(背臥位)の可動域は、関節可動域の参考可動域を基準として、制限がある群とない群の2群に分類した.股関節内旋(腹臥位)の可動域はこの計測データにおける中央値を基準に、制限がある群とない群の2群に分類した.体幹の立位最大回旋動作時の肩峰・第5肋骨・上前腸骨棘の各レベルに対する回旋角度について、一元配置分散分析を行い、要因の主効果が認められた場合に多重比較検定を行った.有意水準は危険率5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 所属法人における倫理委員会の許可を得た.対象には、ヘルシンキ宣言をもとに、保護・権利の優先、参加・中止の自由、研究内容、身体への影響などを口頭および文書にて説明した.同意書に署名が得られた対象について計測を行った.【結果】 座位体幹回旋制限群と股関節内旋(腹臥位)制限群の双方は、肩峰、第5肋骨、上前腸骨棘の各レベルにおいて有意差を認めた(P<0.05).股関節内転可動域制限群は、肩峰レベルでのみ有意差が認められた(P<0.05).背臥位での股関節内旋可動域制限群は各レベルで有意差を認めなかった.【考察】 前回報告したバドミントン選手における傾向と同様に、体幹の立位最大回旋動作は、股関節内転が参考可動域より下回ることで、制限を受けることが認められた。体幹の立位最大回旋動作と股関節内旋(腹臥位)とで関連性が認められた.股関節内旋(腹臥位)は、測定肢位が股関節中間位であり、股関節周囲の軟部組織における緊張が、立位と同様である点が反映したものと考えられた.股関節内旋(背臥位)と体幹の立位最大回旋動作で関連性が見られなかったのは、股関節内旋可動域(背臥位)は股関節屈曲位で測定するため、軟部組織の緊張や股関節面の適合度が立位での回旋動作と異なったためと考えられた. 今回の結果では、座位体幹回旋と股関節内旋可動域(腹臥位)と、体幹の立位最大回旋動作との関連が考えられた.股関節内旋可動域(背臥位)は立位での体幹回旋動作と関連しないと考えられた.体幹の立位最大回旋動作は、股関節中間位における関節面適合度と股関節周囲における軟部組織の影響が及ぶと考えられた.同じ股関節の運動で、肢位によって関連性に差がみられたことから、各種作業やスポーツ動作それぞれに応じた姿勢で評価しなければ動作を反映しているとは言い難く、姿勢に合わせた評価・治療が重要であると考えた.【理学療法学研究としての意義】 体幹の回旋動作は日常生活、スポーツ動作でも頻繁に行われる動作である.今回の実験結果から、立位での体幹回旋動作は体幹回旋可動域と腹臥位での股関節内旋に着目していく必要性が示唆された.