著者
宇野 彰 春原 則子 金子 真人 後藤 多可志 粟屋 徳子 狐塚 順子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.171-179, 2015 (Released:2015-05-21)
参考文献数
25
被引用文献数
15 2

ひらがな,もしくはカタカナ1モーラ表記文字に関して1年間以上習得が困難であった発達性読み書き障害児36名を対象として,音声言語の記憶力を活用した訓練方法を適用した.全例全般的知能が正常で,かつReyのAVLT (Auditory Verbal Learning Test)の遅延再生課題にて高得点を示していた小学生である.また,訓練開始前に練習をするとみずからの意思を表明していた児童,生徒である.訓練は,次に示す3段階にて実施した.すなわち,1)50音表を音だけで覚える,2)50音表を書字可能にする,3)文字想起の速度を上げる,であった.また,4)児童によっては拗音の音の分解練習を口頭で実施した.その結果,平均7週間以内という短期間にて,ひらがなやカタカナの書字と音読正答率が有意に上昇し,平均98%以上の文字が読み書き可能になった.さらに,1年後に測定したカタカナに関しては高い正答率が維持され,書字の反応開始時間も有意に短縮した.今回の症例シリーズ研究にて,良好な音声言語の記憶力を活用した練習方法の有効性が,正確性においても流暢性においても示されたのではないかと思われた.
著者
丹羽 浩子 田辺 公一 矢野 玲子 後藤 伸之 大津 史子
出版者
一般社団法人 日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.145-155, 2018-11-30 (Released:2018-12-08)
参考文献数
26

Objective:In this study,we explored adverse reactions and patient background and performed a case/non-case study on a database of adverse reaction case reports in order aid the prevention of non-prescription drug abuse.Study Design:We conducted a case/non-case study on a database of adverse reaction case reports.Methods:We studied case reports of adverse reactions and addiction in Japan and extracted adverse reaction cases associated with taking antipyretic analgesics,antitussive drugs,antitussive expectorant drugs,hypnotic and sedative drugs,anti-anxiety drugs,and purgative drugs. We divided the extracted cases into an abuse case group (adverse reactions associated with non-prescription drug abuse,and divided its intended purpose or the purpose of abuse at the initial dose)and non-case group(other adverse reactions). We performed univariate logistic regression analysis on each item of investigation in the abuse case group and non-case group and calculated the odds ratio,p-value,and 95%confidence interval.Results:There were many abuse case reports of women 20-40 years old in the antipyretic analgesics abuse case group and many of them had liver/biliary lesions and chronic urological impairment. The most common reason reported for taking the initial dose of each drug was for its intended purpose.Discussion:It is important for pharmacists at community pharmacies and drugstores to be able to recognize the characteristics of patients who might be at risk of abuse and the adverse reactions and patient backgrounds elucidated in this study could be helpful in identifying them.
著者
後藤 崇志 加納 圭
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.44059, (Released:2021-02-09)
参考文献数
30

これまでの研究から,インフォーマルな科学教育が理科を学ぶ動機づけを高めることへの有効性が示される一方で,参加者層がもともと理科を学ぶ動機づけが高い人々に偏っているという問題点が指摘されていた.本研究では,商業施設において,遊びを入口とした科学ワークショップを実施することが,参加者層の偏りを解消するために有効な方策であると考えた.商業施設において,スーパーボールすくいを題材とした科学実験のワークショップを実施し,理科を学ぶ動機づけや科学への関心という観点から,参加者の人口統計学的な代表性について検討した.その結果,本研究で実施したワークショップは従来の研究で報告されていたものよりも代表性が高い参加者を集められていることが明らかとなった.
著者
高井 一彦 田中 英次 村瀬 繁樹 高田 光章 後藤 新平 渡部 哲郎 大角 清之
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.400-403, 1995-06-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
16

