著者
望月 理香 永徳真一郎 茂木 学 八木 貴史 武藤伸洋 小林 透
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.30-38, 2012-01-15
被引用文献数
1

『心はだれにも見えないけれど「こころづかい」は見える.思いは見えないけれど「思いやり」はだれにでも見える』(宮澤,2010).という詩にあるように,人それぞれの感性を外から知ることはできないが,その感性をもとに起こした行動は客観的にとらえることができる.本研究では,感性を言葉やジェスチャなどの表現を駆使して伝えるのではなく,感性に紐付く各人の行動(その人にとっての経験)を介して伝えることで,各人に最適化された分かりやすい表現により,感性のコミュニケーションが可能となるモデルを提案する.近年,ユーザ間のコミュニケーションをサポートするためのツールやインタフェースが発展し,多種多様な表現によって情報を伝えることが可能となってきている.しかし,感性の伝達においては,同じ言語表現・ジェスチャ表現であっても表現に対応付く感性が個人ごとに様々であるため,表現の伝え手がイメージした内容と受け手がイメージする内容が一致するとは限らない.そこで,本研究ではライフログから抽出される自身の経験を介した感性コミュニケーションモデルを提案する.本モデルは,言葉などの表現方法だけでは伝えることが難しい伝え手のイメージを,そのイメージに対応付けられる受け手の経験を提示することにより,情報の受け手が伝え手のイメージを分かりやすく理解できる,という新しいコミュニケーションチャネルを与えるものである.本稿では,本研究で対象とする経験の定義と感性コミュニケーションにおけるアプローチ方法を述べた後,提案モデルの各Pointの概要,実装方法を述べる.続いて,提案モデルの実現において重要なポイントである情報の受け手に提示する経験の選び方の検討を行った.経験に対する「なじみ」の強さを1つの指標とすることで,受け手に分かりやすい経験を選ぶことが可能になると考え,被験者実験によってその有効性を示した."No one can see your emotion but we can see your action (Miyazawa, 2010)." That is to say, we can't see emotion but can recognize the emotion from the action it triggers. We propose an emotion communication model supplement the regular communication modalities of words and gestures. Many tools and interfaces have been developed to support user-user communication. Literal information can now be exchanged in various forms. However, user-user communication is imperfect since it remains impossible to communicate images. In this paper, we propose an emotion communication model that permits images to be exchanged and attendant algorithms that identify "symmetry" experiences to be mined from Life-logs. Experiments are conducted to discover the criteria needed for accurate experience identification. The model establishes new communication channel through an analysis of personal actions (based on Life-log) as related to emotion. Therefore, it eases misunderstanding and increases intelligibility since it draws on personal experiences. In this paper, we report the concept of the emotion communication model and describe how to process Life-log data for matching experiences. Then, we conducted experiments to confirm the impact of explanations based on quantitative similarity and those based on familiarity to confirm the effectiveness of the emotion communication model.
著者
望月 海慧
出版者
日蓮宗宗務院
雑誌
現代宗教研究 (ISSN:02896974)
巻号頁・発行日
no.54, pp.93-108, 2020-03
著者
望月 隆弘 衣笠 えり子 草野 英二 大和田 滋 久野 勉 兒島 憲一郎 小林 修三 佐藤 稔 島田 憲明 中尾 一志 中澤 了一 西村 英樹 野入 英世 重松 隆 友 雅司 佐中 孜 前田 貞亮
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.853-862, 2012-09-28 (Released:2012-10-05)
参考文献数
23

