著者
平野 孝
出版者
山川出版社
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.1-28, 1966-04
著者
平野 俊二 塩坪 いく子 山口 正弘 苧阪 直行 室伏 靖子 清水 御代明
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本研究は人および動物の環境への適応機制に関する心理学的研究である。入力情報の処理から高次の概念獲得、目標定位行動に至る諸側面について、比較的・発達的要因を含めた検討を重ねた。1.視覚入力情報処理(1)乾はパタンの表現と構造化に関して強調と競合による可塑的神経回路網の計算理論を提案した。与えられた2次元画像強度デ-タから画像生成過程を産出する並列多段階モデルである。(2)苧阪は空間周波数パタンの感受性に及ぼす中心・周辺視処理システムの促進と抑制の効果、および、漢字、かなの読書における有効視野面に相互作用が働くことを明らかにした。2.概念の獲得(1)清水は言語文脈による概念の獲得を検討した。母語にない概念を言語文脈のみによって獲得することの困難をはじめ、既知の概念をあてはめようとする傾向、反証事例は必ずしも有効に用いられないが、定義を与えられると獲得可能となることが示された。(2)室伏はチンパンジ-に図形パタンと数字による物、色、数の符号化訓練後に、さまざまな対象について般化テストを行い、高次力デゴリ-としての概念の形成が色、物、数の順に難かしくなることが分った。3.目標定位(1)塩坪は目標定位に及ぼす発達的要因を調べた。10ヶ月乳児に手伸ばしと這行による対象選択を求め、反応は異なっても共通の特徴がみられること、対象の空間的配置や呈示順序が選択に影響することが見出された。(2)山口は目標定位と選択行動に関わる神経機構について、上丘損傷ラットの回りこみ行動を解析した。走行中の目標定位は損傷後も保持されるが間隙により再定位を要するとき、損傷の阻害効果が顕著となることが示された。(3)平野はラットの音刺激継時非見本合せで海馬損傷の影響を検討し、刺激差小、刺激間間隔大のときに障害が認められることを示した。
著者
佐々木 高信 照屋 孝夫 平野 惣大 喜瀬 真雄 花城 和彦 青木 一雄
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.174-179, 2019

2009年4月より2016年12月までの期間に,琉球大学医学部附属病院にて頭頸部癌(口腔,咽頭,喉頭,その他)からの肺転移巣を切除した21症例27切除術を後方視的に検討した。全症例の肺転移巣切除後5年全生存率(overall survival: OS)は56.7%,生存期間中央値(median survival time: MST)は21か月と報告された文献における肺転移切除群と比較し良好な成績を得た。肺転移巣の腫瘍径≥2.0cmが有意な予後不良因子であった(<i>p</i>=0.0157)。多変量解析では独立した予後不良因子は得られなかった。以上より2.0cmより小さい径の肺転移巣に対し,積極的な切除が予後改善に貢献する可能性が示唆された。今回の結果は悪性疾患の肺転移治療に関し,意義のある知見と考え,報告する。
著者
平野 大昌
出版者
生活経済学会
雑誌
生活経済学研究 (ISSN:13417347)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.49-65, 2010-03-31 (Released:2016-11-30)
参考文献数
10

This paper analyzes effects of internship on undergraduates' attitude toward work. The analysis in this paper is taken account for types of internship program and routes to internship participation. From the results estimated by ordered probit model, it is shown that a practical internship program enhances undergraduates' attitude toward work and understanding about type of job, but an internship as part-time job weakens them. In addition, a long term internship and a task achievement type internship improve them among undergraduates who participated in an internship without a relation of university. Those effects are not observed among undergraduates who participated in an internship as a class of university.
著者
平野 大
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.155-176, 2019