1992年8月岐阜県下の23,000羽飼養採卵養鶏場で, 90日齢大雛 (3, 500羽) に貧血症が発生した. 発病例のヘマトクリット値は6-11%, 低γ-グロブリン血症を呈し, 剖検で皮下, 骨格筋の点状出血, 骨髄の黄色化がみられ, 組織学的にはリンパ組織におけるリンパ球消失がみられた. 病鶏の肝臓から鶏貧血ウイルス (CAV) が分離されたが, 抗体検査ではCAVをはじめ主要鶏病ウイルスに対する抗体が検出されず, 免疫不全が発症の要因であることが示唆れた.
著者
日道 俊之 小山内 秀和 後藤 崇志 藤田 弥世 河村 悠太 Davis Mark H. 野村 理朗
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.88.15218, (Released:2017-01-14)
参考文献数
57
被引用文献数
54

Empathy is a multi-dimensional concept with emotional and cognitive components. The Interpersonal Reactivity Index (IRI) is a multi-dimensional scale of empathic traits. Although some researchers have attempted to translate the IRI into Japanese, these translated scales had limitations with content and construct validity, and measurement invariance. We therefore attempt to overcome these limitations by developing a new Japanese version of the IRI (IRI-J). We used three approaches to assess the validity and measurement invariance of the IRI-J. In Study 1, content validity was tested using back-translation, and construct validity was confirmed through a comprehensive investigation of a web-based survey using six other scales. Results indicate that the factor structure of the IRI-J was equivalent to that of the original version, and that the IRI-J had adequate reliability and construct validity. In Study 2, measurement invariance by gender was confirmed using data from four web-based surveys. These results suggest that the factor model of IRI-J for each gender is equivalent. The present study thus provides an improved measure of empathic traits for the Japanese population.
著者
三村 守 大坪 雄平 田中 秀磨 後藤 厚宏
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2017論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.2, 2017-10-16

「目grep」とは,バイナリファイルから人間の目で文字列を検索するGREPコマンドをエミュレートするスキルである.本稿では,畳み込みニューラルネットワークを用いて「目grep」を再現し,未知の悪性文書ファイルを検知するいくつかの手法を提案する.畳み込みニューラルネットワークは,画像認識の分野において革新的であり,従来のモデルよりも顕著な成果を挙げている.さらに,実際の悪性文書ファイルからデータセットを作成し,Precision,RecallおよびF値を算出して提案手法を評価した.その結果,悪性文書ファイルから「目grep」によってシェルコードを発見できる可能性があることを確認した.
著者
後藤 英昭 原田 寛之 漆谷 重雄
出版者
一般社団法人 大学ICT推進協議会
雑誌
学術情報処理研究 (ISSN:13432915)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.197-204, 2023-11-27 (Released:2023-11-27)
参考文献数
12

教育・研究機関向けの無線LANローミング基盤であるeduroamは,多くの機関で,ID・パスワードを使う形で運用されている.利用者がID・パスワードを記録しておく必要性があり,手作業での設定の負担が大きかった.一方,市民一般向けのローミング基盤であるOpenRoamingの開発と並行して,OSベンダ各社は近年,Wi-Fiプロファイルを用いたウェブベースの設定投入の仕組みを提供するようになった.これにより,WPA2 Enterpriseの無線LANでも,複雑な手順を踏まずに設定できるようになった.本研究では,主要なOSの対応状況を調査した.また,機関の情報システムに組み込んでWi-Fiプロファイルを発行できるようにするためのツールキットを開発した.このツールキットを用いると,組織のアカウントなどを用いてログイン済みのウェブサイトから,プロファイルを電子的手段で端末に流し込み,ID・パスワードレスなeduroam/OpenRoaming設定を実現できる.誤入力・設定ミスの可能性を極力排除することで,サービスの利便性と安定性の向上が期待される.
著者
後藤 奈美
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.390-396, 2013-11-25 (Released:2017-10-11)
参考文献数
4
被引用文献数
2

