著者
小林 光 加藤 信介 村上 周三
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.68, pp.29-36, 1998-01-25
被引用文献数
11

居室の空気環境の設計は,室内が完全混合の状態にあると仮定して行うことが一般的である.しかしこの仮定を用いると,居住域空調などのように室内局所の環境を合理的に制御することは難しくなる.本研究は,気流分布,温度分布性状を中心とする室内の熱・空気環境場形成に作用する各種要因が室内環境場に寄与する程度と範囲を評価し,これにより合理的な環境制御を可能とすることを目的とする.本稿においては,筆者らが以前提案した換気効率指標(SVE:Scale for Ventilation Efficiency)第1,2,3に加えて,第4,5を定義し,CFDに基づく算出法を提案する.これは,室内の空気環境を制御する際に最も有効な制御要因である,吹出し・吸込み口の室内環境形成に対する寄与を評価するものである.また同じくSVE 6を定義し,CFDに基づく算出法を提案する.これは室内各点の空気が排出されるまでの時間(空気余命)を評価するものである.これらの指標を用いて換気性状の異なる二つの機械換気室の評価を行い,その有用性を確認する.
著者
村上 周三 加藤 信介
出版者
社団法人空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
巻号頁・発行日
no.32, pp.91-102, 1986-10-25
被引用文献数
30

室内における汚染質の拡散性状を基礎とする3種の新たな換気効率の指標を定義する.これは,(1)各場所で汚染質が発生したと仮定した場合の室内平均濃度,(2)同じく,汚染質が発生したと仮定した場合の平均拡散半径,および(3)吹出し空気の平均到達時間,である.これらを用いて,実在のクリーンルーム内の換気特性を考察する.換気効率指標の分布は,(1)吹出し口・吸込み口などを変化させた場合の気流分布の変化による換気効率特性の変化を効果的に示す,(2)室内汚染源の発生位置の変化が室内の清浄度に与える影響を直接的に示す,(3)清浄空気到達の程度を具体的に表す,などの特徴を有し,室内の換気設計を行う際の指標として有用なことが示される.
著者
森 勇樹 井上 隆 前 真之 佐藤 誠 村上 雄飛
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.79, no.700, pp.515-523, 2014-06-30 (Released:2014-07-15)
参考文献数
13

The objective of this research is to grasp the effect of high insulation bathtub on heat-retention of hot water, by means of web questionnaire, laboratory experiment, and actual survey in houses. As a result, the followings were obtained; 1) It is indicated that high insulation bathtub is remarkably effective for restraining falling in temperature of hot water in bathtub, and that the insulation effect is not observed clearly when the lid of bathtub is opened even if it is the high insulation bathtub. 2) The insulation performance of bathroom also affects the decrease in water temperature as well as that of bathtub. As with insulation of the bathtub, it is important to insulate the bathroom. 3) It is suggested that to estimate water temperature drop by using bathtub heat loss coefficient would be possible.
著者
鎌田 基司 村上 克介 松本 隆仁 村瀬 治比古 諸見里 聰 増田 篤稔 洞口 公俊 向阪 信一
出版者
一般社団法人 照明学会
雑誌
照明学会 全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.35, pp.159, 2002

モズクは健康食品として消費が伸びてきている。モズク養殖生産の効率化と安定化を図る上で、光環境の作用&middot;効果の解明が必要である。そこで光環境の基礎的知見を得るため、モズク盤状体の光合成特性について実験検討を行った。培養には40W3波長形蛍光ランプを用いた。光合成特性は光合成有効光子照度(PPFD)を0&sim;1000&mu;mol m<SUP>-2</SUP>s<SUP>-1</SUP>として測定した。実験検討の結果、日数の経過とともに盤状体の濃度は高まり、光の透過率が低くなった。高濃度のモズクは低濃度のモズクより低いPPFDで酸素発生速度が速くなる結果が得られた。モズク盤状体の光合成における最適な光飽和点は150&sim;300&mu;mol m<SUP>-2</SUP>s<SUP>-1</SUP>であった。今後、モズクの光合成特性の測定&middot;把握と併せて、補光設備を配設した実験用人工採苗水槽試作機での実験を重ねていきたい。
著者
村上 佳久
出版者
筑波技術大学学術・社会貢献推進委員会
雑誌
筑波技術大学テクノレポート (ISSN:24354856)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.58-63, 2013-12

