著者
金野 亮太 井上 修平 山本 正嘉
出版者
日本トレーニング科学会
雑誌
トレーニング科学 (ISSN:13494414)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.357-365, 2010

暑熱環境(気温35 ℃,湿度80%)に設定した人工気象室において,8名の自転車競技選手が長時間の自転車ペダリング運動を行い,その運動の途中で全身に冷水をかけて身体冷却を行った場合に,体温をはじめとする生理応答や,主観的な指標にどのような効果があるかを検討した.<br> 被験者は,レースで使用するロードレーサーを用いて,走行速度を40km/h に固定し,90 分間の運動を行った.この運動強度は乳酸閾値を超えないものであり,実際のレースにおける運動強度からみると,比較的弱い部類に属するものであった.被験者は,運動開始から60 分を経過したところで,全身に5 ℃の水をかぶる条件(以下,水かぶり)と,それを行わない対照条件の 2 通りを,ランダムな順序で行った.<br> その結果,水かぶりを行うことによって体温(直腸温度,平均皮膚温度)の上昇は抑制され,その効果は運動終了までの30 分間持続した.また水かぶり後には心拍数や酸素摂取量も低値を示し,運動効率の改善が窺えた.以上の結果から,暑熱環境下で行う水かぶりは,熱中症を予防したり,運動パフォーマンスを維持する上で,実用的で効果の高い手段であることが示唆された.
著者
伴 雅雄 及川 輝樹 山崎 誠子 後藤 章夫 山本 希 三浦 哲
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.131-138, 2019-06-30 (Released:2019-07-06)
参考文献数
27

Based on the history of volcanic activity of Zao stage VI, we examined possible courses of future activity of Zao volcano. All activities will start with precursory phenomena. Next, phreatic eruptions from Okama crater or other place inner part of Umanose caldera will occur, and may cause ballistic materials release, ash fall, pyroclastic surge, and lahar. The possibility of small scales edifice collapse and lava flow swelled out is very low but should be included. When the activity progresses, magmatic eruptions will be taken place from Goshikidake, and cause same phenomena as in the phreatic eruptions but larger in scale. The possibility magmatic eruption takes place without preceding phreatic eruption can not be excluded. Rarely, the activity will go up further and resulted in sub-Plinian eruption. Aside from the above sequence, larger scale phreatic eruption from Goshikidake area should be listed, although the possibility of this is very low.
著者
山本 忠宏 大塚 英志 石井 岳龍 橋本 英治 泉 政文 Tadahiro YAMAMOTO Eiji OHTSUKA Gakuryu ISHII Eiji HASHIMOTO Masafumi IZUMI
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2012
巻号頁・発行日
2012-11-30

本研究の目的は、まんがと映画の関係について、実際にまんがを映像化して研究資料自体を制作することと、作成した資料をもとに異なるメディウムである両者について検証を試みることである。すでにまんがと映画の関係については、多くの先行研究により様々な角度から検証が行われているが、それらを踏まえつつ新たな論点を探求することも視野に入れる。本論では、大塚英志原作、藤原カムイ作画『アンラッキーヤングメン』(角川書店、2004~6)の一部を逐語訳的に映像化した上で、すでに一部逐語訳的映像化を行った石ノ森章太郎『龍神沼』(講談社、1961)の映像と適宜比較検証することで特徴を明らかにするとともに、1960 年代と2000 年代の映画的手法における表現の変化についても考察していく。The objective of this case study is to compare and verify the relationship between the manga and the film created with manga as a base. The research about this process is carried out by many researchers previously. So, including the viewpoint of other researchers, I will add my own views to find a new approach to the issue of these studies.In this paper, I am converting the part of manga written by Eiji OHTSUKA and Kamui FUJIWARA titled "UNLUCKY YOUNGMEN" and compare it to the manga based film" RYUJINNUMA" previously converted by myself which was written by Shotaro ISHINOMORI in 1961. Comparing and verifying these two films conversion process will find out the difference between the changes of the method of film in manga from 1960s' to 2000s'.
著者
山本 啓司 下次 圭太 土居 真輔 ハフィーズ ウル レーマン
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.8, pp.468-471, 2011-08-15 (Released:2011-12-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

