著者
湯田 厚司 小川 由起子 荻原 仁美 鈴木 祐輔 太田 伸男 有方 雅彦 神前 英明 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.120, no.6, pp.833-840, 2017-06-20 (Released:2017-07-15)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

スギ花粉舌下免疫療法のヒノキ花粉飛散期への効果を検討した. 方法: スギ花粉舌下免疫療法 (SLIT) を行ったヒノキ花粉症合併180例 (平均37.0 ± 17.0歳, 男性105例, 女性75例, CAP スコアスギ4.6 ± 1.1, ヒノキ2.7 ± 0.8) を対象とした. スギ・ヒノキ花粉とも中等度飛散の2016年に日本アレルギー性鼻炎標準 QOL 調査票の QOL およびフェーススケール (FS) と, 症状薬物スコア (TNSMS) を花粉ピーク期に調査した. また, 花粉飛散後に両花粉期の効果をアンケート調査した. 結果: 飛散後アンケートで, 治療前にはスギ期で症状の強い例が多く, SLIT の効果良好例はスギ期68.7%とヒノキ期38.7%でスギ期に多かった. 両花粉期を比較すると, 同等効果42.2%であったが, ヒノキ期悪化が半数以上の54.9%にあった. 各調査項目の平均では両花粉期に有意差がなかったが, 個々の例で TNSMS スコア1以上悪化例が27.2%あり, スギ期軽症の FS 0または1の43.4%で FS が悪化した. 治療前にスギとヒノキ期に同等症状であった例の30.4%でヒノキ期に TNSMS が悪化した. 一方で, 治療前にヒノキ期症状の強かった8/30例 (26.7%) でヒノキ期に改善し, 効果例も認めた. 結論: スギ花粉舌下免疫療法はヒノキ花粉症に効果例と効果不十分例があり, ヒノキ期の悪化に注意が必要である.
著者
永井 賀子 小川 恭生 萩原 晃 大塚 康司 稲垣 太郎 河口 幸江 鈴木 衞 富山 俊一
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.58-65, 2015-04-30 (Released:2015-06-01)
参考文献数
23

Autoimmune inner ear disease (AIED) was reported by McCabe in 1979 and was characterized by episodic vertigo and fluctuating hearing loss. Some patients develop total deafness and severe disequilibrium which disturbs their activities of daily living (ADL). Steroids or immune suppressing agents are used to control symptoms, but they have to be given repeatedly, because the symptoms tend to recur. We analyzed 22 AIED patients diagnosed by the presence of a 68kDa protein. The patients with low grade hearing loss showed some recovery of their hearing, However, hearing recovery was not noted in any patient with severe hearing loss. It is important to diagnose AIED and start treatment as soon as possible.
著者
川崎 厚史 橋田 徳康 金山 慎太郎 小川 憲治
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.732-736, 2003-05-15

要約 鉄欠乏性貧血の3症例に網膜中心動静脈閉塞症が併発した。いずれも女性で,年齢は29歳,44歳,51歳,すべて片眼発症である。受診の動機は急性の視力低下または霧視であり,初診時の患眼の矯正視力は,0.02,1.0,0.8であった。眼底所見として桜実紅斑,動脈周囲の糸状網膜浮腫または限局性浮腫があり,蛍光眼底造影で網膜内の循環遅延があり,一過性の網膜中心動脈閉塞症と診断した。その後,視神経乳頭の発赤浮腫,網膜静脈の拡張蛇行,火炎状の網膜出血が生じ,網膜中心静脈閉塞症の所見を呈した。全例に血清鉄,フェリチン,ヘモグロビン,ヘマトクリット値の低下があった。鉄欠乏性貧血の原因である拒食症,胃潰瘍,不正性器出血がそれぞれにあった。鉄剤などの投与で貧血は軽快した。これに続いて視力と眼底所見は速やかに改善し,最終視力として0.3,1.5,1.2を得た。初診時視力が良好なほど視力転帰がよかった。
著者
平賀 良彦 大石 直樹 小島 敬史 和佐野 浩一郎 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.125-130, 2017 (Released:2019-02-13)
参考文献数
20

