著者
曽根 悟 水間 毅 高野 奏
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

純電気ブレーキの第一段階としての,電動車の電気ブレーキを停止まで用いることについては,新京成電鉄に続いて小田急電鉄,東急,名鉄,JR東日本など,採用に踏み切る鉄道が急速に増えている。しかし,このことは本研究がねらっていることが既に不要になって実用化が進んでいる訳ではなく,現状は全て狭義の「純電気ブレーキ」である,通常の運転に摩擦ブレーキを使わないものではなく,広義の純電気ブレーキの一種である停止まで電動車の電気ブレーキを使う方式であって,今後の本格的な「純電気ブレーキ」化にむけて,本研究の重要性が一層増してきたことを意味している。最初の2年間の研究で過走に対する対策の確立に向けての議論がほぼできあがったので,最終年度である平成15年度には,回生ブレーキの能力を有効に発揮させるための対策としての,饋電システムのあり方や列車群の運転法などに議論の中心を移し,併せて車両が持つべき回生能力やMT比についての検討を進めた。純電気ブレーキが順調に普及している現時点では,これらのことを含めた総合的な報告にまとめることの必要性が高いと判断されるので,報告書には本研究期間の3年間以前からの分も含めて,現時点での純電気ブレーキ化に必要と思われる主要な技術情報を網羅する形で,以下のようにとりまとめることにし,多くの鉄道事業者やメーカに配布する予定である。1.「純電気ブレーキ」とその実用化のステップ2.停止までの電気ブレーキの実現3.回生モードの電気ブレーキの確実性・信頼性4.回生失効対策5.純電気ブレーキによる特性改善の可能性6.純電気ブレーキ能力の現実的制約7.滑走の発生とその対策8.速度・位置検知誤差の問題とその対策9.高速回生能力の制約と現実的活用法10.MT比と使用可能な減速度11.高速回生能力を格段に高める方法12.運転特性改善のための簡易自動運転の提唱13.運転特性改善のための手動運転の補助14.純電気ブレーキの将来構想
著者
藪田 貫 浅倉 有子 菊池 慶子 青柳 周一 桑原 恵 沢山 美果子 曽根 ひろみ 岩田 みゆき 中野 節子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では通常の分担者による研究会の積み重ねという形を取らず、日本の各地で「江戸の女性史フォーラム」を順次開催し、地域の女性史研究の成果と資料に学ぶというスタイルで3年間、進めた。その結果、大阪(2005.7)徳島(2005.12)、鳥取(2006.5)、東京(2006.7)、福岡(2006.12)、金沢(2007.9)、京都(2007.11)の7ケ所で開催することができた。その成果は、いずれも報告書の形で公表されているが、地域に蓄積された女性史の成果の掘り起こしと交流に貢献できたと確信する。とくに藩制史料の中から奥女中を含め、武家の女性の発掘が進み、菊池(柳谷)・浅倉・桑原らが中心となって「藩社会の中の女性」が一つの新しい潮流となっている。また活発な研究活動は、国内外の学会発表という形でも結実した。国内では立教大学日本学研究所の公開シンポジュウム(2006.5)に沢山と藪田が、ジェンダー史学会・女性史総合研究会共催のシンポジュムには曽根ひろみ(協力者)が、それぞれパネリストして参加した。国際的な学術交流では、鳥取と京都のフォーラムにアメリカとオーストリアから研究者を招き、また藪田が、ケンブリッジ大学での研究会「江戸から明治の女性と読書」(2006.9)、ボストンでのアメリカ・アジア学会分科会「19世紀日本の売買春と政治」に報告者として参加した。研究課題としてあげた研究者の世代交代を進め、若手研究者を養成するという点では、若い大学院生のフォーラムへの参加も少なく、残念ながら十分な成果を挙げていない。また分担者の研究の成果にもムラがあり、地域的にもまたライフコースについても、均等に成果を上げるには至らなかった。反省点であり、今後の課題である。
著者
丸田 孝志 曽田 三郎
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日中戦争期から内戦期の中国共産党(中共)根拠地における民俗・象徴・儀礼を利用した戦時動員・宣伝政策について分析し、これらの政策が、階層間の流動性が大きく、状況依存的なネットワークが展開する中国基層社会の構成の特質を意識して展開され、強力な動員力を発揮した状況を明らかにした。また、日本傀儡政権の同様の政策と対比して、両者の特質を検討した。この他、清末から民国初期の憲政導入過程の分析を通じて、伝統的統治から近代的統治への転換の問題を長期的な視点から検討した。
著者
森田 昌嗣 曽我部 春香 石橋 伸介 池田 美奈子
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.47-54, 2009-05-31
被引用文献数
3

