著者
吉村 俊朗 中野 治郎 本村 政勝
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

抗アセチルコリン受容体抗体(抗AChR抗体)および抗筋特異的チロシンキナーゼ抗体(抗MuSK抗体)共に陰性で筋無力症が疑われる患者の中に筋萎縮性側索硬化症もある。誘発筋電図でもWaningが認められ、テンシロンテストも陽性と判断されることがあり、抗体陰性の重症筋無力症の鑑別に重要と結論した。運動終板に補体C3の沈着が認められ、postsynaptic foldの減少も認められた。αバンガロトキシンの減少も認められる例もある。意義付けが困難であるが、眼筋型MGでは、AChR抗体が陰性のことが多く補体の沈着があることがある。測定感度以下のAChR抗体が関与する可能性や、AChR抗体以外の抗体の関与が考えられる。補体の沈着もなく、postsynaptic foldの減少があり、臨床像は、四肢近位筋の筋力低下があり、他の抗体もしくは、先天性の可能性など、今後の検討が必要である。ヒト抗MuSK抗体は、ラットの再生筋の運動終板においてもいても、ヒト運動終板と類似の変化をもたらす。 抗MuSK抗体は Postsynaptic areaの形成に影響を及ぼす。抗ラミニン抗体は抗体陰性の筋無力症の原因でありうる可能性を否定できないが、電気生理学的な検討も含めて、今後の検討が必要である。ラミニンも運動終板の形成に関与している可能性がある。
著者
吉田 裕一 本村 翔
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.26-31, 2011 (Released:2011-01-21)
参考文献数
9
被引用文献数
2 3

イチゴ高設栽培の普及にともなって,ポット育苗からトレイ育苗への転換が進んでいる.空中採苗したランナー子株をトレイに挿し苗することによって,省力的な促成栽培用イチゴ苗の育苗が可能であるが,トレイで育苗した苗はポット苗と比較して開花が遅れる株の割合が高くなることが多い.挿し苗育苗した苗はクラウンが深く埋もれることが多いことから,クラウンの深さ,挿し苗時期と苗の大きさがイチゴ‘女峰’の開花に及ぼす影響について検討した.その結果,培地から露出したクラウンより深く埋もれたクラウンの茎頂分裂組織付近の温度が高く,花芽分化が遅れることが明らかになった.また,小さなランナー子株を遅い時期に挿し苗した場合には,特に開花が不揃いになりやすいが,クラウン周辺の培地を取り除いて露出させることによって茎頂分裂組織付近の温度が低下し,開花が早く斉一になった.以上のように,深く埋没したイチゴのクラウン周辺の培地を取り除いて露出させることにより,花芽分化が安定したイチゴのトレイ苗を効率的に生産できることが明らかになった.
著者
北之園 寛子 白石 裕一 本村 政勝
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.341-355, 2018-04-01

Lambert-Eaton筋無力症候群(LEMS)は,シナプス前終末からのアセチルコリンの放出障害により,四肢筋力低下,腱反射低下,および,自律神経障害を呈する神経筋接合部・自律神経の自己免疫疾患である。LEMS患者の半数以上が悪性腫瘍,主に小細胞肺癌(SCLC)を合併する傍腫瘍性症候群でもある。SCLCを含む神経内分泌腫瘍に対する腫瘍免疫で自己抗体が生じ,シナプス前終末の活性帯に局在するP/Q型カルシウムチャネルをdown-regulationさせることが,LEMSの病態機序と考察される。
著者
山本 利一 本郷 健 本村 猛能 永井 克昇
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.3-12, 2016

本研究は,プログラミング教育に関する教育的意義やその効果を先行研究から整理し,今後それらを推進するための基本的な知見を得ることを目的とする.そのために,初等中等教育におけるプログラミング教育の位置づけを学習指導要領で確認した後,先行研究を整理した.その結果,プログラミング教育の教育的意義や学習効果は,①新たなものを生み出したり,難しいものに挑戦しようとする探究力,②アルゴリズム的思考,論理的思考力,③物事や自己の知識に関する理解力,④自分の考えや感情が発信できる表現力や説得力,⑤知恵を共有したり他者の理解や協力して物事を進めたりする力,⑥プログラミングを通して情報的なものの見方や考え方を身に付けることができる,ことであることが示された.
著者
本村 陽一 村田 知佐恵 大塚 裕子 大森 隆司 山田 徹志
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.4L2J1303, 2019 (Released:2019-06-01)

