著者
堀舘 秀一 清水 由朗 Hidekazu HORITATE Yoshiro SHIMIZU
出版者
創価大学教育学部・教職大学院
雑誌
教育学論集 (ISSN:03855031)
巻号頁・発行日
no.73, pp.207-216, 2021-03-31

( 1 )図工科教育におけるICT活用とデジタルメディア表現 文部科学省では各教科におけるICTを活用した授業実践を様々な形で推奨しており(文部科学省 2020)、我が国の教育政策として各学校への普及は必然となった。ICT活用と聞いて誤解しやすいのは、教員が情報機器の操作をこなす義務ととらえがちであることである。しかし、デジタルであれ、アナログであれ、ICTの考え方に基づいていることが重要であり、学びの本質に向かうための仕組みのひとつとして捉えるべきと考える。 現在、小学生から大学生に至る世代は、すでにデジタルの仮想空間に慣れ親しんできた世代であるといえる。この世代は、一概には言えないが、自然材や人工材など、図工・美術表現の材料に直接働きかけて、つくり、つくりかえるという体験の不足が推察される。小学校における図画工作科、保育における造形表現という美術関連の学びの領域で考える場合、この世代の弱点として「つくる」体験の不足があるのではないだろうか。一方、これまで自然材や人工材などの材料による表現を指導、研究の対象としてきた教員、研究者は、デジタルメディアによる表現の方法・内容に対して、相応の研究力・指導力が求められることになるであろう。 その意味で教員養成大学における図画工作科の教育法等の授業においては、手づくりによる表現と、デジタル技術を活用した表現・鑑賞を組み合わせた授業実践を試みることにより、教員、学生双方が、新しい表現方法に挑戦していくという学びの意義が創出されると考える。 そもそも美術には表現ジャンルとして、「メディア・アート」が存在する。1960年代から韓国生まれの現代アート作家、ナム・ジュン・パイクがビデオ・アートの流行の先駆となり、そのアシスタントとしてスタートした、ビル・ヴィオラが1995年の第46回ヴェネツィア・ビエンナーレのアメリカ代表に選出されるなど、大きな話題となったが、現在ではメディア・アートの分野で活躍するアーティストは多数に上り、プロジェクションマッピングを含めると、誰でもその表現者になることができ、標準的な表現の一分野となっている。東京藝術大学大学院映像研究科教授の布山タルトは、メディア・アートの特徴として、メディアに対する「メタ認知」と「領域横断性」の二つに集約されると述べている。この特徴をICT活用の図画工作科の授業に生かした場合、より主体的・対話的で深い学びへとつなげることが可能になるであろう。( 2 )コマ撮りアニメーション制作のためのKOMA KOMA デジタル表現に慣れ親しんでいるか否か、また機器の操作の得手、不得手にかかわらず、新しい表現方法に挑戦していくという学びの意義を考慮したとき、活用できるツールとして、KOMA KOMA(KOMA KOMA LAB)(図1 )というアニメーション制作のためのアプリケーションが適していると考えた。KOMA KOMAは撮影後すぐにその画像を確認可能で、振り返り学習が容易な設計となっている。撮影した画像はトレーシングペーパ-を重ねたような透過するイメージでその形状が残像化されるので次の撮影位置を決めやすい。また、サムネイルとして画像を随時仮保存できるため、過去の作品や現在制作中の作品を比較して新たな気づきを得ることができる。 図画工作科においては、実際に自分の手や体全体の感覚を総動員させて表現に向かわせたい、というのが授業を担当する大学教員の願いであるが、加えてICTを表現・鑑賞のためのツールとして活用する場合、この仕組みを指導者自身が使いこなせるかどうかが課題となる。道具に指導者が「使われている」状況の中では、学生一人ひとりが自分なりの想像を広げ、つくり、つくりかえる試行錯誤の中で新たな発想や構想を脹らませるという学びの本質を見失うことも考えられる。 その点、KOMA KOMAは、シンプルかつ扱いやすい設計であり、デジタル機器に慣れていない人でも表現ツールとして活用できる可能性が高い。 図画工作科のICT活用については、『教育の情報化に関する手引』(文部科学省2020)において、①感じたことや想像したことなどを造形的に表す場面、②作品などからそのよさや美しさを感じ取ったり考えたりし、自分の見方や感じ方を深める場面、での活用を例示している。KOMA KOMAはこの点からも、効果的な表現ツールであるといえるだろう。( 3 )授業実践の先行事例 2020年9 月5 日に開催された判断力科研第7 回研究会において、2020年4 〜 8 月に実施されたプロジェクト活動の経過報告と、山梨学院小学校全児童による作品発表が行われた。その中で、松嶋・川瀨・ケネス(2020)は、この連続授業の試みにおいて、制作した街を舞台にKOMA KOMAを使用したキャラクターが動くアニメーションを、子どもたちがチームになって撮影し、動画作品として制作したことを発表している。また、KOMA KOMAの利点として、同一の画面で、撮影と再生が可能であること、そのため、何度でもやり直して質を高められること、手仕事とデジタルを融合できることを述べている。 その後、松嶋は、2020年10月~11月に同小学校にて、クレイアニメーション(粘土を用いた動画づくり)のプロジェクト活動として、下記のような取り組みを行っている。 <対象学年/クラス> 1 ~ 6 年生5 名の3 チーム、合計15名 前半:時数22時間、計画・キャラクターづくり・セットづくり 後半:時数22時間、KOMAKOMAによる撮影 なお、効果音はインターネット上のフリー素材を活用し、セリフはICレコーダーで録音し、最後に編集し加えている。この取り組みにより完成した作品は、「宇宙探検 宇宙飛行士VS隕石」( 1 分36秒)、「恐竜時代 草食VS肉食」( 2 分38秒)、「日本昔話 村人VS巨人」( 1 分43秒)の短編3 作品となっている。いずれも子どもたちが、粘土を主な材料として、段ボールや石、木片、アクリル絵の具を用いた手仕事により、各チーム内での話し合いを通して制作する時間が全体の半分を占め、残りの半分を撮影・編集時間にあてており、バランスの取れた授業設計であるといえる。
著者
槌野 正裕 荒川 広宣 小林 道弘 清田 大喜 岩下 知裕 堀内 大嗣 中島 みどり 高野 正太
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
雑誌
九州理学療法士学術大会誌 九州理学療法士学術大会2019 (ISSN:24343889)
巻号頁・発行日
pp.45, 2019 (Released:2019-12-11)