【目的】ビタミンE固定化ポリスルフォン膜ダイアライザ(VPS-HA)が,血液透析患者の貧血や,貧血治療薬(ESA)の投与量に影響を与えるか否かを検討した.【方法】主要なエントリー基準は,機能分類IV型ポリスルフォン(PS)膜を3か月以上使用し,直近3か月はTSAT 20%以上で,ESA製剤の変更がなく,ヘモグロビン(Hb)値は10.0g/dL以上12.0g/dL未満を満たす患者とした.研究参加は48施設で,305症例がエントリーされた.エントリー患者を,VPS-HAに変更する群(151名)と,従来のIV型PS膜を継続する群(154名)の2群に分け(中央登録方式),研究開始時のHb値を維持(10.0≦Hb<11.0g/dLおよび11.0≦Hb<12.0g/dL)するESA投与量を主要評価項目とした.その評価指標としてエリスロポエチン抵抗性指数(erythropoietic resistance index:ERI)を用いた.【結果】研究は1年間実施された.目標Hb値10.0≦Hb<11.0g/dLの範囲では差はなかったが,目標Hb値11.0≦Hb<12.0g/dLの範囲で,VPS-HA群はIV型PS膜群に比して良好なESA反応性を示した.とくにVPS-HA群のDarbepoetin alfa(DA)投与例では,8か月以降で開始時と比較して統計的有意差をもってERIが減少していた.またIV型PS膜群のrHuEPO投与症例では,統計的に5,7,10か月で,開始時と比較してERIが増加していた.VPS-HAとIV型PS膜の群間比較では,11か月目でVPS-HA群のDA投与例でIV型PS膜群に比して,ERIが有意に減少していた.【結語】目標Hb値11.0≦Hb<12.0g/dLの範囲で,ビタミンE固定化膜は,IV型PS膜に比べてDA投与量が減少しており,ESA投与量軽減効果が期待できる(UMIN試験ID:UMIN000001285).
著者
九郎丸 正道 西田 隆雄 望月 公子 林 良博 服部 正策
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.795-799, 1982-10-25

食虫目トガリネズミ科に属するワタセジネズミの小腸粘膜を光顕, 走査型・透過型電顕で観察した. 腸管は短く, 体長・腸管長比は1:1.5でとくに大腸がきわめて短く, 盲腸は欠如していた. 大腸粘膜はひだ状構造をもち, 小腸絨毛表面は小皺襞に乏しかった. 十二指腸腺は, 近位部に限局し, パネート細胞は欠如していた. 以上の所見はスンクスの腸粘膜と類似していた.
著者
望月 公廣
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.126, no.2, pp.207-221, 2017-04-25 (Released:2017-06-12)
参考文献数
39
被引用文献数
2 3

Seismicity accompanying subduction of one plate under the other is active in subduction zones. This seismicity is not uniformly distributed along strike; aseismic regions may be identified in a band of active seismicity. Such an uneven distribution may be attributed to the heterogeneity of frictional properties along the plate interface. Variations in the physical properties of the top-most layer over the subducting plate and rough topography along the plate interface are considered to be factors determining frictional properties. Recent active-source seismic surveys have revealed characteristics of the plate interface in detail and provide an understanding of how regional seismicity and slip distributions of major earthquakes are controlled. Seismicity around the northern limit of the 2011 Tohoku-oki earthquake shows a good correlation with seismic reflectivity along the plate interface, and suggests that the water content and/or the amount of clay minerals in a thin layer over the top of the subducting plate is a major factor. A subducting seamount was identified from a seismic survey around the southern limit of the 2011 Tohoku-oki earthquake off Ibaraki Prefecture. Repeating M 7 earthquakes share the same source at the subduction front of the seamount, while the source area of the largest aftershock of the 2011 Tohoku-oki earthquake lies next to it. The fault slip of these earthquakes, once initiated at the base of the seamount, did not propagate over the seamount. The same relationship between fault slip and subducted seamount is identified for a large slow slip at the Hikurangi margin. Physical or structural properties controlling seismicity or fault slip along the plate interface appear to be characteristics of the subducting plate. The importance of geophysical surveys of the incoming plate can now be further emphasized to provide a better understanding of seismicity along the plate interface.
著者
遠藤 求 望月 伸悦 鈴木 友美 長谷 あきら
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第47回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.158, 2006 (Released:2006-12-27)

