著者
兵頭 洋美 佐藤 忍 岩井 宏暁
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第51回日本植物生理学会年会要旨集
巻号頁・発行日
pp.0802, 2010 (Released:2010-11-22)

トマト果実の成熟過程に伴う果皮の軟化はペクチン等の分解に起因することが報告されている。しかし、果実内部では種子形成が同時に進行していることからも細胞壁の分解のみでなく、合成も必要であると考えられる。本研究では、果実成熟過程におけるペクチンの合成・分解に関与する遺伝子の発現および酵素活性を組織別に比較することで、果実全体のペクチンの総合的な変化を考察した。ペクチン分解酵素であるポリガラクツロナーゼ(PG)、ペクチンメチルエステラーゼ(PE)に関しては、果皮・隔壁においてBreaker以降で強い発現・活性がみられた。またPEは果実内部の組織で発現・活性がみられず、PG阻害タンパク質であるPGIPは、外果皮・隔壁で恒常的な発現がみられた。一方、シロイヌナズナでペクチン合成に関わるガラクツロン酸転移酵素(GAUT1)と高い相同性を示すトマトの遺伝子(LeGAUTL)は、果実成熟過程に伴う発現の増加がみられた。以上からトマトの成熟過程において、ペクチンの分解とともに合成や分解抑制も同時に行われている可能性が示唆された。またペクチン性多糖は、同じ成熟過程にある果実においても、その分解により果皮の軟化に関与するとともに、外果皮や隔壁では合成により果実の形状維持に関わること、果実内部の組織では分解抑制により種子形成の保護に関わることが考えられ、組織の性質や機能に影響を与えていると思われる。
著者
木下 果穂 牛田 貴士 津野 究 細田 暁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F1(トンネル工学) (ISSN:21856575)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.88-101, 2022 (Released:2022-09-20)
参考文献数
36
被引用文献数
1

臨海部や感潮河川付近に位置する鉄道シールドトンネルでは,RCセグメントに塩化物イオンの影響による鋼材腐食が見られることがある.本研究では,まず,腐食促進実験による塩化物イオン浸透状況の観察により,継手付近に特徴的な塩分浸透特性を把握した.次に,塩害劣化を想定したセグメント覆工模型の載荷実験を行い,継手鋼材の腐食により継手部の回転剛性が低下する等,力学的挙動への影響を確認した.さらに,継手鋼材の腐食の影響を考慮できる有限要素解析法を提案するとともに,三次元FEMによる解析結果を実験結果により検証し,手法の妥当性を確認した.
著者
三浦 美佐 吉澤 亮 大和田 滋 平山 暁 伊藤 修 上月 正博 前波 輝彦
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.221-226, 2021-02-18 (Released:2021-04-14)
参考文献数
14

維持透析 (HD)患者は時間的制約,体調不良,易疲労性などにより不活動下に置かれ,合併症の増悪,サルコペニア・フレイルという悪循環に陥りやすい.本邦の多くの透析施設において,患者に軽負担で実施可能な電動エルゴメーターが採用されているが,その身体機能に与える影響を負荷量可変型エルゴメーターと比較検討した報告は少ない.そこで,本研究の目的を,外来透析患者に対する透析中の12週間の運動を,電動エルゴメーターと負荷量可変型エルゴメーターで比較検討することとした.週3回HDを行っている歩行可能な平均年齢71.5±1.6歳の患者15名を,負荷量可変型エルゴメーター (Tex)群8名と電動式エルゴメーター (Elex)群7名に振り分け,透析中の運動を各人の身体能力に応じ,週3回,12週間実施した.介入後にTex群のみが,下肢筋力,運動耐容能が有意に増加した.よって,運動様式により異なる影響があることが示唆された.
著者
金杉 洋 松原 剛 柴崎 亮介 杉田 暁 福井 弘道
出版者
一般社団法人 地理情報システム学会
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.57-62, 2017-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1

The number of climbers in Japanese mountains have increased for recent years, and climbing and hiking have been getting constructive fields in tourism. However, some climbing beginners, especially middle aged and older people, who are overconfident on own physical strength sometimes encounter serious accidents and distresses. Actually, an accident and a distress in a mountain have also increased in these years. In order to achieve safer mountain climbing, it would be effective to aggregate and analyze individual climbing experiences in accordance with not only individual conditions but also mountain environments even if there is poor network connection and power supply. Therefore, this paper aims to organize available datasets for analysis of practical behavior of mountain climbers, and describes methods to obtain climbing behavior data even for middle and older people under poor network and power environment. In particular, we implemented a cloud system to aggregate online-submitted climbing plans, and a check-in app using individual owned IC-cards. Finally, this paper describes some findings and discussions through our field experiments.
著者
渡辺 徹 稲田 厚 三浦 克己 吉田 暁 田中 敏春
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.523-527, 2018-06-30 (Released:2018-06-30)
参考文献数
6

