著者
竹林 慎治 林 泰之 康本 明吉 籔内 咲 暁 久美子 大野 覚 池田 浩己 三浦 誠
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.65-69, 2015-03-31 (Released:2015-05-21)
参考文献数
17

魚骨異物は日常臨床でしばしば遭遇し, 診断・治療が容易な場合が多いが, 稀に困難な症例も存在する. 我々は, 3例の非典型的な魚骨異物症例を経験したので, 当院での頸部魚骨異物症例の検討を加えて報告する. 症例1は70歳の女性で, 舌筋層内に魚骨迷入し, 発症から受診まで半年を要し, 放線菌感染を伴う膿瘍形成を生じた. 症例2は68歳の女性で, 発症時近医喉頭ファイバースコープ検査で発見できず, 5日後右頸部膿瘍を生じ, 甲状腺右葉背側に迷入した魚骨を外切開により摘出した. 症例3は59歳の男性で, 舌扁桃内に埋没していたが, 経口腔的に摘出できた. 当院で4年半の間に60例頸部魚骨異物摘出術を施行し, CT 検査が有用であった.
著者
田部 眞治 藤田 宏人 松田 秀司 佐々木 秀和 竹中 暁恵 吉村 安郎
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.33-36, 2003-04-20 (Released:2010-06-28)
参考文献数
5
被引用文献数
1

破傷風はClostridium tetaniの産生するtetanospasminによって起こる重症感染症である。本疾患は開口障害を初期症状とすることが多く, 歯科・口腔外科を受診する症例も散見される。われわれは, 開口障害を主訴に当科を受診した破傷風5例について検討した。性別は男性1例, 女性4例で, 年齢は42~84歳, 平均69.6歳であった。すべての症例が当科受診以前に他の医療機関を受診していた。しかし破傷風と診断された症例はなく, 5例中3例は顎関節症と診断されていた。破傷風の診断には臨床症状が最も重要である。しかし近年, 破傷風は発生件数が激減し, まれな疾患となった。このため破傷風に遭遇する機会は減少しつつあり, これが診断を困難にする原因の一つであると考えられた。鑑別を要する疾患としては, 顎顔面領域の炎症性疾患などさまざまなものがあげられる。顎関節症も鑑別を要する疾患の一つである。しかし破傷風の開口障害は顎関節症のそれに比べ非常に強烈で, 術者が開口を試みるも, 著しく硬く困難であり, 開口域はほとんど改善をみないものである。それゆえ, 注意深い観察を行えば, 鑑別はそれほど困難なものではないように思われた。破傷風は診断が遅れると死を招く重篤な疾患である, したがって, 開口障害を訴える患者に対しては, 常に本疾患の可能性を念頭に置き診断にあたる必要があると考えられた。
著者
明石 暁子 阿部 裕之 黒木 識敬 田邉 孝大 杉山 和宏 山川 潤 濱邉 祐一
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.799-805, 2012-11-15 (Released:2013-01-17)
参考文献数
10

症例は,神経科入院歴のある61歳の女性。かかりつけ医から処方されていた徐放性塩化カリウム錠(スローケー®,600mg錠で,1錠につき塩化カリウム8.0mEq含有)約90錠を自殺目的で過量服薬した。救急隊搬送中に心肺停止状態となった。服薬後約90分で病院に到着したが,来院時も心肺停止状態であった。来院時の心電図は,高カリウム血症が原因のventricular tachycardia(VT)であった。Advanced cardiovascular life support(ACLS)に反応がないため,percutaneous cardiopulmonary support(PCPS)を装着することによって循環の維持が可能となり意識も回復した。高カリウム血症(K 11.6mEq/l)の是正のためにhemodialysis(HD)を行いつつ,腹部単純X線に写った大量の徐放性塩化カリウム錠の錠剤を上部消化管内視鏡で除去した。翌日にはPCPSより離脱し,経過中左側胸水や肺炎を合併しながらも全身状態は改善して第26病日,救命救急センターから一般病棟へ転棟した。入院時の上部消化管内視鏡の所見で,著しいびらんと出血を認めた。第68病日の上部消化管内視鏡では,胃弓隆部の狭小化と胃体部の著しい狭窄を認めた。この徐放性塩化カリウム錠が原因の瘢痕狭窄に対して,第81病日に胃分節切除術を施行した。全身状態も良好となった第136病日精神病院へ転院した。塩化カリウム製剤の過量服薬症例では,正常な腎機能を有する場合でも短時間のうちに致死的な高カリウム血症を生じる危険性がある。また急性期の高カリウム血症に対する治療が終了した後も胃の瘢痕狭窄に対して注意深いフォローアップを要する。
著者
池川 充洋 大島 暁 須藤 久美子 倉智 恵美子
出版者
看護理工学会
雑誌
看護理工学会誌 (ISSN:21884323)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.80-85, 2018-01-25 (Released:2018-01-31)
参考文献数
15
被引用文献数
2

