著者
西倉 実季
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.21, pp.37-48, 2008-07-20 (Released:2012-02-29)
参考文献数
21

The purpose of this paper is to sociologically examine the difficulties associated with disfigurement and the strategies for coping with this by using the life-stories of women with such facial disfigurement. The first part of this research is based on life-story interviews and examines the "lived time" of individual respondents. In contrast to Goffman who adopted a synchronic approach that focused on the fixed scene of social interaction and described how stigmatized people survive their situation, I examined the total lives of women with facial disfigurement diachronically. I found that women did not think camouflage makeup was always all-purpose. Camouflage makeup brings out both good and bad points, something that those who provide makeup service should consider in supporting those with facial disfigurement.
著者
原田 岳 坂口 孝宣 稲葉 圭介 中村 利夫 倉地 清隆 深澤 貴子 中村 光一 沢柳 智樹 原 竜平 井田 勝也 今野 弘之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.432-441, 2010 (Released:2010-03-05)
参考文献数
30
被引用文献数
1

症例は70歳男性.肝門部とドーム下に肝腫瘍を指摘され受診された.門脈腫瘍塞栓をともなうStage IVの肝細胞癌と診断し,近医経過観察の方針となった.その後は症状の増悪なく経過し,初診から28カ月後の画像診断で腫瘍は著明に縮小していた.退縮に関わる因子として,門脈腫瘍塞栓による腫瘍血流の減少と,イミダプリル,補中益気湯の抗腫瘍効果が考えられた.肝細胞癌の自然退縮症例はまれであり,文献的考察を含め報告する.
著者
熊倉 啓之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.307-310, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
26

本研究は,海外における割合指導に関する先行研究を分析し,日本の割合指導との違いを明らかにして,今後の割合指導の改善への示唆を得ることを目的とする.まず,海外の割合指導に関する先行研究を,(1)パーセントの概念に関する研究,(2)パーセントの理解を支援する図等に関する研究,(3)パーセント問題の解決と指導に関する研究,の3点に焦点を当てて分析した.分析の結果,日本の割合指導との違いに基づく指導改善への示唆として,(1)パーセントを分数と関連付ける,(2)100マス図を活用する,(3)帰一法等による方法を扱う,の3つの示唆を得た.
著者
若倉 雅登 曽我部 由香 原 直人 山上 明子 加茂 純子 福村 美帆 奥 英弘 仲泊 聡 三村 治
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.7-13, 2021-03-25 (Released:2021-04-03)
参考文献数
20

【目的】眼球や視路に原因を求められないが,日常的に保有視覚を阻害されてしまう場合がある.この実態をさぐるために,全国的に臨床的特徴を検討すること. 【方法】日常的に保有視覚が常時阻害されている症例を,神経眼科およびロービジョンの専門家の有志でワーキンググループ(WG)にて収集した.2018年11月から2019年4月までの6か月間に眼瞼痙攣,心因性視力障害,詐病を除く上記に見合う症例をWGのメーリングリスト上で報告し内容を検討した.最終的に以下の二次的除外基準を設けて症例を絞り込み,その臨床的特徴を考察した.1)頭部MRIなどで病変が同定できる症例,2)視覚に影響を及ぼす精神疾患が確定している症例,3)眼位,眼球運動障害による視覚障害が出現している症例である. 【結果】最終的に対象となった症例は33例(16歳から80歳,男女比(9:24))が収集された.これらの臨床的特徴を解析すると,非眼球性羞明26例,眼痛5例と視覚性感覚過敏が目立った.両者とも有する例が21例,両者ともないものが1例であった.これらの多くは注視努力(企図または遂行)によって症状が悪化する傾向にあった.33症例の報告の内容から,3例以上に共通して随伴していた臨床的特徴としては脳脊髄液減少症,片頭痛,ベンゾジアゼピン系薬物の連用,線維筋痛症があった. 【結論】眼球や視路に原因がないのに,日常視を妨げる恒常性の羞明や眼痛を有する症例が少なからず存在することがわかった.これらは,視覚関連高次脳機能障害のうち,感覚過敏が前面に出たものと考察できるが,詳細なメカニズム解明は今後の問題である.
著者
小島 拓 長谷部 大地 加藤 祐介 倉部 華奈 船山 昭典 新美 奏恵 加納 浩之 齊藤 力 小林 正治
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.237-242, 2016-08-15 (Released:2016-09-14)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

