著者
山岸 敦 加藤 一夫 中垣 晴男
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.13-21, 2007-01-30 (Released:2018-03-23)
参考文献数
21
被引用文献数
3

フッ化ナトリウム(NaF)とモノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)は,ともに歯磨剤に配合されるう蝕予防の有効成分として最も広く用いられている.本研究の目的は,日常のセルフケアにおいてフッ化物配合歯磨剤の使用を考慮し設定した条件下で,エナメル質耐酸性に及ぼすNaFとMFPの作用の違いを明らかにすることであった.950ppmFに調整したNaFまたはMFPの水溶液で1日2回3分間,エナメル質を処理し,それ以外はpH4.5の脱灰液に浸漬した.この操作を22日間行った後,試料のミネラル量の変化(ΔZおよびLd)をX線マイクロラジオグラフ(XMR)により定量した.その結果,NaF処理群は,MFP処理群より有意に高い耐酸性を示した(ΔZ: NaF<MFP, Ld: NaF<MFP). 22日間のフッ化物処理による耐酸性層の構造を明らかにするため,pH4.0の脱灰液で6日間処理したところ,NaFとMFPのXMR像には大きな違いがあった.NaF処理群は,表面付近に限定して耐酸性を示す100μm程度の層が得られた.一方,MFP処理群は表層付近の耐酸性がNaFに比べ劣るものの,経時的にエナメル質内部に深くまで浸透し,300μm程度の耐酸性を形成した.したがって,今回の条件における耐酸性付与に関するNaFとMFPの作用は互いに対照的であり,その特性に合わせた応用が望まれる.
著者
竹下 博之 加藤 博和 林 良嗣
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.44.3, pp.463-468, 2009-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
8

本研究は、鉄軌道線廃止後の代替交通網整備の検討方法について示唆を得ることを目的としている。2006年10月に廃止となった桃花台新交通桃花台線(愛知県小牧市)を対象として、その廃線前後の沿線における交通利便性変化を、土地利用を考慮した評価が可能なポテンシャル型アクセシビリティ指標を用いて評価した。その結果、代替公共交通網により名古屋市方面への交通利便性は維持されているものの、小牧市内へのそれは大きく低下していることが明らかとなった。この結果と、独自に実施した廃止に伴う住民の交通行動変化に関するアンケート調査結果とを比較したところ、おおむね合致していることがわかった。このことから、鉄軌道廃止後の公共交通網検討のための評価指標として、アクセシビリティ指標を用いることが可能であると考えられる。
著者
建部 謙治 加藤 憲 野澤 英希
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.87, no.799, pp.1666-1676, 2022-09-01 (Released:2022-09-01)
参考文献数
9

The purpose of this study is experimentally to clarify how the physiological and psychological reactions of elderly female who received from seismic motion are affected by different postures. The experiment was conducted in a total of 60 elderly male and female, with two posture conditions in chair sitting and supine positions, assuming an immediate power outage after the earthquake. As a result of the analysis, it became apparent that there were some differences in the physiological and psychological effects by seismic motion between the sitting position and the supine position for elderly female as with elderly male.
著者
山根 崇嘉 加藤 淳子 柴山 勝利
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.441-447, 2007 (Released:2007-07-24)
参考文献数
29
被引用文献数
4 3

広島県内各地における‘安芸クイーン’の着色実態と気温との関係を明らかにするため,栽培条件の異なる7園について,ブドウ‘安芸クイーン’の着色実態を2001年に調査した.また,2005年に栽培条件の異なる着色不良園3園において環状はく皮処理および着果量の軽減による着色改善を試みた.着色は園地により大きく異なり,カラーチャート値(0~5段階)で0.2~4.5となった.樹齢や栽培方法が異なったにもかかわらず,着色と糖度および着色開始後8~21日における20~25℃に遭遇した時間との間に有意な正の相関が認められた.また,高温条件下でも着果量を減らし,環状はく皮処理することにより,着色および糖度が向上したが,新梢生育の旺盛な園では,着色改善効果が小さく,気温や糖度以外にも着色阻害要因があることが示唆された.
著者
斎藤 文恵 加藤 元一郎 村松 太郎 藤永 直美 吉野 眞理子 鹿島 晴雄
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.392-403, 2008-12-31 (Released:2010-01-05)
参考文献数
32
被引用文献数
5 2

