著者
花野木 政信 磯崎 哲夫 林 武広
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.85-93, 2017 (Released:2020-01-26)
参考文献数
7
被引用文献数
3

大学進学を目指す高校生が文系・理系の選択をどの時期にどのような要因で行うか,文系選択者が中学校理科のどの単元で学習に困難を感じているかを明らかにするために,中学校3年生~高校2年生(N=307),高校1年生,2年生(N=503)を対象に2種類のアンケート調査を行った。その結果,中学校3年生から高校1年生の時期に文理選択をする生徒が多いこと,教科の得意・不得意がコース選択の大きな要因となっていることが分かり,特に中学校段階での数学,理科の学習が重要であることが分かった。文系と理系の比較では,文系選択者の方がコース決定時期が遅く,得意・不得意教科の偏りも大きいこと, さらに文系選択者の場合,理科については割合の計算を含む内容および,不可視な現象に関する内容への理解に課題を有することが明らかとなった。
著者
小野 央人 小林 武史 村上 知征 高橋 識至
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.245-251, 2023-04-28 (Released:2023-04-28)
参考文献数
20

【目的】身体活動性の定期評価と身体活動性向上のための指導を行っているCOPD患者へのCOVID-19流行の影響を明らかにする.【対象と方法】身体活動性の評価と指導を定期的に行っている安定期COPD患者42名(男性37名,平均年齢74.5±8.8歳)を対象とし,COVID-19流行前(2019年4月~2020年1月)と流行下(2020年2月~2021年2月)の身体活動量を比較した.また,定期評価月別の平均歩数の推移をCOVID-19流行前から流行下にかけて分析した.【結果】COVID-19流行前と流行下を比較して身体活動量に有意な変化はなかった.2020年3・4月においては,6ヵ月前と比較して平均歩数が減少していたが,6ヵ月後には流行前の水準に回復した.【考察】COPD患者において,COVID-19流行下に身体活動性の評価と指導を定期的に行うことで身体活動量の低下を抑制できた可能性がある.
著者
土井 徹 林 武広
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.79-86, 2015 (Released:2020-01-26)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究の目的は,小・中学校理科授業の円滑な接続を検討するための基礎資料を得るために,小・中学生の理科授業に対する認識と要望を明らかにすることにある。小学校6年生(以下,小学生),中学校2年生(以下,中学生)を対象に行ったアンケート調査の結果から,以下のことが明らかになった。① 小・中学校ともに,児童・生徒の情意面に配慮した教師のていねいな指導と問題解決が行われていることが推察される。相違点は,小学校では,一人で考えることと小グループで話し合うことが大切にされ,中学校では,受験への対応,新たな情報の提供,教師の「待つ」姿勢が大切にされている傾向が見られることである。② 理科授業への共通する顕著な要望は,「実験がしたい」である。小学生では発展的な内容への要望,中学生では刺激や面白さを求める要望が目立つ。③ 中学生の多くが理科の授業で困っていることは,学習内容の難しさであり,周りの人と相談させてほしいと思っている。
著者
小林 武
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.52-76, 2010-03