製造における生産方式であるセル生産方式にヒントを得て,看護提供方式に展開し業務改善を具体化した事例を取り上げる.セル生産方式はベルトコンベアで多数の工員が細分化した単純作業を行うライン生産方式と異なり,1人,もしくは小集団にて製品組み立てから検査までの工程すべてを受け持つ.セル看護提供方式では日単位に勤務看護師に対し担当病室を割り振り,担当病室における患者に対するすべての業務を受け持つ.加えてスタッフステーションを起点とした情報収集・共有,カンファレンスなどの従来型の業務運用ではなく,病室・病室前の廊下を起点とした業務運用を基本としている.結果,患者の気配を察し,先取りケア実践が実現され,ナースコール呼出回数の減少を,さらに看護師のスタッフステーションに情報収集,物品を取りに戻るなどの業務動線の短縮を狙っている.当調査では位置検知システムの利用により把握可能な看護師従事場所情報を利用しセル方式導入効果を整理した.
著者
原田 斉子 冨田 稔 木村 暁夫 香村 彰宏 林 祐一 保住 功 兼村 信宏 森脇 久隆 祖父江 元 犬塚 貴
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.1, pp.157-160, 2012 (Released:2013-04-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

Neurolymphomatosisは脳神経を含む末梢神経,神経根あるいは神経叢へのリンパ腫の浸潤を呈する,臨床的には稀な疾患とされている1).今回,寛解導入後に末梢神経障害をきたし,神経生検によりneurolymphomatosisと診断し得たB cell lymphomaの2例を経験した.悪性リンパ腫の寛解導入後であっても末梢神経障害を呈した場合には,neurolymphomatosisを鑑別に入れ,神経生検を考慮する必要があると考えられた.
著者
船山真里 細田暁 武南浩二 宮本充也
雑誌
コンクリート工学年次大会2023(九州)
巻号頁・発行日
2023-06-16

戻りコンクリートに特殊凝集剤を添加して製造したIWA細骨材を用いた流動化処理土の物性について検討した。IWA細骨材とセメントと水のみで,適切なフレッシュ性状と圧縮強度を有する流動化処理土が製造できた。適切なフロー値と圧縮強度となる流動化処理土を得るためのIWA細骨材の粒度分布の範囲を示した。フロー値および圧縮強度が,単位体積質量と直線的な関係を示すことが明らかとなった。IWA細骨材の製造過程におけるクラッシュの有無により,フロー値と単位体積質量の関係が異なり,クラッシュありIWA細骨材の場合小さいフロー値を示し,クラッシュによる微粒分が影響したためと考えられた。
著者
志賀純貴 細田暁 宮本充也
雑誌
コンクリート工学年次大会2023(九州)
巻号頁・発行日
2023-06-16

造粒ポーラスコンクリートの空隙率を,水中浸漬後の乾燥条件を変化させた2種類の容積圧力法により測定し,打込み時の質量になった時点を表乾状態と仮定する容積圧力法(改)において,突固め回数が35回の場合に,15回および25回の場合と比べて連続空隙率が顕著に小さくなった。円柱供試体を用いた圧縮強度では,1.42~2.30N/mm2と非常に低い値を示したが,拘束効果を持たせた円柱試験体による支圧強度試験では,円柱供試体と比較し最大で2.9倍の強度を示した。
著者
加来 鉄平 鈴木 美威瑠 冨永 隆生 小川 暁郎 清水 厚志 渡邉 和孝 渡邉 和晃 前田 智司 松田 佳和
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.142, no.3, pp.289-293, 2022-03-01 (Released:2022-03-01)
参考文献数
11

In recent years, lifestyle-related diseases such as hypertension and diabetes have been on the rise. These conditions can cause serious conditions such as myocardial and cerebral infarctions. Therefore, proper control of blood pressure and blood glucose levels is important issues in preventive medicine. Traditional fermented foods have been shown to have various functions, and their effects on lifestyle-related diseases have attracted particular attention. In this study, we investigated the effects of fermented soybeans and rice bran (OE-1) and supplements containing OE-1 on blood glucose levels and weight changes. We identified an inhibitory effect on elevated blood glucose levels upon administration of OE-1, and this effect was thought to be due to digestive enzyme inhibition. These effects of foods containing OE-1 are expected to have a positive effect on the prevention and improvement of lifestyle-related diseases as health foods.
著者
菅野 健 大森 宣暁 長田 哲平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_809-I_816, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
27

少子高齢社会に直面する我が国において,近年,大学生の東京一極集中の進行など,地方都市における若年人口の減少が問題となっている.今後の大学キャンパスおよび周辺の施設立地を検討する上でも,大都市と地方都市の学生生活の実態と生活の質との関係を探ることが有効であると考えられる.本研究は,首都圏および地方都市の大学生を対象に,学生生活の実態と意識,特に余暇活動と主観的幸福感との関係を明らかにすることを目的とする.分析の結果,大学所在地が東京都心寄りであるほど余暇活動施設数や余暇活動に対する満足度および主観的幸福感が高く,学年,交際相手の有無,サークルや部活動への所属,アルバイトに対する意識,自宅内外の嗜好,余暇活動の頻度,余暇活動の満足度が,主観的幸福感に影響を与えることが明らかとなった.
著者
米山 暁夫
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.1412-1417, 2005 (Released:2011-03-14)
参考文献数
8

