著者
望月 聡 前野 久美子 乗田 嘉子
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.396-399, 1997-05-15 (Released:2008-02-29)
参考文献数
10
被引用文献数
9 8

Specimens of horse mackerel were killed by stabbing in the spinal bulb or neck-breaking. After death, the fishes were stored at 0°C. The rate of progress of rigor-mortis, and the rate of change of concentrations of energy-related compounds and breaking strength of the dorsal muscle were investigated. The rate of progress of rigor-mortis in the neck-breaking group was slower than that in the stabbing in the spinal bulb group. The concentrations of ATP and creatine phosphate in the dorsal muscle immediately after killing in the neck-breaking group were higher than those in the stabbing in the spinal bulb group. Conversely, the initial values of concentrations of IMP and lactic acid were lower in the neck-breaking group. No significant differences were observed in the changing rates of breaking strength of the muscle and K-value. From these results, it was considered that the killing procedure by neck-breaking was able to delay the changes in rates of rigor-mortis and energy-related compounds in muscle compared with the treatment by stabbing in the spinal bulb.
著者
望月 貴文
出版者
北海道大学公共政策大学院
雑誌
年報 公共政策学 (ISSN:18819818)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.289-313, 2022-03-31

The purpose of this study is to clarify the operational issues of support for settlement in Higashikawa Town by focusing on the “contents of support during the activities of the community-reactivating cooperator squad” of Higashikawa Town and comparing them with the contents of support during the activities of other municipalities that boast a high rate of resettlement, and to contribute to the improvement of the system in Higashikawa Town in the future.
著者
望月 秀樹 青木 正志 池中 建介 井上 治久 岩坪 威 宇川 義一 岡澤 均 小野 賢二郎 小野寺 理 北川 一夫 齊藤 祐子 下畑 享良 髙橋 良輔 戸田 達史 中原 仁 松本 理器 水澤 英洋 三井 純 村山 繁雄 勝野 雅央 日本神経学会将来構想委員会 青木 吉嗣 石浦 浩之 和泉 唯信 小池 春樹 島田 斉 髙橋 祐二 徳田 隆彦 中嶋 秀人 波田野 琢 三澤 園子 渡辺 宏久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.709-721, 2021 (Released:2021-11-24)

日本神経学会では,脳神経内科領域の研究・教育・診療,特に研究の方向性や学会としてのあるべき姿について審議し,水澤代表理事が中心となり国などに対して提言を行うために作成委員*が選ばれ,2013年に「脳神経疾患克服に向けた研究推進の提言」が作成された.2014年に将来構想委員会が設立され,これらの事業が継続.今回将来構想委員会で,2020年から2021年の最新の提言が作成された.本稿で,総論部分1)脳神経疾患とは,2)脳神経疾患克服研究の現状,3)脳神経疾患克服研究の意義・必要性,4)神経疾患克服に向けた研究推進体制,5)脳・神経・筋疾患克服へのロードマップ,6)提言の要約版を報告する.*提言作成メンバー水澤 英洋,阿部 康二,宇川 義一,梶 龍兒,亀井 聡,神田 隆,吉良 潤一,楠進,鈴木 則宏,祖父江 元,髙橋 良輔,辻 省次,中島 健二,西澤 正豊,服部 信孝,福山 秀直,峰松 一夫,村山 繁雄,望月 秀樹,山田 正仁(当時所属:国立精神・神経医療研究センター 理事長,岡山大学大学院脳神経内科学講座 教授,福島県立医科大学医学部神経再生医療学講座 教授,徳島大学大学院臨床神経科学分野 教授,日本大学医学部内科学系神経内科学分野 教授,山口大学大学院神経内科学講座 教授,九州大学大学院脳神経病研究施設神経内科 教授,近畿大学医学部神経内科 教授,湘南慶育病院 病院長,名古屋大学大学院 特任教授,京都大学大学院臨床神経学 教授,国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科 教授,東京大学医学部附属病院分子神経学特任教授,国立病院機構松江医療センター 病院長,新潟大学脳研究所臨床神経科学部門神経内科学分野,新潟大学脳研究所フェロー,同統合脳機能研究センター産学連携コーディネーター(特任教員),順天堂大学医学部神経学講座 教授,京都大学大学院高次脳機能総合研究センター 教授,国立循環器病研究センター病院長,東京都健康長寿医療センター研究所 高齢者ブレインバンク,大阪大学大学院神経内科学 教授,金沢大学大学院脳老化・神経病態学 教授)
著者
望月 翔太
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.295-302, 2021 (Released:2021-08-26)
参考文献数
39

