著者
田中 沙織 銅谷 賢治 岡田 剛 上田 一貴 岡本 泰昌 山脇 成人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.157, pp.37-42, 2002-06-20

強化学習において「メタパラメタ」の設定は非常に重要かつ困難な問題である.本研究では神経修飾物質のセロトニンが報酬予測の時間スケールを決定するという仮説の検証に向けた準備実験を行った.長期と短期の報酬予測を行うタスクを用意し,実行中の脳活動をfMRIにより測定したところ,長期の報酬予測では視床下核,視床背内側核,淡蒼球などの基底核と,皮質では帯状回後部,前頭前野,頭頂後頭側頭連合野に顕著な活動が見られた.これに対し,短期の報酬予測では被核,帯状回前部に目立った活動が見られた。これらの結果は,時間スケールの異なる報酬予測は,異なるネットワークを介して行われていることを示唆していた。さらに強化学習理論に基づいた解析を行ったところ,長期の報酬の予測誤差に関連する部位は視床下核,淡蒼球であった.この結果は,大脳基底核の強化学習モデルを支持するとともに,さらに機能ごとに詳細化されたモデルを構築するうえで重要な手がかりになることと思われる.
著者
安間 文彦 古谷 公則 岡本 敏雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.88, pp.63-68, 2008-06-07

テキスト主体の教材を学習する際,学習した内容を定着させるために視覚的な表現方法を用いて概念の整理を行わせることは有効であると考えられる.本研究では,学習者がeラーニングにおいてテキスト主体のコンテンツを学習する際に概念グラフを生成させることにより学習支援が可能なシステムを提案する.システムは,学習者の概念整理学習の結果を基に学習者の理解状態を同定することができるため,理解度に応じた支援が可能となる.さらに本研究では,コンテンツの内容を十分に理解している学習者に対して,Web上から抽出したコンテンツの環知識集合を提示する.その結果として学習者の知識獲得を支援することが可能になると考える.
著者
川谷 宗之 岡本 英彰 松田 一人 北川 哲 大西秀志 番原 睦則 田村 直之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.61-61, 2005-04-15

制約プログラミングとは,「ユーザは解決したい問題を制約の形で宣言的に記述するだけで,あとは制約解消系がその制約を満たす解を求めてくれる」という問題解決手法であり,近年注目を集めている.1990 年代には商用の制約解消系が登場し,これまで制約プログラミング手法に基づく生産スケジューリング,資源割当てなどの,実用的なシステムが開発されている.しかしながら,大規模な問題に対しては,制約解消系の処理に大きな計算量が必要とされるという問題がある.一方,近年の急速なネットワークインフラの高速化,普及を受けて新しい分散処理形態であるGrid が注目を集めている.我々の研究チームでは,Grid 計算環境に制約解消系を実装することでそのパフォーマンスを向上させることを目的とし,Grid に適した制約解消系の設計および実装を進めている.本発表では,その一環として実装を行ったGrid 計算環境上の2 つの制約解消系について述べる.まずSunGrid Engine(S.G.E.)上の制約解消系の実装,次にGlobus Toolkit を用いた制約解消系の実装について説明し,最後に,これらの制約解消系と単体計算機上の制約解消系を用いてパフォーマンス比較を行った結果を示す.ベンチマークにはよく知られているJob Shop Scheduling 問題などを用いた.得られた結果のうち,多くの場合において,今回の2 つの制約解消系が単体の計算機上の制約解消系より良い結果を示しており,制約解消系をGrid 計算環境上に実装することによる有効性は十分にあると結論付ける.In constraint programming, all you have to do is to define problems as sets of constraint declaratively, and then, constraint solvers search solutions. Commercial constraint solvers appeared in 1990s and have been used for production scheduling, resource allocation, and others. Constraint solving systems are useful but there are some issues. One of them is that they need much computational power to solve large scaled problems. Meanwhile, the Grid computing is a hot topic on the recent spread of the network infrastructure. In this presentation, we show some experimental results of two constraint solving systems on the Grid. We have developed these two systems on Sun Grid Engine and Globus Toolkit respectively. In each system, constraint solvers are implemented using Cream developed by our group. Cream is a Java class library for constraint programming and provides various optimization algorithms such as Simulated Annealing, Taboo Search, etc. We use Job Shop Scheduling Problem as benchmarks. In performance, our systems on the Grid gave nice speedup compared with Cream on a single machine.
著者
二宮 利江 岡本 敏雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.88, pp.27-31, 2008-06-07

