著者
杉浦 令人 和田 弘 櫻井 宏明 鬼頭 良介 合川 善浩 齋藤 有紀 角田 利彦 本谷 郁雄 朴 英浩 田村 亮介 緒方 真己 川原 有貴子 金田 嘉清
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E3P1196, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】平成18年4月に介護保険法が改正された.中でも転倒予防への取り組みは重視されており全国2/3の自治体が地域高齢者を対象に転倒予防教室を実施している.しかし、それらの活動の効果は立証されておらず、さらに要介護高齢者の転倒予防効果はほとんど報告されていない.そこで、本研究の目的は要介護高齢者が行える『安全・楽しく・長く』を念頭に構成した集団リズム運動が心身機能にどのような効果をもたらすのかを検証することである.【対象】M県の通所サービスを利用している要支援1~要介護2の19名(平均年齢/79.9±7.0歳、男:女/7:12)を対象とした.次の項目の該当者は対象外とした.(1)独歩不可能(2)運動の説明が理解困難な認知症を有す(3)急速に進行中の進行性疾患、急性疾患や不安定な慢性疾患、6ヶ月以内の心筋梗塞や下肢骨折(4)ADLで介助を有す方である.対象者を無作為に2群に割付け、個別運動と集団リズム運動を行う群を介入群、個別運動のみを行う群を対照群とした.【方法】介入前と6週後に身長、体重、BMI、握力、膝伸展筋力、坐位体前屈、開眼片脚立位、Functional Reach Test(以下FRT)、Timed Up & Go Test、歩行能力、Profile of Mood States(以下POMS)、Falls Efficacy Scale(以下FES)の測定を行った.個別運動は中川らが考案した運動を採用した.体力測定の結果を基に5~6種類の運動を選択し個別プログラムを作成した.回数は運動毎に8~10回×2~3セット、頻度は週5回、期間は6週間とした.集団リズム運動は第1~3ステージより構成され、全て音楽に合わせて行った.第1ステージでは足踏み、支持面固定での重心移動、スクワット等を行った.第2ステージでは歌詞に合わせ運動を行った.第3ステージでは『1・2・3』と足踏みをし『3』の時、一歩足を出し、それを前後左右へと繰り返した.両運動の強度はBorgScale12~13とし微調整は重錘ベルトにて行った.各群の効果判定として介入前後における体力測定の結果を比較した.介入前後の両群間の比較、さらには体力測定の各項目において変化量を介入前の値で除した値を両群ともに算出しその割合を比較した.尚、本研究は当法人倫理審査委員会の承認を得た.【結果】各群の介入前後を比較したところ介入群では坐位体前屈、FRT、最大歩行速度にて有意な向上が認められた(p<0.05).FESでは有意差は認められなかったが向上傾向を示した.対照群では膝伸展筋力、POMS(T-A)にて有意な向上・改善が認められた(p<0.01).両群間の比較では介入前後ともにFRTにて有意差が認められた(p<0.01).両群間の変化量の比較では有意差は認められなかった.【考察】6週間の短期介入にて介入群では柔軟性、バランス、歩行能力の向上が認められ、また転倒恐怖心が減少傾向を示した.よって、今回提案した集団リズム運動は転倒予防への可能性が示唆された.対照群では下肢筋力の向上が認められ個別プログラムの有用性を再認識した.
著者
瀬古 秀生 阿部 新一 波津久 文芳 和田 学
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.14, pp.9-12, 1959-12-08

米作日本一表彰会の昭和33隼度競作において,九州ブロックの全州審査で反当収量5石以上のもものが2点あつたが,このようなことは同会始って以来(昭和2毎年)初めてのことである。両者とも山間部から出品されたものである。平坦部農家でも5石を夢みて努力を重ねて来た人が多数あったと考えられるが,何れも収穫顛かなり前から稲を倒したようである。.この年の秋の如く,台風も強雨もないのに倒伏の甚だしかった年次は珍らしい。この現象は全国的であったようである。従ってこれは農家の施肥,管理の失敗のみではなく,共通的な遠因があるものと考えられる。昭和32年度はこれに反して倒伏した水稲はほとんで見られなかった珍らしい年である。33,32,31年度の稲作と倒伏に関して簡単な考察を加えて今後の参考としたい。
著者
長谷川 二郎 和田 清美
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.37-43, 1992-08-05
被引用文献数
2