本研究では、保育施設への人工知能(AI)導入プロジェクトについて、その構想の背景にある必然性や技術導入プロセスについての現状を総括する。また、保育士など保育従事者に対するヒアリングやインタビュー調査を行い、保育従事者の価値観や評価構造を明らかにし、それに基づき検討したAI技術活用の可能性、現場への導入のユースケースや期待される効果についても議論する。保育施設へのAI導入プロジェクトは、①保育の質向上のための保育技術の指標化、②既存のAI技術の活用、③新たなAIシステムの開発という3つの方向性で進めている。保育士目線での開発を重視した結果、アノテーションソフトなど、必要な技術開発が明確化された。また、保育とは何かを定義づけるための保育の質に着目した研究を行うことで、業務効率化に留まらないAI導入の社会実装化モデルとなり得ると考える。
著者
保田 隆 渡辺 泰雄 四辻 彰 林 敏雄 南 新三郎 岡本 世紀 山城 芳子 荒木 春美 伊東 優子 本村 桂子
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.36, no.Supplement9-Base, pp.95-109, 1988-12-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
12

新ピリドンカルボン酸系合成抗菌剤T-3262のin vitroおよびin vivo抗菌活性をnorfloxacin (NFLX), ofloxacin (OFLX), ciprofloxacin (CPFX) を対照薬剤として比較した結果, 以下の成績を得た。1) T-3262はグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して広い抗菌スペクトラムを有していた。グラム陽性菌に対しては, すべての対照薬剤より強い抗菌力を示し, またグラム陰性菌に対しては CPFXとほぼ同程度, NFLX, OFLXより優れた抗菌力を示した。2) T-3262はPseudomonas aeruginosaを含むブドウ糖非醗酵菌, Bacteroides fragilisを含む嫌気性菌に対しても強い抗菌力を示した。3) T-3262はmethicillin耐性ブドウ球菌およびnalidixic acid耐性グラム陰性菌に対しても強い抗菌力を示した。4) T-3262の抗菌力に及ぼす諸因子の影響では培地の種類, ヒト血清添加の影響はほとんど受けず, 培地pHがアルカリ性側のとき抗菌力が強まった。5) T-3262の作用は殺菌的であった。6) グラム陽性菌およびグラム陰性菌を用いたマウス実験的全身感染症でT-3262は優れた治療効果を示した。特にグラム陽性菌においてすべての対照薬剤より優れた治療効果を示した。
著者
竹尾 剛 渋谷 統寿 本村 政勝 金沢 一 宍戸 春美
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.1154-1159, 1989-09-25 (Released:2011-08-04)
参考文献数
8

ニューキノロン系抗菌剤と消炎鎮痛剤の併用により痙攣と高CK血症を来した症例を経験した。症例は64歳女性。膀胱炎のためエノキサシン (ENX) 300mg/日とフェンブフェン (FBF) 1,200mg/日を4日間服用中に突然意識消失し, 痙攣を来した。強直性痙攣と不穏状態が間歇的に3回繰り返し起こったが, 約4時間後には意識清明となった。入院時の心電図, 頭部CTスキャンは正常範囲であった。入院後著明な高CK血症 (第5病日に最高17,712IU/1と最高値) を認めたが第13病日には正常化した。CKアイソザイムはすべてMM型であったが, 針電極筋電図, 筋生検に異常はなかった。次に, マウスを用いてニューキノロン系抗菌剤による痙攣の発症に関する基礎実験を行なった。その結果ENXのみならず, シプロフロキサシンもFBFとの併用により痙攣を発症することがわかったが, オフロキサシンとFBFの併用では痙攣は発症しなかった。痙攣の予防に抗菌剤とFBFの投与前にあらかじめバルプロ酸ナトリウム, γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸, プロスタグランディンE2, ジアゼパム, およびフェノパルピタールを投与したがいずれも痙攣の発症を抑えることはできなかった。ENXとFBFの併用による痙攣は現在まで7例が報告され, その主因はENXであろうと推定されているが, その機序は不詳である。
著者
本村 信幸
出版者
日本生活体験学習学会
雑誌
生活体験学習研究 (ISSN:13461796)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.73-75, 2002-07

