著者
山根 信二 村山 優子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.1975-1982, 2001-08-15

1990年代の暗号技術規制論は,キーエスクローシステムを中心とする枠組みで論じられた.だが当時の議論はもはや有効ではない.今後の暗号技術の進路策定について議論する際には,1990年代の議論とは異なる枠組みが必要である.現在,議論のための枠組みの形成が急がれている新たな暗号技術問題として,暗号解析をめぐる係争があげられる.暗号技術の開発評価において暗号解析は重要な役割を担ってきたが,暗号解析の公表やその再配布については議論が分かれている.日本では,1999年から著作権の「技術的保護手段」の回避を行うプログラムを公表しようとする者は処罰されることになった.本論文では,この法制による暗号解析への影響を,2000年にアメリカで起こったDVDプロテクト破り訴訟を参考にしながら検証する.コピープロテクトに対する暗号解析の公表を法的に規制することは,コンピュータ専門家がかかえる技術的および法的リスクを増大させる.また,その影響はコピープロテクト技術のみにとどまらず,暗号技術の開発評価全般に及ぶ可能性がある.このような問題に対処するためには,暗号解析を含む暗号技術開発の進路策定を決める枠組みを刷新することが必要である.最後に,今後の専門家に要求される新たな役割についても検討を行う.The regulation of cryptography in 1990s had been formed under the ``framework of key escrow system,''such as the limitation of thekey-length or the lawful access field.While the 1990s' framework is not effective anymore,a new framework of regulation is evolving worldwide.After 1999, the copyright act in Japan prohibits ``the circumvention of atechnological copyright protection measure.''This act can make some work including the reverse engineering and cryptoanalysis illegal.The same problem has examined in the U.S. on the DeCSS DVD decoder lawsuit in 2000. The outlawing of the circumvention of the copyright protectiontechnology is not limited only the cryptanalysis, and will effect to the further social problem. The new role of computer professionals arerequired to deal with this new kind of risks. Finally this paper examines the computer professional's activities for the comming alternative framework as well.
著者
村山 康男
出版者
東京大学文学部美学藝術学研究室
雑誌
研究 (ISSN:09163379)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.69-88, 1988-03-25
著者
齊藤義仰 村山 優子
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.520-528, 2011-02-15
被引用文献数
3

