著者
三好 智子 大戸 敬之 岡崎 史子 舩越 拓 吉田 暁 芳野 純 今福 輪太郎 川上 ちひろ 早川 佳穂 西城 卓也
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.77-82, 2022-02-25 (Released:2022-06-19)
参考文献数
11

臨床現場での研修医/専攻医 (レジデント) のパフォーマンスを改善するため, 指導医が振り返りを促す際の面談に活用できるR2C2モデルが開発された. 信頼と関係を構築する (R), 評価結果に対する反応や認識を探る (R), レジデントが結果/評価内容をどう理解しているか探索する (C), パフォーマンスを改善させるためのコーチング (C) の4段階で構成される. R2C2モデルには, レジデントが省察的かつ目標志向の話し合いに関わることができ, 指導医と共に学習/改善計画を検討できるという効果が認められている. 本稿では, R2C2モデルの日本語版とその知見を紹介する.
著者
中條 暁仁
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2021年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.78, 2021 (Released:2021-03-29)

近年,過疎山村では残存人口の少子高齢化が顕著に進み,中には高齢人口すらも減少に転じる地域が現れるなど,本格的な人口減少社会に突入している。こうした中にあって,地域社会とともにあり続けた寺院が消滅していくとする指摘がなされている。村落における寺院は集落コミュニティが管理主体となる神社とは異なり,住職とその家族(寺族)が居住し相続する。そして,檀家家族の葬祭儀礼や日常生活のケアに対応することを通じて地域住民に向き合ってきた。いわば寺院は家族の結節点として機能してきたが,現代の山村家族は他出子(別居子)を輩出して空間的に分散居住し,成員相互の関係性に変化を生じさせているため,これに対応せざるを得なくなっている。こうした寺院のすがたは山村家族の変化を反映するものであり,寺院研究を通じて山村社会の特質に迫ることができると考えられる。 ところで,既存の地理学研究では,寺院にとどまらず神社も含めて村落社会に所在する宗教施設は変化しない存在として扱われてきた感が否めない。すなわち,寺社をとりまく地域社会が変化しているにも関わらず,旧態依然とした存在として認識されている。その背景には,伝統的な村落社会に対する理解を目指す研究が多かったこと,現代村落を対象とするにしても研究者が得る寺社に関する情報がかなり限定されたものであることなどから,固定的なイメージで語られる場合が多かったと思われる。 こうした問題意識をふまえると,地域社会の変貌が著しい過疎山村を対象として寺院の実態を明らかにする意義が見いだされる。本発表では,存続の岐路に位置づけられる無居住寺院に注目し,無居住化の実態とその対応の限界を報告する。 報告者は過疎地域における寺院をとらえる枠組みを,住職の存在形態に基づいて時系列に4つの段階に区分して仮説的に提起している。住職の有無が,寺檀関係や宗務行政における寺院の存続を決定づけているためである。第 Ⅰ段階は専任の住職がいながらも,檀家が実質的に減少していく段階である。第Ⅱ段階は檀家の減少が次第に進み,やがて専任住職が代務(兼務)住職となり,住職や寺族が不常住化する段階である。第Ⅲ段階は,代務住職が高齢化等により当該寺院の法務を担えなくなるなどして実質的に無住職化に陥ったり,代務住職が死去後も後任住職が補充されなくなったりして無住職となる段階である。そして,第Ⅳ段階は無住職の状態が長らく続き,境内や堂宇も荒廃して廃寺化する段階である。 このうち,本報告が対象とする山梨県早川町は,第Ⅱ段階にある寺院が多数を占める地域となっており,第Ⅲ段階を経ずして第Ⅳ段階に至るケースもみられるなど,問題は深刻化している。 本報告で対象とする山梨県早川町には日蓮宗25ヶ寺をはじめ,真言宗1ヶ寺,臨済宗1ヶ寺,曹洞宗5ヶ寺の合計32ヶ寺が所在するが,そのうち住職が実質的に在住しているのは日蓮宗の4ヶ寺にとどまる。日蓮宗寺院を調査したところ,1950年代に寺院の無居住化が始まっており,その数を増やしながら現在に至っている。いわば寺院の無居住化が常態化した地域といえる。時空間的遷移をみると北部の奥地集落から無居住化が始まっており,集落の過疎化に伴って進行していることが明らかである。近年は中心集落の寺院においても無居住化しており,住職の後継者が得られなかったことが直接的な要因となっている。 近年増加する無居住寺院をめぐっては,その管理が問題となっている。山梨県早川町では,多くの寺院で儀礼や信仰の空間としての機能を維持するために,代務住職や近隣檀家が境内を管理していた。中には,堂宇の間取りを公民館として改装し,高齢者の「たまり場」,住民による集会の場としての機能を持たせている事例があった。一方で,堂宇の老朽化によって損傷が進み,少数の檀家による復旧が困難に陥っている寺院では,檀家の同意を得て代務住職が廃寺を決断していた。ひとたび自然災害や獣害によって堂宇が損傷すると,廃寺に至るケースもある。 本発表で取り上げた無居住寺院に対しては,今後,存続か廃寺かのいずれかの方向性が想定される。前者の場合は,所属宗派の信仰空間としての機能を維持すべきか,あるいは地域社会の共有空間とすべきかという方向性も検討課題となってくる。後者については,地域社会に開放された「サード・プレイス」としての対応が想定されるし,前者については「少数社会」の構築に関する議論が参考になる。少数の現地在住の住職で,広範に分布する無居住寺院を管理するシステムの構築が求められる。
著者
茅 暁陽 藤代 一成 柏木 賢治 郷 健太郎 豊浦 正広
出版者
山梨大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-04-01