【はじめに】当院は大腸肛門病センターとして、大腸、肛門の器質的疾患や直腸肛門の機能障害に対しての診断・治療を行おり、リハビリテーション科は、便秘や便失禁症例に対する直腸肛門機能訓練に取り組んでいる。便失禁症は、2017年に発刊された便失禁診療ガイドラインによると、65歳以上の有症率は男性8.7%、女性6.6%とされており、専門的な保存治療の一つに骨盤底筋群に対するバイオフィードバック(biofeedback:BF)療法が行われ、治療の有効率は70%前後と報告されている。当院でも便失禁症例に対しては筋電図BF療法を用いているが、収縮方法を獲得できない症例を経験する。このように通常のBF療法では骨盤底筋群の収縮を獲得できない症例に対して、内閉鎖筋膜は肛門挙筋に起始を与えると報告されていることから、股関節外旋筋の収縮をさせることで骨盤底筋群の一つである外肛門括約筋の収縮を得ることが出来るのではないかと考え、検討を開始(第6回運動器理学療法学会で報告)した。今回、外旋筋を用いた骨盤底筋収縮に関する検討を継続した結果を報告する。【対象と方法】2018年5月から12月に当院で骨盤底筋群に対するBF療法を行った症例の中で無作為に選出した26例(男性4例、女性22例、平均年齢66.7±17.0歳)を対象とした。対象者の受診動機は、便秘14例、便失禁18例、その他3例(重複あり)であった。方法は、対象者をシムス体位(左側臥位)とさせ、検査者が外肛門括約筋に電極(幅5mm)が密着するように棒型双極電極を肛門に挿入する。筋電図(日本光電社製 MEB-9400シリーズ)を用いて外肛門括約筋収縮時の積分値(S:squeeze)を安静時の積分値(R:rest)で除した値(S/R)を外肛門括約筋の収縮力とした。次に対象者を腹臥位とし、股関節中間位、膝関節90°屈曲位から両側の踵部を合わせるように股関節外旋筋の収縮を促し、外肛門括約筋のS/Rを求めてシムス体位との収縮力の違いを比較した。統計学的処理にはWilcoxsonの符号順位検定を用いて検討した。【結果】外肛門括約筋の収縮力S/Rは、シムス体位の2.95(1.68~7.67)に対して腹臥位での股関節外旋筋収縮では4.80(2.32~7.70)と有意(p < 0.01)に収縮力は強くなった。しかし、外旋筋の収縮よりもシムス体位での収縮力が強い症例を4例に認めた。3例は外旋筋の収縮を行わせた方がシムス体位よりも持続収縮が可能であり、1例は安静時の活動電位も高まっていたため、収縮力としては低下していた。【考察】内閉鎖筋と肛門挙筋の関係に関しては様々な報告が散見されるが、臨床的には股関節外旋筋の収縮を促すと、肛門は腹側へ引き込まれるように動くのが確認される。内閉鎖筋膜は肛門挙筋に起始を与えており、内閉鎖筋は骨盤底において肛門挙筋と密接な関係にあるとの報告(田巻ら)から、骨盤底筋群に対するBF療法の効果を高める事が期待できると考えられる。【倫理的配慮,説明と同意】【倫理的配慮、説明と同意】当研究は、大腸肛門病センター高野病院倫理委員会の許可(第18-03番)を得て、充分な倫理的な配慮を行い実施した。
著者
小川 里美 岩田 幸蔵 久野 臨 小島 伊織 堀部 良宗
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.605-611, 2016-05-25 (Released:2017-01-10)
参考文献数
10