動画共有サービス上の広告として,テレビのように動画の途中で広告動画を挿入するミッドロール型の広告手法が徐々に現れ始めている.しかし,既存のミッドロール型広告動画挿入手法では,一定の時刻になると時報のように広告動画を再生させたり,ランダムな再生時間に広告動画を再生させたりする手法がとられており,動画の視聴を妨げるタイミングで広告が再生されるという問題がある.そこで,我々は動画の視聴を妨げないタイミングで広告動画を挿入するため,視聴者コメントを用いたミッドロール型広告動画挿入タイミング決定アルゴリズムを提案する.利用する視聴者コメントは,ニコニコ動画のように動画中の特定のシーンと関連付けられたコメントを利用する.投稿されたコメントを時系列で分析することによりシーンの特徴を推定し,適切な広告動画挿入タイミングが決定できると考えられる.本研究では,単位時間ごとのコメント数に着目し,動画の視聴を妨げないタイミング付近でのコメント数の変化を検出し,広告動画の挿入を試みる.本論文では,広告動画挿入タイミング決定アルゴリズムを作成するための予備実験を行い,単位時間ごとのコメント数と適切な広告動画挿入タイミングの関係について調査した.さらに,予備実験により得られた知見から,広告動画挿入タイミング決定アルゴリズムを考案し,提案アルゴリズムの適用範囲について評価を行った.In recent years, mid-roll advertisements which insert a video advertisement at the middle of the video content appear gradually. However, the mid-roll advertisements usually interrupt video viewing because it inserts a video advertisement at the fixed or random time. To solve this issue, we propose an algorithm for mid-roll advertisement insertion based on audience comments. The algorithm determines timing for advertisement insertion not to interrupt audience's video viewing as much as possible on the supposition that there are some characteristics in the amount of comments at the appropriate timing. In this paper, we report results of a preliminary experiment to write an advertisement insertion algorithm and the detail of the proposed algorithm. Moreover, we also evaluate the proposed algorithm and discuss its issues.
著者
増田 聡 村山 良之 佐藤 健
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、自然(災害)科学の研究成果として公開が進むハザード情報が、「行政やプランナー、地域住民からどのように受け止められ」、「今後の都市計画制度や防災まちづくりに如何に反映されるべきか」について、地震災害を中心に、重層的リスク・コミュニケーションをキー概念に据えて、人口減少期を迎えた我が国の市街化動向を踏まえた検討を行い、(1)地域コミュニティにおけるリスク・コミュニケーションと行動変容の課題と、(2)自治体内リスク・コミュニケーションを核とする防災都市計画の実態を明らかにした。
著者
村山 元展
出版者
高崎経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は自治体レベルの地域農業構造政策の展開、農協の広域合併の進展、複数市町村による農業公社設立の動き、さらには市町村合併の推進といった近年の我が国農業の動向を背景に、標記の課題に迫ろうとしたものである。まず青森県を事例とした県と市町村の連携の取り組みである。青森県では平成7年から地域農業構造政策の柱として「ローラー作戦」を実施している。これはソフトの事業で、一市町村あたり平均年間250万円を措置し、市町村と普及センター、JA、農業者等が一体となって集落や旧村といった具体的な地域単位に農業構造問題を解明し、農業構造の改革に取組むものである。調査した自治体では特に稲作部門の担い手育成、規模拡大の実現と、複合部門の拡充による所得増大効果が実証できた。大分県津江地区では、中津江・上津江・前津江の三村とJA日田が連携して第三セクターの農産加工「(株)ツエ・エーピー」を設立し、地域農業振興に大きな役割を果たしている。特にワサビと柚子の買い入れは、生産農家の所得安定に寄与している。また隣接する大山町農協が経営する直売施設「木の花ガルテン」への出荷も農家経済の増大に寄与しており、津江地区のみならず大山町を含めたヨリ広域の自治体間連携の可能性と必要性が析出された。広域農協と市町村農業公社の検討事例が琴丘町である。広域合併農協管内で唯一農業公社をもつのが琴丘町である。琴丘町では合併以前から中山間地域対策として町主導の梅産地形成に取り組んできたが、その加工施設の事業主体をめぐって町と合併農協との間で問題が生じている。農協の広域性と自治体の個別性の齟齬である。今後は梅を含めた広域的な他品目産地形成を農協の地域戦略とすることが求められている実態が明らかになった。これら以外にも水田転作や大区画圃場整備事業に焦点を当てた広域的取り組みを検討したが、これについては報告書にて詳述する。
著者
西澤 隆 元村 佳恵 村山 秀樹 平 智
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

メロンの「うるみ果(水浸状果)」発生要因とその防止技術について,以下の諸点について明らかにした.1.メロンの「水浸状果」は,果実肥大期の後期に株が一時的に遮光条件下に置かれることによって誘発される生理障害であることを明らかにした.2.「水浸状果」の発生には品種固有性が存在し,供試した品種中では‘アンデス'には「水浸状果」が認められたものの,‘ラスター'では認められなかった.3.遮光処理は果実内におけるスクロースの蓄積を阻害したものの,ヘキソースの蓄積はほとんど阻害されなかったことから,遮光処理は果実内における糖代謝関連酵素の活性を変化させる可能性が示唆された.4.遮光処理は果実内におけるアセトアルデヒド,エタノール生成量を増加させたことから,「水浸状果」は‘プリンスメロン'等で発生が報告されている「発酵果」の一種であり,遮光処理によって果実はより嫌気的な状態に置かれるものと推察された.5.遮光処理はエチレン生成量を増加させ,同時に果肉硬度を低下させたことから,遮光区における急激な果肉硬度の低下には,エチレン生成が関与しているものと推察された.6.摘葉処理および着果過多処理により株のソース・シンクバランスを変えても,果実に水浸症状は認められなかったことから,「水浸状果」は遮光処理によって果実内への光合成産物の供給が制限されることが主要因で起こる生理障害ではないと推察された.7.ABA処理は葉の光合成速度を低下させると同時に果実からのエチレン生成量を増加させ,果実の軟化を促進させた.8.メロンの「水浸状果」の防止には,フィルムの張り替え等による受光態勢の改善,品種の選択,窒素肥料の適正化等が重要であると考えられた.
著者
杉本 伸夫 清水 厚 松井 一郎 西川 雅高 鵜野 伊津志 村山 利幸 荒生 公雄
出版者
社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.43, pp.74-77, 2002-09-11

