著者
西田 耀 木村 啓二
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB) (ISSN:2188868X)
巻号頁・発行日
vol.2020-EMB-53, no.14, pp.1-6, 2020-02-20

アプリケーションの耐障害性を向上させる手法の一つにチェックポインティングがある.これまでに,アプリケーションを変更することなく透過的にチェックポイントを行う手法がいくつか発表されている.また,Non-volatile DIMM (NVDIMM) を状態の保存先として利用することで,主記憶に比べて 100 倍以上遅い外部記憶へのアクセスに依存することなくチェックポイントを行う手法が提案されている.しかし,DRAM で構成された主記憶から不揮発性の記憶装置に状態をコピーするという操作は依然存在しており,これがチェックポイントのオーバーヘッドの大部分を占めている.本研究では,アプリケーションを NVDIMM 上に直接マッピングして実行することで状態のコピーを最小限に抑え,さらにページテーブルも含めたプロセスのメモリ空間を二重化して一貫性を確保しつつチェックポインティングを行う,NDCKPT という手法を提案する.Linux Kernel に NDCKPT を実装し,Optane DC Persistent Memory を用いて評価を行った結果,メモリ消費量が 1MB 程度のアプリケーションでは,100ms 程度の高頻度でチェックポイントを行っても実行時間の増加を 1% 以下に抑えられることがわかった.また,数百 MB のメモリを消費するアプリケーションにおいては,NVDIMM 上で実行を行うオーバーヘッドが支配的で実行時間比で 2 倍から 3 倍以上となる一方,チェックポイントによって加わるオーバーヘッドは 20-30 秒間隔で 10% 前後となることがわかった.
著者
木村 直弘 KIMURA Naohiro
出版者
岩手大学教育学部
雑誌
岩手大学教育学部研究年報 (ISSN:03677370)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.144-117, 2009

「日常的には行わない反対(逆さま)の行為」の民俗学的意味について考察した民俗学者・常光徹は、井戸に関する次のエピソードを紹介している。岩手県では、バカ(ものもらい)ができたときは、小豆三粒で目をこすり、後ろ向きになって井戸に落としながら「あったらバカ落とした」と唱えて、後ろを振り返らずに帰る。~(中略)~魔を移したり封じ込めたものを、辻・川・井戸で捨てるのは、そこがこうしたものを捨てるに適した場所、つまり日常の生活空間とは異なる世界との出入り口(境界)と認識されていたからだろう(1)。 この事例でのポイントは、意図的に「後ろ向き」の姿勢をとるということである。常光は、こうした行為が行われる場合、その「背後に異界や妖異など非日常的な世界やモノが想像されている」場合が多いこと、そして例えば「後ろ手」には「異界や妖異との関わりを拒否しつつ一方でそれらに働きかけるという二面性」が看取できるとしている(2)。井戸は彼岸たる地中へ深く差し込まれた筒であり、まさに彼岸と此岸を往還しうる=ウツりうる「出入り口」、すなわちすぐれて境界的な「回路」である。能の夢幻能によく見られるシテの造型は、まさにこうした両義的時空を、往来できる存在として設定されている。たとえば、世阿弥作の夢幻能《井筒》の場合、前シテの登場歌は、後ろ向きで謡われる。まさにその理由は、能舞台中央に置かれる作り物の井筒が象徴する、この謡曲の主題である「井筒」が極めて境界的な場だからと考えられよう。 「井筒」が筒によって囲われた穴空間であることは言を俟たない。評論家・松岡正剛は、日本文化の特質のひとつとして「囲い」を挙げる(3)。もとは幕や屏風を立て廻すことを意味した「囲い」はのちに茶道で茶室を意味する語としても使われるようになるが、その特質は「仮設的」であるにもかかわらず、その内側に別世界が出現させられるという点にある。例えば、古代では、神籬や榊(境木)や注連縄(標縄)によってある特定の場を「囲う」ことによって区切られた空間は「しろ」と呼ばれ、屋根のある「しろ」=「やしろ」が神「社」が始まりである。この「しろ」に「代」の字を充てたことから、「しろ」という語が、「何か重要なものの代わりを担っているもの」あるいは「何かの代理の力をもったものやスペースやそのスペースを象徴するもの」を示していることがわかる(4)。
著者
木村 雅敏 岩坪 友義
出版者
日本生産管理学会
雑誌
生産管理 (ISSN:1341528X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.147-152, 2008-10-20 (Released:2011-11-14)
参考文献数
18

