著者
和田 精二 大谷 毅
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.53-60, 2005-03-31
参考文献数
17

関連報告(研究1, 研究2)において, 松下電器と三菱電機のデザイン部門が成立するまでの経緯をMOD(Management of Design)[注1]の視点から調査した。本研究においては, 東芝のデザイン部門が成立するまでの経緯を扇風機のデザインを事例として調査した。その結果, 東芝のデザイン部門は, 松下電器や三菱電機と違った経緯で組織が成立したことが理解できた。東芝は, 家電製品に関し日本で最も長い歴史を持っている。その伝統が歴代の経営幹部によって引き継がれるとともに, 当該業界では日本初とも言える社外の公的機関である産業工芸試験所との強い連携, 同所からのデザイン指導, 外国人の嘱託採用などが同社デザイン部門の設立に寄与したことが理解できた。
著者
小林 俊光 川瀬 哲明 吉田 尚弘 大島 猛史 和田 仁 鈴木 陽一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

耳管開放症の疫学研究を行った。とくに慢性腎不全に伴う腎透析患者における耳管開放症の発症の実態を調査した。その結果、腎透析を行った147人中13人(8.8%)が透析後に耳管開放症を発症したことが透析病院での検診結果で判明した(Kawase T, et al.:参考文献)。腎透析と耳管開放症の関係を示した世界で初めての報告である。耳管開放症の画像診断を検討した。その結果、座位で行うCTが有用で臨床応用可能であることを示した。また、バルサルバ法の負荷によって、診断精度が向上することを示し、臨床的な重症度ともよく相関することを示した(Kikuchi T, et al.:参考文献)。耳管開放症・耳管閉鎖障害に影響する因子としての聴力の影響を検討した。その結果、耳管開放症の症状は難聴があると、軽減つることが判明した。例えば、鼓膜穿孔、耳硬化症、真珠腫などのために伝音難聴があると、経耳管的に中耳に伝達され知覚される自声が低く知覚されるために、耳管開放症の症状が軽減する。しかし、一度、手術などの治療によって、聴力が改善すると、知覚される自声が大きくなり、不快な症状が自覚されることとなる。このような病態を潜在性(隠蔽性)耳管開放症と新しく提唱した。中耳真珠腫においても、以上のメカニズムが働いているかどうかを、真珠腫新鮮例171例において検証した。真珠腫の中には約30%の鼻すすり型耳管開放症が含まれているが、鼻すすり(+)群と鼻すすり(-)群の聴力の比較を行ったところ、鼻すすり(+)群が有意に聴力は良好であった。また、術後に鼻すすりを継続した群は鼻すすりを停止した群よりも有意に聴力が良好であった。つまり、鼻すすり癖の停止、継続には、聴力が影響すること、そしてそれは自声強聴を知覚する度合いの違いによるものと解釈された(Hasegawa J, et al.:参考文献)。
著者
松原 英雄 中川 貴雄 和田 武彦 有本 信雄 児玉 忠恭 川良 公明
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、最先端のスペース及び地上望遠鏡を用いて、可視光から電波領域にわたる多波長サーベイ観測を連携させることにより、「超極赤銀河」(遠方の大きな赤方偏移を受けたスペクトルを持つ銀河で、宇宙の星形成史を解明する上で重要な天体)を多数発見し、さらにその正体を探ることにある。これにより宇宙誕生から現在にいたる宇宙の星形成の歴史の解明に挑む。そこで本研究では、天空の1-5平方度の領域について可視光域〜電波領域にわたる多波長サーベイを連携的に行った。波長2-160ミクロンでのサーベイは、平成18年2月に打ち上げられた赤外天文衛星「あかり」で行った。この特徴は「広く・かつ深く、地上からできない波長をカバー」であり、これによりこれまでに知られている超極赤銀河の数に比べて桁違いに大きいサンプルを得ることができた。「あかり」は、Spitzer宇宙望遠鏡に比べて多数の連続したフィルターバンドを持つおかげで、「あかり」でしか検出不可能な、「PAH高輝度銀河」、「シリケイトブレーク銀河」といった新天体の発見や、700個にも及ぶ「極赤中間赤外線天体」(ERMOs)を検出した。PAH高輝度銀河は中間赤外線で選択した銀河サンプルの約1%に過ぎないけれども、星形成の年齢の極めて若い大変重要な段階にある銀河と考えられる。一方ERMOsは中間赤外線で選択した銀河サンプルの約10-15%存在し、そのかなりの割合が、星形成銀河というよりもむしろ塵に埋もれた活動的銀河核をエネルギー源とするような天体であることがわかってきた。今後このような天体の正体をさらに詳しく調べていくことで、銀河進化の描像に新たな知見を加えることができるであろう。
著者
上田 博 梶川 正弘 早坂 忠裕 遊馬 芳雄 菊地 勝弘 和田 誠 ソラス M.K.
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