この数年黄砂は増加傾向にあるといわれている。しかし、黄砂の現象を定量的に議論するための観測データはこれまで十分であったとは言えない。そこで筆者らは、黄砂の発生、輸送を三次元的に把握するために、ライダー(レーザーレーダー)によるネットワーク観測を北京と長崎、東京、つくば等で行うとともに、化学輸送モデル(九州大学CFORS)を用いた動態解析を行った。北京、長崎、つくばにおけるライダーによる連続観測データとモデルの比較の結果、主な黄砂現象については全般にモデルが観測結果を良く再現することが示された。そこで、モデルを用いて黄砂の発生毎に識別番号を付け、各地点のライダー観測結果との対応を検証するとともに、イベント毎に黄砂の輸送経路を記述した。日本に飛来する大規模な黄砂のほとんどは内モンゴルおよびモンゴルで発生し、強風に乗って北京周辺まで急速に輸送された後、北寄りに進路を変える場合が多い。通常、強風を伴う黄砂の本流は日本には到達せず、北東に流れる帯状の黄砂の一部が南東に広がるような形で日本に輸送される。2002年は2001年に比べて黄砂の観測される頻度が高く、また、韓国や日本でも高濃度の黄砂が観測された。北京、長崎、つくばの連続的ライダー観測の結果によると、地上から高度6kmまでに黄砂層が観測された頻度は、北京では2年間であまり変わらないのに対して、長崎、つくばでは2002年の方が倍ほど多く、明らかに日本への輸送量が多いことが示された。CFORSによる解析でも輸送経路の違いが見られた。2002年の大規模黄砂(3月20日、4月6日)では、黄砂が例年より東寄りで北上したため黄砂の本流が韓国にまで達し高濃度の黄砂被害をもたらした。これに似たケースは2001年4月6-7日発生の黄砂時にもあったが、このときは黄砂の本流は西側で北上し高濃度の黄砂被害は韓国にまでは及ばなかった。
著者
村山 良之 黒田 輝 田村 彩
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.68, 2018 (Released:2018-12-01)