製パンの市場規模は, 生産量ならびに生産金額ともに2000年をピークに伸び悩んでおり, とりわけ生産金額においては, 2000年から2002年にかけて大きな減少が見られた。それらの中で, 上位5社の市場占有率の合計は, 製パン市場全体の7割以上を占める寡占状態となっているが, 競争が激化しているため, 5社間でも業績に格差が生じている。本論文では, 製パン市場を対象として, 生産・販売実績ならびに消費者評価に基づいて主要5社における市場での位置付けを示した。
著者
大島 堅一 上園 昌武 木村 啓二 歌川 学 稲田 義久 林 大祐 竹濱 朝美 安田 陽 高村 ゆかり 金森 絵里 高橋 洋
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1.システム改革と市場設計に関する研究:電力システム改革の背景にあるエネルギー転換や世界的なエネルギー政策の構造改革について調査し、日本の状況との比較検討を行った。また、エネルギー転換の一環として世界的に盛り上がる国際連系線について、電力システム改革の観点から研究した。2.地域分散型エネルギーの普及、省エネルギーの促進政策研究:地域分散型エネルギーの普及については、特に欧州の国際連系線の潮流分析や市場取引状況について定量的評価を行なった。また国内の系統連系問題に関して主に不適切なリスク転嫁の観点から、参入障壁について分析を行った。 省エネルギーの促進政策の研究については、対策技術種類と可能性、対策の地域経済効果、技術普及の際の専門的知見活用法について検討した。3.新しいビジネスと電力会社の経営への影響に関する研究:電力の小売全面自由化の影響にいて整理・分析し、その研究成果の一部を「会計面からみた小売電気事業者の動向」として学会報告した。加えて2020年4月からの発送電分離と小売部門における規制料金の撤廃の電力会社の経営面に与える影響について制度面ならびに国際比較の観点から分析を行った。4.エネルギーコストに関する研究:昨年度の研究成果を踏まえて、風力発電事業者複数社等への追加ヒアリング調査を行い、疑問点の解決を図った。加えて、原子力のコストについて、現時点での新たな知見に基づく再計算と、電力システム改革下における原子力支援策についての分析を行った。5.経済的インパクトに関する研究: 2005年版福島県産業連関表を拡張し、再生可能エネルギー発電部門を明示化する作業を行い、拡張産業連関表の「雛形」を完成させた。これを福島県の実情を反映したものにするための準備作業として、風力、太陽光、小水力、バイオマス、地熱の業界団体・専門家に対してヒアリングを行った。
著者
岡野 公禎 木村 太郎 鈴木 亮一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.99-104, 2018-02-20 (Released:2018-03-20)
参考文献数
19

犬42頭の不妊手術に対し,麻酔導入15分前にブトルファノール(BTR)0.4mg/kgの静脈内投与もしくはモルヒネ(MOR)0.5mg/kgを皮下投与した群(pre-B群n=14,pre-M群n=14)と麻酔導入後に投与した群(post-B群n=7,post-M群n=7)に分類し,気管挿管に必要なアルファキサロン(ALFX)の麻酔導入量を検討した.ALFXの麻酔導入量は,pre-B群(1.59±0.26mg/kg)がpost-B群(2.45±0.36mg/kg)に対し35.1%の減少を示し,pre-M群(1.30±0.38mg/kg)はpost-M群(2.42±0.52mg/kg)に対し46.2%の減少を認めた(P<0.05).ALFXの麻酔導入量はBTR及びMORの麻酔前投薬により減少した.
著者
木村 俊哉 高橋 政浩 若松 義男 長谷川 恵一 山西 伸宏 長田 敦
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-22, 2004-10