植物にとって光は重要な情報源であり、発芽や花成などさまざまな生理応答に関わっている。花成に重要な光受容体としてフィトクロムとクリプトクロムが知られているが、これらが実際にどの器官/組織で光を受容し花成を制御しているかは不明であった。これまでに、我々はシロイヌナズナにおいてフィトクロムBは子葉の葉肉細胞で花芽形成を制御していることを明らかにした(Endo et al., 2005)。 我々は今回、クリプトクロム2(cry2)がどこで働き花成を制御しているのかを明らかにした。器官/組織特異的な発現が知られているプロモーターにCRY2-GFP融合遺伝子をつないだコンストラクトを作成し、cry2欠損変異体に形質転換した。また比較のため、CRY2-GFPを内在性プロモーターで発現させる形質転換体も作出した。これらの植物でcry2-GFPタンパク質の発現パターンと花芽形成を調べた結果、維管束でcry2-GFPを発現させた場合にのみcry2欠損変異体の遅咲き表現型は相補され、葉肉、茎頂、表皮、根でcry2-GFPを発現させた場合では表現型の相補は観察されないことが分かった。また組織レベルでの遺伝子発現を調べた結果から、維管束のcry2は花成制御に重要な遺伝子の一つであるFLOWERING LOCUS Tの発現制御を介して、細胞自律的に働いていることが示唆された。
著者
川村 直子 城本 修 望月 隆一 岩城 忍 梅田 陽子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.137-145, 2014 (Released:2014-05-28)
参考文献数
13
被引用文献数
2

【目的】Vocal Function Exercise(VFE)の各プログラムの訓練効果と,訓練効果に影響を及ぼす要因について検討した.【方法】音声障害患者18例をA,B 2群に分け発声訓練を開始した.A群:発声持続練習→音階上昇・下降練習.B群:音階上昇・下降練習→発声持続練習.そのうち訓練を遂行できた11例を検討対象とした.訓練前後の発声機能,音響分析,自覚的評価を従属変数とし,分散分析を行った.【結果と考察】発声持続練習を単独で集中的に2週間行った結果,最長発声持続時間(MPT)に直接的な効果が示唆された.訓練プログラムの内容(順序)あるいは病態にかかわらず,VFEを行えば2週後ないし4週後には,発声機能や自覚的評価において改善を示す可能性が示唆された.声域の拡大については,単独プログラムでの訓練効果は時間がかかる可能性が考えられ,原法どおり各プログラムを同時に実施することが有用であると考える.
著者
冷水 誠 笠原 伸幸 中原 栄二 中谷 仁美 西田 真美 望月 弘己 松尾 篤 森岡 周 庄本 康治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0075, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】脳卒中片麻痺患者(CVA患者)の転倒要因は様々であるが、その一つに注意能力が挙げられる。その中でも、歩行中出現する課題への注意分配能力の影響が報告されている(Hyndmann.2003)。この注意分配能力による転倒予測法として、Olssonら(1997)による“Stops Walking When Talking test”(SWWT test)がある。これは、歩行中会話などの認知課題により、歩行を中止するかを評価するものである。このSWWT testはバランス機能と関連があると報告されているが、注意能力とは不明である。CVA患者では、動作時と机上テストでの注意能力の違いをよく経験するため、SWWT testによる注意分配能力と机上テストでの注意分配能力の違いが予想される。この違いを捉えることは、SWWT testの適応患者を明確にできると考えられる。そこで本研究は,CVA患者を対象として、SWWT testの結果が、注意分配能力の机上テストであるTrail Making Test part B(TMT-B)の成績に差があるかを検証することを目的とした。【方法】対象は高次脳機能障害を有しない独歩可能なCVA患者20名(男12名、女8名、平均年齢63.8歳、右麻痺11名、左麻痺9名、平均発症期間3年3ヶ月)とした。SWWT testは、対象者に自由速度にて歩行してもらい、歩行開始から約5m付近にて同伴した検者が認知課題として年齢を尋ねた。この時、対象者が歩行を中止するかを記録した。なお、測定前に、対象者には歩行および質問への返答に対する指示は行わなかった。机上での注意能力の評価には、用紙上にある数字と平仮名を交互に結ぶテストであるTMT-Bを使用した。TMT-Bは5分を最大とした実施時間とエラー数を記録した。SWWT testにて歩行を中止した群(中止群)と継続した群(継続群)、TMT-B実施時間が5分以内と5分以上に分類し、2×2のクロス表を作成した。統計学的分析にはFisherの直接確率法を用い、TMT-B実施時間5分以内と5分以上によって中止群と継続群に差があるかを検証した。なお、有意水準は5%未満とした。【結果】SWWT testにて中止群は3名であり、うち2名がTMT-B実施時間5分以上、1名が5分以内であった。継続群は17名であり、うち6名がTMT-B実施時間5分以上、11名が5分以内であった。Fisherの直接確率法の結果、TMT-B実施時間5分以内と5分以上によって中止群と継続群間に有意差が認められなかった(p=0.536)。TMT-Bエラー数は中止群と継続群にて明確な違いは見られなかった。【考察】慢性期CVA患者において、SWWT test陽性には、机上での注意分配能力の評価であるTMT-Bの実施時間の延長およびエラー数の増大が影響していないことが明らかになった。このことから、SWWT test はTMT-Bの机上評価成績に関わらず、多くの慢性期CVA患者を対象とすべきテストであることが示唆された。しかし今回は、SWWT testの課題が年齢を問う容易な課題であったことが影響した可能性があり、今後は課題の特異性等を検証する必要がある。
著者
小森 康加 望月 康司 榎本 至 前田 明 河野 一郎
出版者
日本トレーニング科学会
雑誌
トレーニング科学 (ISSN:13494414)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.313-320, 2010 (Released:2014-04-03)
参考文献数
26
被引用文献数
1

