著者
山田 香
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.97, pp.133-157, 2015-12-18 (Released:2022-01-14)
参考文献数
8

本稿は、「見えないスティグマ」を持つ四〇歳代女性関節リウマチ(以下RA)患者の経験における、他者との相互行為の特徴とその変化について整理を行い、RA患者の印象操作を中心とした生活技法獲得のプロセスを明らかにするものである。その際、ゴフマンのスティグマの可視性と不可視性をめぐる理論を参考に、RA患者のアイデンティティ管理の様相を解釈する。 一目で障害があるとわかるような著しい関節の変形や跛行がなく「健康そうに見える」若いRA患者は、スティグマが付与されることと身体への過剰な負担を回避するための戦略として、他者に対してRAの可視性・不可視性を場面に応じてある程度操作できるようになっていく。日々の生活における効果的なまたは非効果的な自己管理の経験は、よりよい疾患管理方法を患者自身に示唆するものであると同時に、RAとともに生きる自己を受容する機会にもなっていた。 慢性疾患患者のもつスティグマは、それが「見えないスティグマ」であるからこそ、スティグマをめぐる他者との駆け引きは複雑なものとなり、生活空間の分割を通した「見せる/見せない」の選択権の行使がなされることになる。言い換えれば、これらのことを自己のコントロール下に置けるようになることが、多元的な役割を持つ生活者としての慢性疾患患者の生活技法の獲得であるといえる。
著者
井藤 雄一 カール ストーン 山田 雅之 宮崎 慎也
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.J413-J416, 2013 (Released:2013-10-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

Art making use of digital noise and errors has been exhibited in recent years. Many of these works have been classified as “glitch” and are forming a new trend in multimedia art. “Datamoshing”, using noise or errors in video imagery, is a technique in the field of glitch art. While one can produce a video that is a unique representation of datamoshing, real-time datamoshing using input from web cameras has not been achieved. Software is proposed for using a web camera to extemporarily datamosh video.
著者
塚田 啓二 神鳥 明彦 宮下 豪 山田 さつき 堀米 仁志 寺田 康 三井 利夫 山口 巖
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.423-431, 2001-05-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
19

超伝導量子干渉素子SQUID(superconducting quantum interference device)を用いた心磁計を開発し,胎児から成人に至るまでの心臓の電気生理学的活動に伴って発生する磁場が多点同時計測できるようになった.ここで,磁場計測(心磁図)の特徴について,体表面での電位計測(心電図)と比較考察した.体内での導電率の不均一性および低導電率により心電図で困難であった背面側の情報や胎児の心電情報が,磁場では信号の減衰がなく計測できることがわかった.また,心磁計測により心臓内の電流を二次元投射された画像を得るために,従来の体表面に垂直な法線成分表示に加え,解析的に算出した接線成分の同時表示を行った.これにより,心筋での複数興奮部位の存在,不整脈における興奮過程や,早期興奮部位の推定が可能になった.また,虚血性心疾患による心筋各部位での再分極や脱分極における電流分布の異常性を,電流積分図により判定が容易になった.これら,胎児心磁,複数興奮部位の視覚化,不整脈起源の画像化,虚血性心筋における異常電流分布マッピング等について具体例を示し,心磁の特徴について報告する.
著者
坂本 祐太 甘利 貴志 寄持 貴代 山田 徹 小野 美奈
出版者
日本ヘルスサポート学会
雑誌
日本ヘルスサポート学会年報 (ISSN:21882924)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.25-32, 2019 (Released:2020-01-11)
参考文献数
25

目的:地域在住高齢者の5 回立ち上がりテスト(Sit to Stand-5、以下、SS-5)におけるQuality Of Life (以下、QOL)低下のカットオフ値を算出する。方法:一次介護予防事業に参加した65 歳以上の参加者155 名を対象に、SS-5 とEuro QOL 5 dimension の項目で主観的にQOL を評価した。Euro QOL 5 dimension は項目を正常と低下の2 群とした。カットオフ値はReceiver Operating Characteristic曲線のAria under curve (以下、AUC)により算出した。結果:SS-5 のカットオフ値は、それぞれ「移動の程度」で10.0 秒(AUC=0.72)、「普段の活動」で10.0 秒(AUC=0.77)、「痛み/不快感」で8.3秒(AUC=0.77)であった。結論:この研究ではSS-5 のカットオフ値を検証した。SS-5 におけるQOL 低下のカットオフ値は下肢とQOL の関連を示し、運動の動機づけするための具体的な目標値となる可能性が有る。
著者
山田 永子 中村 剛
出版者
日本スポーツ運動学会
雑誌
スポーツ運動学研究 (ISSN:24345636)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.1-20, 2018-03-13 (Released:2020-05-08)
参考文献数
24