分散認知を含む社会的分散活動における知識創造プロセスの記述方法として、オブジェクト指向ペトリネットを用いることを提案した。特に教育活動を記述するために、Learning Design Information Modelとの整合性を図り、2つの特徴的なモデルを記述した。このモデルから、知識創造プロセスがデッドロックに陥るパターンを事前予測し、その回避対策をモデルに基づく実践で検証した。実践結果より、構造化された知識の獲得を目的とした活動においては、学習目標に関連した情報を埋め込んだ人工媒介物が、活動の推進を促すことを示した。
著者
鈴木 宏正 岡本 基 金井 崇
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.70, pp.1-6, 1999-08-23

三角形メッシュモデルを、特に低価格ハードウェア等で、効率的に描画するためには、グラフィックスパイプラインに発行される頂点数を削減することが重要であり、代表的な方法として、PM表現(Progressive Mesh)と頂点共有表現がある。前者は、ポリゴンの可視性に注目して、動的にモデルの詳細度を変更するLOD (level of Detail)の一種であるが、複雑なデータ構造を必要とする。一方後者は、連続する三角形で頂点を共有するもので、データ構造が単純でまたメモリー効率もよく、広く利用されている。しかし、原理的に1枚1枚の面の生成削除を行うPMに適用することは難しい。本研究では、頂点共有表現の一つであるFAN構造に対して、PM的なLODを適用するProgressive Fan表現法について提案する。試作システムによって頂点発行数を40%程度削減できるLODができることを示した。For efficient rendering of triangular meshes, particularly on a low level graphics hardware, it is critical to reduce the number of vertices passed to the graphics pipeline. Two types of approaches have been used, PM (Progressive Mesh) and vertex sharing by STRIP and FAN structures. The former is a kind of LOD (level of detail) technique, which can dynamically controls the number of vertices according to the visibility of the model. It, however, requires complex polygonal representation. The latter is a traditional technique for representing polygons in a simple data structure of small amount of memory, but does not easily fit to LOD scheme. This paper proposes a LOD technique named Progressive Fan based on FAN data structure. A prototype system is developed to demonstrate that the technique can reduce the number of vertices passed to the pipeline by about 40% in LOD process.
著者
本田 学 新藤 純子 岡本 勝男 川島 博之
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.157-165, 2008-07-10

都市化や高齢化といった人口構成の変化を考慮し,中国の食料需要量を省市自治区・都市農村別に予測した。予測モデルは人口部門と食料需要部門から成る。人口部門では,人口移動を考慮したコホートモデルを用いて将来人口を推計し,食料需要部門では,所得を外生変数として一人当たり食料需要量を予測した。データの精度が疑わしい場合は,文献を参考に補正を行った。推計の結果,食用穀物及び動物性食品の需要量は,2005年の1.94億t,0.60億tから,2030年の1.35億t,0.99億tへとそれぞれ変化した。都市化と農村部の所得増加が,穀物から動物性食品への需要シフトを引き起こす。しかし,一人当たり需要量の格差解消や高齢化により,動物性食品需要の伸び率は今後低下する。
著者
尾野 喜孝 岩元 久雄 高原 斉 岡本 正夫
出版者
九州大学
雑誌
九州大學農學部學藝雜誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.39-46, 1979-12
被引用文献数
1