【要旨】<br> 本稿は、クリストファー・ノーラン監督による映画『プレステージ』について、シルクハットというアイテムに焦点を絞り、これを分析の手がかりとしながら、読み解いていくことを目的としている。同時に、いままであまり注目されてこなかったファッション・アイテムである帽子の、分析ツールとしての可能性の一端を提示していくことも試みていく。<br> 映画『プレステージ』は19世紀末のロンドンを舞台に、「人間瞬間移動」を得意演目としていた二人の奇術師が繰り広げる確執の物語である。<br> 本作を検証するにあたり、特に注目するシーンがある。それは、オープニングとエンディング部分に見られる数多くのシルクハットが空き地に散乱しているシーンである。アメリカの映画研究家、トッド・マガウアンは、『クリストファー・ノーランの嘘― 思想で読む映画論(<i>The Fictional Christopher Nolan</i>)』の中で、このシーンに関して「過剰な帽子は、創作活動に必然的に付随する余剰物である」と述べている。<br> このマガウアンの視点は、ノーランの映画製作観に鋭く踏み込む画期的なものである。しかし、果たしてシルクハットは、本当に創作活動の「余剰物」に過ぎないのであろうか。本作におけるシルクハットは「余剰物」以上の役割と意味を担っているのではなかろうか。<br> 本稿においては、このマガウアンの指摘に対して、シルクハットの歴史や象徴性をふまえながら、検討を加えていく。
著者
平野 賢一
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測と制御 (ISSN:04534662)
巻号頁・発行日
vol.21, no.10, pp.959-966, 1982-10-10 (Released:2009-11-26)
参考文献数
7
著者
DEMAREE Gaston R. MAILIER Pascal BEILLEVAIRE Patrick 三上 岳彦 財城 真寿美 塚原 東吾 田上 善夫 平野 淳平
出版者
東京地学協会
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.127, no.4, pp.503-511, 2018
被引用文献数
4

<p> ルイ・テオドール・フュレ神父(1816-1900年)は,パリ外国宣教会の宣教師として極東に派遣された。日本の琉球諸島・沖縄の那覇における彼の気象観測原簿の発見は,19世紀日本の歴史気候学に新しい進展を開くものである。フュレは,1855年2月26日に沖縄の主要な港である那覇(19世紀の文献ではNafaと綴っていた)に到着した。1856年12月から1858年9月まで,彼は1日5回(午前6,10時,午後1,4,10時)の気象観測を行った。水利技師アレクサンドル・デラマーシュ(1815-1884年)は,フランス海軍兵站部によってフュレ神父に委託された気象測器の検定を行った。気象観測は,1850年代のフランスで使われていた気象観測方式に従って実施された。気圧観測データは,気圧計の読みとり値,気圧計付随温度計の読みとり値,そして温度補正した気圧の数値で記載されている。気圧データは,必要に応じて,1850年代に使われたデルクロスとハイゲンスの公式を用いて検定・補正された。この歴史的な気圧観測データを現在の那覇における気圧平年値と比較した。観測期間中の1857年5月に台風が接近通過したことが,ルイ・フュレ神父によって目撃されている。ほかにも何度か気圧の低下が観測されているが,おそらく発達した低気圧の通過によるものであろう。そうしたなかで,オランダ船ファン・ボッセが多良間諸島の近くで難破したことがあったが,船長と彼の妻や船員達は島民に救助された。その後,彼らは沖縄の那覇に移送されたが,そこで3名のフランス人宣教師と出会い,最終的に出島のオランダ交易所からバタビア(現在のジャカルタ)へと航行した。</p>
著者
上野 雄己 平野 真理 小塩 真司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.91-94, 2019
被引用文献数
3

<p>This study aimed to reinvestigate age differences in resilience in a large cross-sectional Japanese sample (<i>N</i>=18,843; 9,657 men, 9,156 women; mean<sub>age</sub>=47.74 years, <i>SD</i><sub>age</sub>=14.89, range<sub>age</sub>=15–99 years). The data were obtained from a large cross-sectional study by NTT DATA Institute of Management Consulting, Inc. The results of hierarchical multiple regression indicated that age and squared term of age were significantly positively associated with resilience. These results reconfirm that resilience in Japanese individuals increases with age, corroborating the findings of previous studies.</p>
著者
横山 雄一 井口 和弘 臼井 茂之 平野 和行 ヨコヤマ ユウイチ イグチ カズヒロ ウスイ シゲユキ ヒラノ カズユキ Yuichi YOKOYAMA Kazuhiro IGUCHI Shigeyuki USUI Kazuyuki HIRANO
雑誌
岐阜薬科大学紀要 = The annual proceedings of Gifu Pharmaceutical University
巻号頁・発行日
vol.62, pp.68-74, 2013-06-30