Notational analyses and observation systems provide useful information about opponents in sports. Game analyses are often reported, but how an individual athlete analyzes players before a match is unclear. The purpose of this study was to reveal the types of intervening abilities an individual athlete analyzes based on a phenomenologic interview. The subject was an elite female handball goalkeeper. The subject was questioned about the ‘what’ and ’how’ of shots her analysis. Results  What; Shooters’ characteristics of kinaestic intentionality, shooters’ grasp and intuition, and minimum images that she would see when standing in front of the goal. How; By the viewpoint of shooter and goalkeeper alternately. From the viewpoint of shooter not only visualize but also with physical feeling when shooting. The viewpoint of goalie is the shooters’ movements from whole body shooting movements to detailed movements, and back to whole body movements.
著者
山田 良透 Yamada Yoshiyuki
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告: 宇宙科学情報解析論文誌: 第5号 = JAXA Research and Development Report: Journal of Space Science Informatics Japan: Volume 5 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-15-006, pp.43-49, 2016-03-10

Nano-JASMINEは,近年急速に進歩している超小型衛星を利用して,高精度な星の位置決定の観測をしようという試みである.Nano-JASMINEの目指す精度は3ミリ秒角(3mas),1.5×10(exp -8)radである.衛星の姿勢センサーをみると,大型衛星では1秒角(1/3600 度)程度が達成されるのに対して,超小型衛星では1分角(1/60度)程度の姿勢決定精度しか持たない.大型衛星に比べると性能の低い機器を用いた衛星で,高精度観測を達成するカギは,データ解析の役割の重要性である.Nano-JASMINEにおけるデータ解析,特に姿勢モデルのパラメータの選択に関して報告する.
著者
町田 保 山田 みどり 田中 光昭
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.41(1990-CG-044), pp.1-6, 1990-05-18

放送の現場において実際に使用したリアルタイム3Dキャラクターアニメーションシステムに関して述べる。システムの実現は、グラフィックワークステーションとデータ・グローブを用いて構築した。データグローブをヒューマンインターフェースとして用いることにより従来のキーフレームアニメーションでは不可能であった効果を得ることが出来た。これは、アニメーションのタイミングを人間がリアルタイムに対話的に制御することが可能になった点と、それにともない人間の演技を演出するのに近い形でアニメーションの演出が行えるようになったことである。
著者
荻野 隆史 福江 靖 岸 大次郎 小平 明弘 山田 拓郎 萩原 周一 大嶋 清宏 飯野 佑一
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.365-368, 2013-11-01 (Released:2013-12-11)
参考文献数
3

症例は37歳, 男性. 主訴は意識障害. 既往歴は双極性うつ病で精神科通院中であった. 家族との会話中に突然興奮状態となりベンゾジアゼピン系薬剤を大量服薬したため当院に救急搬送された. 内服した薬剤は, ロヒプノール (1) 60錠, レンドルミン (0.25) 30錠, デパス (0.5) 14錠, レスリン (25) 14錠であった. 来院時所見ではバイタル等は問題なかったが, 入院後経過は服薬後11時間30分後に呼吸抑制が出現したため気管挿管を行った. ベンゾジアゼピン薬剤血中濃度遷延した原因は様々な理由が考えられるが, ベンゾジアゼピンは多く使用されている薬剤であり致死率も低いとされているが, 大量服薬後は血中濃度が遷延するため, 人工呼吸器が必要な症例もあり, 数日間は呼吸状態に注意すべきと考えられた.
著者
安斎 勇樹 塩瀬 隆之 山田 小百合 水町 衣里
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Suppl., pp.97-100, 2013-12-20 (Released:2016-08-10)