漢字に選択的な失書を呈したアルツハイマー病と思われる症例を報告した。症例は51 歳右利きの男性で,漢字が思い出せずまた書けないことが主訴であった。本症例の特徴は,軽度の記憶障害および構成障害を認めるが,全般的知的機能障害が軽度であり,また失行,失認は認められず,さらに言語症状としては失語が存在せず,文字の読みにも問題がなく,仮名書字の障害が極めて軽度であるのに対して,漢字書字の障害が重度であったことである。漢字構造の結合・分解課題や漢字の正誤弁別課題の結果から,本症例における漢字失書は,漢字の視覚的イメージ (字形) の想起困難,および書字行為の間,そのイメージを保持することの障害により生じた可能性が高いと考えられた。またこの背景には,漢字の視覚的イメージの細部の想起障害と書字運動覚の障害の存在が示唆された。MRI および脳血流画像所見から,本症例の漢字失書の出現には,両側頭頂葉および左側頭葉後下部の障害が関与していると想定された。
著者
岩本 頌平 兒玉 学 原田 祥宏 加藤 弘一 門永 雅史 伏信 一慶 平井 秀一郎
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.98-104, 2022-04-10 (Released:2022-04-10)
参考文献数
10

インクジェットプリンティングにおけるインクの浸透は画質ならびに乾燥効率に関与することから,浸透挙動の把握は重要である.本研究では,コート層の構造 (コート層の有無と層数と厚さ) による液滴の浸透挙動の解明を目的として,コート層のない紙1種とコート層のある紙3種に対して,X線CT (computed tomography) による非破壊浸透域計測,SEM (scanning electron microscope) 断面観察による紙構造計測,浸透の準2次元数値解析を実施した.臭化カリウムを溶質とする水性インクを用いることで,液滴の浸透域のX線CT測定を可能とし,得られた液滴浸透域と断面SEMにより計測された紙構造を比較した.その結果,コート層の有無,コート層の層数・空隙径・厚さが浸透に影響することが明らかとなり,特にコート層が2層構造をなす場合,表側コート層にのみ液滴が浸透することが明らかとなった.また数値解析の結果,この表側コート層への浸透は,表側コート層の細孔径が裏側コート層の細孔径よりも小さいことが原因であることが示された.
著者
山村 喜之 梅本 一史 鈴木 友啓 加藤 航平 武藤 潤 中西 喜嗣 吉岡 達也 村川 力彦 大竹 節之 大野 耕一
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.933-937, 2015 (Released:2016-10-31)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

再発直腸癌に対するmFOLFOX6療法により,高アンモニア血症を経験したので報告する.症例は73歳,男性.直腸癌に対してハルトマン手術を施行した.術後補助化学療法としてUFT/UZELを6カ月間内服した.術後9カ月に腹膜播種を認めたため,バイパス手術施行後にmFOLFOX6療法を施行した.治療開始2日目に意識障害を認め,MRIを施行したが,異常所見は認めなかった.血液検査では高アンモニア血症を認めた.5-FUに起因する高アンモニア血症による意識障害と診断し分岐鎖アミノ酸投与と持続的血液透析を施行した.翌日には意識障害および血中アンモニア値は改善した.mFOLFOX6やFOLFIRI療法など高容量の5-FUを投与した際に,意識障害を認めた場合は,高アンモニア血症に留意すべきである.
著者
安間 英毅 寺島 照雄 岡 義春 坂野 真士 加藤 文彦
出版者
中部日本整形外科災害外科学会
雑誌
中部日本整形外科災害外科学会学術集会 抄録集
巻号頁・発行日
vol.105, pp.378, 2005

【目的】関節リウマチの肘関節の骨障害に伴う関節痛と可動域障害に対しては、骨破壊が進行した例では人工関節置換術が適応となる。関節リウマチによる拘縮肘に対する人工肘関節置換術の治療成績を検討したので報告する。【対象および方法】術前の肘関節可動域のArcが30゜以下の10症例10肘を対象とした。症例は男性2例、女性8例、平均年齢51歳(31_から_71歳)であった。機種はKudo Elbow 6肘、JACE型 1肘、Coonrad-Morrey型 3肘であった。Campbell法にてアプローチし、術中骨棘の切除や軟部組織の解離操作を十分に行った。これらの症例の日本整形外科学会肘機能評価法(JOA score)、X線所見、合併症を検討した。【結果】術後経過観察期間は平均37ヶ月(5_から_65ヶ月)であった。JOA scoreは術前平均38点から術後平均72点に改善した。疼痛は全例で消失し、肘関節の屈曲/伸展は術前平均81゜/_-_56゜から術後平均124゜/_-_28゜、Arcは術前平均22゜(10゜_から_30゜)から術後平均96゜(80゜_から_106゜)に改善した。全例で洗顔、摂食動作が困難であったが術後いづれも改善した。尺骨神経領域のしびれ、関節の不安定性、X線所見でのlooseningを生じた症例はなかった。【考察】関節リウマチによる拘縮肘に対し人工肘関節置換術を施行したが、十分な肘関節の可動域が獲得され、ADLの大幅な改善が得られた。
著者
加藤 俊彦 軽部 大
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.4-15, 2009-03-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
20