薩摩半島中央部の八瀬尾地域(四万十帯北帯)には蛇紋岩類が分布することが知られている.従来「貫入岩体」と見なされていた蛇紋岩類は,産状によって蛇紋岩体,蛇紋岩孤立岩塊および蛇紋岩主体の崩壊堆積物に区別できる.蛇紋岩体は,ほぼ水平もしくは浅い皿状の構造的境界面を介して西傾斜の砂岩層・砂岩泥岩互層(四万十累層群佐伯亜層群)の上に載っていて,岩体基底部の変形構造は上位側の東方への相対的変位を示唆する.これらの観察結果から蛇紋岩体は西側から移動してきて佐伯亜層群の上に定置したクリッペであると解釈できる.九州西南部の地体構造と蛇紋岩類の分布状況から推定すると,蛇紋岩クリッペの後背地は秩父帯の黒瀬川帯とされる領域にあると考えられる.
著者
山本 孝
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.871-875, 2016-07-31 (Released:2016-12-28)
参考文献数
12

虚血性心疾患の治療において,抗血小板療法は必須である。抗血小板薬は主にステント血栓症の予防に使用される。冠動脈ステントは再狭窄抑制型の薬剤溶出性ステント(DES)が主流で,DES留置後12ヵ月間はアスピリン+チエノピリジン系抗血小板薬,その後はアスピリン単剤で投与することが推奨されている。これら薬剤には拮抗薬はなく,抗血小板作用の回避には血小板寿命を考慮した7~14日間の休薬しかない。一方,抗凝固薬は主に心房細動の脳梗塞予防に使用される。ワルファリンが使用されてきたが,最近では新規抗凝固薬(NOAC)の使用が増加してきている。NOACは半減期が短く,手術前の中止期間は短期間でよい。抗血栓薬内服中の患者のリスクは一様でないため,中止による合併症および出血リスクについて,関連する複数科の医師がコミュニケーションをとって検討し,適宜対処することが重要である。
著者
川村 隆一 筆保 弘徳 山本 勝 富田 裕之 森本 昭彦 柳瀬 亘 吉田 聡 宮本 佳明
出版者
九州大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2019-06-28

台風と爆弾低気圧による被害事例が日本全国広範囲で多発している。両ストームの発達・進路予測の改善、関連するストーム起源の極端現象の発生予測、そして変わりゆく気候環境下で両ストームの活動度がどのように変調するのかを解明する事は減災の観点からも喫緊の課題である。その問題解決に大きな不確実性をもたらしているのが黒潮・黒潮続流が熱・水蒸気供給を介して両ストームに与える影響である。暖水渦のような海洋中規模渦と低気圧の空間規模は1 桁程度異なっており、スケール間大気海洋相互作用の実態は依然として未解明である。そこで本課題では台風と爆弾低気圧の発達プロセスに果たす中緯度大気海洋相互作用の包括的研究を展開する。
著者
日下部 明彦 野里 洵子 平野 和恵 齋藤 直裕 池永 恵子 櫁柑 富貴子 結束 貴臣 松浦 哲也 吉見 明香 内藤 明美 沖田 将人 稲森 正彦 山本 裕司 森田 達也
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.906-910, 2017 (Released:2017-03-24)
参考文献数
13