ロケットエンジン動的シミュレータ(Rocket Engine Dynamic Simulator : REDS)とは、ロケットエンジンの始動、停止、不具合発生時等のエンジンシステム全体の過渡特性を、コンピュータを使って模擬し評価する能力を持った計算ツールである。REDS では、ロケットエンジンの配管系を有限個の配管要素の連結(管路系)としてモデル化し、この管路系に対しボリューム・ジャンクション法と呼ばれる手法を用いて質量、運動量、エネルギーの保存方程式を時間発展的に解くことによって管路内(エンジン内)における、燃料、酸化剤、燃焼ガスの流動を計算する。ターボポンプ、バルブ、オリフィス等の流体機器はボリューム要素やジャンクション要素にそれらの対応する作動特性を持たせることで動作を模擬する。燃料や酸化剤の物性については、ロケットエンジンの特殊な作動範囲に適応するよう別途外部で開発された物性計算コード(GASP 等)を利用するが、そのためのインターフェースを備える。燃焼ガスの物性計算については、熱・化学平衡を仮定した物性計算を行い、未燃混合ガスから燃焼状態、燃焼状態から未燃混合状態への移行計算も行う。ターボポンプの運動は、ポンプやタービンの特性を考慮したポンプ動力項、タービン動力項を加速項とする運動方程式を流れの方程式と連立して時間発展的に解くことによって求める。未予冷区間においては、配管要素と流体との間の熱交換を、熱伝導方程式を解くことによって求め、再生冷却ジャケットにおいては、燃焼ガスから壁、壁から冷却剤への熱伝達を考慮する。燃焼室、ノズル内においては、燃焼ガス流れの分布から熱流束の分布を考慮する。今回のバージョンでは、2 段燃焼サイクルを採用した我が国の主力ロケットLE-7A 及びLE-7 の始動、停止過程時における動特性を模擬することを目的にエンジンモデルを構築し、実機エンジン燃焼試験の結果と比較することでシミュレータの検証を行った。但し、ボリューム要素の組み合わせは任意であり、エキスパンダーサイクルなどの新しいエンジンシステムに対しても適用が容易に出来る。計算の高速化のために2CPU 以上用いた並列処理への対応を行い、ネットワークで接続した複数のPC(PC クラスタ)を用いた並列計算も可能である。
著者
中山 太士 木村 元哉 池田 学 北 健志 長嶋 文雄 松井 繁之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A (ISSN:18806023)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.467-476, 2010 (Released:2010-08-20)
参考文献数
25

道路上を立体交差する鋼鉄道橋では,道路を走行するクレーン車等に衝突される事故が報告されている.この事故が発生した場合,現場技術者は即座に列車を抑止させ,鋼鉄道橋の損傷状況を調査し,抑止継続あるいは運転再開を判断している.軌道や支承部,主桁等に著しい損傷が発生した場合,抑止継続の判断は容易であるが,主桁下フランジの局部的な変形や面外変形のみが残留した場合,明確な運転再開評価法がなく,現場技術者の判断に委ねられているため,この評価法の策定が課題となっている.本研究は,この課題解決を目的に,過去の損傷事例の調査結果および鋼材の材料特性,鋼桁の耐荷力特性を検討した.その結果,下フランジの局部変形および面外変形の限界量を明らかにし,運転再開評価法を策定した.
著者
安元 暁子 木村 幹子
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.319-327, 2009 (Released:2017-04-20)
参考文献数
74

生物多様性がどのように構築されてきたのか、また、種分化がどのように起こり得るのかは、生物学における古くからの中心的な課題である。生物学的種概念に基づくと、種とは互いに生殖的に隔離された集団である。そのため、種分化は何らかの形で生殖隔離が進化することを必要とする。生殖隔離を進化させうる主要な原動力として、遺伝的浮動や異所的な環境条件への適応などが挙げられてきたが、動物においては性選択が長年注目されてきた。しかし、性選択単独では生殖隔離を進化させうる条件は限られており、近年は新たな原動力として、環境適応と性選択が関連している状況や、交配をめぐる雌雄の利害の不一致が引きおこす性的対立と呼ばれる状況が注目を浴びている。本総説では、まずは、種分化の研究のこれまでの概略を述べた後、ゲノミクス的手法から環境適応と性選択の双方に関わりのある遺伝子を明らかにし、種分化への寄与を示唆した研究についてレビューする。次に、性的対立の強さを操作することで数十世代後に生殖隔離が進化しうるかを調べた実験進化研究について、現状を整理する。最後に、ゲノミクス的手法が一般的になった今、これから重要となるトランスクリプトミクスとプロテオミクスが性選択や性的対立による種分化の研究にどのように寄与できるかを概観する。
著者
木村 直人 勝村 俊仁 浜岡 隆文 下光 輝一
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.549-560, 1998-10-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