神経内分泌型非浸潤性乳管癌(neuroendocrine ductal carcinoma in situ; NE-DCIS)の細胞学的所見について検討した。病理組織学的にNE-DCISと診断され,穿刺吸引細胞診を実施した5例を対象とした。年齢は50歳代から80歳代で平均年齢70.6歳であった。NE-DCISの細胞学的特徴は,出血性から清の背景に粘液様物質や裸血管を認めた。細胞採取量が多く,結合性の低下した集塊ないし孤立散在性に出現し,筋上皮の付随はみられなかった。細胞形態は多辺形から類円形で,細胞質はライトグリーンに淡染性で顆粒状を呈していた。核は円形から類円形で偏在傾向を示し,クロマチンは微細顆粒状から細顆粒状に軽度増量し,小型の核小体が1から数個みられた。肉眼的に,腫瘍の大きさは4例が10 mm以下で,1例が最大径25 mmであった。病理組織学的に,腫瘍細胞は拡張した乳管内に充実性および索状に増殖していた。間質には毛細血管が豊富にみられ,粘液貯留も観察された。免疫組織学的検索では,シナプトフィジン,クロモグラニンAは4例陽性,CD56は3例陽性であった。Ki67は,検索した4例について0%から19.1%(平均8.5%)であった。本症例と鑑別を要する腫瘍は,乳管内乳頭腫であった。NE-DCISは,結合性が低下し散在性細胞の出現,筋上皮細胞を認めない,さらに核の偏在傾向や顆粒状の細胞質を有することが最も重要な鑑別点に挙げられた。
著者
村井 政史 伊林 由美子 堀 雄 森 康明 古明地 克英 八重樫 稔 今井 純生 大塚 吉則 本間 行彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.34-37, 2016

症例は48歳の女性で,高層ビルで勤務中に地震が発生してビルが大きく揺れ,その後から動揺性めまい感が出現するようになった。陰証で虚証と考え真武湯で治療を開始したところ,動揺性めまい感は改善した。ところで,この患者の職場は入退室管理に指静脈認証によるセキュリティシステムを導入しており,当院を受診する前までは認証エラーが多かったのが,真武湯を服用するようになってからは調子よく認証されるようになった。静脈認証エラーの原因の一つに,冷えで血管が収縮して血流が低下し,血管パターンが変化することが知られている。そのような血流が低下した状態を,陰証の方剤で温めることによって解消し得ると思われた。
著者
堀川 直顕
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.809-810, 2021-12-05 (Released:2021-12-05)
参考文献数
5

ラ・トッカータCERNでの実験に大学院生が単独出張滞在できるようになるまで
著者
塚本 増久 正野 俊夫 堀尾 政博
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.235-252, 1980-06-01