西洋近代的なutility の観念は,19世紀後半に中国や日本に紹介された。「功利」や「利用」「楽利」といった漢語がその訳語にあてられたが,儒教や道家思想が「利」や「功利」の追求を,人間を打算的にし,心の純粋さを汚すと否定的に考えてきたこともあって,「功利」という訳語は,中国では日本と違って普及しなかった。清末においては,「楽利」の語が代わって用いられたが,それでもutility の考え方は,何にとっての利,誰にとっての利なのかという公私観とも関連して,その理解が容易に進まなかった。 このように清末におけるutility観念の受容と理解の問題は,たんに翻訳論に止まらず,中国の倫理思想上の大きな問題に関係していたが,本稿では,この大きなことがらには踏みこまず,次の4点に限って考察したい。 (1)19世紀の漢英字典・英漢字典に見えるutility の訳語 (2) 清末と明治において翻訳紹介されたW.S.ジェヴォンズ(1835 ~ 82)の経済学書に見えるutility の訳語 (3)「功利」という言葉に対する伝統的理解の概略 (4) 李提摩太(ティモシー・リチヤード)(1845 ~ 1919)の著書と梁啓超(1873 ~ 1929)の論文に見られる分業と利の捉え方 要するに,清末における功利観を主として言葉を手がかりに考察し,utility観念の受容と理解の背後に,人間と倫理をめぐる大きな文化的背景のあったことを知ろうとする。
著者
小林 武
出版者
愛知大学法学会
雑誌
愛知大学法学部法經論集 = HOKEI RONSHU (ISSN:09165673)
巻号頁・発行日
no.228, pp.191-208, 2021-09-30
著者
髙橋 司 榊 真智子 管 利大 佐々木 佑佳 小野 愛季 西山 徹 小林 武
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AdPF1007, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 バランスは「質量中心を安定性限界(Limit of Stability: LOS)内に保持する能力」と定義される。また、筋力はバランスの構成要素の一つであるため、筋力低下が生じることでバランス能力が低下する。 バランスに関する先行研究は、立位バランスと姿勢調節筋について述べられているものが多い。主要姿勢筋は、主に安静立位姿勢を保持する役割を担っているが、足圧中心(Center of Pressure: COP)が絶え間なく移動している安静立位では、主要姿勢筋の活動のみでなく、当然足関節背屈筋なども関与している。しかし、足関節背屈筋と立位バランスの関係についての研究報告は主要姿勢筋に比べ数件しかなく、LOSとの関連は報告されていない。 しかしながら、臨床場面では脳卒中や腰椎椎間板ヘルニア、腓骨神経麻痺などによって前脛骨筋(Tibialis Anterior:TA)の筋力発揮が障害される疾患に多く遭遇する。TAの機能不全が立位LOSに与える影響を明確にすることは、臨床場面に有益な情報をもたらすと考える。これらの理由から、本研究はTAの筋力低下が立位LOSに与える影響を明確にすることを目的とした。【方法】 対象は健常男性21名(年齢21.1±1.0歳、身長170.5±5.9cm、体重61.4±6.4kg、BMI 21.1±1.3kg/m2)、対象筋は両側TAとした。測定項目は、徒手筋力計での足関節最大背屈筋力と重心動揺計を用いたクロステストでの足圧中心位置とし、各々TAの筋疲労前後で測定した。筋疲労はクロステスト実施中の筋力回復を考慮し、体重10%の重錘を足背部に負荷して30%以下になるまで背屈運動を行った。クロステストは、閉脚立位にて15秒間の静止立位後、前後左右ランダムにCOPを可能な限り移動させ、その位置を各々10秒間保持させた。疲労前後の平均COP位置を対応のあるt検定を用いて比較・検討した(p<0.05)。【説明と同意】 全被験者に対して実験実施前に本研究の目的・方法について、文書と口頭にて説明し実験参加の同意を得た。【結果】 疲労運動による足関節最大背屈筋力は、疲労前249.2±39.6N、疲労後63.1±27.0Nであり、疲労直後の筋力は疲労前の23.1±5.9%となった。足長と足幅のそれぞれ半分の位置を原点として、x座標は正で右方、負で左方に、そしてy座標は正で前方、負で後方に位置していることを示す。疲労前の静止立位位置は(-1.6±6.0,-12.3±8.3)%。LOSは、前方(-3.9±9.1,43.7±23.3)%、後方(-4.3±7.9,-48.3±23.9)%、右方(38.3±9.3,-10.9±7.2)%、左方(-49.1±9.3,-6.0±10.5)%であった。疲労後の静止立位位置は(-2.7±6.1,-17.2±11.8)%。LOSは、前方(-3.2±6.6,37.3±21.9)%、後方(-5.9±10.5,-38.2±23.9)%、右方(32.5±8.5,-17.9±10.7)%、左方(-38.2±10.6,-16.6±12.2)%であった。疲労前に比べ、疲労後のLOSは、足長・足幅に対して前方:6.9%、後方:10.1%、左方:10.6%、右方:5.8%それぞれ有意に減少した(p<0.05)。 また、疲労後の静止立位時と左右方向での姿勢保持時におけるCOP位置(y座標)は静止立位:4.9%、左方:10.6%、右方:7.0%それぞれ有意に後方へ変位した(p<0.05)。【考察】 TAの筋疲労前後での立位LOSは、疲労前に比べて疲労後は全方向で有意に減少した。また、静止立位時や左右方向での姿勢保持時におけるCOP位置は静止立位、左方、右方、それぞれ有意に後方へ変位した。 COPが前方移動すると母趾側荷重となり、足関節回内位となる。足関節の回内運動は内側縦アーチの降下を引き起こすことになる。後方移動では下腿は後方傾斜し、左右移動では外方傾斜する。 TAは内側縦アーチの保持を担い、閉鎖性運動連鎖では下腿の後方、外方傾斜の制動に関与する。そのため、TAの筋力低下により下腿の後方、外方傾斜の制動作用と内側縦アーチの保持作用の減弱が生じ、LOSが減少したと考える。また、静止立位位置と左右方向のCOP後方変位(y座標)については、足関節戦略での姿勢調節が関係していると考える。静止立位では、ヒラメ筋とTAの持続的な等張性活動によって姿勢を制御している。TAが疲労するとヒラメ筋とTAの筋活動比率が崩れ、TA劣位の姿勢制御となる。そのため、COPの後方変位が生じたと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 臨床場面では脳卒中や腰椎椎間板ヘルニア、腓骨神経麻痺などによってTAの筋力発揮が障害される疾患に多く遭遇する。TAの機能不全が立位LOSに与える影響を明確にすることは、臨床場面に有益な情報をもたらすと考える。
著者
小林 武夫
出版者
国立大学法人 東京大学大学院教育学研究科 大学経営・政策コース
雑誌
大学経営政策研究 (ISSN:21859701)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.207-223, 2022 (Released:2022-05-10)
参考文献数
22