本研究の目的は, 磁気共鳴分光法 (31P-MRS) と近赤外分光法 (NIRS) とを用いて, 等尺性運動負荷時に見られる局所的な筋疲労, 特に運動強度の違いが筋疲労の程度や筋持久力 (持続時間) に及ぼす影響を細胞内の代謝および酸素動態の面から観察し, さらに各負荷強度の持続時間.どの関連について検討を加え, 以下の結果を得た.1) 各相対強度での持続時間は50%MVCで95.3±13.6秒, 30%MVCで209±41.9秒であり, また低強度の10%MVCでは963±236秒と, 50%MVC時の10倍であった.2) 運動中の各測定項目の変動をみると, 運動開始時においてPCrの低下及びPi (H2PO4-) の上昇が見られた.細胞内pHは運動開始40秒 (50%MVC) ~347秒 (10%MVC) まで安静時レベル (-6.95pHunit) 維持したものの, それ以降'低下を示した.また各測定項目 (pH低下率及びH2PO4-増加率) とも強度の上昇に伴いその変化の程度は増大を示した.3) 筋内の酸素化レベルは, 全ての強度において運動開始時直後から直線的に低下を示した.しかしながらその後の変化は各強度間で異なり, 10%, 30%MVCではその後上昇し一定レベルを維持した.一方50%MVCではさらに低下し, 平均値において10%を下回っていた.4) 各相対強度におけるpH低下率及びH2PO4-増加率と持続時間との間には, いずれも負の相関関係が認められた.pH低下率と持続時間との問にはr=-0.578~-0.871の相関係数が得られ, 10%, 30%MVCではそれぞれ有意 (P<0.05) であった.また, H2PO4-増加率との間にはr=-0.370~-0.740の相関係数が得られた.本研究の結果から, 最大下の等尺性運動時における筋持久力 (持続時間) には, 筋興奮・収縮連関やエネルギー供給系に対して直接あるいは間接的に関与する細胞内pHの低下率が重要な因子であることが示唆された.
著者
木村 妙子 木村 昭一 角井 敬知 波々伯部 夏美 倉持 利明 藤田 敏彦 小川 晟人 小林 格 自見 直人 岡西 政典 山口 悠 広瀬 雅人 吉川 晟弘 福地 順 下村 通誉 柏尾 翔 上野 大輔 藤原 恭司 成瀬 貫 櫛田 優花 喜瀬 浩輝 前川 陽一 中村 亨 奥村 順哉 田中 香月 Kimura Taeko Kimura Shoichi Kakui Keiichi Hookabe Natsumi Kuramochi Toshiaki Fujita Toshihiko Ogawa Akito Kobayashi Itaru Jimi Naoto Okanishi Masanori Yamaguchi Haruka Hirose Masato Yoshikawa Akihiro Fukuchi Jun Shimomura Michitaka Kashio Sho Uyeno Daisuke Fujiwara Kyoji Naruse Tohru Kushida Yuka Kise Hiroki Maekawa Yoichi Nakamura Toru Okumura Junya Tanaka Kazuki
出版者
三重大学大学院生物資源学研究科
雑誌
三重大学フィールド研究・技術年報 = Annals of Field Research and Technology Mie University (ISSN:13496824)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-29, 2019-11

Preliminary results of the deep-sea faunal survey conducted from the TR/V Seisui-maru of Mie University in April 2019 are presented. A total of 20 taxonomists and ecologists working on a wide variety of animal taxa participated in this survey. Surveyed areas included the Kumano Sea(off Mie Prefecture)and south of the Kii Strait(off Tanabe Bay, Wakayama Prefecture), at depths of 112-775 m. Sampling gears employed were beam trawl and biological dredge. The collection is represented by macrobenthos and meiobenthos from nine animal phyla, including echinoderms, arthropods, molluscans and annelids. The number of phyla occurring in each station varied from seven to eight. The station with most diverse fauna at the phylum level was St. 3B(south of the Kii Strait, 775-661 m depth, mud bottom).Meiofauna includes priapulids, nematodes and small arthropods such as copepods, tanaidaceans, amphipods, isopods and cumaceans. In addition to freeliving species, cnidarians symbiotic on a gastropod and an antipatharian, and crustaceans parasitic on a fi sh and sea urchins were also collected. Preliminary identifi cations are given for Asteroidea, Ophiuroidea, Holothuroidea, Crinoidea, Cyclopoida, Siphonostomatoida, Tanaidacea, Isopoda, Decapoda, Mollusca, polychaetes, Bryozoa, Cnidaria and Nemertea.
著者
木村 淳夫 WONGCHAWALIT Jintanart
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