本稿では,大手企業を対象とする質問票から得た定量データの分析を中心として,日本企業の事業戦略の現状とその問題点を検討する.データ分析を通じて明らかにされるのは,戦略目標や市場環境などの事業戦略にかかわる項目と経営成果との関係である.その結果の考察を通じて,日本企業の事業組織には,事業戦略の基本的な組み立て方をはじめとする課題が存在している可能性が示唆される.
著者
宮崎 航 盧 渓 小田 政子 黒田 嘉紀 青木 一雄 三渕 浩 大場 隆 加藤 貴彦
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.138-148, 2016 (Released:2016-05-27)
参考文献数
24

Objectives: The incidence of infant allergic diseases have increased recently, and it may be caused by multiple influences of both genetic and environmental factors from the fetal stage through infancy. In this study, we analyzed a data subset from the South Kyushu and Okinawa (SKO) Study Area of Japan Environment and Children’s Study (JECS) to determine the relationship of allergic diseases in infants with mothers’ characteristics and/or infants’ life habits, especially sleeping. Methods: A total of 3873 mother-infant pairs from the SKO Regional Center of JECS were included. The mothers responded to questionnaires in the first trimester of their pregnancy and the self-reported questionnaire when their infants were 1 year old. Student’s t-test, chi-square test, trend test, and logistic regression analysis were carried out to analyze the associations between the infants’ allergic diseases and the mothers’ genetic characteristics and/or sleeping habits of infants. Results: Maternal allergic diseases were significantly associated with increased infant allergy risk (OR: 1.93, 95% CI: 1.63–2.27). The number of allergic diseases of mothers was also significantly associated with infant allergy, and the trend test showed an increasing risk of infant allergy (p<0.001). Regarding infants’ life habits, the infants who sleep in the prone position had a higher allergic disease risk than those who sleep in other positions (OR: 1.46, 95% CI: 1.17–1.83). These significant associations were observed regardless of the presence of allergy in mothers. Conclusions: This study suggests that the development of allergic diseases in infants may be caused by the multiple participation of both genetic and environmental factors.
著者
加藤 周
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

affine Hecke代数やKhovanov-Lauda-Rouquier代数(KLR代数)といった重要な代数系において標準加群と呼ばれる加群族が複数存在し、それらが皆古典的な準遺伝代数の枠組みで現れるのと同じ直交性と呼ばれる性質を持つことを発見し、証明した。このような直交性(+既約表現の順序)は特に既約表現の指標を決定し、表現論的により原始的な意味で指標の直交性を捉えていると考えられる。応用として(ADE型)KLR代数の大域次元有限性(柏原の問題)、対応する量子群Poincare-Birkoff-Witt基底と標準/大域基底の遷移行列の正値性(Lusztigの予想)を解決した。
著者
渡部 泰明 西村 慎太郎 綿拔 豊昭 近本 謙介 後藤 博子 入口 敦志 神作 研一 劉 嘉瑢 黄 昱 加藤 聖文 齋藤 真麻理
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.61, pp.1-16, 2022-06-20

●メッセージ創立50周年を迎えて●研究ノート【基幹研究】地方協創によるアーカイブズ保全・活用システム構築に関する研究国文学研究資料館所蔵木藤才蔵コレクションの基礎的研究について●エッセイ寺院調査と文学研究共同研究の場の豊かな学び●トピック100年へのエントランス―「法人第4期」の国文研スタート―国文学研究資料館創立50周年記念式典・講演会・展示大衆文化の今昔物語―日本古典籍セミナー北京2021―ないじぇる芸術共創ラボ アウトプットイベント4件2021年度のアーカイブズ・カレッジを顧みて総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況
著者
加藤 登紀
出版者
JSL漢字学習研究会
雑誌
JSL漢字学習研究会誌 (ISSN:18837964)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.76-81, 2017 (Released:2020-02-22)
参考文献数
4

外国人技能実習制度の下で,日本には現在約5万人の外国人技能実習生(以下,実習生)が来日し就業している。これまで中国人実習生が過半数を占めていたが,昨今はベトナム人実習生が増加傾向にあり,それに伴い就業時に必要とされる漢字の学習が課題となっている。そこで,ベトナム人実習生がどのように漢字を理解し,漢字学習に対してどのような意識をもっているのかを知るために濱川(2016)の調査票を使用し調査を行った。
著者
加藤 昌志 加藤 正史 大神 信孝 矢嶋 伊知朗
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研医工連携研究では、まず、単波長の低周波音の曝露装置(低周波音刺激装置)を作製した。次に、実験研究により、低周波音が健康障害(平衡・運動機能障害)を誘発する閾値を提案するとともに、作用機序と内耳前庭にある標的部位(耳石・耳石膜)を特定した。また、内耳前庭の培養組織を用いて、迅速に低周波音の健康リスクを評価する技術を開発した。一方、疫学研究により、低周波音の健康影響をヒト(ヤングアダルト)で評価した。最後に、耳石膜のHeat Shock protein 70分子の発現を高めることで低周波音に由来する平衡・運動機能障害を予防できる可能性を、動物レベルで提案した。