著者
金村 英秋 相原 正男 中澤 眞平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.404-408, 2002-09-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
20

前頭葉, 前頭前野の性差による解剖学的左右非対称性について, 三次元MRI画像を用いて定量的に体積測定を行った.前頭葉, 前頭前野ともに男性では左側が大きく, また加齢とともにその非対称性が大きくなるが, 女性では左右非対称性は明らかでなく, 年齢による影響を受けないことを確認した.男性では女性と比較して前頭葉の機能の側性化 (lateraliZation) が強いことが神経心理学的研究で示唆されているが, 今回の検討はこれら機能的側性化を解剖学的に裏付ける結果であった.今後, 神経心理学的検討と合わせて三次元MRIを用いた体積測定を行うことは, 性差における前頭葉, 前頭前野の機能的な相違に客観的知見を与えるものと考えられる.
著者
相原 正男
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.44-47, 2009 (Released:2010-03-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

前頭葉機能を理解する神経心理学的理論として、行動抑制(behavior inhibition)とワーキングメモリ(working memory)、そして実行機能(executive function)が提唱されている。このような前頭葉機能を簡便で短時間に試行可能な検査法としてfrontal assessment battery at bedside (FAB)、cognitive bias task(CBT)が成人を対象に報告されている。我々は、健常小児とADHD児を対象にFAB、CBTを小児用に修正し施行した。FAB総合点数は、健常児において年齢依存性に増加し、10歳以降で急激な上昇を認めた。ADHD児では有意に低かった。CBTは、健常児において15歳頃成人レベルに達した。年齢に伴い右前頭葉機能である文脈非依存性理論から左前頭葉機能である文脈依存性理論へシフトしていくものと考えられる。ADHD児は健常児の同年齢に比して文脈非依存性論理であった。長期的報酬予測における情動の影響を検討するため、強化学習課題であるMarkov decision task施行中の交感神経皮膚反応(SSR)を測定したところ、適切な行動選択を学習するためには事象に伴う情動表出が不可欠であることが確認された。
著者
奈良岡 聰智 小川原 正道 川田 敬一 土田 宏成 梶原 克彦 水野 京子
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住総研研究論文集 (ISSN:21878188)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.189-200, 2013 (Released:2017-08-10)

本研究は,各国の駐日大使館の立地,建築様式,およびその機能について解明することを目的としたものである,駐日大使館については研究の蓄積が浅いため,まずは建築史料,外交文書など,一次的史料やデータを収集することを通して,今後の大使館研究の基盤を構築することを目指した。また,それらの史料情報を得るにあたって,旧華族への聞き取り調査を行った。特に研究対象としたのは,重要な外交上のパートナーであったアメリカ,フランス,およびベルギーの3国である。本研究を通じて,大使館が両国の外交関係を「象徴」する存在として,重要な機能と特徴的な建築を有していたことが確認された。
著者
木村 真依子 川口 武彦 首村 守俊 熊倉 慧 岡田 絵里 上原 正樹 岡島 真理 山川 貴史 西村 元伸 石川 哲 今澤 俊之
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.641-646, 2017 (Released:2017-10-28)
参考文献数
29
被引用文献数
1

71歳男性. 透析歴2年. 発熱, 前胸部痛を主訴とし, 酸素化低下と胸部単純X線で左肺野の浸潤影を認め, 肺炎の診断で緊急入院となった. 細菌性肺炎を疑い, セフトリアキソンの投与を開始したが, 第4病日, 炎症反応の上昇, 浸潤影の拡大を認めた. 非定型肺炎の合併を疑い, シプロフロキサシン (CPFX) を追加した. 第5病日, 無尿のため血清を代用した尿中レジオネラ抗原検出試薬による検査 (抗原検査) を行ったところ, 陽性であった. 導尿にて少量の尿が採取され, 尿中抗原陽性も確認した. レジオネラ肺炎と診断し, CPFXからレボフロキサシンへの変更にて軽快, 治癒し, 血清の抗原検査で陰性化を認めた. 透析患者は, レジオネラ肺炎の診断に用いられる尿の採取が困難であることが多い. 無尿の透析患者においては, レジオネラ肺炎の診断に, 血清を代用した抗原検査が有用である可能性が示された.
著者
小笠原 正豊 野城 智也
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.82, no.734, pp.1009-1019, 2017 (Released:2017-04-30)
参考文献数
21
被引用文献数
3