野生動物の生息地を評価することは,対象動物種の生態を解明し,生息地を保全するうえで重要である.この時,動物がどのような資源を選択し,どのように分布するのかを評価する必要ある.動物の生息地選択は,生息地を構成する景観構造に対し,動物がどのように応答するかという意思決定プロセスの結果である.また,生息地選択では,様々な時間的・空間的スケールを定義する必要がある.本稿では,野生動物の生息地評価における空間スケールの重要性について,これまでの知見を整理する.まず,先行研究における空間スケール(調査範囲と分解能,バッファサイズ)を考慮した事例を整理し,次に,著者らがニホンザル(Macaca fuscata)を対象に研究してきた生息地選択におけるスケール依存性について紹介する.農作物被害は,ニホンザルがどのような環境を選択したかという意思決定プロセスの結果である.ここでは,100 m~2,500 mのバッファサイズで計算した環境要因と農作物被害との関係を解析した.その結果,農作物被害と関係する環境要因は,バッファサイズの大きさによって変化することがわかった.つまり,被害管理を行う際,どの程度の空間内で対策を実施するかによって,同じ対策でも効果が異なる可能性があることを示唆した.さらに,群れごとに生息地選択モデルにおける最適なバッファサイズが異なっていた.これらの結果を踏まえ,野生動物管理におけるスケール設定の重要性について推察した.
著者
中川 佳子 望月 登志子 田中 泉 河内 十郎
出版者
日本健康行動科学会
雑誌
Health and Behavior Sciences (ISSN:13480898)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.35-41, 2003 (Released:2020-07-22)
参考文献数
22

Near-infrared red spectroscopy (NIRS) is a noninvasive method that uses changes in cerebral blood volume (CBV) to measure relative changes in tissue concentration of oxygenated, deoxygenated and total hemoglobin. We used this technique to determine the cortical activation area during Japanese grammatical processing. To assess the relative changes in total hemoglobin, local changes in near-infrared absorption were measured simultaneously from seven points in both hemispheres. Nine subjects were presented target stimuli, and were asked to decide whether the attendant particle was “ga” or “wo” in Japanese grammatical tasks (experimental conditions), and whether the relative position was “front” or “back” in positioning tasks (baseline and control conditions). To control subvocal rehearsal and conceptual driven processing, the same Kanji character was presented visually as a target in the experimental and control conditions. Total hemoglobin increased in Broca's area when subjects made judgments in Japanese grammatical tasks, compared to positioning tasks. These results suggested that the task of deciding particles in Japanese grammatical processing might be an effective and objective method to assess language disorders.
著者
畑田 智子 大浜 用克 新開 真人 武 浩志 北河 徳彦 工藤 博典 望月 響子
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.915-919, 2010-10-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