On the basis of observation in 12 Japanese species of the Anthocerotae as well as of a comprehensive survey of literature, the genera of the Anthoceroate are found to have in a sporophytic cell ; (1) one chloroplast(Dendroceros, Folioceros, Notothylas and Phaeoceros), (2) two (Anthoceros) or (3) two or more (up to 12) chloroplasts (Megaceros).This fact requires correction of the generally accepted view that the Anthocerotae contain a single chloroplast in each cell of gametophytes and two chloroplasts in each cell of sporophytes. We further discuss the taxonomic significance of this character together with a distinctness of the genus Anthoceros in the Anthocerotae.
著者
田中 正俊 和田 直久 関谷 隆夫 大野 真也
出版者
横浜国立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本年度の研究計画に従って、原子層単位で酸化したSi(001)表面や表面修飾により仕事関数を変化させたSi(001)表面上にGFP、ルシフェラーゼ極薄膜を作成して蛍光、生物発光の測定を試みたが,共に変化は確認されなかった.しかし,下記のような系においては,分子の荷電状態により発光色が変化する現象を見出すことができた.1.caged ATPを用いてルシフェリン-ルシフェラーゼ反応による生物発光を起こさせると,caged ATPから放出された2-ニトロアセトフェノンによりルシフェラーゼの活性部位の荷電状態が異なり,通常の黄緑色ではなく赤色の発光を放出する.2.GFPに静水超高圧を印加すると分子の圧縮効果により蛍光ピーク波長が短波長側へシフトするが,IGPa付近では発色団から周囲のアミノ酸残基へ電荷が移動することにより,このシフトが相殺される.3.より単純なa-sexithiophene分子を様々に表面修飾したSi(001)表面上に供給すると,仕事関数の変化に呼応して分子から表面への電荷移動量が,そしてその結果としてπ→π*遷移のエネルギーが変化する.以上の結果は,もっと多量な分子を表面修飾したSi(001)表面上に供給できれば発光色の変化を観測できることを示しており,本研究の目的であった「荷電状態をチューニングすることにより光スペクトルを制御し、新規なバイオ光デバイスを開発できる」可能性を初めて明らかにしたものである.
著者
和田 正広 米津 三郎 曹 瑞林 金 鳳徳 李 世成 鄒 煥壬 山下 睦男 市川 信愛 ZUO Han Ran LI Shi Chang CAO Rui Lin JIN Rang De 王 勇 夏 春玉 李 成起 清水 憲一 喜田 昭治郎 和田 正広
出版者
九州国際大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