北極域の気候変動や水循環を解明する上で、ポーラーローを含む北極低気圧の発生・発達過程と北欧北極圏やノルウェー海上での水蒸気輸送や雲、降水粒子の形成過程を明らかにするために、地上リモートセンサーを用いた現地観測を行なった。1999年1月から4月までスウェーデン・キルナで現地のスウェーデン宇宙物理研究所の協力を得て気象観測用Xバンド鉛直ドップラーレーダーのデータを取得した。得られたデータを解析した結果、スウェーデン・キルナ地方の降水はスカンジナビア山脈の影響を強く受け、空気塊の斜面上昇による山岳性降水やノルウェー海上を北上する低気圧に伴う上層の前線からの弱い降水と山脈の強制上昇の影響を受けた下層雲との相互作用によって降水が増強されている様子が観測された。また、1999年10月にノルウェー海の中央に位置するベアー・アイランドのノルウェー気象局の観測所、スピッツベルゲン島・ニーオルセンの国立極地研究所の観測施設に出かけ、北極圏の低気圧に関する資料やデータを収集した。また、その際に簡易気象観測機器を設置して北極圏の低気圧に関してのデータを取得した。これらのデータは厳冬季を含む北欧北極圏やノルウェー海上での雲や低気圧の構造・発達過程、水循環・輸送過程が明らかになり、ポーラーローを含む北欧北極圏での気象擾乱の構造や水・エネルギー循環を明らかにするための基礎データとなることが期待される。
著者
古和田 孝之 吉川 隆敏 山本 英人 堀井 洋
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.271-272, 1994-03-07

近年、手書き文字認識の研究が進められ、商品化が盛んに行われている。しかし、不特定多数のユーザを対象にしたシステムの場合、文字データなどのパターン情報だけで高認識率を達成するのは困難である。それを解決する方策として、言語情報を用いた認識後処理技術が必要となる。現在の手書き入力システムの使用シーンを考えると、一般文書の入力よりも、住所、氏名、会社名、商品名など、記入すべき文字列の属性があらかじめ決まっているような形式の入力が主流で、また通常このような入力形式では、一般文書の入力よりも高い認識精度が要求される。このような状況を踏まえ、住所、氏名のように入力属性が限定されている場合の後処理手法の開発を行った。本報告では、その中から、名前に対する認識後処理として、姓名辞書と単漢字辞書を利用し、フリガナ連動処理と単漢字処理を行う手法について述べる。
著者
和田 雅人 小森 貞男 松本 省吾
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