【目的】食道閉鎖症根治術後の吻合部狭窄に胃食道逆流症(GERD)を合併した場合,狭窄が増悪するために,拡張術による拡張効果が乏しいと言われている.食道閉鎖症根治術後にみられたGERD合併例とGERD非合併例の吻合部狭窄に対する治療方針について検討した.【方法】1974年から2006年8月までに当院で治療し,術後の追跡が可能な113例の中で術後に吻合部狭窄を合併した31例を対象に,GERD合併群と非合併群の2群に分け,吻合部狭窄に対する治療成績を比較検討した.【結果】吻合部狭窄例31例の内,GERD合併例は14例であり,GERD非合併例は17例であった.GERD合併群の上下食道断端距離(gap)は26.7±13.5mmであり,GERD非合併群は15.0±9.3mmで両群間に有意差を認めた.吻合部狭窄とGERDの合併群では14例中6例に吻合時に食道環状筋切開術(Livaditis)が付加された.吻合部狭窄に対しては拡張術を,GERDには制酸剤投与を行った.その結果GERD非合併群では平均2.4回の拡張術で吻合部狭窄症の症状が改善したのに対し,GERD合併群では平均7.3回の拡張術を行っても狭窄の改善がみられなかった.11例に噴門形成術を行い,3例には狭窄部切除を行った.噴門形成術後は8例が速やかに改善,3例はブジーを追加して改善した.狭窄部を切除した内の2例は間もなく噴門形成術を追加施行し,他1例はGERD症状が軽快したので経過観察とし,そのまま改善した.【結語】GERDを合併した吻合部狭窄に対しては,制酸剤の投与と拡張術だけでは狭窄に改善がみられないため,早期に噴門形成術を行うべきである.
著者
中村 亮一 北角 権太郎 長村 伸一 田辺 良子 須藤 政光 勝池 康允 望月 剛 千葉 敏雄
出版者
一般社団法人 日本コンピュータ外科学会
雑誌
日本コンピュータ外科学会誌 (ISSN:13449486)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.87-95, 2011 (Released:2015-10-30)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

The advancement of measurement technology inside operation room including medical imaging and diagnosis and the combination between these technologies and computer technology leads the progress of navigation surgery, which is safer and more precise surgery; this type of a surgical procedure is mainly applicable to neurosurgery, orthopedic surgery, and otolaryngologic surgery. For example, fetal endoscopy can be safely performed through a surgical procedure based on the navigation technology; this procedure enhances the surgeon's field of view. However, a real-time and high-quality imagining and visualization technology is required to perform surgeries involving the treatment of soft tissue, such as fetal surgery. In our work, we developed a real-time updated navigation system for performing abdominal endoscopy including fetal surgery, using a high-speed transfer interface of a real-time 3D ultrasound imaging system and by carrying out high-speed computing using a multi-core processor system. The evaluation results of our system showed that our system was able to detect a position error of up to approximately 2.78 mm, and it was able to visualize and process data after every 200-500 ms. Further, we developed a new method for sensing the distance between the organs and surgical instruments. The evaluation results of our navigation system show that our system is able to avoid collision between the organs and surgical instruments during endoscopic procedures.
著者
曽根 一純 望月 龍也 野口 裕司
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.1007-1014, 1999-09-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
22
被引用文献数
7 7

国内外から導入した幅広い特性を有するイチゴ品種について, 促成および露地栽培におけるビタミンC含量を調査した.1995年には293品種を用いて5回の収穫時期で, また1996年には149品種を用いて7回の収穫時期で調査した.これをもとにビタミンC含量の品種・収穫時期間における変動を明らかにするとともに, ビタミンC含量と平均果重, 果皮色, 糖および有機酸の含量・組成等の果実品質関連形質との関係を検討した.1) 1995年作における収穫期間を通じた各品種のビタミンC含量の平均値は, 15.9mg/100g∿114.8mg/100gの範囲に分布し, 供試した293品種の総平均は59.1mg/100gであった.ビタミンC含量およびその時期的安定性には幅広い品種間差がみられた.Finlay・Wilkinson (1963)の方法による回帰係数を用いて環境変動に対する安定性を検討したところ, 高いビタミンC含量の品種ほど環境変動に敏感な傾向がみられた.しかし, '静紅', 'あかしゃのみつこ', 'さちのか'等は高いビタミンC含量を有し, かつ環境変動に対して比較的鈍感であり, 安定して高いビタミンC含量の品種を育成するための育種母本として有望と考えられた.2) ビタミンC含量の品種間差は収穫時期間の安定性が高く, 品種特性としてのビタミンC含量を評価するに当たっては, 大まかなスクリーニングのための調査を収穫期間中に数回行ない特性を把握し, より詳細な環境変動に対する調査が必要な場合には収穫期全体を通じた評価を行うことにより, 合理的な評価が可能と考えられた.3) ビタミンC含量と全糖含量および全糖含量に対するスクロースの割合(スクロース比率)との間には, 有意な正の相関がみられたが, 有機酸含量および有機酸含量に対するリンゴ酸の割合との間には有意な相関が認められなかった.また, ビタミンC含量の収穫期間を通じた変動係数は, スクロース比率およびグルコース/フルクトース比率の変動係数との間に正の相関を示した.従って, ビタミンC含量の安定して高い品種を育成するに当たっては, 糖含量が高く, かつ糖組成の安定性の高い素材の利用が可能であり, これらを用いることにより食味とのバランスが取れた安定して高いビタミンC含量を有する品種の育成が可能と考えられた.
著者
望月 新一
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