本研究の目的は、近・現代及び近代以前の海域経済文化圏の交流史を解明すること、並びに北九州市と大連市の今後の発展への基礎的資料と展望を得ようとするものである。日・中両国の大学研究者は、平等・互恵の原則に立ち、ミクロ・マクロな分析方法によって、国際的・学際的(経済学・社会学・歴史学)に共同研究を行なった。両大学の研究協議会は、1991年度は3回(北九州2回、大連1回)、1992年度は3回(北九州1回、大連1回、北京1回)、1993年度は1回(北九州市)、それぞれ行なわれた。又、資料輯集は、初年度と中間年に日中双方で行なわれた。それに関連する成果としては、『日本未現存大連側輯集経済文化断片資料集』及び『東北地方文献聯合目録』(近・現代)の複刻、『門司新報(1883-1945)』の複刻〈継続中〉、『泰益号関門書簡の内容摘録ノート』の作成、蘇崇民『満鉄史』の翻訳(出版中、葦書房)、があげられる。両大学の研究会は、日本側は訪中の際、大連・北京において開催すると同時に、大連側の訪日の際や、国際シンポジウム実行委員会(1993年度、計12回)のなかで、研究スタッフ以外の講師も加えて行なわれた。研究会の一環として開催した国際シンポジウムは、11月25日(木)の専門家会議(北九州国際交流村)と、翌26日(金)の公開国際シンポジウム(北九州国際会議場:学・官・業界より計800余名参加)として行なわれた。前者の報告レジュメは、『東アジア海域と華商ネットワーク』(九州国際大学・国際商学部)として、後者の報告書は、現在編集中である。本年度の個別研究成果は、日本側では大学・研究所の紀要等に発表された。鄒煥壬の報告「歴史上の東アジア海域経済文化圏における中国の日本・朝鮮との経済貿易関係」は、漢・魏から明・清に至る中国朝貢体制下の日本・朝鮮との経済・貿易関係を概観したものである。李世成の報告「東アジア文化圏『四元構造』の形成と展開」は、中国唐時代を中心にみた東アジア文化圏を、儒家・漢字・仏教・芸術の各文化圏の四元構造として把え直したものである。和田正広の報告「福建税監高〓の海外私貿易」は、大航海時代のオランダによる台湾占領直前期における明末の中国沿海密貿易について検証したものである。市川信愛(戴一峰論文の校閲)の報告「近代中日海上貿易史研究および旧税関保存書類の利用について」は、中日海上貿易史研究に価値をもつ旧厦門税関に保存された税関文書の内容と利用方法についての紹介である。曹瑞林の報告「大連を東北アジア地域の商業・貿易・金融・観光・情報等の中心としてその背景、予測及び若干の留意点について」は、東北アジア地域の商業・貿易・金融・観光・情報等のセンター化が進む大連経済の現状と将来予測を概観したものである。山下睦男の報告「中国型求償取引による物資協力について」は、物資と物資の物々交換や、物資と資金・技術・人材などの生産要素間の協力を意味するところの、条件付き取引きであると同時に、見返りの取引きでもある特殊な中国的取引きである「物資協力」の歴史や現状を分析したものである。金鳳徳の報告「東アジアの新時代」は、冷戦体制崩壊後の東北アジア地域(中国・香港・台湾・蒙古・日本・韓国・北朝鮮・ロシア)における経済圏の現状について、それを新「雁行型」の形成過程として把えたものである。市川信愛の報告である「近代中国海域交易圏の変容構造と在日華商」は、当該テーマについての共同研究による個別成果の概括と、残された課題に言及したものである。
著者
和田 守 小倉 い ずみ 加藤 普章 千葉 眞 大西 直樹 佐々木 弘通 五味 俊樹
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

5年間にわたる共同研究の取りまとめとして『日米における政教分離と「良心の自由」』を公刊した(ミネルヴァ書房、全328頁、2014年3月)。第I部「宗教と政治のあいだ」、第II部「政教分離の展開」、第III部「宗教と政治の現在」の三部構成で、10本の論考を収録している。同書では、政教分離と信教の自由という観点から、日本とアメリカにおける宗教と政治をめぐる諸問題の錯綜した広がりと深みについて、多面的かつ歴史的・構造的に論究しており、現代民主主義の活性化に関する提言としての意義を有している。個々人の尊厳と人格および多様な価値の共生を目指す市民的公共性と國際連帯の方向性を示しえたと思われる。
著者
和田 正平 吉田 憲司 小川 了 端 信行 A.B. イタンダーラ 阿久津 昌三 栗田 和明 江口 一久 小馬 徹 S B Pius A B Itandala
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

