- 著者
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扇谷 昌宏
加藤 隆弘
細井 昌子
- 出版者
- 一般社団法人 日本心身医学会
- 雑誌
- 心身医学 (ISSN:03850307)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.5, pp.390-393, 2022 (Released:2022-09-01)
- 参考文献数
- 17
脳細胞の一種であるミクログリアは,微小な環境変化に敏速に反応し,貪食やサイトカイン産生などを行うことで脳内免疫応答の中心として機能している.また,その機能不全や異常活性化がさまざまな病態に関与していることが示唆されている.慢性疼痛は,単なる痛みだけの疾患ではなく,人間(ヒト)に特有の多面的な疾患ともいえる.このヒト特有の疾患を研究するためには,当然ながらヒトの細胞を用いて実験する必要がある.しかし,そのハードルはきわめて高い.われわれは末梢血中の単球からミクログリア様細胞(induced microglia-like cells:iMG細胞)を作製する技術開発に成功した.iMG細胞は,単球にGM-CSFとIL-34の2種類のサイトカインを添加して2週間培養するだけで作製することが可能である.iPS細胞と異なり,遺伝子組み換えの操作を行わない化学誘導によって作製が可能なため,簡便で安全性が高く,一般臨床施設においても作製が容易である.われわれはこのiMG細胞を用いて那須・ハコラ病や双極性障害といった疾患におけるミクログリア異常を報告してきた.本稿では,われわれの開発したiMG細胞のトランスレーショナル研究ツールとしての有用性と可能性についてこれまでの結果を報告し,線維筋痛症を対象としたトランスレーショナル研究の実際を報告する.