This paper investigates so-called “Design Assistance (sekkei kyoryoku)” by Japanese subcontractors. The tasks and responsibilities of subcontractors in Design Assistance, the information generated through Design Assistance, and the difference between Design Assistance in Japan and Consultation in US are focused. Our previous paper pointed out that Japanese design organizations tend to utilize Design Assistance by the subcontractors, whereas US design organizations are more likely to distribute design tasks among specialized consultants. In this paper, the elevator industry is focused as the typical industry indicating the clear difference of the task distribution between Japanese Design Assistance and the US Consultation. In Japan, elevator companies are regarded as subcontractors as they provide design, manufacturing, installation, and maintenance services. They offer the product design information and analysis for free. It is called Design Assistance, as they hope to be specified and installed in future construction. In the US, by contrast, Vertical Transportation Consultants provide design service to the architects especially for customized elevators. In Japanese cases, five major elevator companies are selected. Thirteen people are interviewed. In the US cases, twenty-five Vertical Transportation Consultants were approached, and five of them responded to the inquiry (Table4). First, the tasks and responsibilities of subcontractors in Design Assistance are clarified. We confirmed the subcontractors provide the design information based on the Design Assistance free of charge. The subcontractors do not have a primal responsibility of their design information, especially to the owner of the project. It results in a confusion of responsibilities between the architect and the subcontractor. Second, two types of the information gathering process through the Design Assistance is confirmed. One is the information generated by the subcontractor and provided to the architect, such as drawings, specifications, analysis, cost estimation, and presentation images (Table1). The other is the information provided from the architect to the subcontractor. The Design Assistance is one of the best opportunities for subcontractors to acquire “needs” of the owners, which is typically not obtained by the sales department of subcontractors. It is utilized for the development of new products. Third, the difference between Design Assistance in Japan and Consultation in US are focused. In this paper, the basic services of the consultants were investigated, through the website of the consultants on the list of International Association of Elevator Consultants (IAEC). In US, an assessment and inspection oriented service, such as Maintenance Review, Assessment, Litigation and Inspection, and project management service for elevator installation are available (Table3). There are far more significant opportunities in modernization than new construction. The elevator manufacturers and the vertical transportation consultants are separate entities, which make smooth information exchange difficult compared to the Japanese environment (Fig. 4).
著者
原 正一郎 内藤 求
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.7, pp.1-8, 2014-01-18

日本を代表するポップカルチャーであるマンガの特徴は、週刊誌から単行本・Web・携帯電話さらにドラマ・映画・小説など多様なメディアへの波及、海外における多言語展開、さらに同人誌やコスプレのようなサブカルチャーへの影響などにある。マンガを情報資源として捉える場合、このような多様性を考慮する必要がある。本稿では、マンガの多様性を記述するメタデータの定義と、メタデータを公開・操作するTOPIC MAPS ツールの試行について述べる。MANGA is a leading Japanese contemporary culture, which is characterized its various derivative works (e.g., from periodical magazines to books, movies, dramas, novels), media diversities (e.g., papers, Web, mobile phones), multi-languages (e.g., Japanese, English, Thai, Chinese) and subcultures (e.g., cosplay, fanzine). Metadata for MANGA must be necessary to organize its complex cultural structure and to give access-methods to readers under the web environment. This paper will describe challenges of defining MANGA metadata and Topic Maps applications for publishing and manipulating metadata.
著者
原 正一郎
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.73(2002-CH-055), pp.51-56, 2002-07-26

本稿では、古文書OCRの前処理として必須である、つづき文字を切り出す手法について提案する。提案する方法では、まず簡単なフィルタ処理(色に基づき文字の候補となるピクセルを抽出するカラーフィルタ、ゴマ塩雑音などの除去フィルタ、カラー画像を白黒階調さらに2値化するフィルタ)により、雑音の少ない良好な2値画像を作成する。次に周辺分布からページごとの平均文字サイズ、縦書き・横書きに関するレイアウト情報を抽出する。文字はこれらの情報に基づいてピクセルから組み立てる。つまり隣接するピクセルを集めて文字のセグメントを生成し、次いで近傍のセグメントを集めて文字あるいはつづき文字を生成する。つづき文字の切り出しは文字輪郭上の相対する凹部分を結ぶ線に沿って行う。本法の特徴は、適切な凹部分を画像の多重解像度解析に基づいて発見するところにある。
著者
小川 一太郎 横山 想一郎 山下 倫央 川村 秀憲 酒徳 哲 柳原 正 田中 英明
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.31, 2017