死亡診断時の医師の立ち居振る舞いは,その後の遺族の悲嘆に大きく影響を及ぼすと考えられているが,現在の医学教育プログラムのなかには,死亡診断時についての教育内容はほとんど含まれていない.われわれは遺族アンケートを基に「地域の多職種でつくった死亡診断時の医師の立ち振る舞いについてのガイドブック」(以下ガイドブック)を作成した.本ガイドブックを用い,横浜市立大学医学部4年次生に対し授業を行い,授業前後で死亡診断時の困難感,自己実践の可能性を評価するアンケート調査を行い解析した.有効回答を得た39名において死亡確認についての困難感についての項目は,「死亡確認の具体的な方法」が最も高く,89.5%であった.しかし,授業前後では,死亡診断時における自己実践を評価する項目で有意な改善がみられた.死亡診断時の医師の立ち居振る舞いについての卒前教育にわれわれが作成したガイドブックは有効な可能性が示唆された.
著者
鷲崎 弘宜 夏 天 鎌田 夏実 大久保 隆夫 小形 真平 海谷 治彦 加藤 岳久 鹿糠 秀行 田中 昂文 櫨山 淳雄 山本 暖 吉岡 信和 吉野 雅之
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE) (ISSN:21888825)
巻号頁・発行日
vol.2018-SE-198, no.25, pp.1-7, 2018-03-02

セキュリティパターンとは,セキュアなソフトウェアシステムの開発運用における特定の文脈上で繰り返されるセキュリティに関する問題と解決を一定の抽象度でまとめたものである.1990 年代後半からこれまでに 500 近くのセキュリティパターンの特定と蓄積,共有がなされている.それに伴い,それらの適用や抽出といった技術研究も進められているが,その傾向や全体像,技術的課題および展望は明らかではない.そこで我々は最初に,セキュリティパターン研究を分類整理する際の基本的な用語間の関係を整理した概念モデルを提案する.さらに我々は同モデルに基づいた研究の分類体系 (タクソノミ) を提案し,同分類体系に基づき 200 を超える文献の内容を分類した結果を報告する.
著者
山本 進
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.E0321-E0321, 2008

【目的】<BR> 鯖江市において、市民に対する健康増進、メタボリックシンドローム予防・改善のための健康体操を考案し、普及ならびに実践活動を行っている。今回、理学療法士の視点からの運動内容の選択、メディア媒体を活用した普及活動の効果などにおいて、若干の知見が得られたので報告する。<BR>【方法】<BR> 今回、家庭における運動習慣の継続に主眼を置き、短時間で、効率よく、意味のある運動を、楽しくできる、簡単な健康体操「メタボリック55」を考案し、普及・実践を図った。住民アンケートをもとに、体操は5種類とし、それぞれを1分間ずつ行い、合計5分で終了することにした。内容は、1良い姿勢を作るための背筋強化 2膝関節周囲筋のコーディネーションを目的としたクウォータースクワット 3心肺機能の向上を目的とした腕振り運動 4下肢の筋力強化を目的としたレッグレンジ(アイーンのポーズ) 5大腿四頭筋、腸腰筋の強化による解糖能力向上を目的としたラルゲットゲイトを用いた。<BR> 普及方法として、講座・イベント等での直接指導、ペーパー資料の配布、鯖江市ホームページでの動画配信による紹介等を積極的に行なった。<BR>【結果】<BR> 鯖江市ホームページによる動画配信には、配信開始2ヶ月で約2万件のアクセスがあり、市内外、県外からの問合せが多く寄せられた。各種ブログやホームぺージでの紹介や新聞7社、テレビ3社、ラジオ2社からの取材を受け、町内出前講座の依頼も前年比の3倍となり、市民の関心をおおいに高める結果となった。運動後の爽快感と心地よい疲労感が好評となり、「これなら続けられる」と、家庭や職場で継続した実践を得ることができた。加えて、体重や血糖値・コレステロール値の改善、関節痛緩和などの効果も多く寄せられた。<BR> 高齢者などインターネット環境が整っていない状況にも対応し、DVD等のメディア媒体を作成し配布した。また小学校等での取組みもあり、幅広い年齢層に浸透した。<BR>【考察・まとめ】<BR> 運動習慣づくりには、最初の「きっかけ」と継続への「仕掛け」、実践による「効果」が必要であると考える。そのためにも、理学療法士としての視点からの効果の出る環境設定、説明力、表現力、企画力等が求められていると考える。今後も情報媒体を選択しながら、わかりやすく、意味のある、楽しい健康づくりを推進していきたい。<BR> 鯖江市ホームページ http://www.city.sabae.fukui.jp/ (ちかもんくんと一緒に健康体操)
著者
小坂 丈予 平林 順一 山本 雅弘 野上 健治
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.131-154, 1998-08-31
参考文献数
24
被引用文献数
3

