著者
村山 輝志 松川 哲男
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.10-20, 1993-03-30 (Released:2012-11-27)
参考文献数
17

This paper will discuss the process by which various Budo schools were introduced to the Satsuma feudal clan during the Edo era. Martial arts prospered in the beginning of the Edo of period, and prospered again during the last days of the Shogunate. This happened all over Japan.Budo was introduced to Satsuma in 3 days.(1) Martial arts were taught by masterless samurai who came to Satsuma from other parts of Japan.(2) Martial arts were taught by Satsuma samurai who learned Martial arts in Kyoto or Edo.(3) Martial arts were taught by samurai who set up their own schools after learning from either the masterless samurai or the Satsuma samurai who had travelled to Kyoto or Edo.The Notachi-jigen school and Tachi-school are two Jigen-school started their own schools. Both the Notachi-jigen and Tachi-schools taught the skills that their founders had learned in the Jigen school.
著者
村山 弘明 富永 浩之
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.575-576, 2019-02-28

近年,議論や評決のシミュレーションとして,トークゲームが注目を集めている.本研究では,「語彙大富豪」を題材として,チャットアプリ上での運営ツールを開発している.このゲームは,プレイヤが選んだ単語を手札とした,トランプの「大富豪」のようなゲームである.単語の強弱は,手番のプレイヤの理由説明の後,プレイヤ間の協議と多数決で決定する.運営ツールでは,オープンなオンライン上で,トークゲームがプレイできる環境を目指す.そのため,初心者を対象とした打手支援や,悪意のあるプレイヤの排除が必要不可欠である.本論では,オンラインでゲームを運営するのに必要な機能を紹介する.
著者
村山 朝子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.415-424, 2016 (Released:2016-11-16)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

本稿では,地理学習において物語や小説などの文学作品を活用することの意義と視点について論じた.話の舞台となる地域の風土や文化,人々の気質を内包する文学作品は,学習者の地理的想像力を刺激し,地域についての豊かなイメージや認識をもたせる資料としての可能性を有する.特に世界を対象とする学習において有用である.また地理的想像力は地理教育が育むべき力の一つである.電子メディアの発達などに伴い断片的で一過性の情報が溢れる今日,文学作品を活用し地理的想像力を鍛えることが望まれる.
著者
村山優子 向井未来 西岡大 齊藤義仰
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.873-879, 2013-07-03

2011年3月11日の東日本大震災では、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)による情報交換が活発に行われた。特にTwitterは,行政やマスメディア等の企業が迅速な情報発信のツールとして,ユーザからはリアルタイムな情報収集源として重宝された.しかし,根拠のない噂や悪意のある冗談などのデマ情報のツイートが広く拡散される問題も発生し,ユーザに無用な不安や混乱を招いた.本研究では,ユーザがデマ情報の拡散を防ぐため,リツイートに関する意思決定プロセスのモデル構築を行った.モデルでは,ユーザが興味を持つことがリツイートに非常に大きく関わっていることが示唆された.
著者
木暮 貴政 久保田 富夫 村山 陵子 新村 洋未
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.171-176, 2011-11-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
29

To evaluate the influence on sleep by mobility and comfort on a mattress, we estimated subjective sleep feelings and measured sleep quality by polysomnography. Ten healthy subjects (4 males, 6 females), aged 62-67, were recorded, sleeping in a laboratory for two nights at a week interval under two crossover designed conditions (EMC: a mattress easy to move and comfortable by first impressions, DMU: a mattress difficult to move and uncomfortable by first impressions). The percentage of wakefulness in the first half of sleep time was significantly increased at DMU. Subjective sleep feelings were better at EMC and subjective evaluations at the time of arising showed EMC was easier to move and more comfortable. These results suggest that mobility and comfort on a mattress is important for better sleep.
著者
村山 祐司
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100157, 2015 (Released:2015-10-05)

