著者
小野 敦史 細矢 光亮 鈴木 奈緒子 木下 英俊 村井 弘通 前田 亮 菅野 修人 大原 信一郎 陶山 和秀 川崎 幸彦
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.159-163, 2017

<p>前立腺囊胞性疾患は,外表奇形の合併がない場合,幼少期に発見されることは稀な疾患である。今回我々は,尿路感染症を契機に画像検査で偶発的に発見された前立腺小室囊胞の1 例を経験した。症例は1 歳男児。発熱と排尿時の啼泣,異常な尿臭を主訴に当科を受診した。膿尿の他,腹部の造影CT 検査と造影MRI 検査で膀胱と直腸の間に長径約40 mm の囊胞性病変を認めた。抗菌薬による治療で尿路感染症は改善し,その後の膀胱尿道鏡検査で前立腺小室囊胞と診断された。抗菌薬の予防投与で経時的に囊胞は縮小し,画像検査で確認できなくなったため,外科的切除は行っていない。現在,予防内服中止から1 年以上経過したが,再発は認めていない。小児の尿路感染症では,しばしば尿路異常を合併する例があるため,発症時には腎尿路系の精査を行うことも多い。自験例のように,前立腺小室囊胞が尿路感染症の合併症の1 つとして関与することを念頭に置く必要がある。</p>
著者
寺沼 浩 村井 宏隆
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.81-93, 2009-02-28
被引用文献数
1

近年,コンポジットレジンの接着性の向上や患者の審美的要求の高まり,Minimal Intervention(MI)の概念などから,コンポジットレジンを用いた審美修復が多用されるようになってきている.より高度な審美修復を行うための一つとして,周囲の色がコンポジットレジンに与える影響を考慮した色調選択が重要であると思われる.審美的要求の高まりから充填に使用されるコンポジットレジンも,積層して使用するものやカメレオン効果により,より天然歯の色調に近い修復が可能になった.しかし,実際に色調を調和させるためには,さまざまな条件を踏まえたシェードの選択や形態の回復が必要であり,熟練が要求される.そこで今回,コンポジットレジンの色調に有彩色が与える影響について実験を行った.本実験には,コンポジットレジンとしてエステライトΣ(トクヤマデンタル),ビューティフィルII(松風),フィルテック_<TM>シュープリームDL(3M ESPE,USA),テトリックセラム(Ivoclar Vivadent,Liechtenstein)のA3色,背景として標準白色板と黒色板,低発泡塩化ビニル板(アクリサンデー)の白,黒,黄,赤,青,緑を使用した.直径8mm,高さ1mmの円盤状試料を作製し,各背景の上に載せ,分光測色器Spectra Scan PR650(Photo research,USA)において,色の測定を行った.算出したコンポジットレジンの色調から背景のL^*値は,黒,赤,青,緑,黄,白の順に高くなり,a^*値は,赤で最大,緑で最小,b^*値は,黄で最大,青で最小であった.標準白色板と各背景との色差ΔE^*abは,白,緑,青,黄,赤,黒の順に高くなった.各コンポジットレジンにおいて,標準白色板上で測定した色調をコントロールとして各背景上で測定した色調から色差ΔE^*abを比較すると,4種類のコンポジットレジンともに,白,黄,赤,緑,黒,青の順に高くなった.背景の色差と異なる色の背景上におけるコンポジットレジンの色差に差を認めることから,背景の明度だけでなく彩度もコンポジットレジンの色調に影響を与えること,また色差からコンポジットレジンは,特に背景の赤あるいは緑色系の影響を受けにくいことが示唆された.
著者
飯沼 勝春 村井 安
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.368-373, 1999-05-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

Arbekacin, aminoglycoside antibiotic, was synthesized in 1973 by Kondo et al starting from Dibekacin by the acylation of 1-amino group with (S) -4-amino-2-hydroxybutyric acid (AHB), and approved as a chemotherapeutic agent in 1990 limiting to MRSA infection. In the development of industrial large scale synthesis, the main theme was selective protection of four amino groups except 1-amino group. We focused our effort to set up large scale synthetic method by taking advantage of zinc-chelation reaction. By the optimization of reaction conditions and minimization of isolation procedures, final production method was completed. We herein report the development course of high yield and low cost production method by the selective protection of amino group.
著者
渡辺 恭人 竹内 奏吾 寺岡 文男 植原 啓介 村井 純
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.234-242, 2001-02-15
被引用文献数
10