Effect of castration on the live weight and the growth rates of skeletal muscle, abdominal fat, intermuscular fat, skin, bone and viscera were investigated in this study. Capons and cocks of New Hampshire (NH), Barred Plymouth Rock (BPR) and capons of BPR treated with testosterone propionate (TP) from 26 to 31 weeks of age were used. Live weights and the various weights of each organ and tissue were compared between the experimental groups at 20, 30 and 31 weeks of age. The results obtained were as follows: 1) Live weights of capons were the same as those of cocks in NH and BPR breeds during experimental periods. The weights of TP treated capons were increased gradually after the administration of TP and became 250 g heavier than those of BPR cocks and the capons at 31 weeks of age. 2) Castration had no effects on the growth of skeletal muscle until 20 weeks of age, but showed a marked effect on it after 20 weeks of age. Skeletal muscle weights of capons were apparently smaller than those of cocks at 30-31 weeks of age in NH and BPR breeds. TP administration recovered completely the decrease of these weights after castration, and became equal to those of cocks at 31 weeks of age. 3) Castration had also a marked effect on the growth of abdominal and intermuscular fat after 20 weeks of age in NH and BPR breeds. TP administration decreased the weights of abdominal and intermuscular fat in BPR capons, but these weights were heavier than those of the cocks at 31 weeks of age. 4) Castration exerted some effects on the growth of skin. These weights were increased following the castration in NH and BPR breeds, and became obviously to be heavier than those of cocks at 30-31 weeks of age (21-22 weeks after castration). 5) No effects were found on the growth rates of viscera and bone following the castration and the TP treatment. In conclusion, castration has a remarkable effect on the muscle production and the fat deposition. It decreases the skeletal muscle weight and increases the fat deposition. It is supposed that TP administration on the capon stimulates the growth of skeletal muscle.本実験では去勢が生体重,骨格筋,腹脂肪,筋間脂肪,皮膚,骨および内臓の成長に及ぼす効果について研究した.供試鶏としてはNew Hampshire(NH)種とBarred Plymouth Rock(BPR)種の去勢鶏と雄鶏,それにBPRの去勢鶏にtestosterone propionate(TP)を26~31週齢時まで投与したTP処理鶏を用いた.それぞれ計量した生体重,器官および組織について,去勢鶏と雄鶏間では20,30,31週齢時に,去勢鶏とTP処理鶏間では31週齢時に比較検討を行つた。その大要は次のとおりであつた.1.去勢鶏の生体重の成長は両品種とも雄罵と同じであつた.BPRのTP処理鶏のTP処理後の生体重の成長速度は次第に大きくなり,31週齢時におけるその生体重は,去勢鶏および雄鶏よりも250g重くなつた.2.去勢は20週齢時までは骨格筋の成長に何ら影響を及ぼさなかつたがそれ以後は著しい影響を及ぼし始め,30~31週齢時になると,去勢鶏の骨格筋重量は両品種とも雄鶏のそれに対し劣つていた.BPRのTP処理鶏の骨格筋重量は,TP投与により去勢のために劣つていた分を完全に回復し,31週齢時になると雄鶏のそれと等しくなつた.3.去勢はまた20週齢以後両品種の腹脂肪,筋間脂肪の成長にも著しい影響を及ぼし,去勢鶏の腹脂肪,筋間脂肪重量の増大をもたらした.そしてBPR去勢鶏へのTPの投与は腹脂肪,筋間脂肪重量のかなりの減少を引き起こした.しかし,31週齢時における雄鶏のそれらと等しくさせるにはいたらなかつた.4.去勢は両品種の皮膚の成長にも影響を及ぼし,去勢鶏の皮膚重量は30~31週齢時には雄鶏のそれよりも大きくなつた.5.内臓と骨の成長には,去勢の影響は見られなかつた.以上のことから,雄鶏の去勢は著しい産肉量の減少と脂肪量の増大という2つの効果をもたらした.そして,去勢鶏へのTPの投与は骨格筋の成長を刺激するものである.
著者
宮原 一弘 岡本 敏雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.97, no.606, pp.17-24, 1998-03-14
被引用文献数
5