スーパーコンピュータ(以下:スパコン)の超小型タイプを製作し,スパコンとは何かについて原寸大で教育できるような教材化を行い,検証した。実際,作製した超小型スパコンは,東京工業大学の大型スパコンである"Tsubame 2.0"とソフトウェア面で互換となるように設計し,将来的は発展が見込めるようなものが実現できた。
著者
村上 幸人
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.1082-1089, 1982-11-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
23

Vitamin B12-dependent enzymes catalyze various methyl transfer reactions and isomerizations accompanied by the initial 1, 2-shift rearrangement. Adenosylcobalamin, which involves both metal-coordinate and organometallic bonds in the same molecule, acts as a true catalyst in the latter reactions. Coenzyme reaction machanisms have been extensively investigated particularly in connection With methylmalonyl-CoA mutase and diol dehydrase, and homolytic cleavage of the Co-C bond as well as its heterolytic cleavage to yield a carbanion intermediate has been postulated. Since cob (I) alamin and its model compounds in Co (I) state act as supernucleophiles, various reactions as catalyzed by these complexes have been examined. For the establishment of effective B12 holoenzyme models, synthetic lipids which form stable single-walled bilayer aggregates in aqueous media are plausibly adopted as apoenzyme models. Novel organometallic chemistry is hopefully developed in the light of biomimetic notions.
著者
山口 悦子 村尾 仁 糸井 利幸 森本 玄 種田 憲一朗 森口 ゆたか 由井 武人 村上 聡 北村 英之
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

今日、患者安全では、事故から学び改善する態度を、組織的に奨励すべきであることが強調されているが、そのような態度や文化を醸成するために効果的な教育は確立された方法が少ない。事故からの学びを継続的な改善活動へと発展させる「学習する組織」作りには、職員の主体性や創造性の育成も要求される。そこで本研究は、職員が協働的・主体的・創造的に患者安全の課題に取り組む態度や能力を培う学習支援の一つとして、芸術の患者安全教育への応用可能性を探索した。また、芸術的手法を応用した教育プログラムを研究に参加した施設が協力して開発・実施し、これらの芸術を応用した教育プログラムが安全文化に及ぼす影響や効果について検討した。
著者
村上 陽子
出版者
愛知教育大学大学院・静岡大学大学院教育学研究科共同教科開発学専攻(後期3年博士課程)
雑誌
教科開発学論集 (ISSN:21877327)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.117-126, 2020-03-31

米飴は,もち米と麦芽で作られる,我が国の伝統的な麦芽糖化飴(麦芽水飴)である。米飴は水飴の一つであり,和菓子等の材料として用いられる。伝統的製法においては,米飴は,材料の少なさ(もち米と麦芽),豊かな風味,琥珀色などを特徴とする。一方,現在では,水飴は,デンプンに精製酵素を加えて工業的に作られ(酵素糖化飴),無色透明で大半が水分と糖質である。そのため,米飴の伝統的製法の衰退は,食文化の危機と考えられる。そこで本研究では,我が国の伝統的な食文化の一つである米飴に着目し,その製法と食嗜好性について検討した。米飴調製用の米は,こがねもちとヒメノモチを用い,麦芽添加量は米100gに対して15~35%まで変化させ,各種成分を測定した。麦芽添加量の増加に伴い,糖度,マルトース,いずれも経時的に増加し,4~10時間で平衡に達した。食嗜好性は,米の品種と麦芽添加量により異なっており,ヒメノモチ15%が最も嗜好性が高かった。
著者
武 仁 広村 桂樹 田村 遵一 楢原 伸裕 沢村 守夫 村上 博和 小林 紀夫 小峰 光博 成清 卓二 岡村 信一
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.501-505, 1991-05-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
11