Discussion of private university governance, which is difficult to discern from the outside, is on the rise. The Private Schools Act regulates private universities uniformly regardless of size, but even though such universities range from large-scale institutions with tens of thousands of students to small ones with fewer than a hundred students, nothing is known about the real state of university governance from the perspective of size. However, each year, the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT) conducts a survey on actual conditions in schools targeted at private universities and gathers basic data on governance, but the results of the survey are not made public. This research project made an information disclosure request to MEXT and aggregated and analyzed survey results using data other than non-disclosed individual data items.The research focuses on size and clarifies one aspect of the specific state of governance in highly diverse private universities, looks at decision-making and checks on associated processes, compares the adequacy of such functions by institution size, points out issues in private university governance, and suggests a course for resolving such issues.
著者
長井 真弓 釼明 佳代子 桂 理江子 小野部 純 小林 武
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科
雑誌
東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科紀要 : リハビリテーション科学 = Rehabilitation science : memoirs of the Tohoku Bunka Gakuen University Faculty of Medical Science & Welfare, Department of Rehabilitation (ISSN:13497197)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.33-39, 2022-03-31

2020年度の一般企業による新規卒業者採用は,COVID-19感染拡大の影響を受け,採用時期が例年よりも遅かった.しかし,理学療法学生の就職活動状況に変化があったのかは不明である.そこで,学生の就職活動状況と養成校に届いた求人件数を2019年度と比較した.2019年度と2020年度に東北文化学園大学理学療法学専攻に4年次生として在籍し,アンケートに回答した95名のデータを分析した.2019年度,2020年度ともに95%以上の学生が医療機関から内定を得ていた.2020年度の内定月の最頻値は2019年度よりも1ヶ月遅く,第一希望施設から内定を得た学生割合も2020 年度の方が少なかった.求人件数についても2020年度は,2019年度よりも約80件少なかった.内定時期が1ヶ月遅かったことと第一希望施設から内定を得られなかった学生が多かったことは,緊急事態宣言などの影響により早期に募集定員が満たされたことも原因と推察され,2020年度の就職活動状況は少なからずCOVID-19による影響を受けたと考えられる.
著者
高林 武彦
出版者
素粒子論グループ 素粒子論研究 編集部
雑誌
素粒子論研究 (ISSN:03711838)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.F136-F144, 1991

'観測の問題'と'実在の問題'を含む量子力学の解釈についてはさまざまの立場があるが,以下観測の問題を中心として一つの立場を簡単にのべる。これはかつて筆者が文献1)の中の"観測の「物理的な」理論"の節でのべた所を敷衍・拡充したものである。観測の理論について,牧は「量子力学は確率規則でprescribeされるがこの規則自身を量子力学の他の仮定(重ね合わせの原理と運動方程式)の中から導くことはそもそもできず,ただそれらがconsistentであることを示しうるだけである」とする立場を'立場I'とよび,これを確率規則を量子力学の他の仮定から導き出せるものとする'立場II'に対立させている。このようなわけ方からすると我々は前者をとるのであるが,その場合観測の理論はいかにして理論が全体としてconsistentでありうるかを示す役割をする。ただし一般に量子力学における観測の問題はvariety^<**>とsituation^<***>に富み,かつ〓々informalな部分をのこすので,それらすべてを一様にあつかうことは困難である。さて上で'consistent'といったことは,確率規則を観測されるべき系にあてがった結果がそれを系プラス観測装置にあてがった結果からみちびけるという意味に解する。そして我々は問題を'物理的な'観測の理論という線で追求する。それは状態の収縮,測定の局所性,干渉項の実際上の消滅と状態ベクトルのtruncation,検出器の古典的性格と測定の不可逆性,等々のモチーフに沿って論じることを意味する。ここでとくに検出器の古典的性格の必要性をあげたのは,測定が検出器の古典的レベルにまでもたらされた段階ではそれは単なる読みとりを意味するにすぎず,対象に物理的なdisturbanceを及ぼすものでない点を保証することによって量子力学の確率規則をconsistentに閉じさせるためである。このような検出器の古典的性格は,量子力学が古典的な物体の'実在'を保証せねばならぬということの特殊な場合になっており,この意味で観測の問題は量子力学のもう一つの重要問題である'実在の問題'と結びついているのである。そして一般に後者は,トンネル障壁の介在その他を通じて働く対応原理,重ね合わせの原理を制約するものとしての近似的な超選択則,その働きを中心とする観測の理論自体,等々によって基礎づけられる。ただし以下では実在の問題の面に立ち入ることは割愛した。
著者
高林 武彦
出版者
物性研究・電子版 編集委員会
雑誌
物性論研究 (ISSN:18837808)
巻号頁・発行日
vol.1953, no.66, pp.48-72, 1953 (Released:2009-11-26)
参考文献数
7