自然災害は地域的現象であるので,学校の防災教育(および防災管理)の前提として学区内やその周辺で想定すべきハザードや当該地域の土地条件と社会的条件を踏まえることが必要である。災害というまれなことを現実感を持って理解できるという教育的効果も期待できる。福和(2013)の「わがこと感」の醸成にもつながる。 学校教育において,児童生徒に身近な地域の具体例を示したりこれを導入に用いたりすることは,ごく日常的である。しかし,山形県庄内地方では,新潟地震(1964年6月16日,M7.5)で大きな被害を経験したが,多くの教員がこのことを知らず,学校でほとんど教えられていない。発災から約50年が経ち,直接経験の記憶を持つ教員が定年を迎えており,教材開発が急務であると判断された。そこで,既存の調査記録(なかでも教師や児童生徒,地域住民が記した作文等)および経験者への聞き取り調査を基に,当時の災害を復元し,それをもとに教材化することを目指した。庄内地方における1964年新潟地震災害の復元 鶴岡市においては,被害が大きい①京田地区②大山地区③西郷地区④上郷地区について調査した。①と②について記す。 ①京田地区は,鶴岡駅の北西に位置し,集落とその周辺は後背湿地である。小学校の校舎を利用して運営されていた京田幼児園では,園児がグラウンドへ避難する際に園舎二階が倒壊し,保母と園児16名が下敷きとなった。学校職員をはじめ,地域住民やちょうどプール建設工事を行っていた従業員によって13名が救出されたが,3名の園児が亡くなった。当時の園児Sさんは,倒壊部分の下敷きとなったうちの1人である。逃げる途中に机やいすから出ていた釘で左の頬を切った。自分もグラウンドに逃げたかったが,体が倒壊した建物にはさまれて動かず,「お父さん!お母さん!」と叫んで助けを求めるしかなかった。その後泣き疲れて眠ってしまい,気付いた時にはすでに救出されていたそうだ。 ②大山地区は,鶴岡市西部に位置する。地区の西部は丘陵地,東部は低地である。町を横断するように大戸川と大山川が流れており,当時の市街地は大戸川の自然堤防上にあった。ここは家屋被害が鶴岡市でもっともひどく,道路に家が倒壊したものもあった。家を失った人々は公民館や寺の竹藪,旧大山高校などで数日間生活した。大山は酒造業が盛んで,醤油作りも行われていたが,これらの被害も大きかった。酒造会社のWさんによると,町中を流れる水路に酒が流れ込み,酒と醤油の混ざり合った異臭が数日間消えなかったそうだ。大山小学校においては,明治時代に造られた木造校舎の被害が大きかった。当時3年生だったOさんの話によれば,教室後方の柱が倒れてきたとのことだった。大山小学校ではちょうど3日前の避難訓練の成果がでて,職員と児童全員がけがすることなく避難することができた。 酒田市においては,既存文献で被害の大きい①旧市街地②袖浦・宮野浦地区の2地域について調査した。うち①について記す。 ①旧市街地は最上川右岸の砂丘とその周辺に位置する。水道被害が深刻でとくに上水道の被害が大きく,6月17~19日にかけて完全断水となった。その間は自衛隊の給水車で水を賄っていた。酒田第三中学校で2年生の女生徒がグラウンドに避難する途中に,地割れに落ちて圧迫死した。グラウンドには,何本もの地割れが走り,そこから水が噴き上げため,落ちた生徒の発見が遅れた。犠牲者と同学年のIさんの話によると,校庭でバレーボールをしている際に地震が起こった。先生の指示で最上川の堤防に逃げようとした時,グラウンドにはすでに地割れが起こっていた。地割れが自分に向かって走ってきた恐怖は,今でも地震の際に思い出すそうだ。水道管の被害,グランドの地割れや憤水から,酒田では広域にわたって激しい液状化が発生したことがわかる。新潟地震の教材化 現行の小学校社会科学習指導要領では,3年「市の様子」,「飲料水・電気・ガス」,4年「安全なくらしを守る」,「地域の古いもの探し」,5年「国土と自然」,6年「暮らしと政治」の各単元で,上記結果を用いた授業展開が考えられる。このうち3,4年社会科では地元教育委員会作成の副読本を用いることが一般的である。鶴岡市と酒田市の現行副読本には新潟地震災害は含まれていないため,これに追加可能な頁を,上記の研究成果を基に試作した。 鶴岡市教育委員会では,次期改訂で新潟地震を取り上げることとし,2018年度から検討を開始した。以上の研究成果が次期副読本に活用される見通しである。
著者
村山 千尋 尾内 康臣 千住 淳 山末 英典
出版者
大阪大学大学院 大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学連合小児発達学研究科
雑誌
子どものこころと脳の発達 (ISSN:21851417)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.18-24, 2022 (Released:2022-10-15)
参考文献数
32

自閉スペクトラム症(ASD)の原因や病態はその多くが未解明である.それに対し,陽電子断層撮像法(PET)は,生体内の特定の分子の分布や動態を定量的に測定できる強力な研究手法である.2020年以降,ASDを対象としたドーパミン受容体のPET研究が立て続けに報告されており,ASDの病態へのドーパミン系の関わりが注目されている.本稿では特に,私たちが行ったASDの線条体外領域におけるドーパミンD2/3受容体のPET研究を紹介する.この研究によって,ASD者では,ドーパミンD2/3受容体の豊富に存在する線条体外領域全体でドーパミンD2/3受容体結合能が有意に低下していることが明らかになった.中でも視床枕に相当する視床後部領域で結合能の低下は最大であり,この低下は,ASDの社会的コミュニケーション障害の重症度と相関していた.また安静時機能的MRI研究と組み合わせることにより,この線条体外領域におけるドーパミンD2/3受容体結合能の低下が,ASD者における社会脳領域の安静時機能的結合性の変化に関係していることが明らかになった.
著者
鬼頭 陽菜 北村 涼乃 中村 凜 村山 雄飛 元木 康介 井関 紗代
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第21回大会
巻号頁・発行日
pp.92, 2023 (Released:2023-10-18)