グリセロールは肝臓における糖新生や脂質合成の材料であるため、肝臓へのグリセロール流入量の変化は様々な代謝経路に変調をきたす。アクアポリン9(AQP9)は、主に肝臓において発現が見られ、水分子のみならず、グリセロールや尿素などの低分子溶質をも透過させるチャネル型膜蛋白質である。AMP-activated protein kinase(AMPK)は生体内のエネルギーセンサーであり、糖・脂質代謝の恒常性維持に働くセリン/スレオニンキナーゼである。本研究では、AMPKの活性化剤である、5-aminoimidazole-4-carboxamide-1--D-ribonucleoside(AICAR)を、ヒト肝癌由来HepG2 細胞に作用させたところ、AQP9 mRNA の発現量が顕著に減少することを確認した。レポータージーンアッセイや転写因子forkhead boxa2(Foxa2)遺伝子をノックダウンさせた実験の結果から、Foxa2 は、AICAR によるAQP9 遺伝子発現抑制に関わる重要な転写調節因子であることを見出した。AICAR により活性化されたAMPK は、Akt のThr-308 残基とSer-473 残基のリン酸化を促し、それに伴いFoxa2 がリン酸化されて核内から核外へと移行することを明らかにした。したがって、肝臓でのグリセロール輸送の観点からAMPK によるコントロールのもとに、AQP9 は肝臓へのグリセロールの流入量を変化させ、糖・脂質代謝調節に寄与している可能性が示唆された。
著者
伊藤 昭 田中 隆晴 上井 雅史 平野 弘之(MD、PhD)
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第28回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.117, 2009 (Released:2009-08-11)

【目的】平成18年4月に厚生労働省が「医療機能の分化・連携と在宅生活への早期復帰」を掲げた。平成20年8月時の一般病床平均在院日数が18.8日と、平成15年の20.7日に比べ短縮した。在宅リハビリテーション(以下:リハ)を担う診療所リハの役割が重要になってきた。今回、我々は診療所の運動器リハ開設から1年8ヶ月間の運動器リハの来院数の推移、疾患群別来院比率及び天気変化による来院数変化の関係について検討した。 【対象】平成19年6月~平成21年1月の間に運動器リハを行った512例(男性131、女性381)平均年齢が66.2±16.3歳であった。 【方法】平成19年6月~平成21年1月までの月別来院数を集計した。対象の疾患を肩関節疾患群(以下:肩群)腰部疾患群(以下:腰群)膝関節疾患群(以下:膝群)頸部疾患群(以下:頸群)2種類以上の疾患複合群(以下:複合群)骨折後リハ群(以下:骨折群)手術後リハ群(以下:手術群)及びその他群(脳血管障害、難病等)に分け検討した。天気と来院数の変化の関係を気象庁のデーターを参考に検討した。 【結果】平成19年6月の一日平均リハ施行者数が40.3名で、平成20年12月には66.3名となった。対象疾患割合がそれぞれ、肩群8.3%腰群23.9%膝群15.7%頸群8.7%複合群25.7%骨折群1.9%手術群5.3%及びその他群10.5%であった。開設後に手術治療を施行した症例が6例であった。晴れ曇り雨の日及び日内気温変化が7度以上の来院率に有意差がなかった。悪天候日に来院率が上昇した群がその他群及び複合群で、下降した群が肩群及び膝群であった。前日との気圧が10hPa降下したとき肩群及びその他群の来院率が上昇し、腰群が下降した。他の群に変化がなかった。 【考察】平成19年6月から平成20年12月までに一日平均リハ施行者数が64.5%増加した。1998年の厚生労働省調査で日本の有訴率が腰痛、肩こり及び四肢関節痛の順に多く、日常生活及び外出に影響ある者が65歳以上で11%あった。当院の約8割の対象症例に同様の症状を認め、痛みで日常生活に影響する程になると症状の悪化防止・改善目的で来院すると考えられる。天気の変化では悪天候日及び気圧下降でその他群の来院率が上昇した。その他群の内訳が52%が脳血管障害、パーキンソン氏病等の難病疾患で19%が50歳以下の症例であった。他群と異なり付き添い者が多く、若く、ニーズ及びモチベーションが高い為天候に左右されず来院したと考えられる。また、その他群と肩群が気圧変化に伴う疼痛の変化が少ないと考えられた。一方、腰群は佐藤らと同様に気圧降下で痛みが増強し外出を控えたと考えられた。
著者
山本 隆広 渡邉 聖樹 三浦 彰子 平原 智雄 平野 照之 内野 誠
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.718-724, 2010 (Released:2010-11-04)
参考文献数
26
被引用文献数
4 6