イエバエの性決定様式には通常のXX-XY型の性染色体によるもののほかに, 常染色体上に優性の雄性決定因子が乗ったA^M型や超優性の雌性決定因子Fなどの存在が知られている. そのうちII^M型とIII^M型が最も多く報告されている。これに対しI^M型は, 極く最近フイージー島のイエバエ集団から発見されたことが学会で報告されたのみである. 北九州市で1979年秋に野外から採集された2つの集団を用い, その性決定様式の遺伝について研究を行った結果, 多数のII^M型やIII^M型の固体に混ってI^MおよびV^M型の雄も含まれていることが判明した. 従って, これは日本最初のI^M型イエバエの発見であるばかりでなく, 世界でも2番目の珍らしい記録である. また,幼虫の神経節の染色体分析の結果,そのほとんどがXX型の核型を示す個体ばかりで,時たまXO型やXXX型の個体が検出されることもあった。このことは,北九州市の野外で採集された2つのイエバエ集団の性決定様式が主として常染色体上の雄性決定因子により支配されていることを示した交配実験の結果を,細胞学的研究からも支持するものである.なお,採集後間もなく,成虫の体が褐色を示すミュータントが分離固定したが,遺伝学的研究の結果,第3染色体上の劣性遺伝子brown-bodyの新らしい対立遺伝子であることが判明したので,bwb^79kと命名された
著者
堀内 雅彦
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
交通・物流部門大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2007, no.16, pp.33-36, 2007-12-12

Since the establishment of the Shinkansen Speed-up Project in 2002, JR East has been developing various technologies seeking for world top level Shinkansen not only in operating speed but also in safety, environmental friendliness and riding quality. In this project, JR East has developed two high speed experimental train sets, Fastech360S and Fastech360Z. The technological target of Fastech360 is to realize 360km/h commercial operation. After a 2-year test running of them, JR East decided to increase the maximum operation speed of Tohoku Shinkansen from 275km/h to 320km/h. This paper describes the overview of the R&D project and the developed technologies, and the subjects to be solved for further speedup for the future as well.
著者
岡野 節子 堀田 千津子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.33, 2008

<BR>【目的】<BR> 伊賀市西山地域・春日神社では毎年10月14日~15日には秋祭りの例祭「なすび祭り」が行われる。その神饌に生撰として「二又なすび」が珍重とされ、その他に「米」、「野菜」、「酒」、「果物」などが供えられる。また、上述以外に1)なすびは包丁を加え、調理したもの(なすびの味噌煮)。2)米は蒸して木槌でたたき、成形したもの(キョウ)。3)生米を横杵で搗いて藁苞に入れ固めたもの(シトギ)を神饌とする。三重県の祭りのなかでも祭礼や神饌に特徴あるものと思われるので紹介する。<BR>【調査方法】<BR> 調査地域:伊賀市西山地区の春日神社、調査時期:2007年10月14日~15日、調査方法:現地においての聞き取り調査と写真撮影<BR>【結果】<BR> 1)秋祭りの神饌は生撰と熟撰で構成されていた。生撰には「二又なすび」を中心に米,野菜、果物、塩、酒が供えられ、熟撰は「なすびの味噌煮」、「キョウ」、「シトギ」の神饌であった。2)奇形である「二又なすび」を生撰とし、奇形でない「なすび」は熟撰としている。3)熟撰の「なすびの味噌煮」、「キョウ」は「蒸す」と言う調理法で行われている。また、「キョウ」は米を蒸す、搗く。そして飯粒を崩し固め、型で抜くものであった。4)「なすびの味噌煮」に用いられる調味料は味噌のみであった。現在、生撰がほとんどであるなか熟撰を行っているのは、祭りの行事と熟撰の食べ物が受け継がれてきたこと。それは次世代の共有性につながってゆくのではないかと考えられる。
著者
藤村 直美 堀 良彰 平山 善一
雑誌
情報処理学会研究報告インターネットと運用技術(IOT)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.37(2003-DSM-032), pp.49-54, 2004-03-29

九州芸術工科大学と九州大学は平成15年10月1日付で統合し,九州芸術工科大学は新しい九州大学の一部となった.これに伴って ,九州芸術工科大学の学内ネットワークを九州大学の学内ネットワークに統合する作業を行った.具体的には,IPアドレスの変更,ドメイン名の変更,キャンパス間接続の高速化である.また ,九州芸術工科大学情報処理センターを九州大学情報基盤センター大橋分室として統合し,関連する学内規則の整備を行った.ここでは大学の統合に伴って行った作業内容,手順,問題点,およびその後の経緯などについて報告する.
著者
渡邉 光浩 佐藤 和紀 柴田 隆史 堀田 龍也
出版者
鹿児島女子短期大学
雑誌
鹿児島女子短期大学紀要 = Bulletin of Kagoshima Women's College (ISSN:02868970)
巻号頁・発行日
no.58, pp.127-132, 2021