本研究の目的は,視覚障害者をリードユーザーとしたインクルーシブデザインワークショップにおいて,障害者に対する晴眼者の先入観を取り除き,共感的理解を持ちながらコミュニケーションを取ることができるようなアイスブレイク手法を提案することである.「視覚が奪われた状態で,リードユーザーが日常経験するような生活作業に取り組み,リードユーザーから支援を受ける」というアイスブレイク手法を考案し,この手法に基づく場合とそうでない場合の参加者の発話を比較したところ,考案した手法に一定の効果があることが示された.
著者
中村 博昭 鳥居 猛 鈴木 武史 吉野 雄二 山田 裕史 松崎 克彦 廣川 真男 石川 佳弘
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

昨年度に基礎を確立した複素および1進の反復積分の関数等式の導出法(Wojtkowiak氏との共同研究)を延長して,具体的な実例計算をさらに検証した.とりわけ古典的な高次対数関数について知られている分布関係式(distribution relation)の1進版を導出することに成功した.分布関係式は,様々な特殊値を代入することで,高次対数関数の特殊値の間に成立する様々な関係式を組織的に生み出す重要なものであり,1進の場合にも並行してガロア群上の関数族(1-コチェイン)を統御する要となることが期待されるが,前年度までに得られた関数等式との整合性についても検証を行った.8月にケンブリッジのニュートン数理科学研究所で行われた研究集会"Anabelian Geometry"において口頭発表を行った.このときの講演に参加していたH.Gangl氏,P.Deligne氏から今後の研究指針を考える上で有用になると思われるコメントを頂戴することが出来た.また分布関係式の低次項の解消問題に関連して,有理的な道に沿った解析接続の概念にっいて考察を進める必要が生じた.こうしたテーマに関連して研究分担者の鳥居氏には,有理ホモトピー論に関する情報収集を担当していただき,また研究分担者の鈴木氏には,量子代数やKZ方程式との関連で組みひも群の数理についての情報収集を担当していただいた.以上の研究成果の一部は,共同研究者のWojtkowiak氏と協力して,"On distribution formula of complex and 1-adic polylogarithms"という仮題の草稿におおよその骨子をまとめたが,まだ完成に至っていない.周辺にやり残した問題(楕円ポリログ版など)もあり,これらについて一定の目処をつけてから公表までの工程を相談する予定になっている.
著者
山田 祥子
出版者
日本北方言語学会
雑誌
北方言語研究 (ISSN:21857121)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-106, 2023-03-20

The present publication aims to make available as a primary source the sound recordings of the Ewenki language (one of the Tungusic languages) taken from Ms. Ekaterina A. BORISOVA in Sakhalin Oblast, Russian Federation, during May-July 2010. Ms. BORISOVA was born in 1949 in Ayan-Maya (or Ayan-Mai) district that is located in the northern part of the Khabarovsk region. The Ewenki language she speaks is believed to be a dialect acquired in her homeland. Based on the geographical condition, it can be assumed to be the Ayan-Maya (or Ayan-Mai) dialect of the Eastern group of dialects, but linguistic features need to be closely observed for more accurate identification of the dialect. The present sound materials contain the followings: 1. Basic vocaburary 2. Numbers 3. Basic conversational expressions 4. Sample sentences based on a questionnaire 5. Text: my background 6. Text: dad, me, and our dog 7. Text: a story about wolves trying to attack reindeer 8. Text: a day in early summer 9. Text: a place, where wild animals gather 10. Text: the new horizon 11. Text: most important is the health of reindeer 12. Text: solonetz 13. Text: my reindeer 14. Text: Manchurian wapiti 15. Text: a bear and a chipmunk (from a Nanai tale) The phonetic transcription, Russian translation, Japanese translation, and (for chapters 4-14 only) the speaker’s own Russian transcription are provided as indexes to the sound materials.
著者
大野 能之 樋坂 章博 山田 麻衣子 山本 武人 鈴木 洋史
出版者
一般社団法人 日本腎臓病薬物療法学会
雑誌
日本腎臓病薬物療法学会誌 (ISSN:21870411)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.119-130, 2012 (Released:2018-04-02)
参考文献数
29

