著者
宮崎 清 青木 弘行 田中 みなみ
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.72, pp.67-74, 1989-03-31 (Released:2017-07-25)

本小論は、「伝統的工芸品・椀の意匠に関する研究(1)」に続いて、日本における椀の発生と歴史的発展過程に注目し、室町時代までの椀の造形的展開について、遺跡資料および絵画史料を手がかりとして、観察と解析を行ったものである。その結果、筆者は次の諸点を明らかにした。(1)日本における漆塗椀の原型は縄文時代に誕生し、弥生時代の轆轤技術、鉄器の導入を経て、挽物としての基本的な椀の制作技術がほぼ完成された。(2)飛鳥・奈良・平安時代には、大陸の食様式の導入ならびに主食副食分離の発展と対応してさまざまな形状の椀が制作され、現代の椀の造形文化がほぼ形成された。(3)鎌倉・室町時代に入ると、漆の塗分けや漆絵などの装飾技術が発達し、椀形状のバリエーションも一層豊かになった。桃山時代には、大陸の造形文化から独立した、日本固有の椀の造形文化が確立された。
著者
岩本 淳一 本多 彰 宮崎 照雄
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

低栄養性脂肪肝の病態生理を明らかにするために,LC-MS/MSを用いた患者血清のメタボローム解析方法を開発した。それを用いて,しばしば低栄養性脂肪肝を合併するクローン病とシトリン欠損症の患者血清を分析した。クローン病ではLXRの活性化とFXRの不活性化により脂肪酸の合成亢進とβ酸化抑制が認められ,シトリン欠損症ではクエン酸の過剰供給による脂肪酸合成の亢進が観察された。以上のように,原因不明の脂肪肝の病態解明には,血液中代謝物のメタボローム解析が有効であると考えられた。
著者
宮崎 祐介
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.468-476, 2015 (Released:2015-07-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

乳幼児揺さぶられ症候群と家庭内転倒・低位転落事故における頭部外傷発生メカニズムとその相違を解明することが虐待鑑別において重要である. そこで, 力学的手法により, これらの状況における頭部外傷発生メカニズムについて検討した. 生後4カ月の乳児のCT画像に基づき, 頭蓋内脳挙動を可視化できる頭部実体モデルを有する乳児ダミーを構築した. 本ダミーを用いて暴力的揺さぶりと家庭内転倒・低位転落事故を模した実験を実施した. その結果, 暴力的揺さぶりにおいて転倒・転落事故よりも大きな頭蓋内の脳の相対回転運動が観測された. これは伸展から屈曲方向に回転運動が転換する際に生じる頭蓋骨と大脳の顕著な逆回転挙動によると考えられた.
著者
石川淑 田中飛鳥 宮崎敏明
雑誌
第74回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.159-160, 2012-03-06

Basic Local Alignment Search Tool (BLAST)は最も有名なシーケンスアライメントツールの一つである。シーケンスアライメントとはタンパク質(またはDNA)データベースから検索対象となるタンパク質(またはDNA)配列を列挙することであり、配列同士の類似部分検索のために使用される。シーケンスアライメントは、生物学上の進化や遺伝子系図を調べる上で重要であることから、バイオインフォマティクス分野では欠かせない情報である。BLASTは、seeding(ステップ1)、ungapped extension(ステップ2)、gapped extension(ステップ3)という3つの処理ステップからなる。ステップ3のgapped extensionではSmith-Waterman アルゴリズムというDP(Dynamic Programming)が使用されており、従来ハードウェアによる多くの高速化手法が提案されている。しかし、BLAST全体をハードウェア化することは行われていない。本稿では、BLASTの高速処理を目指してアルゴリズム全体のハードウェア化を検討したので報告する。
著者
宮崎 謙一 石井 玲子 大串 健吾
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.780-788, 1994-10-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
15