本稿では複数のRCカーによる自律走行の獲得を目的としたDeepQ-Networkによる協調学習手法を提案する。RCカーが他車にぶつからないこと及びコースアウトをしないことに加え、交差点で指定された方角へ曲がることが可能となる。天井に取り付けられたカメラの映像から得られる車両の位置と向きからLIDAR情報に変換し、走行の開始から終了までの走行を1エピソードとしたデータをもとに学習を行う。
著者
松原 正樹 岡本 紘幸 佐野 智久 鈴木宏哉 延澤 志保 斎藤 博昭
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.2937-2948, 2009-12-15

オーケストラなど大編成用に作曲された楽曲のスコア(総譜)は,パート数の多さから判読性に欠け,異なるパート間の関連性を把握するには音楽構造を理解する必要があり,楽譜(パート譜)を読むことができてもスコアを読むことができない演奏者が多いという問題点がある.そこで本稿では,異なるパートの似た役割を持つフレーズをクラスタリングし,各クラスタに異なる色を割り当てて楽譜上に着色する手法と,音楽を再生しながら色付け楽譜を見ることで異なるパート間の関連性を把握しやすくするインタフェースを提案する.提案手法では,合奏において重視すべき,リズム,響き,メロディ,和声を考慮した4つの特徴量を用いてパート間の距離を定義し,k-meansアルゴリズムを利用してクラスタリングを行うことで色付け楽譜の生成を実現している.また提案するインタフェースにおいて,ユーザは操作の繰返しにより,スコアリーディングを熟達させることができ,楽曲の構造について考えて聴くようになった.実験結果より異なるパート間の関連性を把握する色付け楽譜の生成が可能であることを示し,スコアリーディング支援を実現できることを示した.
著者
中島 徳嘉 佐貫 平二 岡本 正雄 藤原 正巳
出版者
社団法人 プラズマ・核融合学会
雑誌
核融合研究 (ISSN:04512375)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.631-662, 1991-12-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
38
被引用文献数
3 2

Single particle confinement or particle orbit and collisional diffusion are reviewed for general toroidal systems. The single particle confinement or particle orbit is described using the guiding center approximation. Effects of the radial electric field are also considered. Neoclassical features are explained intuitively by using the characteristics of the single particle orbits and effective Coulomb collision frequencies. As an advanced treatment, the neoclassical theory is systematically given on the basis of the moment approach.
著者
武藤 桃太郎 武藤 瑞恵 石川 千里 井上 充貴 升田 晃生 高橋 裕之 萩原 正弘 青木 貴徳 橋本 道紀 稲葉 聡 矢吹 英彦
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.49-56, 2014

症例1は85歳, 女性。近医にてCEA9.2ng/mlと高値を指摘され当科紹介となった。CT検査, 超音波検査で虫垂部に嚢胞状腫瘤を認めた。注腸造影検査では盲腸下端に半球状の表面平滑な隆起性病変を認め, 虫垂は造影されなかった。虫垂粘液嚢腫の診断で盲腸部分切除術を施行し, 術後CEAは4.7ng/mlと正常化した。 症例2は74歳, 女性。高血圧, 高脂血症で当科通院中にCEA12.3ng/mlと高値を示し, CT検査, 超音波検査で虫垂部に嚢胞状腫瘤を認めた。注腸造影検査では盲腸に粘膜下腫瘍様隆起を認め, 虫垂は造影されなかった。虫垂粘液嚢腫の診断で盲腸部分切除術を施行し, 術後CEAは1.5ng/mlと正常化した。 いずれも病理検査で虫垂粘液嚢胞腺腫と診断され, 免疫染色ではCEA陽性であった。
著者
柘植 秀樹 谷川 貴信 榊原 正登
出版者
海水誌
雑誌
日本海水学会誌 (ISSN:03694550)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.58-63, 1996

水酸化マグネシウム懸濁水溶液中に炭酸ガスを吹き込み, 半回分反応晶析を行ったところ, 反応温度60℃以上では塩基性炭酸マグネシウムが, また反応温度が55℃以下では炭酸マグネシウム3水和物が生成され, 中間の55~60℃では両者が混在した.<BR>反応の進行とともに槽内のpHは低下するが, pH8.5付近から反応が始まり, 7.8付近で反応が終了し, 炭酸マグネシウム粒子が得られる. 晶析の進行過程は, 塩基性炭酸マグネシウムでは原料の水酸化マグネシウムの表面より反応が徐々に進み花弁状粒子を生成するのに対して, 炭酸マグネシウム3水和物では針状粒子を生成し, ついには6角柱状の凝集体を得た.