単量体アロステリック酵素、すなわちモノマー酵素が示す協同性(基質活性化)の現象例は極めて稀である。我々は、3種類の同酵素(α-グルコシダーゼ・β-グルコシダーゼ・キチン分解酵素)の取得に成功している。従って3酵素が示す協同性の分子機構を究明することは学問上において興味深い。本研究の目的は、単量体アロステリック酵素の分子機構を解明し、応用研究に結び付けることにある。本年度は次の研究成果を得た。アロステリック部位の決定1)X線結晶構造解析:3酵素について結晶作製を継続してきた。キチン分解酵素に関し、X線構造解析が可能な結晶の作製に成功した。2)活性化部位の確認:キチン分解酵素とβ-グルコシダーゼの触媒部位周辺に可動性ループがあり、基質の取り込みにより大きな構造変化の発生が予想された。キチン分解酵素に関し、本ループにある1アミノ酸をTrpに置換し基質分子を与えると、Trp由来の大きな構造変化が観察された。従って基質分子に起因する本ループの構造変化が解明された。またβ-グルコシダーゼに関しては、可動性ループにあるアミノ酸で特に触媒ポケットの入口付近に位置する残基に注目し点置換体を構築した。本変異酵素の解析から可動性ループがアロステリック作用に関わることが判明した。アロステリック酵素の作製ショ糖分解酵素とβ-グルコシダーゼに関し、高い相同性を持つがアロステリック現象を示さない酵素を対象に、アロステリック現象に関与すると予想される構造因子の移植を試みた。ショ糖分解酵素の場合、構造因子の移植によりアロステリックな性質を与えることができた。β-グルコシダーゼは可動性ループ移植を行ったが、酵素活性は大きく減少した。移植位置が触媒部位近傍であるためと考えられ、ループサイズを小さくする工夫が必要と考えられた。なおβ-グルコシダーゼを用いた構造解析で新規なβ-グルカンの取得が明らかになった。
著者
木村 琢麿
出版者
千葉大学
雑誌
法学論集 (ISSN:09127208)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.79-139, 2000-07
著者
木村 一
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.35-47, 2005-04-01

『和英語林集成』1版(1867)の編纂に先だって,J.C.ヘボンは,ノート一冊本499ページ分からなる「原稿」を作成していた。「原稿」は,約7,000語を収録し,うち約四分の三の語が1版に収録されている。「原稿」の見出し語や漢字表記などについて,中・近世の節用集をはじめとする諸辞書と比較照合した結果,ヘボンは森楓齋著『雅俗幼学新書』(1855)を参看し,「原稿」に採録した可能性が強いと考えるに至った。その論拠について具体例を挙げながら諸面から指摘する。なお,『雅俗幼学新書』から「原稿」に採り入れられた見出し語や漢字表記などは,修正を施されながら1版に引き継がれていった。
著者
木村 容子 清水 悟 田中 彰 藤井 亜砂美 杵渕 彰 稲木 一元 佐藤 弘
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.707-713, 2008 (Released:2009-04-30)
参考文献数
27
被引用文献数
3 4

釣藤散が有効な頭痛の患者タイプを多変量解析により検討した。51名の頭痛患者に対して随証治療にて釣藤散を投与し,このうち1カ月間服用した46名(男性13人,女性33人,中央値48歳,範囲19-77歳,片頭痛31例,緊張型頭痛14例,混合型頭痛1例)を対象とした。随伴症状,体質傾向,舌所見,腹部所見,年齢,性別,身長,体重,高血圧の有無の計38項目を説明変数とし,頭痛改善の有無を目的変数として,多次元クロス表分析により最適な説明変数とその組み合わせを検討した。この結果,単変量解析では,重要な順に「朝の頭痛」,「めまい・ふらつき感」,「不眠」,「体重」,「耳鳴」,「舌下静脈怒張」となった。これは,「朝の頭痛」という口訣を統計学的に支持する結果となった。多変量解析では,「朝の頭痛」,「舌下静脈怒張」と「頸肩こり」の組み合わせが,釣藤散による頭痛改善を予測する最適なモデルとなった。抑肝散証では「背中の張り」を重視するのに対して,釣藤散では「頸肩こり」が頭痛改善を予測する情報として有用であったことは,両者の鑑別に役立つものと考えられた。
著者
木村 裕斗
出版者
経営行動科学学会
雑誌
経営行動科学 (ISSN:09145206)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.197-212, 2016
被引用文献数
2