ワインには非常に多くの種類がある.多彩なワインの特徴を消費者に伝えたり,専門家が品質を評価したりするには,様々な評価用語が使用される.有名なワインのアロマホイールは,ワインの香りを認識し,表現するための標準的な用語を提供することを目的としている.一方,品質評価用語では,その原因を示す用語が多いことが特徴と言える.ワインの香りは,原料ブドウ,発酵,貯蔵・熟成など,種々の要因の影響を受ける.ワインの香りにはまだ解明されていない点が多くあるが,これまでに明らかにされている成分についても紹介する.
著者
坪井 優樹 阪井 優太 鈴木 佐俊 後藤 正幸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.3G2GS2h04, 2021 (Released:2021-06-14)

企業が施策を講じる際,適切な効果検証を行い,正しい意思決定につなげることは重要な課題である.観測データから施策効果を正しく評価するために,因果推論という考え方がある.近年の因果推論では,ユーザを施策を打つ群と打たない群に分割した後,条件付き平均処置効果(以下,CATE)と呼ばれる,同じ特徴を持つユーザ群における群間の結果の平均値の差を施策効果とする.CATEにより,施策を講じることが有効であるユーザ群の特定が可能になる.ここで,CATE推定手法としてCausal Treeが提案されている.この手法は解釈性が高く,施策効果に影響を与える要因についての分析に有用である.しかし,この手法は施策対象者をランダムに選択する場合のみを対象とする.そのため,ユーザを人為的に選択し系統的な誤差(以下,選択バイアス)が生じる場合は対応できないという問題点がある. そこで本研究では,Causal Treeをベースとし,選択バイアスが存在する状況に対応したCATE推定手法を提案する.また,人工データセットを用いて実験を行い,提案手法の有効性を示す.さらに,実データセットを提案手法に適用し,実際に分析を行う.
著者
工藤 浩 井出 浩希 中林 玄一 後藤 貴宏 若栗 良 岩田 尚宏 黒木 嘉人
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.59-66, 2019-01-25 (Released:2019-02-13)
参考文献数
14
被引用文献数
3

目的:重度嚥下機能障害を有する高齢者診療における完全側臥位法の有用性について検討した.方法:2015年2月から2017年10月に当院に入院し,嚥下機能障害が疑われNSTが介入した142例(全例嚥下内視鏡検査(VE)施行)中,従来の誤嚥予防対策では安全な経口摂取は困難な重度嚥下機能障害と診断された65歳以上の高齢者47例に完全側臥位法を導入した.完全側臥位法導入が安全な経口摂取と転帰に及ぼす影響について,完全側臥位法未実施群(対照群)と比較検討した.結果:平均年齢は85±8.3歳,男女比は32:15,初回VEで全例に重度の嚥下機能障害(兵頭スコア8.16±2.0点)を認めた.完全側臥位法導入後,栄養療法,リハビリテーションの併用により,血中Alb値,Barthel indexの改善も認め,対照群と比較し,経口栄養での退院が有意に増加(26.5→53.2%)した.退院症例25例中13例は再び座位姿勢でも安全に食事摂取が可能となった.死亡退院21例の死因病名は老衰10例が最も多かった.完全側臥位群では老衰による終末期の症例でも安全な経口摂取が可能となり,対照群と比較し死亡までの平均欠食期間が有意に短縮(17.3→7.3日)した.退院後に在宅でも完全側臥位法を継続し,再入院することなく1年後に自宅で穏やかな最期を迎えられた症例も経験した.結論:完全側臥位法は重度嚥下機能障害をもつ高齢者の安全な経口摂取に高い効果を認めた.安全な食事摂取が栄養状態の改善,リハビリによる機能強化にもつながり,経口栄養での退院増加に寄与した.完全側臥位法は特別な器具,手技を必要とせず簡便で負担の少ない手法であり,言語聴覚士が不在の市中病院や在宅,重症患者でも容易に継続できることが確認された.本手技が嚥下機能障害を有する高齢者診療におけるブレイクスルーとなり得る可能性が示唆された.
著者
後藤 和宏
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.49-57, 2012 (Released:2012-07-27)
参考文献数
36
被引用文献数
3 1