プライバシ保護を実現した地理位置情報システム(GLIシステム)を提案する.我々が提案しているGLIシステムは,インターネットに接続している移動体の地理位置情報を地球規模で管理するものである.位置登録者は自分の位置をサーバに登録し,検索者は移動体の識別子を鍵とした位置検索,および地理的領域を鍵とした移動体検索が可能である.GLIシステムは地球規模での動作を可能とするため,サーバの階層化による分散管理を導入している.本論文で扱うプライバシ保護とは,第三者による移動体の特定防止,位置特定防止,追跡防止,なりすまし防止およびインターネットにおける盗聴防止,データ改竄防止である.さらにサーバが管理するデータベースの盗難も考慮する.移動体の識別子としてHID(hashed ID)を導入することにより,信頼関係のある検索者のみに移動体の特定,位置特定,追跡を可能とし,信頼関係のない検索者には統計情報のみの利用を可能とする.なりすまし防止のため位置登録サーバを導入し,移動体の認証を行う.インターネットにおける盗聴防止および改竄防止にはIPsecを利用する.本論文では,プライバシ保護を実現したGLIシステムの性能も見積もる.We propose the Geographical Location Information (GLI)System with Privacy Proection.The GLI System we propose provides a way to manage geographicallocation information of mobile entities in the worldwide scale.Mobile entities regiter their location information withservers. Searching clients are able to look up location of mobileentities using specified identifier as a search key and look upidentifiers of mobile entities using speified geographical region as a search key. The GLI System has a distributed management method inorder to be scaled to the world.In this paper, we introduce HID (Hashed ID) to the GLI System forprivacy preservation. The privacy preservation means that a mobileentity must not be identified by unknown persons, the location ofa mobile entity must not be realized, and it is impossible to track amobile entity. We designed the new architecture of GLI System andestimate performance.
著者
森 望 村井 清人
出版者
長崎大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

従来、神経発生の初期段階において神経分化の抑制因子と考えられていたRESTが、ヒトの老化脳においては神経分化抑制ではなく、神経保護に機能し、RESTの発現が認知能力とも相関すると報じられている。申請者らはこの結果の真偽を検証する目的で、マウスのRESTの発現を培養神経老化モデルで検討した。また、RESTに細胞保護機能があるかどうかについて、酸化ストレスやDNA障害をモデルに検討した。全長のRESTおよび短絡型のREST4の発現が若齢と老齢の神経細胞で異なることが判明した。ただし、REST4の機能性や、RESTの老化神経での発現変動の意義については未だはっきりせず今後の研究に委ねられる。
著者
村井 陽子 奥田 豊子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 = Journal for the integrated study of dietary habits (ISSN:18812368)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.231-238, 2006-12-30
参考文献数
19
被引用文献数
2

&nbsp;&nbsp;小学校4, 5年生を対象に調理実習と授業実践を取り入れた「豆」の指導を展開した。指導前後に実施した質問紙調査, 指導群150名と対照群249名の成績を解析し, 教育効果を明らかにするとともに, 豆等の摂取頻度と児童の健康状況の関連を検討した。<br>&nbsp;&nbsp;(1) 指導群では, 指導後, 豆の嗜好, 豆の摂取意欲が有意に向上し, 対照群と比較すると家庭での豆の摂取頻度に増加傾向がみられた。<br>&nbsp;&nbsp;(2) 調理実習で児童が豆を「おいしい」と感じ, 嗜好が改善すれば, 豆の摂取も多くなることが示唆された。家庭での豆料理の提供が増えると, 豆の摂取は更に増加すると推察された。<br>&nbsp;&nbsp;(3) 調査した家庭での4項目の摂取頻度は,「豆」と「豆製品」,「カップめん」と「コンビニおにぎり」がそれぞれ有意な正の相関を示し, 健康状況に対しては,「豆」「豆製品」が有意な正の相関,「カップめん」「コンビニおにぎり」が有意な負の相関を示す傾向がみられた。<br>&nbsp;&nbsp;(4) 指導群では, コンビニ食品の摂取頻度が有意に減少し, 児童の健康状況の有意な向上が認められた。<br>&nbsp;&nbsp;(5) 摂取頻度における「豆・豆製品優位群」は,「コンビニ食品優位群」に比べて有意に高い健康度を示した。<br>&nbsp;&nbsp;(6) 児童に伝統的な食材やその食べ方を伝えていくことは, 食体験の幅を広げるとともに, 児童の健康状況に良好な影響を与える効果を期待できることが示唆された。
著者
相田 勇 羽鳥 徳太郎 村井 勇 広井 脩
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.p235-265, 1984
被引用文献数
1