本研究は、技術者やデザイナーなど専門家主体の一元的な評価やエンドユーザーに対して行うマーケティング調査ではなく,実践的に製品開発などの開発に携わる人々が活用できるデザイン評価・診断システムを構築することを目的とする。開発に携わるデザイナーや技術者などを作り手,経営者や営業者などを送り手,エンドユーザーを受け手ととらえ,これら3者のユーザーグループ間に存在すると考えられるデザイン評価のズレを明らかにする。そして,この評価のズレを製品開発に実践的に活かすための運用モデルを構築し,システムとしての確立を目指す。本稿では,この一連の研究の方法を示した上で,グッドデザイン賞表彰制度におけるデザイン評価とユニバーサルデザインに代表されるユーザビリティ評価の関係を整理し,本評価診断システムの位置付けを明確化する。
著者
若曽根 健治
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

(1)ドイツの13世紀から18世紀におよぶ長い歴史をもつウァフェーデ(Urfehde[報復放棄の誓約])とその制度は、大きく三つの形態と段階を経てきた。(a)「騎士的ウァフェーデ」は貴族領主層相互のフェーデ(権利の要求を掲げた敵対関係とこれに伴う実力の行使)の過程で捕らえられた騎士が報復放棄の誓約を捕らえた側におこなった。(b)「騎士的市民的ウァフェーデ」は、市民勢力の興隆の中で騎士と市民とのフェーデ終結において交わされた。(c)「市民的ウァフェーデ(市民的都市司直的ウァフェーデ)」は、都市司直(都市参事会)にとって望ましくない行為のゆえに司直に捕らえられた市民が司直に交わした、復讐断念の誓約である。また市民的ウァフェーデにおいては、包括的抽象的に言い表わされた理由(例えば「逸脱」・「違反」等)によって捕捉され、ウァフェーデが誓約された。とりわけ市民的ウァフェーデは14、15世紀に広く展開し、都市・市民の社会的規律化に著しく寄与した。(2)この市民的都市司直的ウァフェーデの盛行は、市民の正当な告訴行為を妨げることが少なからずあった。このことが、カール五世刑事裁判令(カロリーナ・1532年)20条からわかる。都市司直もしくは裁判官から被った拷問によって受けた損害(「恥辱、苦痛、経費および損失」)の賠償を市民が裁判所に訴え出ようとするときに、司直もしく裁判官は、市民に、「ウァフェーデに助力」することによって妨害してはならない、と。帝国の裁判所は皇帝法(ローマ法)に基づく裁判制度の改革によって、裁量と恣意による都市刑事司法の弊害に対応しようしとしていた。
著者
横山 英 曽田 三郎 楠瀬 正明
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

1.本研究課題に関する内外の論文・著書の調査・収集につとめると共に, 問題点の整理を行った.2.新聞類・政書類・地方志類を広く検索して史料の収集につとめ, それを基礎にした研究の一部は別記の如く発表し, または発表を予定している.3.外務省外交史料館所蔵の中国近代地方自治関係文書の目録の整理を完了し, 『外務省外交史料館所蔵諮議局・省議会関係史料目録』の書名で印刷・公表し, 内外の関係方面へ配布した.
著者
木曽 誠二 菊地 晃二
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.293-301, 1990-01-31
被引用文献数
1