水球競技中に視力矯正行っている男子水球選手を対象に,二つの試合条件(1.視力矯正あり条件,2.視力矯正なし条件)を設定し,視力矯正の有無が水球競技の競技パフォーマンスに与える影響を検討した. その結果,ミスプレイ率は視力矯正あり条件が視力矯正なし条件と比較して,有意に低い値を示した.貢献プレイ率およびボールタッチ率では有意な差は認められなかったが,視力矯正あり条件が高い傾向を示した.また,試合中のプレイに関する主観的評価は,特に見え方に関する調査項目において,視力矯正あり条件が有意に高い値を示した. 実戦において重要視されているミスプレイの減少が示され,主観的評価による見え方においても違いが認められたことより,水球競技において視力矯正を行うことには,試合中の競技パフォーマンスに影響を与えている可能性があると推察された.
著者
本間 洋輔 望月 俊明 大谷 典生 青木 光広 草川 功 石松 伸一
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.273-277, 2012-06-15 (Released:2012-08-11)
参考文献数
13

Zolpidem(マイスリー®)の過量服用による急性薬物中毒の母体から出生した児が急性薬物中毒よる無呼吸状態であった1例を経験したので報告する。症例は35歳の女性。公園内で意識障害の状態で倒れていたところを発見される。周囲に薬包が散乱していたため,急性薬物中毒疑いにて当院へ搬送された。来院時意識レベルJCS200。腹部膨満を認め,腹部エコーにて子宮内に心拍を伴う胎児を認めた。その時点で妊娠37週であること,出産の徴候が認められたためパニックとなり行方不明となっていたことが発覚した。産婦人科診察にて分娩の進行が確認されたが,意識障害が遷延していたため,緊急帝王切開を施行することとなった。出産児は男児,体重2,572gでapgar scoreは1分後4点,5分後4点であった。児は自発呼吸を認めず気管挿管下の人工呼吸管理を要した。日齢1には自発呼吸認めたため抜管,その後は薬物離脱症状や合併症を認めることなく日齢22に退院となった。母親(本人)は入院2日目に意識レベルが回復し,とくに合併症なく経過した。精神科診察にてうつの診断となり,自殺企図を伴ううつの治療目的に転院となった。後日,分娩当日の母・児の血液よりZolpidemが異常高値で検出され,母児の意識障害の原因としてZolpidem中毒の診断が確定した。うつによる薬物過量服用はよくみられるが,妊婦が薬物を過量服用し,そのまま分娩を迎える例は稀である。Zolpidemは妊婦に比較的安全とされているが,本報告のように過量服用の場合には胎児に影響がでることがある。そして母体で中毒症状が出現している場合は,児ではそれ以上の中毒症状がでる場合があると想定するべきであり,妊婦の薬物過量服用の場合は常に胎児への影響について考えるべきである。また妊娠可能な年齢の女性の意識障害で詳細不明な場合,常に妊娠の合併について考えるべきである。