近年, 普及が著しいネットワーク上の映像通信技術に関して解説する.本稿では, 「IPネットワークによる映像配信」と題し, 特にVODやインタネット放送といったIPネットワーク上片方向の動画配信技術を中心に, 配信における問題点と, それに対応する技術動向として, 符号化フォーマット, 通信プロトコル, エラー耐性技術, DRM技術などについて解説する.
著者
大井 暁
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.636, pp.636_5-636_24, 2017-03-31 (Released:2018-01-29)
参考文献数
30

2000年に販売開始された弁護士費用保険の普及に伴い,その問題点も顕在化してきた。少額事件の増加に関し,対象となる請求権の額に最低額を設けることは保険の対象とする紛争の種類によっては可能と解されるが,自動車保険に関しては示談代行との関係で困難である。濫訴の弊害に関しては,弁護士費用保険の普及との因果関係が明らかでないとの指摘があり,濫訴か否かを保険者が判断する約款の導入も慎重を要する。保険金算定をめぐる紛争の予防には約款に保険金算定基準を織り込むことが有効であるが,約款規定がない場合でも保険者は適正妥当な保険金を算定できると解すべきである。弁護士費用保険に特化した紛争解決機関の設置には,保険業法との関係を考慮する必要がある。弁護士等の事件処理や顧客対応に関する苦情は,弁護士会等が適切な対応をしなければ保険会社が弁護士のパネル化を進める契機となりうる。弁護士費用保険と責任保険の引受保険会社が同一の場合等の利益相反には,指揮命令系統の区別や情報の遮断が必要となると解される。
著者
鈴木 達也 齊藤 暁
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.157, no.2, pp.134-138, 2022 (Released:2022-03-01)
参考文献数
30

新型コロナウイルスをはじめとして,数多くのウイルス感染症がRNAウイルスによって引き起こされている.RNAウイルス感染症の制御には,ウイルス増殖機構の包括的理解が不可欠である.また,一般にRNAウイルスは進化速度が速いため,抗ウイルス薬への耐性株や中和抗体,細胞性免疫など宿主免疫からの逃避株について,変異株のウイルスゲノムに出現した変異がどのようなメカニズムで耐性を獲得しているのかを解明することは極めて重要である.これら変異株の解析を行う上で,組換えウイルスの人工合成法(リバースジェネティクス法)は重要なツールであるが,従来の方法は特殊な技術やツールが必要で,ウイルスの回収までに長い時間を要するという課題があった.近年開発されたcircular polymerase extension reaction法(CPER法)はウイルスゲノムを複数に分割することで,それぞれのゲノム断片を大腸菌プラスミド内で比較的容易に維持可能であり,極めて迅速に変異体の作成が可能である.著者らはこれまでデングウイルス,日本脳炎ウイルス,ジカウイルスなどのフラビウイルスを中心に研究を進めてきたが,最近は同技術を新型コロナウイルス研究に応用することで,ウイルス増殖機構の解明に取り組んでいる.本総説では,同技術の特徴や応用例,今後の発展性について紹介したい.
著者
水口 博貴 長山 暁子 鶴田 隆治
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集B編 (ISSN:18848346)
巻号頁・発行日
vol.77, no.781, pp.1826-1833, 2011 (Released:2011-09-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

A simple theoretical expression for the evaporation/condensation coefficient in equilibrium has been proposed by Nagayama and Tsuruta based on the transition state theory and molecular dynamics simulations in 2003. It is not clear, however, whether this approach can be applied to complex molecules such as n-dodecane with long chain structures. In this study, molecular dynamics (MD) simulations have been performed to investigate the evaporation/condensation coefficients of n-dodecane in equilibrium systems. It is found that the evaporation coefficient of n-dodecane primarily depends on the translational energy and the surface temperature similar to simple molecules like argon and water, while the molecular orientation of long chain n-dodecane has less effect. Also, the MD data of n-dodecane agree well with the theoretical expression based on the transition state theory. We conclude that the evaporation coefficient can be predicted by the translational length ratio of liquid to vapor in general even for the long-chain molecules.
著者
遠藤 光暁
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3・4, pp.01-025, 1995-03

The close examination of the Zhongzhou Yuefu Yinyun Leibian 中州楽府音韻類編 (ZYYL), one version of the Zhongyuan Yinyun (ZYYY), reveals that the ZYYL had been originally compiled according to the Guangyun 広韻 and then the ZYYY was revised and enlarged on this basis. The phonological properties of the ZYYY are slightly different from those of the ZYYL, hence the authors of these two editions can not be the same person (i.e. Zhou Deqing 周徳清).