The present study defined "creative team learning" as the kind of team learning geared towards seeking creative results for the team as whole, and aimed to show its structure and influencing process. Responses from 198 survey subjects were subjected to factor analysis to identify conceptual elements, followed by covariance structure analysis. The conclusion can be summed up in two points. First, the structure and process influencing team learning with regard to creative results were confirmed. Overlapped learning, which is a basic activity aimed at improving the quality of reflection, was found to promote creative results through reflective learning. Similarly, new insights obtained through reflective learning were found to influence creative results through diversified learning. Second, the influence of the group characteristics on team learning and its results varied with team results. In preceding studies, task cohesion influenced team effectiveness. In the present study, however, group cohesion and duty orientation did not influence creative results except through team learning. Respect for individuals and personal interaction orientation had a direct influence on creative results.
著者
木村 裕一 杉町 勝
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.Supplement, pp.S283-S284, 2015 (Released:2016-06-18)

論文は、研究の途中経過や成果を公表し、その内容を研究コミュニティーの中で議論するための強力な手段である。従って、そこに書かれている内容が分かりやすく伝わるような書き方をすべきである。このためには、論文の成立要件に対する明確な主張、論文の構成、図表のデザインに作法がある。本講演では、論文の書き方、査読に対する対応について、実例を踏まえて説明する。
著者
小松 賢一 高地 義孝 高地 智子 丸屋 祥子 松尾 和香 木村 博人 鈴木 貢
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.89-100, 1993-05-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
34
被引用文献数
4

1980年1月から1989年12月までの10年間に弘前大学医学部附属病院歯科口腔外科外来を受診した650名の顎関節症患者について臨床統計学的な観察を行い, 次のような結論を得た。本症患者は年々増加傾向にあり, 新患総数に占める割合は10年間で平均7.4%であった。性別では男性173人, 女性477人と女性に有意に多かった。年齢別では20歳台が27.2%と最も多く, 次いで10歳台16.6%, 30歳台16.5%と続き, さらに50歳台, 40歳台, 60歳台の順で二峰性を示した。罹患側は片側が85.8%, 両側が14.2%であった。初発症状や主訴は単独症状のことが多く, その症状は疼痛が最も多かった。発症から初診までの期間は57.2%が6カ月未満であった。当科受診前に他科を受診している患者は51.4%であった。初診時症状は複数の症例が多く, 顎関節部痛が70%, 顎関節雑音46.2%, 開口障害42.5%などであった。治療法は薬物療法, スプリント療法, 咬合調整, 抜歯などの歯科的治療法であった。薬物療法とスプリント療法の併用が60%を占めていた。治療成績では, 治癒または軽快が45.1%に見られた他, 治療中止例が53.6%に見られた。
著者
木村 友子 菅原 龍幸 福谷 洋子 加賀谷 みえ子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.585-593, 1994-07-15
被引用文献数
7

Dried shiitake mushrooms were rehydrated with ultrasonic-irradiation in search for rational rehydration methods. Its effects on the texture properties and the preference test were studied. The following results were obtained ; water absorption by the shiitake mushrooms, the color of yellowing of the rehydration liquid and its browning were greater with ultrasonic-irradiation than in the control without the irradiation. The irradiated shiitake mushrooms had less hardness and gumminess and were softer. Irradiation time was 20 min and total immersion time was 2h for Jyodonko adn 1h for Jyokoshin at 5℃ and 25℃ which are within a suitable rehydration range. Under these conditions, water absorption reached 90% of the maximum and the shiitake mushrooms scored high preference points in such properties as softness and gumminess. Irradiation slightly affected on the content of RNA and the composition of 5'-GMP, 5'-AMP, 5'-UMP, 5'-CMP and free amino acids in steam-cooked shiitake mushrooms.
著者
木村 圭佑 作 慎一郎 高取 克彦
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101144, 2013