GIS革命は,都市地理学にどのような方法論的発展をもたらしたであろうか. 都市に関するデータは多岐にわたり,センサスをはじめ膨大な地理空間情報がデジタル化され蓄積されてきた.最近では,POS,各種統計の個票,さらに都市住民がSNSを通じて発信するボランタリー情報なども利用可能になっている.リアルタイムで提供される非集計の情報は,位置と時間を付与した時空間データとして体系的に整備していくことが求められ,データベース構築に対してGISの果たす役割は大きい.コミュニティレベルを例に挙げれば,字,町丁,地区,学区,自治会区,あるいはメッシュなど,さまざまなスケール単位 で自在にデータを組み替えられるし,位置・時間情報を手がかりに,研究目的に沿う新たな空間データを作り出すことも難しくない.可変単位地区問題(MAUP)にも柔軟に対応できる. これまで概念提示に留まっていた精緻な空間モデルや分析手法を操作可能にするとともに,実証研究への適用を実現させたGISの功績は大きい.グローバル/ローカル・モデル,ボロノイ分割,空間的自己相関,パターン認識など,その事例は枚挙にいとまがない.高度な空間解析機能がGISソフトウェアにモジュールとして組み込まれ, GIS初心者でもこれらの機能を難なくハンドリングできる.これらの空間解析機能を駆使した実証的な都市地理研究を通じて,新たな知見が数多く見いだされている. 今日,高精細な衛星画像が安価で入手可能になり,リモートセンシング(RS)とGISを結びつけた都市の空間分析が存在感を増しつつある.たとえば,ランドサット画像から都市的土地利用・被覆を導出し,社会経済的特性や人口分布とグリッド単位でオーバレイさせ,それらの関連性を探る研究があげられる.ALOS,ドローン,航空レーザ測量などからDEM,DSMを導くことで建築物の高さ(DSM-DEM)を自動計測し,都市の水平的拡大とともに垂直的拡大を時系列的に3D可視化する試みもみられる.NDVI(植生指標)を算出し,定量的に都市緑地の量や分布を推定することもたやすい. 多種多様な属性が同一基準で都市ごとにデータベース化されれば,研究者間で情報を共有でき,都市空間の比較研究も飛躍的に進むであろう.これまでの都市地理学は,特定の都市を対象とした個別実証分析が多数を占めた.GIS革命は個々の都市の機能や特性を都市群全体の中に位置づける相対的思考を醸成させ,都市が有する一般性と固有性の議論を深化させた.GIS革命はいわば触媒の役割を果たし,GIS技術を武器にしながら,時空間概念を旗印に専門分化が進んだ都市地理学の諸分野を結びつけるだけでなく,時空間分析に関心を持つ隣接諸科学も引き寄せたと言えるかもしれない.計量革命は空間プロセスの研究を興隆させたが,GIS革命は空間プロセスから空間予測の研究,さらに空間制御・管理の研究へと都市地理学をいざなった.ジオシミュレーション技法を活用した空間予測モデル,遺伝的アルゴリズム,セルオートマタ,ニューラルネットワーク,エージェント・モデルなどを活用した精緻なシナリオ分析は,現実に即した都市政策や都市計画の策定に貴重な情報を提供する. 重要なのは,アーバナイゼーションやメトロポリタニゼーションといった空間プロセスを解き明かすメカニズム研究に加え,持続可能な都市像すなわち理想的なアーバニティ,メトロポリタニティを科学的に見定め,都市の空間動態を今後いかに制御・管理すべきかを科学的に提示することである.そこには,フォアキャストではなくバックキャスト的思考が求められる.GISの果たす役割は大きい.
著者
片山 直樹 村山 恒也 益子 美由希
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.183-193, 2015 (Released:2015-12-13)
参考文献数
49
被引用文献数
2 6

水田の有機農法がサギ類(ダイサギArdea alba,チュウサギEgretta intermedia,アオサギA. cinerea)にもたらす効果を検証するため,2013-2014年の5-7月に茨城県と栃木県の有機および慣行水田で野外調査を行った.採食行動調査の結果,ドジョウなどの魚類とカエル類が主食だったが,その割合は種ごとに異なっていた;ダイサギ,チュウサギ,アオサギの順に魚類の割合が高かった.また,いずれの種でも有機水田では慣行水田よりも魚類の割合が高くなっていた.一般化線形モデルを用いて解析した結果,有機農法は採食効率(g/min)に正の影響をもっていたが,その傾向はダイサギでのみ明瞭であるようだった.また有機農法は,ダイサギとアオサギの採食個体数に正の影響をもっていた.以上を踏まえ,本研究では有機農法の正の効果はダイサギでは一貫して認められたが,チュウサギとアオサギでは不明瞭であると結論づけた.この理由としては,食物種(魚類やカエル類)ごとの水田農薬の影響の違いや,有機農法の実施面積割合の少なさ(日本全国では総水田面積の約0.28%,本研究の鳥類センサス地点から周囲200 m以内では18-68%)などが考えられた.
著者
村山 達也
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.60, pp.279-293_L17, 2009 (Released:2010-11-09)
参考文献数
17