急性左心不全による心原性肺水腫に対して救急隊員が実施可能な処置は,酸素投与とバッグバルブマスク(BVM)による補助呼吸である。今回,病院前救護においてBVMを用いて1名が両手でマスクを顔面に保持密着させ,もう1名がバッグを圧迫し換気を行う二人法補助呼吸によりSpO2値の改善を認めた疾患例を経験した。心原性肺水腫では呼気終末の気道内圧を高めることで低酸素血症を改善させることができるため,近年医療機関ではNPPVが実施されるようになっている。BVMのマスクを顔面に確実に密着させることができる二人法補助呼吸は,適切に実施すればNPPVに近い効果が期待できる。また,起坐呼吸や不穏状態の傷病者にも有効な換気が可能になる。病院前救護で呼吸困難感を訴え急性左心不全が疑われる例において,高流量酸素投与でもSpO2値が改善しない場合,呼吸原性心停止への移行を予防するためにBVMを用いた二人法補助呼吸を考慮してよいと思われる。
著者
白井 暁彦
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.286, 2019-02-15
著者
村山 恭二 安富 暁 細谷 剛
出版者
社団法人 日本写真学会
雑誌
日本写真学会誌 (ISSN:03695662)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.200-203, 2021 (Released:2023-04-21)

OMデジタルソリューションズは 、焦点距離2000 mm相当(35 mm判換算)での手持ち撮影を可能にする超望遠PROレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 150-400 mm F4.5 TC1.25x IS PRO」を発売した。本レンズは、超望遠レンズの概念を覆し、最短撮影距離1.3 mの近接撮影性能も有しており、超望遠撮影からテレマクロ撮影まで圧倒的な撮影領域を実現している。今回は、その特長である小型・軽量、手ぶれ補正、近接撮影性能の技術について説明する。
著者
柳原 尚之 前橋 健二 阿久澤 さゆり 穂坂 賢 藤井 暁 長野 正信 小泉 幸道
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-10, 2022-02-05 (Released:2022-02-08)
参考文献数
31

江戸期及びそれ以前の書物に記載されている酢製造法を調査し,16冊の書物から33件の米酢製造法を抽出した。江戸期の米酢製造法では,現代と比べて汲水歩合が著しく低く,仕込み時期は夏が多く,仕込み期間は1週間から1カ月程度と短いものが多いという特徴がみられた。江戸期書物記載の方法による再現仕込み試験は,江戸期から伝統的製法で壺酢製造を続けている酢製造会社にて行われた。その結果,汲水歩合が現代と同様およそ300%の仕込みでは30日目以降に酢酸発酵を認められたが,汲水歩合がおよそ100~250%の仕込みにおいては,仕込初期に乳酸発酵で 1~2 g/100 mlの乳酸が生成され,9~13 g/100 mlという高いエタノール濃度となって酢酸発酵へは移行しなかった。江戸期には,乳酸を酸味の主体とする発酵物が酢として作られていた可能性が示唆された。
著者
小林 暁雄 坂井 寛章 桂樹 哲雄 伊藤 研悟 稲冨 素子 江口 尚 川村 隆浩
出版者
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
農研機構研究報告 (ISSN:24349895)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.13, pp.23-33, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
15

農研機構内のプロジェクトや研究部門・センター毎に進められているバイオ研究課題では,データ管理や解析ツール開発が一元化しておらず,データの分散や個別化が問題となっている.これを解決するため,研究課題のニーズに基づきリソースを集約・重点化することにより資源の活用を効率化し,研究成果の最大化に繋げるためのプロジェクトが機構内組織横断的に進められている.本プロジェクトでは,機構の持つ高度計算資源を連携してオミクス情報を収集・解析し,研究データの来歴保証と研究の効率化を実現する解析パイプラインシステムの構築が取り組まれている.この計算資源には,機構内のゲノム解析サーバ及びスーパーコンピュータ「紫峰」を用いるとともに,ゲノムデータと解析されたデータを保存・機構内横断で提供する基盤として,農研機構統合DB を用いる.さらに,DDBJ Sequence Read Archive に準ずるメタデータを採用し,機構内で横断的にゲノムデータを解析・検索可能な解析パイプラインシステム を実現する. 本稿では,メタデータ入出力システムの詳細について解説するとともに,パイプラインシステムの現状と課題について議論を行う.
著者
桂樹 哲雄 森 翔太郎 十一 浩典 石川(高野) 祐子 小林 暁雄 伊藤 研悟 山本(前田) 万里 川村 隆浩
出版者
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
農研機構研究報告 (ISSN:24349895)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.13, pp.47-61, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
15