近年,モバイル決済が急速に普及しているが,現金に比べて支払いの実感が乏しいと指摘されている。モバイル決済では,「○○で支払います」とブランドネームを口にしたり,ブランドネーム(e.g., PayPay,QUICPay)が決済音に使われていたりすることに着目し,本研究では,ブランドネームの音象徴が支払いの痛みに及ぼす影響について検討することを目的とした。結果として,共鳴音(m, n, l)を含むブランドネームは,有声閉鎖音(b, d, g)を含むブランドネームに比べて,”やさしい”と知覚されるだけでなく,支払いの痛みを和らげ,金銭的損失の知覚を低減することが明らかになった。これらのことから,企業は共鳴音を含むブランドネームを採用することで,モバイル決済の利用を促すことができると考えられる。一方,消費者は,共鳴音を含むブランドネームのモバイル決済では,特に浪費に注意する必要があると示唆される。
著者
村山 稔 加辺 憲人
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.91-95, 2014-04-01 (Released:2015-04-15)
参考文献数
8
被引用文献数
5

回復期リハビリテーション病棟に入院中の脳卒中患者139名を対象に,単変量解析と信号検出分析法を用いて,回復期病棟へ入院後1週間以内に行われる臨床評価のうち,入院より1カ月以上にわたり長下肢装具を使用する場合を効果的に予測できる評価要因の組み合わせと,その最適カットオフ値を分析した.採択された要因は,年齢とFIMのベッド・椅子・車いすの移乗の得点および機能的バランス指数で,組み合わせの1例としてFIMのベッド・椅子・車いすの移乗1点かつ年齢63歳以上の場合には,87.5%が長下肢装具を1カ月以上使用すると予測された.入院から1カ月以上,長下肢装具を使用するか否かの予測が可能になると長下肢装具の処方の遅延が減少することが期待される.
著者
後藤 久貴 髙橋 良輔 馬場 一彦 青木 龍克 村山 雅俊 末次 宏晃 西 紘太朗 竹内 潤 内山 迪子 水光 正裕 小林 恭介 鳥越 雄史
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.247-250, 2018-03-25 (Released:2018-05-21)
参考文献数
10

CPP法は,外閉鎖筋と方形回内筋の一部を切離し,梨状筋,上双子筋,内閉鎖筋,下双子筋を温存する股関節後方進入法である.【対象,方法】大腿骨頚部骨折に対しCPP法で人工骨頭挿入術を行った30例(男性7例,女性23例,平均85.1歳)を対象とした.ステムはExeter 12例,Taper wedge型17例,Zweymuller型1例であった.手術時間,術中出血量,腱損傷の程度,ステムアライメント,術中合併症,術後脱臼を調査した.腱損傷を,損傷なし,下双子筋損傷,腱実質損傷,腱完全断裂のGrade 1~4に分類した.【結果】手術時間60.8分,出血量161 g,腱損傷はgrade 1 8例,grade 2 15例,grade 3 7例,grade 4 0例であり,4°以上の内外反は3例であった.術後脱臼は認めてない.【まとめ】CPP法は人工骨頭の術後脱臼予防に有効な後方進入法である.
著者
庄司 順三 廣野 里美 宮腰 正純 村山 哲也
出版者
昭和大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