症例は25歳, 男性.1985年頃より続く頑固な下痢, 全身倦怠感を主訴として1990年3月当科に入院した.身体所見では特に異常を認めなかったが, 低タンパク血症 (5.1g/dl) と正球性正色素性貧血 (11.99/dl) を認めた.小腸造影にてskip lesion, 狭窄, cobblestone appearanceを認め, 臨床的に小腸型クローン病と診断した.1990年4月より液体成分栄養剤を用いた経腸高カロリー療法を開始した.抗炎症剤の投与は行わなかったが, 臨床症状や異常検査所見は4週間以内に軽快した.寛解状態に達した後, 経腸栄養剤をすこしづつ常食に変更していったが, 症状や検査値異常の再出現はみられなかった.経腸栄養療法はクローン病患者に対して有効な治療法と考えられた.
著者
村上 優 杠 岳文 比江島 誠人 遠藤 光一 西村 直之
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.206-211, 2000-05-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
9

薬物依存の専門医療機関の必要性は国の政策医療として取り上げられるところであるが, 現在では国立に専門病棟が1ヵ所で, アルコールとの併用を入れると国立には2ヵ所, 公立で3ヵ所, 民間を入れても10ヵ所にも満たないのが実情である. 医療的には薬物依存もアルコール依存の治療システムの延長線上に位置していると考えられるにもかかわらず, これまでその特殊性が強調される傾向にあった. 肥前療養所においてアルコール依存の治療システムに追加する形で薬物依存の治療を検討し, 薬物依存リハビリテーションプログラムDRPをアルコール病棟に併設した. そうすれば薬物依存への専門治療を担いうる施設は飛躍的に増加することが期待できるからである. この際に薬物依存治療における思春期心性への配慮と, 処罰モデルから治療モデルへの移行(ダイバージョン), 自助グループの重要性を強調した.
著者
村上 聖一 東山 一郎
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.56-72, 2020 (Released:2021-04-16)

大河ドラマの「太閤記」や『未来への遺産』など20世紀後半のNHKを代表する番組を生み出した吉田直哉(1931~2008)。自宅などに保管されていた多数の番組関連資料が遺族からNHK放送文化研究所に寄贈された。資料は、番組の台本や企画書、取材・制作過程で撮影された写真、セット図面、番組で使われた楽曲の楽譜など、段ボール箱で54箱分、数千点規模に上る。 本稿では、今後の研究活用に向け、寄贈された資料を、吉田が制作した番組の性格に応じて時期ごとに区分し、紹介を行った。区分は、①1950年代のラジオ番組、②初期のテレビドキュメンタリー、③番組試作課時代の試作番組と実験的番組、④『大河ドラマ』『銀河テレビ小説』、⑤『NHK特集』などの大型番組、の5つである。本稿では、資料を活用した研究の可能性や、今後の資料の整理・保存の方向性についても考察を行った。
著者
村上 聖一
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.70-87, 2021 (Released:2021-05-20)

太平洋戦争下、南方の占領地で日本軍が行った放送について検証している本シリーズ、今回は、現在のインドネシアに当たる蘭印で行われた放送の実態を探った。 蘭印は、石油などの資源地帯として戦略上、重要だった地域で、日本軍は、占領後、20近くの放送局を開設し、一部を除き、終戦まで放送を続けた。この地域はジャワやスマトラといった島ごとにラジオ放送の発達状況が異なり、また、陸軍、海軍が担当地域を分けて放送を実施した。このため、本稿では、それらの条件に応じて、放送実施体制や番組内容、聴取状況にどのような違いが生じたのかといった点に着目しつつ、検討を進めた。 このうち、陸軍担当地区を見ると、戦前からラジオ放送が発達していたジャワでは占領後、速やかに放送が始まったのに対し、スマトラでは開局が遅れ、放送局数も少数にとどまった。また、海軍担当地域のセレベス・ボルネオは、戦前、まったく放送局がなく、軍が放送局を新設する必要があるなど、放送の実施体制は地域によって大きく異なった。 しかし、聴取状況を見ると、防諜のために軍が受信機の多くを接収したこともあって、いずれの地域でもラジオの普及はわずかにとどまった。そして、現地住民が放送を聴いたのは主に街頭ラジオを通じてだった。番組も、各地域とも、集団聴取に適した音楽演奏やレコード再生が中心となった。 各放送局の担当者は、具体的な宣伝方針が定まらない中、手探り状態で放送を継続する必要に迫られた。放送を通じて占領政策への理解を得るという目標が達成されたか検証できないまま、占領地での放送は終焉を迎えた。
著者
村上 京子
出版者
名古屋大学留学生センター
雑誌
名古屋大学留学生センター紀要 (ISSN:13486616)
巻号頁・発行日
no.10, pp.13-22, 2012