1)リンゴ単為結実品種は花器官変異を持っており、花器官形成遺伝子MdPIの発現が欠損していた。しかし本研究で、このMdPI遺伝子の発現組織、発現制御を解析した結果、花器官変異の説明は出来るが単為結実とは直接結びつかないことがわかった。MdPI遺伝子の機能は他の植物のPIホモログのものとよく似ており進化的な保存性が高いことも分かった。2)MdPI遺伝子が転写調節遺伝子のMADS遺伝子ファミリーに属しているためMdPIの発現抑制により発現に影響を受ける遺伝子を探索した。同じ花器官形成遺伝子のホモログMdTM6、MdMADS13のクローニングに成功した。またこのMdMADS13の発現が単為結実品種で減少し、かつ発現組織も結実と関与する子房や胚珠で観察され、単為結実と関与することを示唆した。3)正常品種のMdPI、MdMADS13など単為結実に関与する遺伝子の機能を調べるために、これらの遺伝子発現の抑制、または促進した組み換え体リンゴの作出を行った。これまでのリンゴの形質転換効率は非常に低いものであったが、本研究では形質転換法や転換体の培養法、形質転換に適した品種の選抜を行うことで、これまでより数十倍高い形質転換効率を持つ系を確立することに成功した。4)MdPIのアンチセンス、またはサイレンシングベクターを組込んだ組換えリンゴの作出に成功した。またMdMADS13のアンチセンスベクターを導入した組換え体リンゴ、さらにMdTM6のアンチセンスベクターを導入した組換えリンゴの作出に成功した。5)これら組換えリンゴが開花、結実して初めて導入遺伝子の機能が解析できるため、早期開花組換えリンゴを作出し、2ないし3年で開花することに成功した。
著者
吉田 克己 田村 善之 長谷川 晃 稗貫 俊文 村上 裕章 曽野 裕夫 松岡 久和 池田 清治 和田 俊憲 山下 龍一 亘理 格 瀬川 信久 秋山 靖浩 潮見 佳男 伊東 研祐
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

公正な競争秩序や良好な自然環境、都市環境を確保するためには、行政機関や市町村だけでなく、市民が能動的な役割を果たすことが重要である。要するに、公私協働が求められるのである。しかし、公私峻別論に立脚する現行の実定法パラダイムは、この要請に充分に応えていない。本研究においては、行政法や民法を始めとする実定法において、どのようにして従来の考え方を克服して新しいパラダイムを構築すべきかの道筋を示した。
著者
高橋 智子 川野 亜紀 飯田 文子 鈴木 美紀 和田 佳子 大越 ひろ
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.357-364, 2003-05-15
参考文献数
11
被引用文献数
13