窒素(N)施肥配分が,数種チモシー品種の年間および各番草の乾物収量に及ぼす影響を検討し,各品種の年間収量を最も高める配分法を明らかにした。チモシー品種として,年3回刈取りのクンプウ(極早生),および年2回刈取りのノサップ(早生),ホクシュウ(晩生)を用いた。1)N施肥量の増加により,各番草収量は高まった。しかし,その増収程度は1番草で大きく,2,3番草で小さかった。そのため,年間収量は,1番草に対して多く,2番草以降では順次少なくする配分が,各番草に対して均等配分する場合,あるいは1番草以降に順次多く配分する場合より高かった。これらの傾向は3品種とも同様であった。2)各番草に対して同量のNが施肥されたときの収量は,クンプウでは1,2番草が3番草より,ノサップ・ホクシュウでは1番草が2番草よりも高かった。また,牧草が吸収したN1kg当たりの乾物生産量は,どの品種でも,1番草が2,3番草よりも多かった。3)各番章収量に影響を与える再生茎の種類は,品種により異なり,クンプウの1,2番草およびノサップの1番草では有穂茎数の確保が,またホクシュウの1,2番草では無穂茎数の確保が重要であった。4)ノサップ,ホクシュウでは秋分施により,越冬前および翌春の茎数と茎葉重は増大したが,出穂期刈りの1番草収量は高まらなかった。5)以上より,年間のN施肥量が同一の場合,年間収量を最も高めるN施肥配分は,クンプウでは早春:1番草刈取り後:2番草刈取り後=3:2:1,ノサップ,ホクシュウでは早春:1番草刈取り後=2:1が適当であった。
著者
佐々木 仁 曽我 祥子 磯 博之 井上 徹
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

色覚刺激が生体に及ぼす影響について、以下の、4つの実験を実施した。1)色の単純反応時間:色相、彩度、輝度を変化させた刺激を用いてヒトの単純反応時間を計測した。有彩色では赤と緑に対する反応時間が速い傾向が認められ、無彩色と有彩色の比較では、青を除いて有彩色の方が反応時間が有意に速かった。他方、彩度による反応時間の相違は認められなかった。また、SD法を用いて調べた色彩刺激の嗜好度は青が最も高く、黄が最も低く、反応時間との相関は認められなかった。以上より、色相は覚度、情動に影響することが示された。2)色の記憶:異なる色相の刺激を用い、ヒトで遅延見本を合わせ課題を行った。明所視下に標本刺激を中心窩に提示し、3秒の遅延後、同一色相で、明るさ、または彩度が異なる比較刺激を同時提示して標本選択の正答率を求めたところ、緑の正答率が高く、青では低かった。一方、比較刺激だけを提示した弁別は緑で低く、青で高かったことから、色相により記憶の困難さに相違があることが示された。3)閃光刺激が脳波に及ぼす影響:ポケモンTV放映によって入院した患者について3-20Hzの閃光刺激を提示し、脳波を解析したところ、特徴的な、α波成分の引き込み現象が観察された。色刺激に対する反応については、今後の課題である。4)色が驚愕性眼瞼反射に及ぼす影響:角膜への空気の吹き付けによって生ずる驚愕反射を記録した。空気の吹き付けに100ms先行させて、色相の異なる刺激を提示したところ、1)いずれの先行刺激も、驚愕反射の振幅を有意に減少させ、2)黄色に対する振幅は他に比べて小さかったことから、黄色は情動反応の抑制効果が高いことが示唆される。
著者
曽根 秀昭 藤井 章博 根元 義章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク
巻号頁・発行日
vol.96, no.97, pp.41-48, 1996-06-17
被引用文献数
4

東北大学は,1995年2月に超高速のキャンパスネットワークシステムSuperTAINSを完成させ,l996年3月には拡充を終えた。マルチメディア環境が学内においても急速に進展しており,これに十分応えられるよう,また,将来に向かって発展,拡充していくことができるよう考慮し,仙台市内に分散する5つのキャンパス間にシングルモードの光ファイバをメッシュ型に張り,交換方式としては基幹部分をにATM方式を,支線部分にFDDI方式を採用した。すでに,広帯域伝送を必要とする様々な科学技術計算等のアプリケーションが利用され,これに伴う通信需要が急増してる。本稿では,ネットワークシステムの概要から,利用状況,および運用等について述べる。
著者
藤沢 法義 梅村 匡史 曽我 聰起
出版者
札幌国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、授業映像の簡便な撮影・編集・配信用システムを安価に構築することである。平成18年度は、(1)授業映像撮影方法への影響要素による授業分類法の検討整理、(2)ワイヤレスマイクを利用した授業映像撮影法の有効性の検証、(3)編集作業無しでビデオカメラ2台撮影映像のPinP合成を可能にするSMILジェネレータの改良を実施した。ただし、授業中に教室内を広範囲に移動する教員をカメラマン無しで撮影する方法など、適用可能な授業形態範囲を拡大する課題を残した。平成19年度は、先ず授業担当教員一人で撮影できる授業形態範囲拡大のために市販の自動追尾撮影用機材能力を評価した。その結果、超音波送信器の方向にパン動作する自動追尾回転台の性能に良好な結果を得た。ただし、被写体である教員の動作によってはパン動作が不適切になるため授業中の教員が適宜自身の動作で対応する必要があることも判明した。次に、安価、簡便に授業映像を編集してインターネット配信する手段、方法について検討を加えた。Podcastを利用したビデオ配信環境が整備され盛んに利用されている現状とモバイル機器を学習機材として利用できる可能性を重視し、授業映像をPodcast配信する手段、方法などの実証試験を実施した。その成果として、省力化可能なビデオカメラ映像ファイル保存形式やファイルコンバータ、映像編集ソフト、Podcast配信支援ソフトなどの組合せを提示した。近年、OCWやiTunes Uなどで授業映像を組織的に公開している大学が増加している。公開の有無に関係なく、特別な組織や設備が無くても教員が手軽に自身の授業映像を学習支援やFDなどに活用できる手段のひとつを本研究が提供できた。
著者
曽根 広哲 吉田 泰明 平手 勇宇 山名 早人
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.93, pp.89-94, 2008-06-19
被引用文献数
2