近年のインターネットの発展に伴って, 多くの情報がネットワーク上を流通するようになった.しかしその反面, 必要とする情報を入手するのが困難になり, より個人に適応した情報検索・収集システムへの要求が高まっている.そこで本研究では, 人間の情報に対する興味のモデル化を試みた.日常のWebブラウジングと文書への評価からユーザの興味を同定し, ユーザプロファイルとして獲得・表現する手法を開発した.本稿では, 興味モデルの概要ならびにそれを情報フィルタリング, 協調フィルタリングに適用する手法について述べる.
著者
岡本 青史
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.185-186, 1996-09-04

最小近傍法は,パターン認識の分野に起源を持つ分類手法であり,機械学習や情報検索等の広い分野に応用されている.最小近傍法は理論的にもよく研究されているが(例えば[1]),最小近傍法の正答率がノイズによってどのような影響を受けるかは明らかになっていない.本論文では,平均的解析の枠組を用いることにより,最小近傍法に対するノイズの影響を解明する.対象とするノイズは,関連属性ノイズ,非関連属性ノイズ,クラスノイズの3つのタイプである.本解析ではまず,既存の平均的解析の枠組を3つのタイプのノイズが扱えるように拡張し,最小近傍法の正答率を理論的に導出する.次に,この導出結果を用いて,各ノイズが最小近傍法の正答率に与える影響を明らかにする.
著者
村山 優子 岡本 栄司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FACE, 情報通信倫理
巻号頁・発行日
vol.97, no.84, pp.13-18, 1997-05-31

インターネットのような計算機網で,マルチメディア通信が実現される時,従来のデータ,ソフトウェア,サービスプロセスなどのネットワーク資源への不正なアクセスの脅威などに加え,画像や音声によるセキュリティの脅威が新たに存在するようになる.本予稿では,特に動画像の通信における新しい脅威のひとつとして識閾下伝意の問題を提起する.識閾下伝意については,心理学の分野では,長年その効果の是非が議論されていたが、10年程前から,様々な領域の研究や交流が進み,その効果が認められるようになった.現在,実験心理学の分野では,治療や教育目的のため,このような手法が使用されている.本予稿では,さらに,この識閾下伝意の問題が,本質的にコンピュータ・ウィルスの問題と同等であることを示し,画像情報におけるセキュリティの分野である情報隠蔽技術(steganography)や「隠れ通信路」(covert channel)の概念において,識閾下効果の問題が,どのような位置を占めるのかを明確にする.
著者
角尾 幸保 岡本 栄司 植松 友彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J78-A, no.3, pp.407-415, 1995-03-25

ネットワークセキュリティを確保するための基盤技術の一つに暗号がある.しかし,ビジネス分野での情報の安全性確保のためには,だれもが使いやすい暗号が要求される.米国商務省標準局が公布したDESやNTTから提案されているFEAL暗号は,鍵を秘密とし暗号アルゴリズムを公開した暗号であり,秘密鍵を用いて64ビットの平文を64ビットの暗号文に暗号化するインボリューション型のブロック暗号である.またMAP 1方向性関数は,NTTから提案された,やはりインボリューション型の変換である.本論文では,インボリューション型暗号に対する新たな暗号解析法を検討し,その解析法をMAP 1方向性関数の暗号文攻撃に応用した解析例を示す.インボリューション型暗号は,データランダム化部の構成段数を増加させることにより,各段で使用する秘密鍵を増加させ,秘密鍵の推定に対する計算量的な安全性を確保しようとしている.しかしながら,データランダム化部を構成する関数の特性に注目すれば,秘密鍵に依存しない方法で関数の入出力値を特定した後,逆関数を使って秘密鍵を算出することが可能となる場合がある.この方法を中間メッセージ法と呼ぶ.中間メッセージ法は,従来法と異なり解読に必要なデータ量が少ないことを特徴としている.