日本語入力スキルの指導について,国内外のタイピングや日本語入力スキルの実態・指導に関わる論文の調査等の結果をレビューした.これらのレビューから示唆される日本語入力スキルの指導方略を(1)教科等の授業において練習時間を設ける(2)ホームポジションの位置と各キーの位置を覚えさせることから始め,後から速度や精度を高める(3)ローマ字での入力について①濁音・拗音②訓令式・ヘボン式にこだわらないこと③かな・英数,半角・全角の切替・変換を指導する(4)意図的に活用する機会を設けたり,主体的に活用できるようにしたりする,の4点に整理した.
著者
須長 史生 小倉 浩 正木 啓子 倉田 知光 堀川 浩之
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.396-421, 2020

本研究は,2016年度から2018年度の3か年にわたって実施した「インターネットを活用したセクシュアル・マイノリティに関する学生の意識調査」の2018年度分実施内容に関する結果の報告である.すなわち,本論文は「セクシュアル・マイノリティに対する大学生の意識と態度:第1報」(須長他[2016])および「性的マイノリティに対する大学生の意識と態度:第2報」(須長他[2017])の続編であるとともに,特に3か年分の調査結果を俯瞰してこれまでに得られた知見をまとめたものである.本研究の目的は18歳から20代前半の男女の,性的マイノリティに対する意識や態度を明らかにすることである.調査対象は2016年度,2017年度と同様に,首都圏の医療系A大学一年生とした.3回目の調査である2018年度においては,在籍学生数598名に対して,453名(男子136名,女子315名,その他2名)からの回答が回収され,回収率は75.8%であった.プライバシーの確保と回収率の向上のために,前2回の調査と同様インターネットを活用し,スマートフォンを用いたアンケートに回答する方法で調査を実施した.アンケート回答の集計結果から得られた,主要な知見を列挙する.①性的マイノリティに関する正しい知識を有している割合は2017年度と比較して向上した.②性的マイノリティに関する正しい知識を身に付けたいと考える学生の割合は3か年を通じて増加している.③身近に存在する同性愛者(同じ大学の人,きょうだい)に対する嫌悪感は3か年を通じで漸減傾向にある.本報告では,上記の単純集計から得られる知見以外に,3か年分の回答に対して実施した主成分分析の結果から,性的マイノリティに対する意識や態度における特徴的な応答を抽出し,学生像の把握を試みた.また,戸籍上の性別と性的マイノリティに対する意識や態度に何らかの相関があるかという問いに対しても,統計的な解析を実施した.これらの結果も併せて報告する.
著者
佐藤 貴明 澤野 弘明 鈴木 裕利 堀田 政二
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.625-626, 2016-03-10

本稿ではスピード線など漫画的表現を用いることで原作を尊重した映像の作成手法を提案する.本稿ではスピード線を用いて漫画内のイラストが運動する映像と,煙の立つ映像の作成手法について示す.運動の表現には,確率的ハフ変換を用いて検出された直線の中からスピード線を選択し,そのスピード線の長さ,角度,移動速度と方向を決定し映像を作成する.煙の立つ表現には,煙に対しポリゴンメッシュを利用し,ポリゴンメッシュの各頂点を無作為に移動させて変形した映像に,煙部分を透化したイラストを重ねることで煙の立つ映像を作成する.本稿ではこれら映像作成手法を用いて漫画を映像化し,結果映像について有用性を考察する.
著者
堀本 佳誉 粥川 智恵 古川 章子 塚本 未来 大須田 祐亮 吉田 晋 三和 真人 小塚 直樹 武田 秀勝
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Bb1180, 2012