検索エンジンはインターネットで情報を探す手段として欠くことができない.また,ユーザは検索エンジンの検索結果から得られる情報はテレビからの情報とほぼ同等の信頼性があると認知しているという調査報告がある.すなわち,検索エンジンのランキングを調べることによって,あるサイトが社会に与える影響力の一端を把握できると考えられる.本稿では,今やインターネット上の百科事典の代名詞ともなったウィキペディアが社会に与える影響力を調べることを目的として,日本語版ウィキペディアの検索エンジンにおけるランキング解析を行った.実験の結果,全記事のうち,上位10位以内にランキングされた記事はYahoo! JAPANとGoogleでは約9割,MSNでは約7割となった.また,Yahoo! JAPAN,MSNともに,ウィキペディアの新規記事は「はてなダイアリーキーワード」と比べ,最初から上位10位以内に現れる傾向が強く,上位のランキングを維持する傾向があることが分かった.以上のようにウィキペディアの影響力は大きいものであるということが実験結果から確認できた.
著者
向井 秀仁 木曽 良明
出版者
長浜バイオ大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

タンパク質や生理活性ペプチドが生合成され、また代謝・分解される段階では、同時に多数の断片ペプチドが生成されるが長い間これらは機能を持たない代謝産物であると考えられてきた。本研究では先行研究により発見されていた好中球活性化ペプチド、マイトクリプタイド-1に加えて、新たにマイトクリプタイド-2およびマイトクリプタイド-3をブタ心臓から単離・同定し、それらがミトコンドリアタンパク質由来の新規好中球活性化ペプチドであることを明らかにするとともに、これらマイトクリプタイドの受容体およびその細胞内情報伝達機構を明らかにした。
著者
窪田 幸子 曽我 亨 高倉 浩樹 内堀 基光 大村 敬一 杉藤 重信 丸山 淳子 PETRRSON Nicolas ALTMAN Jon
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、20 世紀末から力を持つようになった国際的なイデオロギーとしての「先住民」概念を視野に入れつつ、国際世論と国家の少数民族政策のもとで、少数者である当事者の人々が、どのように先住民としての自己のアイデンティティを構築していくのかをあきらかにすることを目的とするものである。その結果、先住民としてのアイデンティティを選び取る・選び取らないという選択の幅がみられる現状には、グローバリゼーション、なかでもネオリベラルな経済的影響が大きいことが明らかになった。最終年に開催したとりまとめの国際シンポジウムではこのスキームをベースとして、代表者、分担者そして海外研究協力者の全員が研究発表を行った。
著者
赤尾 慎吾 佐久間 正典 小針 健太郎 山本 祐太朗 野口 和洋 中曽 教尊 辻 俊宏 山中 一司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.212, pp.81-86, 2008-09-18

