- 著者
-
村上 弘
- 出版者
- 日本政治学会
- 雑誌
- 年報政治学 (ISSN:05494192)
- 巻号頁・発行日
- vol.67, no.1, pp.1_117-1_140, 2016 (Released:2019-06-10)
- 参考文献数
- 57
日本の政治学教育 (主権者教育) について, 目的, 内容, 手法 (教え方) を整理し, 見解を述べるとともに, とくに内容の面について, 2点を中心に考える。第1に, 教えるべき項目群を民主主義, 市民社会などの政治理念から体系的に導出できないか試みる。第2に, とくに日本で理解が弱いと思われる 「多元的民主主義」 や, その具体的な理解につながる政治権力への批判的視点や政党システムに関する教育について, 内容や教え方を検討する。 教える内容について, とくに高校までの段階では 「政治的教育の中立性」 による制約があるが, 中立性と, 多元的・批判的な見解の紹介とは両立しうる。多元的民主主義や政府への批判的視点は, 政治史, 政治思想, 政治制度, 比較政治などを通じて理解してもらうべきだ。各政党の論評が難しい場合には, 政党システムや 「左と右」 の座標軸を教えることで, 政治を比較し判断する視点を身に付けてもらうこともできる。 教え方については, 複数の情報や見解をもとに考え議論する力を付けさせるとともに, 集団作業, 政治参加, 市民活動などの経験を促すこと自体が有効である。