単独に提示された音の音楽的音高名を音高コンテクストとは無関係に絶対的に同定することができる絶対音感の能力は、従来から音楽に深い関わりを持つ能力とされてきた。しかし音楽が本質的に相対的音高関係の上に成り立つものであることを考えると、この絶対音感の能力が音楽にとってどのような意義を持つものであるかが問題となる。そこで、絶対音感を持つ音楽専攻の大学生が、相対的音高関係をどのように認知するかを調べる目的で実験を行った。絶対音感テストの結果から、被験者を3グループに分けた。実験課題は、音譜で視覚的に提示されたハ長調の7音メロディと、ハ長調、1/4音低いホ長調及び嬰ヘ長調の3通りのいずれかの調で聴覚的に提示された7音メロディとが旋律的に同じか違うかを判断することである。実験の結果、どのグループもハ長調でメロディが提示された場合に比べて他の調で提示された場合に正答率が低下し、反応時間も長くなるという結果が得られた。また、正確な絶対音感を持つグループでは、絶対音感と巧妙なストラテジを組み合わせて判断したものが多くみられた。これらの結果から、音楽的音高処理において絶対音感が持つ問題点について考察した。
著者
川野 義武 宮崎 哲哉 豊田 貴信 堀 恵輔 竹島 里香 林 良文
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第27回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.160, 2011 (Released:2011-12-22)

【目的】中枢神経系患者における体幹機能へのアプローチは重要である。この方法の一つとして、ストレッチポール(以下SP)を応用したアプローチの展開が進んでいる。日本コアコンディショニング協会(以下JCCA)の推奨するコアリラクゼーション、コアスタビライゼーション、コアコーディネーションの段階に基づくコアセラピーは、脳卒中片麻痺患者の治療にも十分応用可能な概念である。コアセラピーについて、健常者や運動器疾患を対象とした各関節アライメントの変化と下肢筋力や下肢協調性、柔軟性等の先行研究は存在するものの、脳卒中片麻痺患者を対象とした研究は未だ少ない。そこで今回、脳卒中片麻痺患者に対して、ストレッチポールを用いたコアセラピーが立位制御機能に及ぼす影響を検討することを目的に、アプローチ前後の重心動揺を測定し、若干の知見を得たので報告する。【方法】対象は、当院回復期病棟に入院中の脳卒中片麻痺患者6名(年齢58.2歳±8.4、右片麻痺3名、左片麻痺3名)とした。取込基準は、支持なしでの開眼、閉眼での立位保持が30秒以上可能な者とした。介入内容はJCCAが提唱するベーシックセブンによるコアリラクゼーションプログラムから抜粋した7項目と、ストレッチポール上でのコアスタビリティープログラム6項目を加えたエクササイズ(以下SP-Ex)、計13項目とした。実施時間は合計10分以内とした。なお基本姿勢の保持ならびに動作遂行に関して、随時必要な徒手的介入を施した。測定には重心動揺計(酒井医療株式会社製ActiveBalancerEAB-100)を用いた。条件として、裸足にて両足部の内側縦アーチ頂点間を20cm離した立位を設定基本肢位とし、静的立位で開眼、閉眼を各15秒間、アプローチ前後に各々1回ずつ測定した。測定指標は総軌跡長、外周面積、矩形面積とした。統計的手法にはWilcoxonの符号付順位和検定を用い、有意水準5%にて比較検討した。なお被験者には研究の趣旨と個人情報の取り扱いに関し、書面にて十分に説明。同意を得た上で研究に参加していただいた。【結果】開眼時では、アプローチ前後の総軌跡長・外周面積・矩形面積において有意な変化は認められなかった。症例毎では、総軌跡長にて3例に減少傾向、残り3例に増加傾向が認められた。外周面積と矩形面積について、2例で減少傾向、残り4例に増加傾向が認められた。一方、閉眼時では、総軌跡長・外周面積・矩形面積いずれにおいても有意に減少しており(p<0。05)、6例とも減少傾向が認められた。【考察】閉眼で総軌跡長、外周面積、矩形面積の減少を認めたことは、重心動揺の振れ幅を制御できるようになったと解釈できる。今回の対象者は一側性の片麻痺患者を介入対象としており、視覚情報の遮断から、開眼時とは異なり脊柱や脊柱起立筋群、足底などの接地面の固有受容器感覚を含む感覚入力が正中位指向の改善に影響したのではないかと考えられる。またSP-Exによるコアスタビリティーの向上に加え、SPという不安定な場面でのベーシックセブンは体幹の不安定性のある片麻痺患者に対して、コアスタビリティーとしてもすでに作用し、筋出力の向上につながったのではないかと考えられた。 一方、開眼時よりも閉眼時において、アプローチ前後の静的立位バランスは改善傾向にあった。この要因として、対象者特性を考慮すると亜急性期から回復期に属する片麻痺患者であり、視覚からの情報に対して何らかの情報処理エラーが生じやすく、閉眼時よりも開眼時ではコアの安定性による影響が反映されにくいと考えた。【まとめ】今回片麻痺患者に対し、ストレッチポールによるコアリラクゼーション・コアスタビライゼーションを中心としたアプローチを実施し、静的立位バランスへの即時的効果を検証した。結果、閉眼時の重心動揺指標は有意に減少しており、静的な立位制御機能に対して、足底からの固有受容器感覚を含む感覚入力や正中位認識の改善が期待できるのではないかと考えた。 日常遂行される動作は視覚情報を取り入れながらのものとなるため、今後は視覚情報と固有感覚器感覚とのリンク可能なアプローチ方法を考え、実施することが必要と考えられた。また今回の研究から、多様な症状を示す脳卒中片麻痺患者を対象とする際には、感覚機能やUSNの有無、麻痺の程度などの特定したグループのデータ収集も必要と考えられた。
著者
山本 俊一 宮崎 正之助 岡田 和夫 館野 功 高木 忠信 古田 昭一 呉 大順 佐藤 富蔵
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.20, no.8, pp.534-539, 1965-08-25 (Released:2009-02-19)
参考文献数
18