平成6年度は以下のような実績をあげることができた。1.カメルーン北西部州では、端が州都バメンダから離れたいくつかの村で調査を行ない、都市化、貨幣経済化の浸透のなかでの性による役割分担の変化を示した。男性のグループは、稲作農民組合を形成して水田耕作を拡大している。一方、伝統的な自給的農業の担い手であった女性もグループで土地を購入し、換金性の高い作物を栽培して貨幣経済に積極的にかかわっていく動きを見せている。男女それぞれが新しい社会経済的なニッチェを生み出している傾向が明らかになった。またカメルーン国北部で、フルベ族の女性の調査を行なった、フルベ社会ではイスラム教の影響で女性の社会的な立場は低いのとされ、仕事も禁じられている。しかし、実際には自活している女性も少なくなく、昔話の中にも女性の力を讚えているものもある。女性の生活を多面的に示し、実際の両性の関係を精密に記述する試みをした。2.セネガル国ダガ-ルで、小川は都市に住む人々の経済活動を調査した。インフォーマル・セクターでの女性の活躍が昨年度から指摘されていたが、全体像の記載の必要から男性も含めたインフォーマル経済従事者たちの活動状況を広く調査した。これらの経済活動と都市民の互助組織がセネガル国全体の経済、発展と密接な関連があることを示した。3.ザンビア国でチェワ社会とンゴニ社会での儀礼における性差に注目して、吉田が調査を行った。その結果、父系社会であるンゴニ社会から母系社会であるチェワ社会へ精霊信仰が導入され、その時点で信仰の主たる担い手が男性から女性へと変化したことがわかった。また、その信仰がチェワ社会の伝統的な儀礼組織の欠如を埋め、それを補完する形で浸透してきていることを示した。4.コートジボワール国ダブ郡で、茨木はアジュクル社会の女性の活動に注目した。最近の都市部での人口急増によってキャッサバを加工した食品、アチュケの需要が高まっている。アジュクルの女性はこの食品を加工生産する作業にふかく関わるようになり、その結果、農作業や日常の生活上の性別の分業に変化がみられるようになった。平成4年度から6年度にかけての本研究によって以下のような成果をあげることができた。1.本研究全体の主題は、女性、伝統と変化、に関わるものであったが、これは研究対象となったそれぞれの民族社会の理解をすすめる上で大きな意味をもつ問題であり、それぞれ有効な記述の観点を引き出すことができた。したがって、女性と変化を主題に研究する視点は、多くの社会にあてはまる普遍性をもち、これからの文化人類学研究の分野として重要であることが示唆される。2.特に変化を踏まえての記述は、多くの場面で有効であった。フェミニズム人類学やマルキズム文化論の影響下の人類学では十分に示すことができなかった、「現在起っている社会の変化に柔軟に対応して変化していく両性の役割」という研究視点を提供することができた。3.本研究にって提供された、女性の文化人類学に向けての研究視点として、具体的には以下のようなものを挙げることができる。それは、都市の中での女性の経済活動、都市と農村との関係で農村女性が果たす役割、農村女性の生活改善運動、他民族やキリスト教との接触による女性の役割の変化、両性の役割のノルムと実際、などである。とくに現在では国際的な経済活動、開発と援助の影響の下で大きな変化と対応を示している女性の諸活動に注目する研究視点が重要であると示唆された。
著者
山崎 健一朗 和田 浩卓 桜田 伊知郎 門之園 一明 佐伯 宏三
出版者
横浜市立大学
雑誌
横濱醫學 (ISSN:03727726)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.197-200, 2005-05-31

背景:脈絡膜破裂を伴った外傷性黄斑円孔に対し硝子体手術を行った一例を経験したので報告する.症例と所見:26歳女性,うちあげ花火が直接右眼にあたり鈍的外傷となった.初診時の矯正視力は0.01であり,白内障,前房出血,黄斑円孔,脈絡膜破裂に伴う黄斑下出血と網膜浮腫がみられた.3週間後黄斑円孔は拡大した.6週後の蛍光眼底造影にて黄斑部に及ぶ網膜循環障害を認めた.受傷6週間後にインドシアニングリーンを用いた内境界膜剥離術を行った.黄斑下手術は行わなかった.結果:術後黄斑円孔は閉鎖し,視力は0.5に改善した.重篤な術後合併症は見られなかった.結論:脈絡膜破裂のある外傷性黄斑円孔に対しても硝子体手術は有効であると考えられた.
著者
島内 円夏 上和田 秀美 福田 健 津田 勝男 坂巻 祥孝 櫛下町 鉦敏
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋研究 (ISSN:09160752)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.13-21, 2010