安全・安心のために、ユビキタスな多種類ガス分析装置の要求がある。多種類のガス検出手法として、ガス成分の時間分離を原理としたガスクロマトグラフ(GC)が多く使用されているが、キャリアガス等のユーティリティが必要でかつ装置が大型であることから、ガスをサンプリングして分析室内での使用を余儀なくされてきた。我々は、小型で室温動作可能な球状弾性表面波(SAW)センサを開発してきた。SAWを球の表面に特定の条件で励振させることにより、無回折な自然な平行ビームとして多重周回させる事で長距離伝搬を可能にした。このため、音速の変化や強度の減衰率が超高感度で計測できる。この技術をGCに応用することで、小型で、高感度な多種類ガスセンサを提案する。
著者
大曽根 寛
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、当初、フランスと日本の新しい障害者政策の構造と施行実態に関する比較研究を構想していたが、両国の政策の全体系の比較検討を報告書として印刷するには到らなかった。最終年度の2010年度末に発行した報告書では、焦点を精神障害という領域に絞り、さらに職業支援に関することがらに限定した。それゆえ、最終報告書のタイイトルは「フランスと日本における新しい障害者政策に関する比較研究-精神障害者への職業支援を中心にー」としてある。また、2009年度末に、中間報告書として発行した「フランスの新しい障害者政策の紹介」では、制度・政策の詳細を示している。あわせて参考にしていただければ幸いである。
著者
光末 紀子 宗像 惠 曽根 ひろみ 須藤 健一 山崎 康仕 三浦 伸夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

平成12年度には、各研究領域に内在するジェンダー問題の摘出と分析が行われ、平成13年度には、研究会の開催と討議によってジェンダーに関する本格的な共同研究が進められた。平成14年度はこれをさらに推し進め、「現代社会における文化的性差を支える価値観と諸規範を根底から問い直す」という共通テーマに対する各人の研究成果を持ち寄って数回の研究会で意見交換を行い、共同討議を通じて研究の成果を統合することがめざされた。この研究計画にもとづき、3年間に合計9回の研究集会が開かれた。それぞれの報告者とテーマは以下のとおりである。第1回 曽根ひろみ「公娼制と梅毒」、桜井徹「『女としての自然』の収奪」。第2回 ブライディ・アンドリュース(ハーバード大学科学史・科学哲学科助教授)「アメリカにおけるジェンダー研究」。第3回 藤目ゆき(大阪外国語大学助教授)「公娼制度と日本軍慰安婦制度」。第4回 ロバート・フローデマン(コロラド鉱業大学教授)"Corrosive Effects : Environmental Ethics, Eco-feminism, and the Metaphysics of Acid-mine Drainage"。第5回 カリーム・ベナマル"Theory of Abundance and Scarcity"、土佐桂子「ミャンマーにおけるトランスヴェスタイト-男装者(ヤウチャシャー)のジェンダー論」。第6回 金野美奈子「性別職務分離研究再考-ジェンダー分析の方法論的リスク」。第7回 三浦伸夫「『レディーズ・ダイアリー』にみる18世紀英国の女性と数学」。第8回 光末紀子「B.パッペンハイムの思想と行動-ドイツにおける第一波フェミニズムの一動向」。第9回 曽根ひろみ「日本近世の法制とジェンダー」。いずれの研究集会においても、濃密な内容の報告をめぐって活発な討論が交わされ、本科研の共通テーマに関する研究分担者間の共通認識はいっそう深められた。その結果、新たな性差規範に基づく個々人のジェンダー・アイデンティティの確立と、あるべき「両性の共同性」への展望とを獲得するための基礎が築かれたと言えよう。さらに、各々の研究分担者における研究の進展の一部を紹介すれば、以下のごとくである。(1)光末は、19世紀末から20世紀初頭にわたるフェミニズム第一波の時代に、多くのフェミニストたちがジェンダーをめぐる様々な論争に参加したが、それらの論争を「母性」というキーワードのもとに検証した。(2)曽根は売買春についての歴史学、民俗学、社会学の研究史を批判的に検討し、それを一冊の単著にまとめた。(3)阪野は、ブレア政権の家族政策が、就労促進型給付の拡大や選別主義の強化といった点で保守党政権との連続性が強いことを明らかにした。(4)宗像は、フロイトのセクシュアリティ論を再検討し、男根中心主義とされるフロイト理論に伏在する、女性的セクシュアリティの始原性の契機を探求した。(5)土佐は、90年代のミャンマーの主要な雑誌に見られるジェンダー関係の記事を収集調査した。(6)上野はフランクフルト学派にみられる家父長制批判の論理とその逼塞を検討し、塚原はハーディングとハラウェイの観点観測論および強い客観性の概念を吟味した。