加齢黄斑変性症(AMD)は,年齢を重ねるに従って網膜の中心に位置し視力の中核的機能を担う黄斑に異常が生じ,見え方の質が著しく低下する病気である.本研究では,老齢者でも患者自らが身近なPC・携帯端末等を用いて自身の症状を手軽に検査でき,その結果に基づいて,日常生活の場面ごとに個人の視覚特性に合致したコンテンツを提示することにより,視野の歪みを軽減し,中心暗点で消失した情報を補い,患者の見え方の質,ひいては生活の質まで大幅に改善させられるような情報工学技術としてCR(Corrected/Complemented Reality)技術を確立する.
著者
岩崎 暁生 青木 元彦 妹尾 吉晃
出版者
北日本病害虫研究会
雑誌
北日本病害虫研究会報 (ISSN:0368623X)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.62, pp.194-198, 2011-12-27 (Released:2017-12-20)
参考文献数
10

In the summer and autumn of 2010, a mass outbreak of the beet webworm Spoladea recurvalis in sugar beet occurred throughout the entire sugar beet cultivation area of Hokkaido, the northern island of Japan. Serious damage was incurred in mid-August in the southern area, in mid to late August in the central area and the Tokachi district of the eastern area, and after mid-September in the Okhotsk district of the eastern area. Through field research in the central area, the migration period of adult moths was estimated to be mid-July. The early and/or mass migration of moths in addition to the higher summer temperature suitable for the development of the pest from their immature stages might accelerate the unusual mass occurrence of the pest throughout the year. Several insecticides mainly belonging to organophosphates and synthetic pyrethroids were found to be less effective on middle-to-late instar larvae in both insect dipping and diet dipping experiments. Insect growth regulators, on the other hand, were found to be effective for the control of larvae of the pest on sugar beet fields even under such mass occurrence.
著者
北田 暁大
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.35, pp.48-56, 2022-08-26 (Released:2023-08-30)
参考文献数
8