症例は51歳の男性である.2カ月前より頭痛,活動性の低下,見当識障害が徐々に進行し当科入院した.頭部MRI T2強調画像にて両側視床に高信号域をみとめ,左傍中脳に静脈の拡張と思われるflow voidをみとめた.脳血管造影にて,左上錐体静脈洞部に硬膜動静脈瘻をみとめた.流入動脈は内頸動脈が中心であり,流出静脈は深部静脈系へ逆流していた.このため両側視床の灌流障害をきたしていると考えられた.主な流入血管に対し経動脈的塞栓術を施行したところ見当識障害と視床病変の改善がえられた.硬膜動静脈瘻は両側視床病変の原因となることもあり,治療介入で改善が期待できるため,早期診断が望ましい疾患である.
著者
平野 恵美子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

豊かな芸術文化の国として知られるロシアは、バレエや音楽などで常に優れた才能を輩出している。ボリショイ劇場(モスクワ)やマリインスキー劇場(サンクトペテルブルク)は、その象徴であり、ロシア芸術を代表する存在だと言える。しかしこの広大な国の音楽芸術文化の諸相は実に様々で、モスクワとペテルブルクの二都市だけでも、無数の劇場やコンサートホールがあり、その運営方法も公的なものから私設のものまで幅広い。特に19世紀半ば以降、資本家が台頭し、芸術家のパトロンとなって私立のオペラ団を経営する者も現れ、その水準や革新性は、マリインスキー劇場やボリショイ劇場のような帝室劇場に匹敵するか、凌駕し、影響を与えるほどだった。またこのことは、ロシアの貴族文化の伝統とも関係があると考えられる。ヨーロッパの貴族は昔から、自分達の邸宅に小劇場を持ち、使用人を出演させたり、時に自らが出演して演劇を楽しむという習慣があった(それは自分達の楽しみだけではなく、賓客をもたらしたり、支配者たる王を讃えたり、あるいは自分達の財力を誇示し、権威を高めるために行うこともある)。ことロシアにおいては、農奴劇場というものがあり、農奴俳優や農奴音楽家の存在が知られている。一方、上流階級の貴族達も、非常に高度な音楽教育を受けていたことが明らかになりつつあり、私達が現代の常識や物差しで想像しているだけでは、その本当の姿を知ることはできない。本研究では、当時の新聞や批評など一次資料を用いて、19世紀後半のロシアにおける、音楽・劇場文化の実態を明らかにして、日本でも人気の高いロシア音楽のさらなる理解を深め、最終的には政治や経済の状態に左右されずに、日本とロシアの友好的な関係を築くことに貢献するのを将来の目的に据えている。
著者
松澤 幸正 前川 滋克 西松 寛明 高橋 克敏 新美 文彩 米虫 良允 宮嵜 英世 村田 高史 平野 美和 河村 毅 本間 之夫
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.95-102, 2015-04-20 (Released:2016-04-23)
参考文献数
30
被引用文献数
3