側頭骨の放射線骨壊死(ORN)は放射線照射後に生じる晩発性障害の一つで、しばしば治療に難渋する。今回我々は放射線照射後の難治性中耳炎に対し、中耳根本術に側頭筋弁での充填と外耳道閉鎖術を併用した手術(充填型中耳根本術)を施行することで耳漏を停止することができた症例を経験した。症例は74歳、女性。X-17年に頭蓋内軟骨性骨肉腫に対し手術および放射線治療後に難治性の左慢性中耳炎を発症し左難聴は徐々に進行し聾となった。持続する耳漏に対してX年に乳突削開術および鼓室形成術wo型を施行したが耳漏の改善は認めなかった。そこで、X+2年に充填型中耳根本術を施行したところ耳漏を停止することができ、患者のQOLを大きく改善することができた。本術式はORNに伴う難治性中耳炎に有効な術式である可能性が示唆された。
著者
湯浅 美千代 小川 妙子 石塚 敦子 鈴木 淳子 内村 順子 本田 淳子 本間 ヨシミ
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.73-81, 2006-03

高齢者専門急性期病棟における入院長期化の要因と退院支援の実際を,看護師の視点から明らかにし今後の課題を検討することを目的にフォーカス・グループ・インタビューを実施した。入院期間が長くなる要因として,【退院目標の提示困難】【退院先探索と調整のための時間消費】【入院を長期化させないアプローチ方法の未整備】【家族との退院をめぐるトラブル回避】【居心地のよい病院環境】【鈴木期ケースの退院支援対象からの除外】という6つのカテゴリーが,実施している退院支援の内容として,《退院目標の把握》《適切な退院先の早期探索》《チームアプローチによる適切な退院支援の確保・促進》《医師と患者・家族とのコミュニケーション促進》《病院への依存から自立への促し》という5つのカテゴリーがあげられた。高齢者専門急性期病棟の退院支援の課題として,(1)家族の思いの変化を予測した退院支援を考えていくこと,(2)現在行っている退院支援について看護師たちの経験を集約すること,(3)医療者のコミュニケーション能力を育成すること,(4)終末期にある高齢患者に対し,QOLも含めていかに対応していくかを考えていくこと,(5)病状予測や退院目標設定が困難な患者への退院支援について考えていくこと,が考えられた。
著者
小川 束
出版者
四日市大学
雑誌
四日市大学環境情報論集 (ISSN:13444883)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.233-244, 2003-03-31

The purpose of this paper is to examine the mathematics textbooks in China mainly from the historical point of view and to consider the significance of putting the historical teaching materials in the mathematics textbooks. From the historical viewpoint one may say that the historical descriptions taken up in Chinese mathematics textbooks are almost restricted within what related to China herself. It is also emphasized that the most essential significance of putting the historical teaching materials in the textbook is for pupils to be encouraged and yearned to study mathematics.
著者
伊福 美佐 小川 昭二郎
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
生活工学研究
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.82-85, 1999

キナクリドンは今世紀の初頭からLiebermannらドイツの科学者によって研究された物質であるが,アメリカのDu Pont社でフタロシアニン顔料に匹敵する優れた赤色顔料としての真価が見いだされ,にわかに注目を浴びてきた化合物である.近年では,着色材としての利用に関する研究だけでなく,機能性開発に関する研究もなされている.本稿では,キナクリドン顔料(線形トランスキナクリドン)の構造,物性,用途等についてまとめた.
著者
兼松 宜弘 大田 裕介 三尾 海斗 片岡 幸大 藤根 寛也 小川 智司 加藤 翔紀
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第34回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.81, 2018-07-01 (Released:2018-11-22)