Peripheral facial nerve palsy following orthognathic surgery is a rare complication. We discuss the incidence of this complication, its possible causes, subsequent treatment and ultimate outcomes.A total of 910 patients underwent orthognathic surgery in our department during the period from 2001 to 2015. Five (0.55%) of those patients had peripheral facial nerve palsy postoperatively. The postoperative day when facial nerve palsy occurred ranged from day 1 to day 13. All of the cases were unilateral and included lip motility disturbance, difficulty in closing the eyes and inability to wrinkle the forehead. All of the patients received medication with an adrenocortical steroid and vitamin B12. Stellate ganglion block and physical therapy were also used for the patients who had moderate to severe facial nerve palsy. Complete recovery was achieved in all but one of the patients, in whom slight palsy remained. There were several possible causes of facial nerve palsy including abnormal bleeding, postoperative swelling, and handling of operating instruments.In conclusion, peripheral facial nerve palsy after orthognathic surgery is relatively rare. If it occurs, however, complete recovery can be expected in most cases.
著者
小林 まおり 倉片 憲治
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.85-93, 2023-02-01 (Released:2023-03-01)
参考文献数
73

女声と男声,どちらが聞き取り易いであろうか。一般に女声の方が聞き取り易いとされているが,高齢者や聴覚障がい者では聞き取りづらいとの意見もある。本総説では,種々の研究結果を概観することで,この問いへの解答を試みた。まず,聴取実験を行った研究を比較したところ,女声の方が了解度や印象評価の結果は高いものの,概してその効果は小さかった。次に,音響特徴を分析した研究では,了解性の高い音声の特徴が女声に多くみられる傾向にあった。一方,高齢者で男声よりも女声の方が聞き取りにくいことを示した実験結果は確認できなかった。最後に,これらレビューの結果から,話者の性別のバランスを考慮した音声研究の必要性について提言を行った。
著者
朝倉 聡
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.4-17, 2015-11-30 (Released:2015-12-10)
参考文献数
46

社交不安症(SAD)は,他者の注視を浴びる可能性のある社交場面に対する著しい恐怖または不安を特徴とし,自身の振る舞いや不安症状を見せることで,恥をかいたり恥ずかしい思いをしたり,拒絶されたり,他者の迷惑になったりして否定的な評価を受けることを恐れる病態とされる。DSM-5では特定する病型に関する記述が変更されており,DSM-IVでは,多くの社交状況で著しい恐怖感,不安感が出現し回避行動が多くなる全般性を特定することになっていたが,DSM-5では,行為状況のみに状況が限定されるものをパフォーマンス限局型と特定することになった。また,「他者の迷惑になるだろう」と恐れることが診断基準に加えられ,わが国の対人恐怖をSADとして診断する方向となった。しかし,自己臭恐怖,醜貌恐怖が日本語名のまま他の特定される強迫症および関連症に分類されることになったことは混乱をきたしやすい。SADの臨床症状評価尺度としてはLiebowitz Social Anxiety Scale (LSAS)が使用されることが多く,その日本語版であるLSAS-Jは信頼性,妥当性が検証され臨床試験にも使用されている。また,わが国の対人恐怖症状も含めて評価できる社交不安/対人恐怖評価尺度(Social Anxiety/Taijin-kyofu Scale; SATS)も紹介した。
著者
松田 憲 一川 誠 矢倉 由果里
出版者
Japan Society of Kansei Engineering
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.493-498, 2013 (Released:2013-12-11)
参考文献数
30
被引用文献数
1