1983年日本海中部地震の際に発令された津波警報に対する,新潟県村上市の自治体当局や住民の反応について,その実態の調査を行った.海岸地域の867世帯に対してアンケート調査を行った結果,53%がすぐにも津波がくると思ったと答えており,テレビなどの情報に注意したり,海を見にいくなど外の様子に注意した人は,ともに63%程度に達している.この段階で自主的に実際に避難したとする回答は,35件,5.4%あり,この地域では,地震があれば津波の用心をするという意識はかなり高い.この意識は,1964年新潟津波の被害程度に明らかな相関が認められた.津波警報は一般に高く信用されているが,来襲津波の程度の判断などは,自分自身の過去の経験にもとついている.また津波来襲は警報発令後40分以上経過していたにもかかわらず,その段階で警報を知らなかった人がほぼ20%程度あった.これは警報伝達の方法に問題を投げかけている.船舶の処置については,地震後,直ちに行っている率がかなり高く,小舟をおかに上げたもの41.4%,10~49トンの船で港外へ避難したもの26.7%である.警報が出ると更に多くなって,小舟のおかへ上げたもの52.4%,10~49トンの船で港外へ避難したもの58.3%となっている.このため漁船の被害は生じなかった.This is the research conducted at Murakami City in Niigata Prefecture to investi gate the social responses to the tsunami warning issued immediately after the 1983 Nihonkai-Chubu earthquake. We interviewed the officials of the local administrative organs and sent written questionnaires to 867 households in the seaside districts. We received replies from 75 percent of them. The results of the research are as given below. Owing to a false report in the course of disseminating the warning, the transmission through the administrative organs was delayed. But many people spontaneously took special care about the tsunami. More than half the people paid attention to the television broadcast, or carefully watched the state of the sea. And 5.4 percent of the people took refuge in some safe place. Such cautious behavior by the people is clearly correlated with the degree of damage which they suffered from the 1964 Niigata tsunami. The tsunami hit the Murakami seashore more than 40 minutes after the warning was issued. But even then 20 percent of the inhabitants did not know the warning had been issued. This means that it is necessary to establish and rearrange the warning dissemination system to the residents. There were two ways of dealing with ships when people heard the warning ; one was to leave the harbor, the other was to beach the ships. In this earthquake, most people managed to take care of their ships properly, although a number of pleasure-boats moored near the river bank were capsized.
著者
村井, 琴山
出版者
福田義郎写
巻号頁・発行日
vol.[1], 1890
著者
武田 篤 村井 盛子 浅野 義一 亀井 昌代 村井 和夫
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.258-265, 1993-08-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
8

難聴児がその同胞にどのような影響を及ぼしているかを検討するために, 当言語治療室で聴能訓練を行った52例にアンケートを実施した。 回答のあった47例の内17例 (36.2%) に, 腹痛, チック, 足痛, 吃音, 過食, 万引きなどの神経症的発症がみられた。 これらの予後は, 1年以内に改善ないし改善傾向を示すものが多いが, 3年以上かかるものや不変例もみられた。 しかし, これらの症状は祖父母同居例に発症が少なく, また発症後スキンシップを図ることにより症状が改善する傾向を示したことから, ともすれば難聴児にばかり親の目がいき, その同胞をなおざりにしてしまうことによる「愛情欲求不満」が関与していると推定された。 難聴児の訓練, 指導にあたっては, その同胞に対しても十分な配慮を行うべきと思われた。
著者
村井 尚子 ムライ ナオコ Naoko MURAI
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.5, pp.175-183, 2015-01-31