本研究は,東山動物園のニシローランドゴリラ5頭の個体間関係の推移を通じ,個々のゴリラの成長過程や動物園の飼育環境下にあるゴリラ群の社会構造の特徴を明らかにすると同時に,今年で4年目を迎えた関高校の継続的な活動の一環として,貴重な動物園ゴリラ群の長期的なデータの確保に努めることも大きな目的としている。東山動植物園のニシローランドゴリラ群は,オトナオス(シャバーニ)とオトナメス2頭(ネネ,アイ),それぞれが生んだオス・メスのコドモ2頭(キヨマサ,アニー)の計5頭からなる。具体的な手法としては,一定時間内における個体間の接触の回数や種類,個体間のおおよその距離を,生徒がそれぞれ担当の個体を決めてチェック用シートに記録し,個体間関係に関する分析と考察を試みている。昨年度の研究では,核オスによる特定の個体(ネネ)への執拗な「いじめ行為」の消長や他の個体の反応に注目し観察を行った。今年度も引き続き,核オスによる「威嚇」「いじめ」の変化,他の個体の反応を追っている。他の霊長類と比べると,ゴリラはおとなしく行動もゆったりとしている。成長も緩やかであり,短期間で変化することはない。ゴリラの行動観察は,様々な制約のある高等学校部活動の研究対象としては,必ずしもふさわしくないのかも知れないが,見方を変えれば,長期的なスパンでの継続的観察が実現できれば,動物園ゴリラ群におけるコドモゴリラから若オスへの性成熟の過程のデータが確保できるため,この研究の大きな意義や必要性が生まれてくる。同じく,いまだ若オス的な行動をとるシャバーニが,成熟した核オスへと変貌を遂げるのか否か,コドモメスのアニーがどのような過程を経てオトナメスへと成長するのかについても,長期にわたる行動観察によって,その過程を明らかにできると考える。なお,本研究は,本校SGH活動の一環であり,中部学院大学竹ノ下祐二教授の助言を受けつつ進めている。

2 0 0 0 校訂筑後志

著者
杉山正仲 小川正格共編
出版者
知新堂
巻号頁・発行日
1907
著者
寺本 咲子 庭川 要 村岡 研太郎 小川 将宏 國枝 太史 松嵜 理登 山下 亮 松井 隆史 山口 雷蔵 鳶巣 賢一
出版者
THE JAPANESE UROLOGICAL ASSOCIATION
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.696-700, 2011-09-20
参考文献数
9
被引用文献数
3

患者は55歳男性.肉眼的血尿,右腰痛を契機に発見された右腎癌でリンパ節・骨・肺転移を認めた(cT1bN1M1).経腹膜的右腎摘除術を施行した.病理組織診断でCD10,P504S,CK19陽性でありTubulocystic carcinoma(pT3a)と診断した.転移巣に対する治療でSunitinibを投与し,CTで腫瘍縮小(部分奏功;PR)を認めた.術後12カ月現在増悪なく治療継続中である.Tubulocystic carcinomaはlow-grade collecting duct carcinomaとAminらが紹介したものに相当し,2004年のWorld Health Organization(WHO)分類に含まれていないまれな腫瘍である.組織学的には,腫瘍細胞は立方体から扁平の形状で嚢胞を取り囲んでおり,大きな核小体と好酸性か両染性の細胞質を有し,軽度の細胞異型があり,その中にHobnail型細胞も認められる.免疫組織学的には,Tubulocystic carcinomaは近位尿細管マーカー(CD10,P504S)と遠位尿細管マーカー/集合管マーカー(Parvalbumin,CK19)の両方に染色されるのが特徴である.この腫瘍は増殖性に乏しい病理組織所見を呈するが,転移・浸潤しやすい性質を持つとされる.転移に対する治療法は確立されていないが,本症例ではSunitinibが有効であった.<br>
著者
小川 力也 長田 芳和 紀平 肇
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第III部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.33-55, 2000-08
被引用文献数
3