【はじめに】 脳性麻痺(以下CP)児は乳児期に、健常児と比較してより多くのDNA損傷が引き起こされていることが報告されている。健常児の場合、DNA損傷修復能力は発達とともに高まることが示されているが、乳児期以降のCP児に対する研究は行われておらず、発達による変化が見られるかどうかが不明である。また、一般的に健常成人では、過負荷な運動が過剰なDNA損傷を引き起こす。さらに加齢とDNA損傷修復能力には関連性があり、修復できないDNAの蓄積が老化を促進する。CP児は、臨床的に見て加齢が早いと言われてきたが、「生涯にわたる非効率で過負荷な運動による過剰なDNA損傷」と「運動量の不足によるDNA修復能力の低下」が悪循環し、修復できないDNAの蓄積速度が健常者より早くなるために、早老となっている可能性が高い。DNA損傷修復能力を高めるためには、定期的で適度の運動量が必要であるとされている。このためCP児のDNA損傷修復能力を高めるためには、過負荷な運動にならないように、慎重に運動量の決定を行う必要がある。DNA損傷修復能力という視点から、CP児の最適な運動量・頻度を判断し、早老を予防するための研究基盤を確立することを目的に、今回は安静時のCP児のDNA損傷修復能力の解明に焦点を絞り研究を行った。【方法】 対象は、学齢期の脳性麻痺児12名(13.8±4.3歳、6歳~18歳、男性6名、女性6名、Gross Motor Function Classification レベル1 4名、レベル2 2名、レベル3 6名)とした。脳性麻痺児と学年、性別が一致する健常児12名(14.8±4.4歳、6歳~18歳、男性6名、女性6名)を対照群とした。DNA損傷修復能力の指標として、尿中8-ヒドロキシデオキシグアノシン(以下8-OHdG)濃度の測定を行った。測定には早朝尿を用いた。尿中8-OHdG濃度の測定にはELISA法による測定キット(日本老化制御研究所)を用いた。また、尿中クレアチニン濃度を測定した。8-OHdG濃度をクレアチニン濃度で割り返し、クレアチニン補正を行った。 統計学的検討にはR2.8.1を用いた。シャピロウイルク検定を行い、正規分布が確認された場合はt検定、確認できなかった場合はマンホイットニーの検定を行った。危険率は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者と保護者に対し、書面・口頭にて本研究への協力を要請した。本研究への協力を承諾しようとする場合、書面および口頭にて研究の目的や方法などを説明し、対象者・保護者に質問などの機会を十分与え、かつそれらに対して十分に答えた上で文書にて同意を得た。本研究は千葉県立保健医療大学倫理委員会の承認を得た上で実施した。【結果】 脳性麻痺群の8-OHdG濃度は11.4±2.0 ng/mg CRE、健常群は8.2±0.9 ng/mg CREであった。シャピロウイルク検定の結果、正規分布は確認できなかった。2群間の比較のためにマンホイットニーの検定を行ったが、有意な差は認められなかった。【考察】 Fukudaらは、本研究と同様にDNA損傷修復能力の指標として尿中8-OHdG濃度の測定を行い、脳性麻痺児は乳児期に健常児と比較してより多くのDNA損傷が引き起こされていると報告している。Tamuraらは健常児の尿中8OHdG濃度の測定を行い、発達に伴い尿中8-OHdG濃度が低下することを示している。乳児期のCP児で、尿中8-OHdG値が高値にであったのは、一時的に強い酸化ストレス下にあるのか、何らかの原因でDNA損傷修復能力が低いのか、それとも両方が原因であるのかは不明である。今回の結果では、同年代の健常児と比較し、有意な差は認められなかった。このことより、脳性麻痺児は乳幼児期には一時的に強い酸化ストレス化にあるか、DNA損傷修復能力が低いため尿中8-OHdG濃度が高値を示すものの、その後健常児同様に発達に伴いDNA損傷修復能力が高まることにより尿中8-OHdG濃度が低値となり、健常児と有意な差を認めなくなったと考えられた。【理学療法学研究としての意義】 今後、運動負荷量の処方を尿中8OHdG用いて決定できるかどうかの研究や、DNA損傷修復能力を向上させるための適切な運動負荷量の処方を検討するための研究、CP者の加齢のスピードを遅くするための運動負荷量の処方のための、基礎資料となる点で意義のある研究であると考える。謝辞;本研究は、本研究は科学研究費補助金(若手 スタートアップ 2009~2010)の助成金を受けて実施した。
著者
鈴木 舞音 上原 崇史 金子 洋平 堀 洋輔 馬場 隆彰 齋藤 孝道
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.2, pp.767-774, 2014-10-15

ソフトウエアのメモリ破損脆弱性を悪用する攻撃,いわゆる,メモリ破損攻撃が次々と登場し問題となっている.メモリ破損攻撃とは,メモリ破損脆弱性のあるプログラムの制御フローを攻撃者の意図する動作に変えることである.一般的には,Buffer Overflow攻撃とも呼ばれている.OSやコンパイラでの防御・攻撃緩和機能が開発されてはいるが,それらを回避する更なる攻撃も登場している.そこで,本論文では,メモリ破損脆弱性の分類を行い,制御フローを不正に書き換えるまでの攻撃に関して調査し,分類する.