14年度は、「Hodge-Arakelov理論」のDiophantus幾何への応用に向けて理論を具体的に定式化する上で大きな進展を見た。主な発見および新しく得た視点は次の通りである:(1)以前は、この応用を妨げている技術的な障害を取り除くための手段として、遠アーベル幾何によるアプローチを考えていたが、様々な理由により、13年度に検討していたアプローチでは不十分であることが判明した。しかし、遠アーベル幾何の精神を受け継ぎながら、Galois圏だけでなく、もっと一般的な圏や圏論によるアプローチが有効になる可能性が高いことが分かった。(2)この圏論的アプローチを実現するための技術ないしは「言語」として、圏論や、集合論における「宇宙」の概念を活用した宇宙際幾何(inter-universal geometry)を開発した。(3)圏論的なアプローチでは、遠アーベル幾何におけるGrothendieck予想に対応する様々な結果を証明した。その中で代表的なのは、log schemeの圏に関するものである。なお、最近では、このような結果を、archimedeanな構造が付いているlog schemeの場合に拡張し、またこの結果の延長線上にある理論の中で、数体上の大域的な数論的Frobenius射(=正標数の関数体上のp乗写像の類似物)という興味深い対象も構成している。(4)Hodge-Arakelov理論との関係でいえば、以前考えていたHodge-Arakelov理論の基本定理である「比較同型」よりも、theta convolutionという対象による定式化の方が、圏論的なアプローチとの相性がよいことが分かり、そのような観点による、圏論とHodge-Arakelov理論との「融合」を推進することにした。また、Diophantus幾何への応用と直接は関係ないが、正標数のコンパクト双曲型代数曲線のGrothendieck予想の証明の完成に向けて様々な技術的な進歩があった。
著者
望月 祐志 中野 達也 坂倉 耕太 渡邊 啓正 佐藤 伸哉 奥脇 弘次 秋澤 和輝 土居 英男 大島 聡史 片桐 孝洋
出版者
日本コンピュータ化学会
雑誌
Journal of Computer Chemistry, Japan (ISSN:13471767)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.106-110, 2022 (Released:2023-04-29)
参考文献数
33
被引用文献数
1

We have been developing the ABINIT-MP program for fragment molecular orbital (FMO) calculations over 20 years. Several improvements for accelerated processing were made after the release of Open Version 2 Revision 4 at September 2021. Functionalities were enhanced as well. In this short report, we summarize such developments toward the next release of Revision 8.
著者
川端 由美子 菊田 大介 安斉 拓 望月 芳和 渡邉 博子 木村 委津子 宮澤 敬子 渡辺 園美 高橋 樹里 浜本 恵子 中村 早美 西間木 昌美 金山 裕子 三森 はるみ 泊 貴美江 宇野 公一
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.145-152, 2005-05-15 (Released:2011-03-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2