The term/concept of neoliberalism has perhaps been one of the most popular and continuously used terms/concepts in critical sociology, economics, politics, geography, gender theory, etc. over the past few decades. While examining the ambiguity and inflexibility of this concept in the history of economics and sociology with Marxism at its core, Shinichiro Inaba has extolled the concept of neoliberalism as a “Brocken spectre.” In this paper, while continuing Inaba’s problem-setting, we will address the question of how the use of the concept of “neoliberalism” is justified, and what people are doing by using the concept. One task will be to detect its social and sociological functions rather than to show the expiration of neoliberalism as an explanatory concept.
著者
田口 菜月 升川 研人 青山 真帆 森田 達也 木澤 義之 恒藤 暁 志真 泰夫 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.193-200, 2023 (Released:2023-08-30)
参考文献数
15

【目的】緩和ケア病棟の質改善活動の実態と遺族調査のアウトカムとの関連を明らかにする.【方法】J-HOPE4に参加した187施設にアンケート調査を実施し,質改善活動実施状況と,施設を利用した遺族の全般的満足度,ケアの構造・プロセスの評価(CES),望ましい死の達成度(GDI),複雑性悲嘆(BGQ),抑うつ(PHQ-9)との関連を検討した.【結果】日本ホスピス緩和ケア協会の自施設評価共有プログラムへの参加,多職種カンファレンスの開催頻度・カンファレンス参加職種数が多い施設で全般的満足度やGDIが有意に高かった.遺族ケアを実施している施設で全般的満足度,CESが有意に高かった.遺族への電話を実施している施設でBGQが有意に低く,葬儀や通夜への参列を実施している施設でPHQ-9が有意に低かった.【結論】質改善活動を積極的に実施している施設では,緩和ケアの質が高く遺族の悲嘆や抑うつを軽減する可能性がある.
著者
渡邉 暁子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第49回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.E20, 2015 (Released:2015-05-13)

本発表は、アラブ首長国連邦(UAE)とカタル首長国という2つの湾岸アラブ諸国において、カトリックからイスラームに改宗したフィリピン人、とりわけ女性家事労働者と国際結婚者を対象にする。国籍、社会階層、宗教、文化等の違いがヒエラルキーとして人びとを「分断」する両国社会のなかで、キリスト教国フィリピンからの移民労働者たちの改宗を契機とする親密なつながりの変容を描き出す。
著者
尤 暁東 東條元昭
出版者
日本土壌微生物学会
雑誌
土と微生物 (ISSN:09122184)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.50-53, 2020 (Released:2020-10-31)

モウソウチク由来ミミズ堆肥を作出し土壌改良剤として実用化するとともに,植物病害への抑制効果とそのメカニズム を明らかにするために,次の6 つの項目について検討した。1)堆肥作出方法の確立,2)植物病原糸状菌に対する抑制効果の評価,3)植物病原糸状菌に対する抑制効果の要因の解明,4)植物寄生性線虫に対する抑制効果の評価,5)生物防除微生物添加による病害抑制効果向上の検討,および6)モウソウチク由来ミミズ堆肥で育成した植物の成長変化に及ぼす有機肥料添加の影響の評価である。ミミズ種としてシマミミズを用いた。その結果,モウソウチク由来ミミズ堆肥の作出法を確立することに成功し,植物病原糸状菌や植物寄生性線虫に対する抑制効果を温室および圃場レベルで確認した。そしてこれらの抑制効果にいくつかの拮抗細菌や抗菌物質が関与している可能性を明らかにした。またモウソウチク由来ミミズ堆肥を生物防除微生物の1 つであるP. oligandrum と同時施用することでこの生物防除活性が高まり,市販農薬と同等のレベルにまで発病抑制効果を向上させる予備結果を得た。さらに油粕とミミズを同時にモウソウチク粉末に添加して2 か月間ミミズ堆肥化を行うことによって,苗立枯病等を抑制する効果が維持され,植物の成長促進効果や可食部の食味成分を向上させる育苗土になることを示唆する結果を得た。
著者
大森 宣暁 原田 昇 太田 勝敏
出版者
Geographic Information Systems Association
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.81-89, 2003-09-30 (Released:2009-05-29)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