The authors tried to elucidate the therapeutic effect of hyperbaric oxygenation on the experimental infection of the anaerobic pathogens, using mice and rabbits as experimental animals.1) Cl. novyi was rather resistant to the action of oxygen at high pressure. It was presumably due to the spore formed.2) In order to prevent the death of the mice inoculated with Cl. novyi, the animals should be repeatedly exposed to the oxygen at moderate pressure. The excessive oxygenation was toxic to the animals, rendering them less resistant to the infection.3) Toxin of Cl. novyi was not decomposed by hyperbaric oxygenation. It has also no effect on the detoxication process of the organisms or on the toxin neutralization in vitro and in vivo.4) In case of gas gangrene hyperbaric oxygenation therapy should be combined with antitoxin treatment, as the former suppresses the growth of pathogens and the latter neutralizes toxin produced.5) In the experiment with with rabbit, repeated hyperbaric oxygenation was proved markedly effective to the infection with Cl. norvyi, but less effective to Cl. tetani.In the latter case, the excessive oxygenation was unfavorable to the infected animals.
著者
中島 英明 宮崎 睦雄 今井 信行 横川 朋子 山本 茂生
出版者
社団法人 日本腎臓学会
雑誌
日本腎臓学会誌 (ISSN:03852385)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.351-356, 2001-05-25 (Released:2010-07-05)
参考文献数
11