Le but de cet article est de dégager de l'Essai sur les données immédiates de la conscience de Bergson, non pas son ontologie et son épistémologie à l'état d'achèvement, mais sa vision plus primitive sur la réalité et la connaissance. Bien que la vision qui s'y trouve soit en quelque sorte rudimentaire, ce livre constitue néanmoins un cas privilégié en ce qu'il est le premier livre majeur de Bergson où celui-ci n'expose pas encore sa propre théorie de l'intuition, qui est présentée dans l'Introduction à la métaphysique et travaille parfois comme un écran qui nous cache le bergsonisme.Nous procédons par l'analyse de l'attitude bergsonienne face aux problèmes philosophiques. La position et la résolution des problèmes philosophiques révèleraient non seulement les idées que celui qui le pose et résout a de l'objet questionné, mais aussi les thèses générales qu'il se fait sur la réalité, la connaissance et leur rapport. Au début, nous extrayons de l'Avant-propos de ce livre le paradoxe de la solution du problème mal posé, analogue à celui de Ménon. Ensuite nous interprétons successivement les antinomies qu'a formulées Bergson et les contradictiones in adjecto, ou les«grossières images», qui ont engendré ces antinomies. Nous mettrons ainsi au jour les travaux à faire pour faire s'évanouir les antinomies et créer une solution unique. Nommément, la critique du postulat commun et l'invention, à travers la dialectique aristotélicienne, des images nouvelles qui sont naturellement précises.À la fin de cet article, nous tirerons des analyses ci-dessus plusieurs thèses sur la tendance rationaliste, la valeur de l'immédiat et le statut de la réalité dans le bergsonisme.
著者
村山 実和子
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.16-30, 2012-10-01

近世の資料を中心に,「あつくろしい」「かたくろしい」「むさくろしい」などのように,形容詞を派生する「クロシイ」という接尾辞が見られる。まず,その意味・用法について観察すると,主にク活用形容詞に付き,不快感や非難など言語主体から対象へのマイナス評価を表すことが分かった。次に,その形式については,現代語では「あつくるしい」のように「〜クルシイ」という形が見られることから,従来は「〜クルシイ」が「〜クロシイ」へ形を変えたものとされてきた。しかし,中世の資料や現代方言に「〜クラウシイ」という形が見られること,「〜クロシイ」も「〜クルシイ」も連濁しないことなどを考え合わせると,「〜クロシイ」→「〜クルシイ」という変化であったと考えられる。「見苦しい」「息苦しい」のような,音形・意味ともによく似た「〜グルシイ」という形が存したために,このような語形変化が生じたものと考えられる。
著者
駒木 伸比古 佐藤 正之 村山 徹 森田 実 小川 勇樹
出版者
[三遠南信地域連携研究センター]
巻号頁・発行日
2017-09-30

本図説を作成するにあたり,以下の助成金を利用しました。・文部科学省「共同利用・共同研究拠点(越境地域政策研究拠点)」(代表者:戸田敏行)・日本学術振興会科学研究費「ポストまちづくり三法時代における大規模集客施設の越境地域政策に関する地理学的研究」(代表者:駒木伸比古)・日本学術振興会科学研究費「民主主義の規模と行政の自律的裁量」(分担者:村山徹)
著者
村山 綾 三浦 麻子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1203, (Released:2013-09-30)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本研究では,集団討議で生じる葛藤と対処行動,およびメンバーの主観的パフォーマンスの関連について検討した。4名からなる合計17集団(68名)にランダムに配置された大学生が,18分間の集団課題を遂行した。その際,討議開始前,中間,終了時に,メンバーの意見のずれから算出される実質的葛藤を測定した。また討議終了時には,中間から終了にかけて認知された2種類の葛藤の程度,および葛藤対処行動について回答を求めた。分析の結果,集団内の実質的葛藤は相互作用を通して変遷すること,また,中間時点の実質的葛藤は主観的パフォーマンスと関連が見られないものの,終了時点の葛藤の高さは主観的パフォーマンスを低下させることが示された。関係葛藤の高さと回避的対処行動は主観的パフォーマンスの低さと関連し,統合的対処行動は主観的パフォーマンスの高さと関連していた。関係葛藤と課題葛藤の交互作用効果も示され,課題葛藤の程度が低い場合は,関係葛藤が低い方が高い方よりも主観的パフォーマンスが高くなる一方で,課題葛藤の程度が高い場合にはそのような差はみられなかった。葛藤の測定時点の重要性,および多層的な検討の必要性について議論した。
著者
村山 輝志
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.10-19, 1976-07-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
30