テレビゲーム中心で会話のない我が子のあそびを目の当たりにして、これを現代的な課題ととらえ、生活体験のチャンスを設けることで、子どもの生きる力を育むことができるであろうと始めた事業である。日時を決めて「さあ出発!」とは行かない。地域や保護者の理解、子ども達の意欲の喚起、子どもだけの作戦会議、支援者の選定などなど事前の準備には相当の期間を費やした。なかでも「地域の人と共に学ぶPTA 研修」は人集めに苦労し、合宿対象となる保護者の意識高揚とまでは至らなかった。子どもは、家事のすべてを協力して行い、風呂は近所の高齢者宅へ「もらい風呂」に出向き、人の心の温かさにふれ苦しい中にも楽しい合宿であった。「人と人とのもみ合いがない今こそ、この試みは大事..」と強く実感しました。この取り組みをとおして、子離れできない親、地域と交流のない家庭、現代の家庭が抱えるさまざまな問題が見えると同時に関わった住民に笑顔が広がり、家庭・地域の教育力再生へ向けた試みであったように思います。
著者
本村 あずみ 森 貴久
雑誌
帝京科学大学紀要 = Bulletin of Teikyo University of Science (ISSN:18800580)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.161-166, 2016-03-31

Saihara, which is located in north-western area of Uenohara in Yamanashi Prefecture, is a depopulated area. A traditional Kabuki play had been performed at Ichinomiya Shrine in Saihara for the autumn festival since at latest 1860s until 2001,and ceased to be performed since then. Interviews with 29 people living in Saihara held in 2009-2010 enabled us to collect information on the traditional Kabuki play. What is clarified in this article is as follows: (1) there were 3 types of play: a traditional Kabuki play performed by Saihara people, plays performed by a professional theatre company, and semi-traditional Shimpa plays; (2) during Meiji and Taisho period, most plays were traditional Kabuki plays performed by Saihara people,performance by theatre companies had become popular later, and the traditional kabuki play by Saihara people became popular again after 1980s; and (3) performance of plays for the shrine festival had become a hard task due to a change of life style in Saihara, which seemed to be the most serious cause for the interruption of this traditional local play.
著者
赤田 直輝 宗兼 将之 猪田 敬弘 神野 伸一郎 本村 信治 廣村 信 榎本 秀一
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.237-244, 2014 (Released:2014-10-31)
参考文献数
19

福島第一原子力発電所事故以来, 内部被ばくに対する放射線防護は喫緊の課題である。本研究では, 栄養補助食品のローヤルゼリーを投与したマウスの放射性セシウム, ヨウ素およびストロンチウムの体内動態の変化を, 複数分子同時イメージング装置 (GREI) および高純度ゲルマニウム半導体検出器を用いて評価した。事前に1週間ローヤルゼリーを経口投与したマウスに, 137Cs, 131Iおよび85Sr混合溶液を静脈注射投与した後, 組織分布を定量的に解析した結果, 甲状腺の131Iの蓄積が減少し, さらに全ての核種において尿中排泄量が増加する結果となった。GREI解析により得られた結果からも, 131Iの甲状腺への蓄積減少および全ての核種の膀胱への集積増加が観察された。これらの結果より, 内部被ばくの低減化が, ローヤルゼリーの持続的摂取で可能であり, GREIにより内部被ばく低減化をモニタリングできることが示唆された。
著者
篠田 功 本郷 健 本村 猛能
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.17-36, 1998

情報リテラシーとメディア・リテラシーは, もともと「読み書き能力」の意味する"Literacy"から生まれた。このリテラシーは, すべての人が身につけるべき基礎的能力という意味を持つようになって, 「読み書き」に算が加わり, 3R'sとなった。それらはさらに, 生活や職業に関わる基礎的能力として発展し, 高次の認知的能力にまで拡大する。情報リテラシーやメディア・リテラシーはその延長上にある能力で, 今世紀の終わりになってもたらされた情報爆発ともいうべき社会の実状を反映するものである。情報リテラシーとメディア・リテラシーは, 情報とメディアに対応するものであり, 情報やメディアに関する理解・操作・判断・選択・表現などの能力や, さらに情報の探索・評価などの能力までも含むと見られる。しかし, 現状では, それらの総合的検討は必ずしも十分でないようであり, これからの課題と考えられる。またもう一つは, 発達段階や教育内容に応じて, 特定のリテラシーを焦点化したカリキュラム開発であり, その検討を課題としたい。
著者
本村 政勝
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.1953-1958, 2015-09-10 (Released:2016-09-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1