Recently, the number of clinical PET centers is increasing all over Japan. For this reason, the monitoring and control of radiation exposure of employees, especially nurses, in PET-dedicated clinics and institutions are becoming very important issues for their health. We measured the radiation exposure doses of the nurses working at Nisidai Diagnostic Imaging Center, and analyzed the exposure data obtained from them. The exposure doses of the nurses were found to be 4.8 to 7.1 mSv between April 2003 and March 2004. We found that the nurses were mostly exposed to radiation when they had to have contact with patients received an FDG injection or they had trouble with the FDG automatic injection system. To keep radiation exposure of nurses to a minimum we reconfirmed that a proper application of the three principles of protection against radiation exposure was vital.
著者
近藤 夕騎 望月 久 加藤 太郎 鈴木 一平 板東 杏太 滝澤 玲花 吉田 純一朗 西田 大輔 水野 勝広
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.20012, (Released:2020-10-30)
参考文献数
8

目的:Ehgoetz Martensらが開発したすくみ足の詳細を把握できる質問紙Characterizing Freezing of Gait questionnaire(C-FOGQ)の日本語版を作成し,患者による回答時間などの予備調査を行うこと.方法:日本語版C-FOGQは,原著者から許可を得た後,異文化適応に関する国際的ガイドラインに準じて,①順翻訳,②逆翻訳,③予備調査のプロセスを経て作成した.予備調査では,すくみ足を訴えるパーキンソン病関連疾患患者39名から日本語版C-FOGQによる回答を得て,回答時間,誤回答・無回答率を調査した.結果:英語原版から日本語への順翻訳ならびに英語への逆翻訳過程において,重大な言語的問題は生じなかった.予備調査の結果,平均回答時間は526.8秒であり,誤回答・無回答率は1%未満であった.SectionⅡにおける総合得点の平均は20.0点であった.結論:作成した日本語版C-FOGQは言語的妥当性を有し,10分程度で回答でき,誤回答や無回答率も少ないため,本邦でもすくみ足の評価として使用可能と思われる.
著者
三谷 英範 望月 俊明 大谷 典生 三上 哲 田中 裕之 今野 健一郎 石松 伸一
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.11, pp.833-838, 2014-11-15 (Released:2015-03-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1

はじめに:尿素サイクル異常症であるornithine transcarbamylase(OTC)欠損症の頻度は日本で14,000人に1人とされ,18歳以降での発症例は稀であるが,発症すると重症化しうる疾患である。我々は,19歳発症のOTC欠損症により高アンモニア血症・痙攣重積発作を来し,救命し得なかった1例を経験した。症例:19歳の男性。来院前日,嘔吐・下痢・全身倦怠感を主訴に救急要請した。前医に搬送され,血液検査や頭部CTでは異常を認めないものの,全身倦怠感が強く入院加療を行うこととなった。入院後,不穏状態に続いて強直性痙攣が出現した。ジアゼパム静注で痙攣は消失したが,その後意識レベル改善なく当院へ紹介転院となった。当院来院時,頭部CTで全般性に浮腫性変化認め,血中アンモニア濃度は500µg/dL以上であった。当院入院後,痙攣再燃したため鎮静薬・抗てんかん薬を増量しつつ管理するも,痙攣は出現と消失を繰り返した。血中アンモニア濃度は低下傾向であったため透析の導入は見送った。第2病日に瞳孔散大,第4病日に脳波はほぼ平坦となり,脳幹反射は消失した。その後も高アンモニア血症は持続し,代謝異常による痙攣も疑われたため,各種検査を施行しつつ全身管理に努めたが,第11病日に血圧維持困難となり死亡した。後日,血中・尿中アミノ酸分画やオロト酸の結果からOTC欠損症と診断された。考察:尿素サイクル異常症は稀であるが,高アンモニア血症を来している場合には迅速に対応しなければ不可逆的な神経障害を来す。治療には透析が考慮されるが,本症例では痙攣が軽減した後血中アンモニア濃度は低下傾向であったため透析は施行しなかった。結語:血糖正常,アニオンギャップ正常の高アンモニア血症では尿素サイクル異常症を鑑別に挙げ,透析を早期に検討する必要がある。