省察的実践家概念は教師の専門性を基礎づける概念として教育学研究において一定の位置づけを得ている。しかし、その鍵概念となる省察の意味するところについては、これまであまり詳しく検討されてこなかった。本稿ではまず、ショーンが『省察的実践とは何か』の中で用いている行為の中の省察を3つの意味で用いていることを明らかにする。第一にショーンは、行為の中の省察の前提となる行為を、数か月といった比較的長い期間を指すものとして用いている。次に、行為のただ中における省察について述べるが、言語を媒介とするこの省察は、わずかな瞬間であっても行為を中断することを前提とし、その中断自体の有用性が主張されている。しかしヴァン=マーネンによれば、教室で教師が子どもと対峙している状況においては、立ち止まって考える猶予はなく、常に真正な態度で子どもとパーソナルな関係を保っていることが求められる。そのような状況において我々は、教師として子どもにとって善いと思われることをほとんど熟考したり計画したりしないままに判断し行っている。ここで要求されるのが教育的タクトなのである。教育的タクトは、言語を媒介しない直観ともいえるショーンの3つ目の省察に近いと考えられるが、それが「教育的」である限り、何よりも子どもの善に向けて行われなければならないという意味で、通常の省察とは異なるものである。教育的タクトは、行為の中の省察に近いものではあるが、それは行為に先立って行われる省察、行為の後に回顧的な仕方で行われる省察を繰り返すことによって培われていく。しかもその省察が、省察の仕方そのものを省察するという現象学的な仕方においても行われることが重要なのである。The idea of ""reflective practitioner" is considered as a basic concept underlying the professionalism of teachers. However, the meaning of reflection has not been examined closely until now, even though it is a key term of ""reflective practitioner". Donald Schön uses the idea of reflection in action for three meanings. First, a practitioner's reflection in action may not be very rapid. The action present may stretch even weeks or months. Second, Schön describes the reflection in the midst of action. He insists that even when the action present is brief, performers can sometimes train themselves to think about their actions. However, according to van Manen, when we interact with students we must maintain an authentic presence and personal relationship for them. So we do not have enough time to stop and think as a teacher in the classroom. We should do the right thing for the child without reflecting in a deliberative or planning manner. He argues that in such a situation pedagogical tact is required. Schön also mentions the third type reflection which is implicit. This type of reflection is considered to be similar to pedagogical tact. However it must be pedagogical, be oriented to the good for children. In order to enhance the pedagogical tact, it is useful for teachers and training teachers to conduct the anticipate reflection and recollective reflection time and time again. And it is important that these reflection should be phenomenological.
著者
村井 和夫
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.112-124, 1999-04-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
34
著者
村井 和夫 樋口 明文 小原 能和 小野寺 耕 浅野 義一 立木 孝 村川 康子
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.253-264, 1992-06-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

急激に発症する感音難聴には強大な音響曝露後に見られるように, 原因の推定されるものの他に原因が明らかでない突発性難聴がある。今回, 音楽聴取後に聴覚の異常を訴えて受診したいわゆるコンサート難聴症例の聴覚障害の臨床像を検討し, コンサート以外の音響によって起こった急性感音難聴および原因不明急性感音難聴, いわゆる突発性難聴と主にその治療成績について比較検討した。その結果, コンサート難聴の予後は良好であったが, コンサート以外の音響の曝露によって見られた急性感音難聴の予後はいずれも突発性難聴より低値であり, 音響が原因で発症した急性感音難聴は, 突発性難聴と比較してより早期に治療を行う必要があると考えられた。
著者
高下 純平 林 信太郎 山口 浩雄 立石 貴久 村井 弘之 吉良 潤一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.667-671, 2016
被引用文献数
1

<p>症例は37歳男性.23歳よりけいれん発作を繰り返した.35歳から難聴や歩行時のふらつきが出現し当科に入院した.近親婚の家族歴があった.低身長で,腱黄色腫はなかった.mini-mental state examinationは19点,感音性難聴,断綴性発語,嚥下障害,四肢の痙縮,小脳症状を認めた.血中と脳脊髄液中の乳酸とピルビン酸が増加していた.頭部MRIで小脳半球,脳幹,内包に対称性の病変を認めた.ミトコンドリア病を疑ったが,筋生検とミトコンドリアDNA遺伝子解析に異常なかった.血清コレスタノール高値,CYP27A1遺伝子の新規遺伝子変異(c. 43_44delGGのホモ接合体)を認め,脳腱黄色腫症と診断した.</p>
著者
村井 純 水野 勝成 三谷 和史 加藤 朗 山口 英 石田 慶樹
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.49, pp.205-206, 1994-09-20
被引用文献数
6

インターネットの発展とともに、知識や情報を共有する応用は一対一型の通信を基盤とした応用と比べて著しく増加している。例えば、WWWの利用による情報の共有、nv(Net Video)、VAT(Visual Audio Tool)といった会議システムが挙げられる。また、インターネットの地理的に普遍的な接続に対する要求が高まっている。これらの傾向によって生じる課題は、一対多型の通信媒体を有効に利用することによって解決が期待できる。そこで、衛星ネットワークと従来の地上網を融合し、衛星通信のもつ地理的普遍性や同報性などの特徴を用いて、インターネットの新しい課題の解決を目的とするネットワーク構築実験であるWISH(WIDE Internet with Satellite Harmonization)を開始した。WISHの構成は、送受信地球局が図1に示すように6地点、7局(奈良は2局)で、7つの周波数帯域を使用する。各局には1.8mφのアンテナを設置し、切り替えが可能な送受信周波数で出力2W、最大2Mbpsの速度で通信が出来る。これら地球局は衛星網を形成するだけでなく、各所で地上網と接続されている。