The relationship between the number of male Spodoptera litura caught by a pheromone trap and the hourly mean wind velocity was studied for four months in the field using an automatic counting system. The maximum number of males trapped per hour was observed at wind velocities of 1-4 m/sec. Slightly fewer male moths were trapped when the wind blews strong, although more than 60 males/trap/h were still caught during the daily peak hours (0200-0400h) during very strong wind blews, when a typhoon was approaching. In order to monitor the field occurrence of the adult moth using pheromone traps, the mating activity of the moth and the numbers of males may be more important factors than wind velocity. Key words: automatic counting system, sex pheromone trap, Spodoptera litura, typhoon,
著者
鎌田 直人 江崎 功二郎 矢田 豊 和田 敬四郎
出版者
金沢大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

個体群生態学的な研究により、カシノナガキクイムシはイニシアルアタックの際に、衰弱木や感受性の個体を選択的に攻撃するのではなく、無差別に攻撃していた。穿孔数やカシナガの繁殖成功度は、樹木の生死ではなく過去の穿孔の有無によって強く影響されていた。過去にカシナガの穿入を受けていない7本のミズナラを測定対象とし、樹幹北側の地際部と地上高150cmの位置で、各2点ずつの温度測定を行った。その結果、1)150cm部位と地際部の温度差(以下、温度差)は、特に6〜8月の高温時(日最高気温約25℃以上)に大きくなった。2)秋までに被害を受け葉が褐変または萎凋した個体(以下、被害個体)は、1個体を除き、カシナガ穿入前(6月上・中旬)に高温時の温度差が大きかった。3)上記例外の1個体は150cm部位と地際部の温度の平均値(以下、平均温度)については他の個体よりも高めで、最も早くカシナガの穿入を受け、枯死した。樹幹2ヶ所の温度差と平均温度によって、樹体の健全性を評価し、カシノナガキクイムシの穿孔に伴う枯死や萎凋を予測できる可能性がある。
著者
和田 崇
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.69-87, 2010-06-30
被引用文献数
1

本研究は,ウェブログ・ポータルの例として広島ブログをとりあげ,利用者間の地理的近接性に着目して,そこで形成される社会的ネットワークの構造を明らかにするとともに,そのネットワークが地域の経済活動や市民活動に及ぼす影響について検討した.その結果,広島ブログに投稿されるコメントは,リアルスペースにおける作者と読者の居住地とは無関係に,お互いのつながりを確認することを目的としたり,興味や関心にもとづいて投稿されるものと,作者と読者の居住地間の地理的近接性に応じて投稿されるものがあることがわかった.また,コメントや友達リストを通じて,利用者が集中する広島市をハブとする地域間ネットワークとともに,キーパーソンが居住する市町での地域内ネットワーク,居住地に関わりなく情報を交換する情報縁ネットワークが形成される.パーソナル・レベルでは,広島県内で相互作用を活発に展開し,ローカルなネットワークを形成する作者と,広島県外に居住する読者や居住地を非公開としている読者との情報交換を主眼とし,ノンローカルなネットワークを形成する作者がみられた.このうち,ローカルなネットワークを形成する作者の一部は,経済活動や市民活動の実効化に向け,広島ブログを情報の発信および収集,社会関係資本形成の場として活用している.
著者
和田 七夕子
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1) イネのエピジェネティック遺伝ジャポニカ種イネを5-アザデオキシシチジン処理することにより、人工的な脱メチル化を起こし、10年以上に亘り継代栽培した。このうち表現型の固定が著しいLine-2について、MSAPスクリーニングにより低メチル化領域を単離し、その遺伝について解析をおこなった。得られた遺伝子座のひとつ、Xa21に似たXa21Gは、野生型ではXa21G転写産物は見られず、Line-2でのみ蓄積が見られた。Xa21はXanthomonas orvzaeに対する抵抗性遺伝子である。シザーディップ法による検定の結果、野生型ではXanthomonas oryzaeに対し罹病性であったが、Line-2は抵抗性を示した。Xa21Gの低メチル化と抵抗性はLine-2の各世代において見られた。この結果より、Xa21Gにおいて、メチル化パターンが遺伝すること、それと遺伝子発現との相関が示された。以上の結果をAnnals of botanyに報告した。2) DNAメチル化酵素NtMET1の解析タバコのDNAメチル化酵素であるNtMET1についで解析を行った。過剰発現株を用いた解析より、細胞分裂の異常による形態形成の変化がみられた。細胞分裂の各期におけるNtMET1タンパク質の局在観察の結果、メチル化DNA結合タンパク質MBD5と、細胞内局在の変化において同様の挙動を示した。また、Pull-down法による解析より、NtMET1は、Ranタンパク質を介してMBD5と複合体を形成する可能性が示唆された。以上の結果をAnnals of botanyに報告した。
著者
斎藤 貴之 台坂 博 出田 誠 岡本 崇 小久保 英一郎 和田 桂一 富阪 幸治 牧野 淳一郎 吉田 直紀
出版者
日本流体力学会
雑誌
日本流体力学会年会講演論文集 (ISSN:13428004)
巻号頁・発行日
vol.2006, 2006-09-05