腎機能障害時には、各薬剤の腎排泄寄与率を正しく把握しておく必要がある。腎排泄寄与率とは、全身クリアランスに対する腎のクリアランスの割合を指す。この時重要なのが、基本的には未変化体の尿中排泄率である。不活性の代謝物を含めた腎排泄率が高くても、活性本体の未変化体の排泄が少なければ、腎機能の低下は薬効にさほど影響しない。ただし、内服薬の場合は、投与された薬剤が全身循環する割合、すなわちバイオアベイラビリティを考慮し、補正しなければならない。その他、腎から排泄される代謝物に薬効や毒性がある場合は、腎機能に応じて投与量を調整する必要がある。また、特に血中濃度半減期が極端に長い薬剤の場合は、体内から排泄が終了するまで、十分時間をとって観察されたデータを用いるべきである。 腎機能障害がある場合に、そうでない場合と同程度の血中濃度を維持する方法としては、一回あたりの投与量の減量と、一回あたりの投与量の減量はせず投与間隔を延長をする方法の2つが考えられる。投与量の調整は比較的簡便である一方、薬剤によっては血中濃度が定常状態に達するまでに時間を要することが懸念される。このような場合、速やかな効果発現を求めるのであれば、治療初期は通常用量で使用し、血中濃度が治療濃度域に達した後に減量するなどの対応が必要になる。 投与間隔を調整する場合には、1 回の用量は変わらないため、血中濃度のピーク値は通常使用時と同程度まで上がり、投与間隔をあける分、トラフ値も同程度となる。しかし、高濃度または低濃度の時間が継続するため、効果や副作用の面から望ましくない場合もある。こうした長所、短所を理解したうえで、個々の薬剤及び患者ごとに適切な投与設計を行うことが重要である。
著者
山田 弘司
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
pp.62.1.5, (Released:2012-06-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1

This study surveys dairy farmers' ways of raising, sense of animal welfare, and emotional impressions on their cows, and discusses their personification to livestock in contrast with that to companion animals. The farmers have professional knowledge and skills to feed and handle the cows. They get a living from keeping cows, considering the cost and benefit. This economy-based view sometimes leads to the desertion of treatment on disordered livestock. Companion animal owners usually keep their animals with no such economy-based but emotion-based view. Farmers' “employer-employee” relationship to their cows would interfere with the personification attitudes. This author compared the attitudes of 187 dairy farmers and 218 collage students, reveals the dairy farmers show more sensitivity to animal welfare and more favorable impression and stronger personification, such as “child-like” and “family-like” views. Thus emotion-based attitudes and the personification would be caused in any situations with human-animal interactions, regardless of the roles and the professional knowledge of animals. As a calming effect of handling for experimental animals and decreased escape distance on intimately reared cows show, animals interacted with human also have the emotion-based affection or emotional bond.
著者
山田 典子
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.235-241, 2022-06-20 (Released:2022-06-29)
参考文献数
12
被引用文献数
1

背景.新型コロナウィルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)ワクチン接種の有害事象として血栓症が報告されている.ワクチン接種後に肺血栓塞栓症を発症した原発性肺癌の切除例を経験した.症例.74歳男性.COVID-19ワクチン2回目接種後3日目より息切れが出現した.単純CTでは左上葉に37 mm大の結節を認めるのみであった.9日目に症状が増悪し酸素飽和度89%,D-dimer 25.9 μg/ml,造影CTで両側肺動脈血栓,左膝窩動静脈血栓を認めた.アピキサバン内服開始5日目には酸素不要となり,D-dimerも7.4 μg/mlと低下した.左上葉結節は原発性肺癌T2bN1M0 stage IIBと診断した.血栓消失とD-dimer正常化を確認し,肺血栓塞栓症発症後3か月目に胸腔鏡下左上葉切除術を施行した.肺動脈の血管鞘は肥厚し剥離に難渋した.術後血栓症の再発は認めていない.結論.COVID-19ワクチン接種後の血栓症は,稀であるが重症例が多く致死率も高いと言われている.今後有害事象を伴った肺癌症例も増加すると予想され,病態解明や治療方針の確立が期待される.