日本の工場で働く日系ブラジル人など就労外国人には,在日期間が10年以上と長くなっても日本語の読み書きがほとんどできない人も多い。しかし,従来の日本語能力を測る試験は日本語によって出題されるため,質問文が読めない人は受験することができなかった。そこで,就労外国人が母語で受けられるように多言語で,また生活に密着した内容による日本語の読み書き能力判定試験問題を作成し,工場などで実施した。その結果,問題数が少ないにもかかわらず,信頼性は十分な水準にあることが確認された。また,マニュアルが整備されているため,テスターによる判定のゆれはほとんど見られなかった。判定結果は,工場内などの日本語教室でプレイスメント・テストとして活用されている。今後,外国人を雇っている企業や商工会議所,ハローワークなどとも連携し,処遇や就職の際の参考資料として活用していけるように拡充・普及を図っていきたい。
著者
村上 幸人 久枝 良雄 尾崎 俊章 横野 照尚 谷 祐太郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.4, pp.445-451, 1988-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
27

ビタミンB12誘導体の反応性に関するアキシアル配位塩基の効果を明らかにするために,α-配位座に分子内塩基を有する疎水性ビタミンB12[Cob(II)(α-Im)6C1ester]ClO4,β-配位座に分子内塩基を有する疎水性ビタミンB12[Cob(II)(β-Im)6C2ester]ClO4,配位塩基でキャップした疎本性ビタミンB12[Cob(II)(Im:cap)5C1ester]CIO4,を合成した。電子スピン共鳴(以下ESRと略記する)スペクトルおよびサイクリックボルタンメトリーによる検討から,これらの錯体はほぼ完全なbase-on型で存在し,分子内配位塩基をもたない疎水性ビタミンB12[Cob(II)7C1ester]ClO4に50倍モルのN-ひメチルイミダゾールを添加した状態に匹敵することを明らかにした。アルキル化反応においては,コバルト+1価は四配位構造のためアキシアル配位塩基の影響は小さいが,アルキル錯体の光開裂反応におヘセいては,アキシアル配位塩基の立体的および電子的効果により反応はいちじるしく促進された。また,β-配位面側に分子内配位塩基が導入された錯体では,コパルト-炭素結合生成反応が抑制された。
著者
三木 千栄 小野部 純 鈴木 誠 武田 涼子 横塚 美恵子 小林 武 藤澤 宏幸 吉田 忠義 梁川 和也 村上 賢一 鈴木 博人 高橋 純平 西山 徹 高橋 一揮 佐藤 洋一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ed0824, 2012