In this paper, we introduce Project "Origin of the Milkyway". This project aims at reliable modeling of the formation history of our Galaxy (i.e., the Milkyway), as a typical spiral galaxy, with the mass resolution 2-3 orders of magnitude higher than what has been achieved so far. In order to achieve such state-of-the-art simulations, we construct two beowulf type PC-clusters with GRAPE-6A/7, and we develop a new N-body/SPH code for parallel computing.
著者
和田 桂一 小久保 英一郎 富阪幸治 台坂 博 斎藤 貴之 牧野淳一郎 吉田 直紀
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1225-1228, 2004-12-15

大規模理論天文シミュレーションによる「天の川創成プロジェクト」とその背景にある銀河形成の問題について紹介します。プロジェクトでは、詳細な理論モデル、計算手法と高速の専用並列計算機を組み合わせ、宇宙初期から現在まで、銀河の形成・進化過程を高精度でシミュレーションすることにより、(1) 我々の銀河系=天の川の3次元構造とその形成過程、および(2)銀河の形態の起源、を初めて明らかにすることを目指しています。第I 期計画では、次世代専用超並列計算機GRAPE-DRと高速ホスト計算機、高速ネットワークを組み合わせた計算能力1ペタフロップスの「天の川数値解析装置」を国立天文台内に構築し、現状の最大規模のシミュレーションの100倍規模のシミュレーションを行います。 これにより銀河形成問題にブレークスルーをもたらすことができるはずです。
著者
和田 圭司
出版者
国立精神・神経センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

ボンベシンは多彩な生理作用を持つ生理活性ペプチドであり、その作用を介達する受容体については哺乳類でGRP受容体、NMB受容体、BRS-3の3種が知られている。ボンベシンシステムは内外分泌、代謝の調節や行動の制御などに関係することが示唆されているが各受容体の脳機能における生理的役割をより詳細に個体レベルで検討するためGRPおよびNMB受容体並びにBRS-3欠損マウスの作製を行った。これら遺伝子欠損マウスを用い研究期間中に行動科学的研究を推進し、GRP受容体欠損マウスが非攻撃性の社会相互作用の亢進及び活動期(夜間)の運動量の増加を示すこと、さらに、社会的探索行動の亢進を認め、それが嗅覚情報処理の障害から来る可能性の高いことを見いだした。また、BRS-3欠損マウスでは中枢性の肥満、高血圧、糖代謝障害を呈するとともに、野生型に比して甘味をより嗜好し苦味をより嫌悪する傾向にあって味覚学習も障害されていることを見い出した。さらに、社会的刺激の剥奪がBRS-3欠損マウスの体重増をより促進すること、同じく野生型で認められる社会的刺激の剥奪による自発運動量の亢進がBRS-3欠損マウスでは認められないことを見出した。これらの結果はBRS-3欠損マウスでは情動反応性、社会的反応性が障害されていることを示唆する。行動科学的解析を中心にした本研究は、ボンベシンシステムの脳機能における役割が情動の多面的調節であることが示すものである。なお、未知であるBRS-3の内在性リガンドの分子生物学的同定を試みたが候補となる分子の同定にはいたらなかった。