This study investigated how the several factors of BGM (Background music) affected the time estimation . We composed 28 original music tunes with different tempo and notes. Twenty undergraduates estimated one minute by the use of the method of production while listening to a BGM. Results showed that participants underestimated the duration while listening to a tune with a slow tempo, whereas they overestimated while listening to the tunes with fast tempo. The participants overestimated the duration with the increment of the number of the notes per unit time and variety of a note. In addition, the music experiences influenced the auditory time estimation.
著者
倉本 尚徳
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.67-73, 2021-12-20 (Released:2022-09-09)
参考文献数
7

This paper presents the original text and a modern Japanese translation of an epitaph for the Tang period lay person Bao Baoshou 包宝寿, and then examines connections between Shandaoʼs 善導 writings and the epitaphʼs portrayal of daily life practices for Pure Land rebirth and deathbed rites. The former consist of being mindful of Amitābha Buddha, reciting the Amituo jing, and maintaining the abstinential rules. The daily life practices for rebirth and the signs of the coming of the holy retinue to welcome him to the Pure Land experienced by Bao at the end of his life can be seen as the “highest of the high stage” (shangpin shangsheng 上品上生) as described in the Pure Land Contemplation Sūtra 観無量寿経, and also match the practice for the “highest of the high stage” in the Guannian famen 観念法門. Many lay practitioners were present at the end of Baoʼs life and Shandao also emphasized the existence of fellow practitioners.
著者
山ノ内 崇志 倉園 知広 黒沢 高秀 加藤 将
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.1924, (Released:2020-05-15)
参考文献数
53

2011年 3月に発生した東北地方太平洋沖地震の津波被災地では新たに形成された湿地に希少な湿性植物の出現が見られたが、その後の復旧工事などで消滅した生育地も少なくない。特に多くの沈水植物がみられた宮城県野々島において小規模な湿地の沈水植物相を調査するとともに、地形や津波前後の土地利用を調査した。 2015年 8月には、沈水植物として沈水生維管束植物 4種、車軸藻類 1種を確認した。空中写真、衛星画像および都市計画図の判読から、この湿地は海岸浜堤の後背に位置し、少なくとも 1950年代から津波を受ける 2011年までの間は水田または休耕地であった。この湿地は 2016年までに復旧・復興事業にともなう埋立てにより消失した。災害復旧には迅速性が求められるため、災害後に出現した希少種の保全策を検討する時間を確保することは容易ではない。そのため攪乱後の希少種の出現傾向を予測し、災害に先だって情報提供や注意喚起を行うことが必要である。地形情報や土地履歴などの地理情報を活用した希少種の出現の予測は、災害やその後の復旧・復興事業に先だった情報提供・注意喚起の手段として検討の価値があると考えられる。
著者
倉林 敦 住田 正幸 広瀬 裕一 浮穴 和義 澤田 均 中澤 志織 逸見 敬太郎 ベンセス ミゲル マローン ジョン ミンター レスリー ド プリーツ ルイス
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

フクラガエルが生殖時に用いる糊の物理的特性と化学成分、および糊候補遺伝子の探索を行った。本研究の結果、フクラガエル糊の接着強度は、およそ500g/cm2であり、その主要構成要素は蛋白質であることが分かった。さらに、糊物質候補は、他のカエルで報告されていた皮膚分泌物と似た3種の蛋白質と、1種の新規蛋白質があることが示唆された。また、アメフクラガエルについて、人工繁殖を試みた。その結果、Amphiplexと呼ばれるゴナドトロピン誘導ホルモン作動薬とドーパ混合ホルモン剤が、本種の排卵を促すことを明らかにし、世界で初めて飼育下での人工的な交尾の促進と、営巣・産卵までの観察に成功した。