(目的) 副腎出血は保存的に経過観察できるものから致死的なものまで様々である一方,治療の基準や方法は明確に確立されていない.今回我々は自験例および文献例にて副腎出血の治療法,そしてその適応について検討する. (対象と方法) 2004年11月から2013年9月までに東京大学医学部附属病院および同愛記念病院に来院した副腎出血6例と医中誌にて検索し得た57例について後向きに調査した. (結果) 今回の自験例6例と既報告57例の計63例において,悪性腫瘍の転移による副腎出血は重篤化する可能性が高い傾向があった.治療では保存的治療が13例(23%),TAEを行ったのが5例(8%),緊急手術が3例(5%)であり,残りの症例は状態が安定した後に診断を兼ねて待機的に副腎摘除術を施行していた.また,Hb 10 g/dl以下かつ血腫径が10 cm以上の症例は5例あり,そのうち1例を除いて,緊急止血術が行われた. (結論) 悪性腫瘍の副腎転移による出血,Hb 10 g/dl以下かつ血腫径が10 cmを超えるものは緊急で止血術を考慮すべきであり,止血術後も再出血や全身状態の悪化を起こす可能性があり厳重な観察を要すると考えられた.治療法としては,手術と比べ侵襲も少ないことからTAEを第一選択とすることが勧められる.
著者
伊藤 昭 上井 雅史 田中 隆晴 平野 弘之
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第27回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.24, 2008 (Released:2008-08-01)

【目的】肩関節周囲炎の治療期間に関する先行研究及び報告は多い。治療期間と運動療法の頻度及び注射療法の頻度に関する統一見解がない。今回、我々は肩関節周囲炎の治療期間と運動療法の頻度及び注射療法の関係について検討したので報告する。【対象】平成18年6月から平成20年1月の間に当院を受診した肩関節周囲炎患者28例34肩(右肩19肩、左肩15肩)であった。男性4例、女性24例、平均年齢64.7±9.6歳であった。リタイヤ患者及び変形性肩関節症など病変部位が明らかな患者は除外した。【方法】治療期間を、短期間群(1~4ヶ月間通院、n=17)及び長期間群(5ヶ月間以上通院、n=17)の2群に分けた。運動療法を週2回未満施行群(n=21)と週2回以上施行群(n=13)に分けた。注射療法をヒアルロン酸ナトリウム(以下、ヒアルロン注)の注射頻度及びステロイドの注射回数に分けた。ヒアルロン注の頻度がそれぞれ月1回(n=10),2週間に1回(n=13)及び2週間に1回以上(n=11)に分けて検討した。治療開始時と最終時の肩関節屈曲及び外転角度で治療成績を評価した。統計処理にStatcel2を用いた。各群間の比較に対応のあるt検定を用いた。治療期間と運動療法の頻度及びヒアルロン注頻度の相関関係をPearson’sの相関係数検定を用いた。有意水準を1%未満とした。【結果】長期間群の治療開始時と最終時の屈曲及び外転角度の間に有意差を認めた(p<0.01)。運動療法の週2回未満群と週2回以上群の治療開始時と最終時の屈曲及び外転角度の間に有意差を認めた(p<0.01)。ヒアルロン注の2週間に1度群の治療開始時と最終時の屈曲及び外転角度の間に有意差を認めた(p<0.01)。ステロイド注射回数の1回(n=12)と3回以上(n=6)の治療開始時と最終時の外転可動域の間に有意差を認めた(p<0.01)。治療期間と運動療法及びヒアルロン注との間には相関関係が認められなかった。治療期間とステロイド注射回数との間に正の相関関係が認められた(r=0.58)。【考察】先行研究で運動療法とヒアルロン注を併用することで関節可動域の改善と自覚・他覚所見(自発痛、夜間痛、運動時痛及び圧痛)の改善が得られるといわれている。今回の検討では、運動療法が週2回以上おこなっている症例でヒアルロン注を2週間に1度実施し、かつ通院期間中1回のステロイド注射をうけていた症例は有意に関節可動域の治療成績がよかった。治療期間が5ヶ月以上必要でだった。それぞれ治療期間、運動療法の頻度及びヒアルロン注頻度の間に相関関係が認められなかった。この理由として、肩関節の運動痛の強さがあげられる。