【はじめに、目的】日常生活における,歩行や階段昇降は運動学的には片脚立位からのバランス損失と回復の繰り返しといえる.よって片脚立位時の姿勢制御能力の向上は転倒予防のために重要と考えられる.先行研究では片脚立位における前後方向の重心動揺制御への母趾外転筋強化の有効性が報告されている.しかし,その有効性は無作為割り付けの行われた対照群がない設定で実施されていることから,より精度の高い手法での検討が必要と考えられる.また,重心の側方動揺制御には,小趾外転筋の活動が有効だと考えられているが,両者の関係については,十分な調査が行われていない.本研究の目的は,小趾外転筋の筋力強化が片脚立位時における姿勢制御能力に及ぼす影響について明らかにすること,母趾外転筋強化による重心動揺制御効果を無作為化比較試験にて追試することである.【方法】健常成人70名から参加の同意を得られた30名(男性15名,女性15名,平均年齢21.4±1.0歳)の両下肢を対象とした.母趾外転筋のみをトレーニングする群(以下:コントロール群)15名と母趾および小趾外転筋をトレーニングする群(以下:実験群)15名に無作為に振り分けた.両群の参加者特性(年齢・性別・身長・体重・足長・足幅)には有意な差は認められなかった.母趾外転筋トレーニングは第2~5趾を固定させ,最大可動域までの母趾外転運動を行う事とし,小趾外転筋トレーニングは第1~4趾を固定させ,最大可動域までの小趾外転運動を行う事とした.両トレーニングともに左右実施し,1分間できるだけ多く課題を反復させるよう指示した.実験群では両トレーニングを実施させ,コントロール群は母趾外転トレーニングのみを行わせた.トレーニングは両群とも週7日,3週間行った.評価項目は筋力の指標として自動母趾および小趾外転距離の変化と片脚立位バランスおよび安定性限界の変化とした.母趾外転距離の測定では,最大自動外転時の母趾・示趾間の距離を測定した.小趾外転距離の測定においても,小趾・環趾間の距離を測定した.母趾および小趾外転距離は足幅で除して標準化した.足幅は第一中足骨頭内側,第五中足骨頭外側の距離を測定した.片脚立位バランスおよび安定性限界の評価には重心動揺計(アニマ社製)を用いて左右片脚立位30秒間の重心動揺面積および重心最大偏位距離(前後・側方)を測定した.また,両脚支持での立位安定性限界(前後左右への随意的な重心最大移動距離)についても測定を行った.重心動揺の前後距離は足長で,左右距離は足幅で除することで標準化した.足長は踵から足尖間距離を金尺にて測定した.データ解析は,両群におけるトレーニング前後の変化率を対応のないt検定を用いて実施し,有意水準を5%未満に設定した. 【倫理的配慮、説明と同意】被検者には研究の趣旨を説明し,自由意志にて参加の同意を得た.【結果】小趾外転距離はコントロール群に比較して実験群で増加傾向が認められた.片脚立位時の重心動揺面積は右脚において実験群に有意な減少が認められた(p<0.05,効果量 =0.84).また最大重心偏位距離は前後方向で両脚ともに実験群において有意な減少が認められた(p<0.05,右効果量 =1.06)(p<0.05,左効果量=0.87).左右方向では,群間差は認められなかった.立位安定性限界における重心最大距離変化では,両群間に有意差は認められなかったが,全方向において実験群に重心最大移動距離の増加傾向が認められた.【考察】片脚立位時の前後重心動揺が実験群で減少した要因としては,母趾による偏位した重心位置での支持作用と,小趾による偏位した重心を中心に戻す作用に改善が認められたためと考えられる.また,足部は前後方向の動きで重心を安定させており,母趾外転筋には母趾屈曲作用,小趾外転筋には小趾屈曲作用がある.これらの事から,実験群での重心動揺面積の減少は,主に前後最大距離の減少によるものと考えられる.左右最大距離に変化が認められなかった要因として,側方バランス維持には足部内外反を制御する外在筋の役割が重要とされている.従って,側方動揺制御に対し,内在筋の強化のみでは姿勢制御能力の改善には不十分であった可能性が考えられる.立位安定性限界には群間差は認められなかったが,全方向において実験群がコントロール群よりも増加傾向が認められた事から,母趾および小趾外転トレーニングは足趾把持筋力を強化し,動的姿勢制御能の向上を示す可能性があると考えられる.【理学療法学研究としての意義】本研究では,小趾外転筋の筋力強化によって姿勢制御能力の向上が認められた.よって,臨床においてよく用いられる足趾把持トレーニングに加え,外転トレーニングを行うことで,転倒リスクの更なる減少に有用だと考えられる.

2 0 0 0 OA 聖詠講話

著者
木村英吉 訳
出版者
正教会編輯局
巻号頁・発行日
vol.上編, 1912