A 63-year-old man was referred to our hospital for rapid deterioration of his renal function. He had worked as a metal founder for more than 40 years, and had been diagnosed as having silicosis. Laboratory data on admission showed severe anemia, thrombocytopenia, and end-stage renal failure (BUN 88.8 mg/ dl, serum creatinine 9.0mg/dl). Myeloperoxidase anti-neutrophil cytoplasmic antibody (MPO-ANCA) was also detected in his sera. On the next day after admission, he complained of sudden dyspnea and hemoptysis. Mechanical ventilation with pure oxygen was insufficient to improve hypoxia without concomitant use of percutaneous cardio-pulmonary support (POPS) and continuous hemofiltration (CHF). We diagnosed his condition as MPO-ANCA-associated rapidly progressive glomerulonephritis with diffuse alveolar hemorrhage. Treat ment with plasmapheresis, pulse methylprednisolone and pulse cyclophosphamide effectively improved his hemoptysis as well as chest X-ray findings and blood gas analysis. However on his later clinical course, he was complicated with superimposed complex infection and passed away. Autopsy findings showed crescentic glomerulonephritis in the kidneys and silica nodules in the lungs. Recently it has been postulated that some relationship exists between ANCA-associated (especially MPO-ANCA-associated) glomerulonephritis and silica exposure. The reported cases of glomerulonephritisin the patients with silica exposure showed a rapidly progressive clinical course and pauci-immune necrotizing crescentic glomerulonephritis in their histology. Gregorini et al, reported that 12 of 37 (32%) male patients with RPGN had either silicosis or significant silica exposure, and 7 of 8 patients examined were ANCA-positive (6 of 7 were MPO-ANCA-positive). Therefore silica seems to cause glomerulonephritis by disrupting the immune response. Including this case mentioned above, we have experienced 10 cases of MPO-ANCA-associated glomerulonephritis, at least 3 cases out of which had suffered from silicosis in the past (30%) . These results indicate that silicosis should be considered a relevant pathogen of MPO-ANCA-associated glomerulonephritis beyond the race.
著者
蘆立 恵子 川村 光信 石井 昌俊 長谷 和正 東田 寿子 安藤 矩子 宮崎 滋
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.449-454, 2000-06-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
11

症例は38歳男性. 30歳時に2型糖尿病と診断され一時当院通院するも血糖コントロールは不良であった. 1994年9月頃より口腔内の白苔, 味覚異常, 嚥下困難が出現し, 再度当院受診. 内視鏡検査で口腔・食道力ンジダ症と診断された. 抗真菌薬での治療に難治であり1998年3月血糖コントロールおよびカンジダ症の治療目的で入院となった. インスリン療法を開始し良好な血糖コントロールが得られるとともにカンジダ症は急速に治癒した. しかし退院後, 血糖の悪化に伴いカンジダ症が再発した.食道力ンジダ症は免疫低下状態でしばしばみられ, 糖尿病でも血糖コントロール不良例や自律神経障害の強い例での報告が散見される. 本例は明らかな免疫不全がないにもかかわらず再発を繰り返し, 抗真菌薬のみでの治療には難治であった. しかし, 血糖コントロールの改善により速やかに治癒した. このことから, 感染症の予防や治療には厳重な血糖コントロールが極めて重要であると考えられた.
著者
坂田 年男 角 俊雄 宮崎 充弘 笹渕 祥一 栗木 哲
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

統計学におけるテンソルとは高次元配列データのことであり, 行列データの拡張概念である。テンソルを最も基本的な階数1のテンソルの和にあらわすときの最小の長さをそのテンソルの階数という. さらに特定の階数を持つテンソルの集合が正の測度をもつとき典型階数と呼ばれる。本研究は(m,n,p)型の3-テンソルの典型階数について研究を行い、絶対正則テンソル, 絶対列充足階数テンソル、正則な双線形写像, 行列式イデアルなどの概念と結び付けて、典型階数が複数存在するか単一に存在するかの問題に対する解答を部分的に与えた。また、行列型正規分布の平均の片側検定に対する相似検定の研究も併せて行い構成した。
著者
大橋 浩一 鈴木 紅 佐々 達郎 宮崎 紀樹 立石 和也 金子 雅一 春成 智彦 黒木 識敬 弓場 隆生 安倍 大輔 岩間 徹
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.1421-1427, 2015 (Released:2016-12-15)
参考文献数
7