Anthropomorphim is an enduring controversy in comparative cognition. Some studies in comparative cognition search for human-like behavior as evidence for evolutionary continuity of mental processes as Darwin encouraged. Others eschew interpreting observed behaviors in terms of anthropomorphic mental processes. Even in the former cases, students of comparative cognition often use the predictions by associative learning or reinforcement learning as killjoy explanations to examine the existence of complex cognitive processes shared between humans and other species. In the present paper, I reviewed some of such challenges, including my own, to show how anthropomorphic questions can be studied scientifically. I also reviewed other studies in which the killjoy explanations were inappropriately applied. Misuses of the killjoy explanations are typically revealed by showing human adults behave differently from the experimenters anthropomorphic predictions.
著者
中尾 央 後藤 和宏
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.45-58, 2015 (Released:2015-06-13)
参考文献数
40
被引用文献数
2

This paper considers methodological problems in animal metacognition studies. After summarizing a variety of experimental designs to study animal metacognition, we review recent literature that were not included in Fujita (2010)'s more comprehensive review. We then examined Carruthers (2008; Carruthers and Rithie 2012)' skeptic argument against animal metacognition. He argued that no experiments thus far successfully exclude the possibility that animals, as well as human infants, elicit "metacognitive" responses without explicitly and consciously monitoring internal representations. We argued that newly developed experimental paradigms to study explicit memory processes could be a key to reject Caruuthers' skeptic argument and thus facilitate understanding how we access to the internal representations.
著者
西村 公雄 後藤 昌弘
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.713-721, 1999-07-15
被引用文献数
1

90℃加熱中に生じる鶏もも肉浸出液によるホワイトソースの分離は,2.4 m_M N-ethyl-maleimide (NEM)または,10 m_M ethylendiaminetetraacetic acidの添加により抑えられた.一方,浸出液中のタンパク質は,ホワイトソースのクリーム層と結合せず,また,加熱凝集した浸出液をホワイトソースに加えて再加熱しても分離は生じなかった.以上のことは,加熱中に浸出液中のタンパク質分子間にSS結合と2価カチオンが関与する相互作用が生じ,その結果ネットワークを形成する際にカゼインミセルや油滴をトラップすることが,分離の原因であることを示している.さらに,浸出液中のタンパク質表面疎水性の加熱による増加にNEMは影響を与えなかった.このことは,NEMが存在してもしなくても,浸出液中のタンパク質の凝集が同程度であることを示している.
著者
河野 啓子 後藤 由紀 畑中 純子 野口 多恵子 吉川 悦子
出版者
四日市看護医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

産業看護職に必要なコンピテンシーとして、「自己成長する力」、「産業看護の本質を貫く力」、「チーム力を高める力」、「戦略立案・業務遂行する力」、「人・部門・組織間を調整する力」、「人の成長をサポートする力」、「創出する力」といった7つのコンピテンシーが開発された。これらは本来の産業看護活動を行う上で不可欠なものであることから、産業看護職の資質を向上させるためには、これらのコンピテンシーを育成するための教育が必要である。そこで、教育のあり方を論じ、教育内容、教育方法、教育システムについて一定の方向性を見出した。
著者
後藤 哲朗
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.65-69, 2010 (Released:2011-05-10)
参考文献数
3

'61にソ連・ガガーリン飛行士が地球周回軌道の飛行に成功した後,米国が同等のミッションに成功したのはグレン飛行士による翌'62のマーキュリー6計画用フレンドシップ7号であった.アメリカ航空宇宙局(NASA)はそれ以前から撮影機材を多用しており,膨大な事象記録と解析データ取得に成功している.ニコンはアポロ計画以来スペースカメラを提供し続けており,NASAから求められる信頼性・高品質と極限状態に耐える性能をすべて実現して多大な貢献をしている(Fig. 1).以下にその改造内容と実績などについて,また情報は少ないもののニコン以外のスペースカメラについても言及する.