【はじめに、目的】 本学理学療法学専攻の数名の理学療法士と地域包括支援センター(以下、包括センター)と協力して、包括センターの担当地域での一般高齢者への介護予防事業を2008年度から実施し、2011年度からその事業を当専攻で取り組むことした。2010年度から介護予防教室を開催後、参加した高齢者をグループ化し、自主的に活動を行えるよう支援することを始めた。この取り組みは、この地域の社会資源としての当専攻が、高齢者の介護予防にためのシステムを形成していくことであり、これを活動の目的としている。【方法】 包括センターの担当地域は、1つの中学校区で、その中に3つの小学校区がある。包括センターが予防教室を年20回の開催を予定しているため、10回を1クールとする予防教室を小学校区単位での開催を考え、2010年度には2か所、2011年度に残り1か所を予定し、残り10回を小地域単位で開催を計画した。予防教室の目的を転倒予防とし、隔週に1回(2時間)を計10回、そのうち1回目と9回目は体力測定とした。教室の内容は、ストレッチ体操、筋力トレーニング、サイドスッテプ、ラダーエクササイズである。自主活動しやすいようにストレッチ体操と筋力トレーニングのビデオテープ・DVDディスクを当専攻で作製した。グループが自主活動する場合に、ビデオテープあるいはDVDディスク、ラダーを進呈することとした。2010年度はAとBの小学校区でそれぞれ6月と10月から開催した。また、地域で自主グループの転倒予防のための活動ができるように、2011年3月に介護予防サポーター養成講座(以下、養成講座)を、1回2時間計5回の講座を大学内で開催を計画した。2011年度には、C小学校区で教室を、B小学校区で再度、隔週に1回、計4回(うち1回は体力測定)の教室を6月から開催した。当大学の学園祭時に当専攻の催しで「測るんです」という体力測定を毎年実施しており、各教室に参加した高齢者等にそれをチラシビラで周知し、高齢者等が年1回体力を測定する機会として勧めた。A小学校区内のD町内会で老人クラブ加入者のみ参加できる小地域で、体力測定と1回の運動の計2回を、また、別の小地域で3回の運動のみの教室を計画している。また養成講座を企画する予定である。【倫理的配慮、説明と同意】 予防教室と養成講座では、町内会に開催目的・対象者を記載したチラシビラを回覧し、参加者は自らの希望で申し込み、予防教室・養成講座の開催時に参加者に対して目的等を説明し、同意のうえで参加とした。【結果】 A小学校区での転倒予防教室には平均26名の参加者があり、2010年11月から自主グループとして月2回の活動を開始し、現在も継続している。B小学校区では毎回20名程度の参加者があったが、リーダーとなる人材がいなかったため自主活動はできなかった。2011年度に4回コースで再度教室を実施し、平均36名の参加者があった。教室開始前から複数名の参加者に包括センターが声掛けし、自主活動に向けてリーダーとなることを要請し承諾を得て、2011年8月から月2回の活動を始めた。A・B小学校区ともにビデオあるいはDVDを使用して、運動を実施している。C小学校区では2011年6月から教室を開始し、平均14名の参加者であった。教室の最初の3回までは約18名の参加であったが、その後7名から14名の参加で、毎回参加したのは3名だけで自主活動には至らなかった。2010年度3月に予定していた養成講座は、東日本大震災により開催できなかったが、25名の参加希望者があった。A小学校区内の小地域での1回目の予防教室の参加者は16名であった。大学の学園祭での「測るんです」の体力測定には139名の参加者があり、そのうち数名であるが教室の参加者も来場された。【考察】 事例より、予防教室後に参加者が自主活動するには、活動できる人数の参加者がいること、リーダーとなる人材がいること、自主活動の運営に大きな負担がないことなどの要因があった。自主グループの活動やそれを継続には、2011年3月の地震後、高齢者の体力維持・増進が重要という意識の高まりも影響を及ぼしている。C小学校区の事例で、自主活動できなかった要因を考えるうえで、A・B小学校区と異なる地域特性、地域診断を詳細にする必要性があると考える。リーダーを養成することでC小学校区での高齢者が自主活動できるか検討する必要もある。高齢者の身体状況に合わせて、自主活動できる場所を小学校区単位、小地域単位で検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】 介護予防事業を包括センター、予防事業所などだけが取り組む事業ではなく、理学療法士が地域の社会資源としてそのことに取り組み、さらに介護予防、健康増進、障害、介護に関することなどの地域社会にある課題を住民とともに解決するための地域システムを構築していくことは、現在の社会のなかでは必要であると考える。