手術歴や外傷歴のない27歳男性. 緩徐に増悪する腹痛が出現し, 腰痛, 両側下腿浮腫も出現したため当院救急外来を受診した. 造影CTで肝静脈合流部近位下大静脈~両側腎静脈内, 右第三腰静脈内に血栓像を認め, 両側総腸骨静脈領域までの連続する下大静脈血栓症の診断となった. 内視鏡検査では腸管内に特記すべき病変はなかった. 血液検査で抗核抗体, 凝固因子, プロテインS, プロテインCなどの血栓素因は正常範囲であったが, 血漿ホモシステイン (以下Hcy) 濃度が上昇しており高Hcy血症による血管内皮障害から下大静脈血栓症に至ったと考えられた. 葉酸とビタミンB6を補充しつつ抗凝固療法による保存的加療により症状は軽快し, 画像所見でも血栓は縮小した. 抗凝固療法継続中であり, 静脈血栓症の増悪・再発は認めていない. 高Hcy血症が原因と考えられる広範囲に及ぶ下大静脈血栓症は稀であり, 葉酸・ビタミンB6投与と抗凝固療法で保存的加療にて軽快した症例を経験した.
著者
宮崎 真
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.63-72, 2015-12-31 (Released:2016-02-04)
参考文献数
44
被引用文献数
1

ワクチンのファーマコビジランスは,他の医薬品とは異なる留意点がある.本稿では,ワクチンのファーマコビジランスにおいて自発報告データベース・医療情報データベース(レセプトデータベース,診療情報データベース)が果たす役割について,その現状・可能性を考察する.自発報告データベースにおいては,社内データベース・医薬品副作用データベース(JADER)等既にワクチンのファーマコビジランス活動に利活用可能なデータベースが構築されており,予防接種の効果不良やワクチンの質に由来する問題の検出・統計的シグナル検出に対し一定の活用が可能である.今後,自発報告データベースへの症例の更なる集積によるシグナル検出力の増加,更に予防接種時事故報告制度とのデータ共有,副反応検討部会情報のデータベース化,予防接種副反応分析事業の開始等により自発報告のデータを用いたファーマコビジランス活動がより強固なものになることを期待する.医療情報データベースにおいては,ワクチン接種情報が捕捉できないというクリティカルな限界が現状あるものの,注目すべき特定事象の背景発生率や感染症の発生動向の把握等,現段階において既に利用可能な点も認められる.また医療情報データベースにおける検討が,感染症発生動向調査や定期予防接種の接種率の把握等現行の各制度の代替手段となる可能性がある.電子的に管理された予防接種履歴と他の医療情報とのデータリンケージを介して構築されるデータベース,一次データを収集する必要性等各制度の見直し,電子カルテ上のワクチンコードの標準化,母子健康手帳情報のデータベース化等,医療情報データを中心にワクチンのファーマコビジランスの更なる変革が訪れることを期待する.
著者
山越 健弘 小川 充洋 松村 健太 板坂 優希 宮崎 慎平 山越 康弘 ROLFE Peter 廣瀬 元 山越 憲一
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.237-247, 2012-04-10 (Released:2012-07-13)
参考文献数
40
被引用文献数
1

In this preliminary study, we examined in human volunteers the performance of the developed prototype device for non-invasive quantification of blood alcohol concentration (BAC) by near-infrared light which is highly transparent to the body. We aimed at applying the results to the final goal of developing a novel alcohol-based vehicle ignition-interlock device. Accumulating evidence shows that one of the ethyl alcohol absorption peaks in the near-infrared region is present at 1,185 nm. We combined this with our recent development of a non-invasive optical method for blood glucose measurement, which we call pulse glucometry, using blood volume pulsations in a finger within a cardiac cycle. Thus, we developed a novel method, pulse alcometry, for non-invasive measurement of BAC. We calculated second derivative values of optical density (ODλ”) to remove baseline over a band including three wavelengths, 1,150 nm, 1,185 nm, and 1,220 nm. Then, a simple linear regression analysis was performed with the measured ODλ” to predict BAC levels. In 3 healthy male volunteers, during alcohol intake and washout, periodic optical measurements using the present device were made simultaneously with collection of blood samples for in vitro BAC analysis. In leave-one-out cross validations within an individual, the measured BAC and the predicted BAC correlated well (r = 0.773∼0.846, mean absolute error = 0.134∼0.333mg/ml). We conclude that, from the results of this preliminary study, the new method appears to be able to estimate BAC levels non-invasively. However, further investigations in a larger group of subjects will be needed in order to determine fully the operational performance of this new measurement system.