本研究では,高齢者が食べ易い食肉開発を目的とし,豚肉の重曹未処理肉、重曹溶液浸漬肉(0.2mol/lおよび0.4mol/l重曹溶液浸漬)および豚挽肉に小麦粉を混合した再構成肉の力学的特性,食べ易さおよび咀嚼運動について検討を行った。(1)再構成肉の加熱処理後の重量減少率は,重曹未処理肉や重曹溶液浸漬肉に比べ顕著に小さく、再構成肉の保水性が大きいことが認められた。(2)重曹未処理肉および重曹溶液浸漬肉の応力-ひずみ曲線において,ひずみ0.8(m/m)までの圧縮では明確な破断点は認められなかったが,再構成肉には,ひずみ約0.3(m/m)で破断点が認められた。また,重曹未処理肉および重曹溶液浸漬肉のひずみ0.8(m/m)におけるみかけの応力の圧縮速度依存性は,異なる傾向を示した。(3)ひずみ0.8(m/m)におけるみかけの応力と咀嚼時のかたさおよび口中の残留物の多さの間には,高い正の相関関係が認められた。一方,咀嚼後に形成される肉食魂の飲み易さでは,重曹未処理肉と重曹溶液浸漬肉については,ひずみ0.8(m/m)におけるみかけの応力が小さくなるに従い飲み易くなることが示された。しかし,最もみかけの応力が小さく,咀嚼時にやわらかいと評価された再構成肉の飲み易さは,0.4mol/l試料肉と同程度であった。再構成肉は4種の試料肉の中で最もおいしくないと評価された。このおいしさの評価が,再構成肉と0.4mol/l試料肉の肉食魂の飲み込み易さの評価結果に影響を与えているものと推測される。(4)重曹未処理肉と重曹溶液浸漬肉の嚥下終了までの咀嚼回数は,ひずみ0.8(m/m)におけるみかけの応力が最も小さい再構成肉に比べ有意に少ないことが認められた。また,最もひずみ0.8(m/m)におけるみかけの応力が大きい重曹未処理肉の閉口相時間は,他の試料肉に比べ有意に長く、最大閉口速度も遅いものとなった。このことより、重曹未処理肉は,重曹溶液浸漬肉や再構成肉のような食肉加工品に比べ,健康有歯顎者にとって,咀嚼しにくい食肉であることが示された。本研究の結果から,食肉は重曹溶液により軟化処理を施したり,挽肉を主な原料として再構成肉のように加工することで,高齢者の義歯装着者にとっても,咀嚼し易く,食べ易い,良質なたんぱく質給源のための食品になることが推測される。
著者
岡田 博美 和田 友孝 六浦 光一 大月 一弘 榎原 博之 棟安 実治
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,情報通信機器の未搭載車両を考慮した上で、衝突回避支援システム(VCASS)搭載車両が走行中の周辺状況の認識とその情報広報を自動的に行うことにより,安全な道路交通を可能とする次世代型システムの開発を行った。研究結果をまとめると以下のようになる。1)非情報化車両の搭乗者のもつ携帯端末に、VCASS機能を代行するシステムを装備し、車両間衝突回避を実現するS-VCASSを開発し、その有効性を実験で確認した。2)歩行者の動きを追尾し、位置予測を行うことにより車両との事故回避支援を行うP-VCASSを新たに開発した。3)関連要素技術として、RFIDシステムを用いた迅速で高精度の測距・位置情報獲得方式として新たにCRR方式、S-CRR方式を開発した。
著者
槇野 博史 和田 淳 小川 大輔
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

糖尿病性腎症の病態の初期には細胞肥大が重要であり、その後慢性炎症が糖尿病性腎症の進展を促進させている。核内受容体のmodulatorはこれらの病態を総合的に改善する薬剤の候補である。Peroxisome proliferator-activated receptor (PPAR)-δアゴニストおよびLiver X receptor (LXR)アゴニストは抗炎症作用によって治療効果を発揮し、Retinoid X receptor (RXR)アンタゴニストは主として細胞周期の異常を是正して細胞肥大を抑制することが判明した。核内受容体のmodulatorは糖尿病性腎症に有効であると考えられる。
著者
和田 圭二
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

分散型電源の代表である太陽光発電が国内をはじめ欧米諸国において急速に普及している。そのため,配電系統にインバータが多数接続されるようになってきた。本研究課題では,太陽光発電用インバータが複数台接続された場合における,伝導ノイズの発生状況とノイズフィルタの設計手法について研究を行った。また,複数台インバータのスイッチング手法についても検討を行った。主となる研究対象は,50W〜100W程度の太陽電池モジュールの背面に接続するACモジュールと呼ばれる太陽光発電の方式とした。この方式の場合には,20〜30台の小容量(50W〜100W)のインバータが同時に動作するために,伝導ノイズの発生量がインバータの動作状態やフィルタの接続法によって大幅に変化する可能性がある。まず,2台のフライバックインバータ同時動作の場合について研究を行い,インバータのスイッチングのタイミングを180度ずらすことによって,ノイズ成分が等価的に2倍になることを実験により明らかにした。一方,複数台インバータを非同期でスイッチングさせることによって特別な制御を用いることなくノイズ発生量を低減できることを示した。また,ノイズフイルタの設計では,フィルタの寄生容量を考慮して設計を行い,各インバータにノイズフィルタを設置するよりも-括設置することによって伝導ノイズを効果的に低減可能であることを解析と実験により明らかにした。以上の結果は,今後予想されるインバータ複数台動作時におけるノイズ抑制手法に関するフィルタ設計法の指針を与えるものであり,分散電源装置のさらなる普及・促進のための重要な研究成果を得ることができた。