Volcanic gas disasters around active volcanoes all over Japan have occurred 27 times and 45 people have been killed since 1950. Configuration of the ground near fumarolic areas and weather conditions are the principal factors in gas accidents. Making gas-hazard maps, setting of restricted zones and installation of automatic alarm system with continuous monitoring are effective measures to prevent volcanic gas disasters. Knowledge of toxicity of volcanic gases and first aid are also helpful in reducing volcanic gas disasters.
著者
小島 一範 山本 亜希江 鎌井 大輔 槌谷 祐二 尾嶋 紗季 仕田中 美穂 渡邉 進
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.315-319, 2016 (Released:2016-04-29)
参考文献数
19
被引用文献数
1

〔目的〕訪問リハビリテーション利用者における,足趾把持力のバランス能力に対する重要性を検討するためにこれらの間の関係を調べることとした.〔対象〕立位姿勢を30秒以上とれる訪問リハビリテーションのサービスを利用している者33名とした.〔方法〕足趾把持力と開眼での片脚立位時間を左右ともに3回測定しその中での最大値を採用した.足趾把持力と片脚立位時間との関係をSpearmanの順位相関係数により解析した.〔結果〕足趾把持力と片脚立位時間との相関係数はr=0.776と正の高い値を示した.〔結語〕今回明確化された足趾把持力と片脚立位時間との高い相関は,足趾把持力のバランス能力における重要性を示す.
著者
山本 利一 本郷 健 本村 猛能 永井 克昇
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.3-12, 2016

本研究は,プログラミング教育に関する教育的意義やその効果を先行研究から整理し,今後それらを推進するための基本的な知見を得ることを目的とする.そのために,初等中等教育におけるプログラミング教育の位置づけを学習指導要領で確認した後,先行研究を整理した.その結果,プログラミング教育の教育的意義や学習効果は,①新たなものを生み出したり,難しいものに挑戦しようとする探究力,②アルゴリズム的思考,論理的思考力,③物事や自己の知識に関する理解力,④自分の考えや感情が発信できる表現力や説得力,⑤知恵を共有したり他者の理解や協力して物事を進めたりする力,⑥プログラミングを通して情報的なものの見方や考え方を身に付けることができる,ことであることが示された.
著者
近藤 勲 河崎 雅人 山本 尚武 河原 美智子 平家 浩子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 24 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.327-328, 2000-07-29 (Released:2018-05-16)
参考文献数
1

視覚並びに聴覚サブリミナル効果の有無について検証するために,情動の変化を皮膚電気活動(EDA:Electrodermal Activity)並びに精神性発汗(Emotional Sweating)に変換して測定し、その結果をもとに検討した.標本には、映像情報としては,中性刺激と見なせる構成のビデオ映像約4.5分,及び7分間に恐怖心を惹起させると期待される画像を1/30秒間ランダムに14,及び26ヵ所に挿入し視聴させた.被験者は男女学生合わせて20名である.音声・音響情報としては,クラシック音楽に人間の声と動物の声を挿入したテープを20名の被験者に聴取させた.この結果,前者の被験者については,何らかの情動の変化が検出されが、後者の被験者については明確な変化は見られなかった.したがって,映像情報については、サブリミナル効果の存在を否定できないが、音声情報については判別できないという結果を得た.