日本の固有種イタセンパラ(コイ科タナゴ亜科)は, その狭い分布域と絶滅の危機から, 天然記念物と絶滅危惧IA類に位置づけられている。本種を河川の中で保護・増殖するためには, 本種と本種が卵を産みつける二枚貝が繁殖する環境の特徴を明らかにする必要がある。そこで今回は, 淀川に生息するイタセンパラと生息環境に関するこれまでの研究をレビューした。また, 文化庁と環境庁の許可を得て, 本種の産卵, 貝内の卵・仔魚のはじめての写真を掲載した。本種は秋に産卵し, 仔魚はほぼ半年の間貝内で越冬した後に泳出する。淀川のイタセンパラの本来の繁殖場所は, 下流域に発達した河川内氾濫原に存在する池(通称ワンド)の中でも, 本流から隔離された小型の浅い池であることが示唆された。それらの池の水位は, 伏流水を通じて本流の水位と同調して変動する。そのため, 池には本流水が冠水し直接流入する時期(増水時)と氾濫原内に低水位で孤立する時期(減水時)が季節的に繰り返される。イタセンパラの繁殖に関する生態学的研究は, この観点にたって行なうことが重要である。The Japanese endemic bitterling, Acheilognathus longipinnis Regan was designated as both a natural monument and a critically endangered species for the reason of its restricted distribution and a sense of crisis of extinction in Japan. It is evident that the investigations on habitats of A. longipinnis and mussels were necessary for the purpose of preservation of the bitterling. In this paper, we summarized the studies that were carried out at the Yodo River, Osaka Prefecture, Japan. The first photographs of egg deposition into a mussel and eggs/larvae in the mussel were also published by permission both of the Agency for Cultural Affirs and the Environmental Agency. A. longipinnis deposittheir eggs in autumn, and larvae swim out from the mussel in May and early June, after passing the winter in the mussel during a half year. It was suggested that A. longipinnis mainly reproduced in small and shallow pools in the floodplain formed in the lower reach of the Yodo River. The floodplain pools where isolated from the main channel were filled occasionally by river flooding mainly in early summer and autumn. On the other hand, a small water body was remained in the pools through groundwater seepage in the lower water state of the river in winter. We must reseach the habitats both of A. longipinnis and mussels from the viewpoint of seasonal fluctuations in water level of the floodplain pools.
著者
畠沢 政保 杉田 洋 小川 孝廣 瀬尾 宜時
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.70, no.689, pp.292-299, 2004-01-25 (Released:2011-03-03)
参考文献数
9
被引用文献数
15 31

A new type of thermoacoustic sound wave generator driven with the waste heat of a 4 cycle automobile gasoline engine is described. The exhaust-pipe connected sound wave generator, in which the hot heat exchanger is set in the exhaust pipe in order to recover the waste heat of exhaust gas, is proposed. A temperature of 780°C of exhaust gas in the exhaust is observed. In a conventional thermoacoustic sound wave generator, sound waves originate at a temperature of the hot heat exchanger, TH, of 200-300°C and become sufficient at 700°C. It is confirmed that the new generator generates sufficient sound waves and its performance is almost equal to that of the electric heater driven generator at a thermal input of 300 W, which corresponds to slightly more than 1% of the heat quantity of exhaust gas provided under the condition that the number of engine revolutions is 2 600 r.p.m. and that the throttle opening is 35%.
著者
岸野 重信 小川 順
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.738-744, 2013-11-01 (Released:2014-11-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1

乳酸菌は,プロバイオティクスとして様々な機能が報告されている馴染みの深い腸内細菌の一種である.しかし,腸内細菌に特異な様々な代謝についてはあまり研究がなされていない.筆者らは,乳酸菌の脂肪酸代謝を活用した共役脂肪酸生産について詳細に解析していく過程で,乳酸菌の不飽和脂肪酸飽和化代謝の解明に至った.本代謝は,複数の酵素が関与する複雑な代謝であり,特異な構造を有する希少脂肪酸を中間体としていることを明らかにした.また,これらの中間体の効率的な生産法を検討し,新たな希少脂肪酸ライブラリーの構築に成功した.
著者
沢 和弘 植田 祥平 相原 純 湊 和生 小川 徹
出版者
Atomic Energy Society of Japan
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.113-125, 2007 (Released:2012-03-07)
参考文献数
55
被引用文献数
1

Interest in the future hydrogen economy has prompted the research and development of the Very High-Temperature Gas-Cooled Reactor (VHTR). To achieve the targeted outlet gas temperature exceeding 950°C, material problems have yet to be solved. The development of advanced coated particle fuel is also due in view of the vulnerability of the SiC layer of conventional TRISO-coated particle fuel at temperatures exceeding 1,600°C. The coated particle fuel employing ZrC instead of SiC has been developed in JAEA. Although the past irradiation tests on the ZrC-coated particle fuel were exclusively on samples from the laboratory scale production, the promising results have been obtained. The properties, fabrication and inspection techniques as well as the results of irradiation and post-irradiation tests are reviewed. The post-irradiation heating tests at accident temperatures above 1,600°C revealed the durability of the ZrC-layer, which maintained the tightness to noble-gas and volatile metal fission products. From 2004, JAEA started (1) ZrC-coating process development by large-scale coater, (2) inspection method development of ZrC coating and (3) irradiation test and post irradiation experiment of ZrC coated particles under contract research which is entrusted to the JAEA and MEXT.