日本に自生するハリブキ(Oplopanax japonicus N_<AKAI>=Echinopanax japonicus N_<AKAI>)と中国産刺人参(Oplopanax elatus N_<AKAI>=Echinopanax elatum N_<AKAI>)はともにウコギ科(Araliaceae)植物であり、刺人参は解熱、鎮咳作用を有するとされ、中国の文献では薬用人参と作用が近似していることが記載されている。今回の研究では両者の成分を化学的に比較し、両植物の医薬品としての新たな応用・開発をはかることを目的として行った。日本産ハリブキ葉からは既知成分のフラボノイド配糖体2種、トリテルペン配糖体1種を単離・同定した。更に3種の新規トリテルペン配糖体を単離し構造を決定した。中国産刺人参葉を日本産ハリブキ葉同様に分離し構造決定を行ったところ、両者に共通する2種の既知フラボノイド配糖体、1種のトリテルペン配糖体を単離・同定したほか、新規トリテルペン配糖体8種を分離しその化学構造を決定した。さらに日本産ハリブキの葉以外の部分について検討を進めているが、根皮より2種の既知化合物を単離・同定するとともにダイイン化合物1種と、これとアグリコン部の構造が異なるダイイン化合物の配糖体1種を単離し化学構造を決定した。中国産の試料については入手が限定されているが、日本産ハリブキについては10種の化合物を単離し、5種類が新規化合物であるので、今後、十分な量を確保し生物活性を検討することにより本研究の目的が達成されるものと思われる。
著者
町野 英弥 肥田 典子 原田 努 柴田 佳太 三邉 武彦 龍 家圭 水上 拓也 山崎 太義 諸星 北人 村山 信浩 竹ノ下 祥子 内田 直樹 倉田 なおみ
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.599-608, 2021-11-10 (Released:2022-11-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

Patients with reduced swallowing function have difficulty taking tablets in their original form. In such cases, tablets are crushed (crushing method) and administered through feeding tubes, but this practice may affect efficacy. A simple suspension method (SSM) has been widely used to address issues of administering crushed tablets through feeding tubes. Most of all angiotensin-converting enzyme (ACE) inhibitors are ester prodrugs. When they are suspended with magnesium oxide, ester prodrugs are hydrolyzed, and the active metabolite increases before absorption. In this study, we investigated the effects of SSM and crushing methods on the pharmacokinetics of the ACE inhibitor using temocapril and magnesium oxide. A human clinical trial was conducted to compare the pharmacokinetics of temocapril and magnesium oxide in three groups in six healthy adult men (period 1, tablet group; period 2, SSM group; and period 3, crushing-and-mixed group). The pharmacokinetics of temocaprilat, which is the active metabolite, were examined. The AUC0-24 and Cmax of the SSM group were 89.3% and 86.1% compared with those of the tablet group, whereas those of the crushing-and-mixed group decreased to 73.0% and 78.9%, respectively. In the crushing-and-mixed group, the concentration of temocapril decreased during crushing and long-term storage. Findings in the present study suggest that the crushing method may decrease in AUC0-24 and Cmax and that the expected drug effect may not be achieved. For ester prodrugs, the use of SSM might be considered rather than the crushing method.
著者
浜田 恵 伊藤 大幸 村山 恭朗 髙柳 伸哉 明翫 光宜 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.366-377, 2022 (Released:2023-07-04)
参考文献数
31

子どもの性別違和感への対応の難しさの一つは,医療的な対応を必要とする安定的な性別違和感と発達途上における一時的な性別違和感の揺らぎが混在していることにある。本研究では性別違和感の時間的安定性について,3つのコホートから得られた6年間の縦断調査によって絶対的安定性(平均値の変化)と相対的安定性(時点間の相関)および学年の上昇に伴う性別違和感の変化のパターンの検討を目的とした。小学4年生から中学3年生2,031名(男子999名,女子1032名)のデータを用いて検討を行った。絶対的安定性として学年による平均値の推移を検証した結果,男子では小4と比べて小5~中3は得点が低下したが,女子ではほとんど変化は見られなかった。性別違和感の変化のパターンを検討するため潜在プロフィール分析を行った結果,性別違和感をほとんど感じない群(74.5%),3~5年に渡り高い性別違和感を示す2群(2.8%),1~2年以内の性別違和感の高まりを示す8群(22.6%)が見出された。相対的安定性として各学年間の相関係数を算出した結果,学年が上がるごとに相関係数が高くなること,学年によらず男子よりも女子において相関係数が高いことが示された。性別違和感の安定性やその性差に影響を与えうる要因の検証の必要性について考察した。