Change of judging rule of Judo and Kendo as BUDO is summarized in an introduction, The origin of each article and the background of its revised or supplemented ones are discussed in details. The main object of this report is interpretation on the reason why these revised and supplemented articles have been derived.The interpretation was infered from technical, tactical, and restrictive aspects of the rules. Especially it was done on the original character of BUDO.
著者
山根 信二 村山 優子
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.45(2003-CSEC-021), pp.77-82, 2003-05-15

2003年度に電子政府を実現するe-Japan計画に沿って,現在官公庁から地方自治体におよぶ全国的な取り組みが進められている.その過程で安全性証明のみならずリスク評価が重要な課題となっている. 本報告では,政府調達システムに固有のリスク評価事例として特にスマートカート(多目的ICカード)に注目する.スマートカード導入において,仕様策定,国際技術標準の導入,端末のセキュリティといった個別の課題を取り上げ,最後に比較事例としてアメリカ,ドイツ,イギリスの関連動向についてもとりあげる.
著者
縄手 祥平 壺井 祥史 成清 道久 大橋 聡 長崎 弘和 神林 智作 村山 雄一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.551-555, 2021 (Released:2021-11-25)
参考文献数
15

【目的】脳空気塞栓症は潜水病としてダイバーに多く報告される病態である.今回我々は,筋力トレーニング後に脳空気塞栓症を発症した症例を経験したため報告する.【症例】75歳男性.ジムでの筋力トレーニング後,自宅で突然の意識障害を認め,当院へ救急搬送となった.意識レベルは JCS 300,GCS E1V1M1,強直性の痙攣重積状態であった.頭部CTで右前頭葉に散在する低吸収域を認め,空気塞栓症と診断した.痙攣重積状態であったため,高圧酸素療法は施行せず,抗痙攣薬とエダラボンの投与を行った.意識レベルは徐々に改善し,発語が認められ,指示動作に応じられるようになったが,重度の左片麻痺が残存した.発症53日目に modified Rankin Scale 3で回復期リハビリテーション病院へ転院した.【結論】既往歴に間質性肺炎を指摘されていたため,筋力トレーニング中の胸腔内圧上昇により肺胞が破裂したことが空気塞栓症の原因と考えられた.筋力トレーニングに伴う空気塞栓症は脳卒中の一因として認識しておくべきであると思われた.
著者
縄手 祥平 壺井 祥史 成清 道久 大橋 聡 長崎 弘和 神林 智作 村山 雄一
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
pp.10886, (Released:2021-07-07)
参考文献数
15

【目的】脳空気塞栓症は潜水病としてダイバーに多く報告される病態である.今回我々は,筋力トレーニング後に脳空気塞栓症を発症した症例を経験したため報告する.【症例】75歳男性.ジムでの筋力トレーニング後,自宅で突然の意識障害を認め,当院へ救急搬送となった.意識レベルは JCS 300,GCS E1V1M1,強直性の痙攣重積状態であった.頭部CTで右前頭葉に散在する低吸収域を認め,空気塞栓症と診断した.痙攣重積状態であったため,高圧酸素療法は施行せず,抗痙攣薬とエダラボンの投与を行った.意識レベルは徐々に改善し,発語が認められ,指示動作に応じられるようになったが,重度の左片麻痺が残存した.発症53日目に modified Rankin Scale 3で回復期リハビリテーション病院へ転院した.【結論】既往歴に間質性肺炎を指摘されていたため,筋力トレーニング中の胸腔内圧上昇により肺胞が破裂したことが空気塞栓症の原因と考えられた.筋力トレーニングに伴う空気塞栓症は脳卒中の一因として認識しておくべきであると思われた.
著者
伊藤 友一 松本 昇 小林 正法 西山 慧 三好 清文 村山 航 川口 潤
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.43-56, 2022-08-31 (Released:2022-09-23)
参考文献数
76

エピソード記憶の想起は,過去の出来事を記述的に思い出すのではなく,過去の出来事を心的に再体験する感覚を伴う.すなわち,その記憶システムは,過去のエピソードに対するメンタルタイムトラベルを担っている.メンタルタイムトラベルは未来や反実仮想のエピソードへも可能であり,記憶システムはさまざまな時間軸でエピソードを(再)構成するものとして捉え直すことができる.この視点から,記憶システムがかかわる近年の研究を概観する.伊藤はエピソード的未来思考について,松本は自伝的エピソード記憶の詳細さについて,小林は外部記憶の利用によるcognitive offloadingについて,西山は記憶の意図的な制御と忘却について,三好は主観的メタ記憶の計算論とその反実仮想との関連性について紹介する.これら話題提供の後,村山と川口による指定討論を受け,記憶研究の新たな視点と今後の展開について議論する.