農研機構では,2012-2015 年度に実施した機能性農林水産物・食品開発プロジェクトの成果物を元に,農林水産物が持つ機能性成分について文献情報と共に整理し,「機能性成分・評価情報データベース」として2018 年より公開している.一方,2019 年から,農研機構は島津製作所と共同で「食品機能性成分解析共同研究ラボ(NARO 島津ラボ)」を設置し,機能性農林水産物に関する様々な分析を実施してきた.また,農研機構内には戦略的イノベーション創造プログラム第2 期「スマートバイオ産業・農業基盤技術」(SIP2)の分析データも存在する.このたび農研機構では,機構内で得られた食品機能性成分データを一か所に集める狙いから,「機能性成分・評価情報データベース」,「NARO 島津ラボ」のデータ,SIP2 の成果等を集約し,「農研機構食品機能性成分統合データベース」を開発した.収録するデータには,公開情報だけでなく閲覧者を制限すべきクローズドデータが含まれるため,柔軟なユーザ認証機能を導入し,適切なアクセス管理を行えるようにした点に特徴がある.本データベースでは,データの属性に応じて検索結果をグループ化して表示するファセット検索機能やグラフ表示機能などを実装した.
著者
明石 光史 田中 守 田中 宏暁 檜垣 靖樹
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.745-754, 2014 (Released:2014-12-20)
参考文献数
26
被引用文献数
2

The purposes of this study were (1) to examine the effect of body contact (BC) on running power, and (2) to evaluate the relationship between physical ability and BC during measurement of both aerobic exercise and intermittent anaerobic running power in 14 male university handball players, all of whom were court players.   Significantly shorter running distances were achieved in the yo-yo intermittent endurance test [yo-yo IE] with full BC than without BC, and there was a significant relationship between the final distance run and the degree of BC. Intermittent exercise was measured by the intermittent shuttle sprint test (ISST) that involved eight 20-m shuttle sprints with a 20-s rest period after each sprint. The subjects exhibited a significantly lower retention rate during the 8th repetition of the ISST with BC than during the eighth repetition of the ISST without BC, but there was no significant correlation between the mean retention rates during the 2 tests. A positive correlation between retention rates during the ISST BC and muscle strength and body weight was evident from the first 2—3 sets of the ISST with BC, and a negative correlation was evident between the retention rates during the ISST BC and the yo-yo IE from the first 5 sets of the ISST with BC.   These results indicate that intermittent anaerobic running power is important for high aerobic ability. However, for intermittent exercise that includes BC, higher body weight and muscle strength are necessary to prevent any decrease in running power.
著者
渡辺 勇士 竹林 暁 吉川 綱希 藤原 尚聡
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:21888930)
巻号頁・発行日
vol.2023-CE-169, no.30, pp.1-11, 2023-03-04

2020 年に起こったコロナウィルス感染症の流行は,世界中の学習スタイルに影響を与えた.多くの教育機関が従来の対面の授業スタイルからオンラインでの授業スタイルに切り替えることを余儀なくされた.2023 年現在,with コロナの生活も定着しつつあり,教育機関でも対面の授業スタイルに戻す状況が多く見られる.しかし,学習者の学習の利便性を考慮したとき,オンラインの教育も選択肢として発展せるべきである.その中で,オンラインでのアクティブラーニングをどのように行うかは議論の余地がある.本研究では,オンラインでのアクティブラーニングに特化した,コミュニケーションツール noiz を開発した.そして,予備的なものになるが,大学生に実際に使ってもらいアンケート調査を実施した.その結果,大学生は従前のビデオ会議システムよりも noiz の方がグループワークにおいてコミュニケーションがとりやすいと感じることがわかった.一方で,オンラインでのアクティブラーニングを成功させる要因として,ツールだけでなく,ファシリテータの存在が要望されていることもわかった.
著者
滑川 将気 荻根沢 真也 木村 暁夫 下畑 享良 小宅 睦郎 藤田 信也
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.386-390, 2022 (Released:2022-05-31)
参考文献数
15

症例は,61歳男性.2年前と6か月前に全身けいれん発作を起こし,5ヶ月前からの歩行障害が悪化して入院した.認知機能低下,下肢痙性と体幹失調,自律神経障害を認めた.髄液細胞増多があり,MRIで大脳半卵円中心の点状造影効果を伴う白質病変と長大な頸髄病変を認めた.ステロイドパルス療法で軽快したが2ヶ月後に再燃し,新たに頸髄側索の病変を認めた.髄液の抗glial fibrillary acidic protein(GFAP)α抗体が陽性で,自己免疫性GFAPアストロサイトパチー(GFAP-A)と診断した.GFAP-Aは,亜急性で予後良好の経過が多いとされるが,慢性難治性の経過をたどった.