Understanding travel behavior is essential for urban transportation planning. This paper presents the development of a GIS-based system for understanding individual travel behavior under space-time constraints and its application to the graduate class of environmental information system in spatial planning and policy. Required input data consist of activity schedules, transportation networks and activity opportunities. Potential Path Area (PPA) and the feasibility of participating in activities in space-time prisms can be simulated and represented on GIS, before and after changing constraints. The system is very useful for students to understand activity-travel behavior in urban space.
著者
稲垣 史生 諸野 祐樹 星野 辰彦 井尻 暁 肖 楠 鈴木 志野 石井 俊一 浦本 豪一郎 寺田 武志 井町 寛之 久保 雄介
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.1, pp.77-92, 2018-01-15 (Released:2018-05-30)
参考文献数
71
被引用文献数
3 2

約半世紀の歴史を持つ海洋掘削科学は,プレートテクトニクスの実証や過去の劇的な地球環境変動など,教科書にその名を刻む輝かしい科学的成果をもたらしてきた.中でも,「海底下生命圏」の発見による生命生息可能域の大幅な拡大は,それまでの地球生命科学の概念(パラダイム)を覆すマイルストーン的な科学成果の一つである.これまでに,世界各地の海洋底から掘削されたコアサンプルの多面的な分析研究により,水・エネルギー供給が極めて限られた海底下環境に,固有の進化を遂げた膨大な数の未知微生物が生息していることが明らかとなっている.その生態系機能は,極めて低活性な生命活動により支えられている静的なものであるが,地質学的時間スケールで,地球規模の元素循環に重要な役割を果たしていることが明らかとなってきた.
著者
稲田 健太郎 志田 大 松田 真輝 井上 暁 梅北 信孝
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.1488-1492, 2011 (Released:2011-12-25)
参考文献数
20

症例は63歳,男性.2010年7月に腹痛と嘔気を主訴に当院を受診した.腹部単純エックス線検査で大腸イレウスと判断,腹部造影CT検査でS状結腸に造影効果を伴う壁肥厚像およびその口側に2cm大の異物を認めた.種子嵌頓による大腸癌イレウスを疑い,緊急下部消化管内視鏡検査を行った.S状結腸に2型病変による全周性の狭窄を認め,経肛門的イレウス管を挿入して口側腸管を減圧した.入院6日後にリンパ節郭清を伴うS状結腸切除術を行った.切除標本では腫瘍口側に梅の種子が確認できた.総合診断SSN1H0P0M0,fstageIIIa.術後は合併症なく経過し,術後7病日で退院.植物種子は大きさや形状から通常イレウスの原因となりにくく,植物種子によるイレウスを疑った際は,器質的疾患,特に大腸イレウスに関しては大腸癌を念頭においた治療方針を検討する必要があると考えられた.
著者
富山 恵介 田中 周平 森岡 たまき 小浜 暁子 李 文驕
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.23-00028, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
10

近年,環境中のマイクロプラスチックファイバー(以下,MPFs)の存在が明らかになり,要因の一つに衣類の洗濯による排出が指摘されている.本研究では,洗濯による生地設計別のMPFsの排出特性を把握することを主目的とした.糸(長繊維・短繊維),編立(プレーン・メッシュ),加工(柔軟剤無し・柔軟剤有り)で設計を分けたポリエステル生地を8タイプ開発し,ドラム型洗濯機の標準コースで洗濯後,目開き10μmのプランクトンネットでMPFsを捕集した.目的変数をMPFs重量とした3元配置分散分析では,糸の寄与率74.5%,加工の寄与率18.7%となり排出量の主要因であることが示された.糸の長繊維は短繊維に対し中央値で42~45%小さく,加工の柔軟剤無しは柔軟剤有りに対し中央値で22~25%小さい結果となった.
著者
張 暁娜
出版者
鹿児島大学
巻号頁・発行日
2020

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