The formulation of quantum mechanics in terms of the ensemble in phase space is investigated in some points. The subsidiary conditions for the phase space ensemble to represent a pure state are clarified, and the equivalence between this formulation and the alternative one in terms of quantum potential is verified.
著者
三木 千栄 小野部 純 鈴木 誠 武田 涼子 横塚 美恵子 小林 武 藤澤 宏幸 吉田 忠義 梁川 和也 村上 賢一 鈴木 博人 高橋 純平 西山 徹 高橋 一揮 佐藤 洋一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ed0824, 2012

【はじめに、目的】 本学理学療法学専攻の数名の理学療法士と地域包括支援センター(以下、包括センター)と協力して、包括センターの担当地域での一般高齢者への介護予防事業を2008年度から実施し、2011年度からその事業を当専攻で取り組むことした。2010年度から介護予防教室を開催後、参加した高齢者をグループ化し、自主的に活動を行えるよう支援することを始めた。この取り組みは、この地域の社会資源としての当専攻が、高齢者の介護予防にためのシステムを形成していくことであり、これを活動の目的としている。【方法】 包括センターの担当地域は、1つの中学校区で、その中に3つの小学校区がある。包括センターが予防教室を年20回の開催を予定しているため、10回を1クールとする予防教室を小学校区単位での開催を考え、2010年度には2か所、2011年度に残り1か所を予定し、残り10回を小地域単位で開催を計画した。予防教室の目的を転倒予防とし、隔週に1回(2時間)を計10回、そのうち1回目と9回目は体力測定とした。教室の内容は、ストレッチ体操、筋力トレーニング、サイドスッテプ、ラダーエクササイズである。自主活動しやすいようにストレッチ体操と筋力トレーニングのビデオテープ・DVDディスクを当専攻で作製した。グループが自主活動する場合に、ビデオテープあるいはDVDディスク、ラダーを進呈することとした。2010年度はAとBの小学校区でそれぞれ6月と10月から開催した。また、地域で自主グループの転倒予防のための活動ができるように、2011年3月に介護予防サポーター養成講座(以下、養成講座)を、1回2時間計5回の講座を大学内で開催を計画した。2011年度には、C小学校区で教室を、B小学校区で再度、隔週に1回、計4回(うち1回は体力測定)の教室を6月から開催した。当大学の学園祭時に当専攻の催しで「測るんです」という体力測定を毎年実施しており、各教室に参加した高齢者等にそれをチラシビラで周知し、高齢者等が年1回体力を測定する機会として勧めた。A小学校区内のD町内会で老人クラブ加入者のみ参加できる小地域で、体力測定と1回の運動の計2回を、また、別の小地域で3回の運動のみの教室を計画している。また養成講座を企画する予定である。【倫理的配慮、説明と同意】 予防教室と養成講座では、町内会に開催目的・対象者を記載したチラシビラを回覧し、参加者は自らの希望で申し込み、予防教室・養成講座の開催時に参加者に対して目的等を説明し、同意のうえで参加とした。【結果】 A小学校区での転倒予防教室には平均26名の参加者があり、2010年11月から自主グループとして月2回の活動を開始し、現在も継続している。B小学校区では毎回20名程度の参加者があったが、リーダーとなる人材がいなかったため自主活動はできなかった。2011年度に4回コースで再度教室を実施し、平均36名の参加者があった。教室開始前から複数名の参加者に包括センターが声掛けし、自主活動に向けてリーダーとなることを要請し承諾を得て、2011年8月から月2回の活動を始めた。A・B小学校区ともにビデオあるいはDVDを使用して、運動を実施している。C小学校区では2011年6月から教室を開始し、平均14名の参加者であった。教室の最初の3回までは約18名の参加であったが、その後7名から14名の参加で、毎回参加したのは3名だけで自主活動には至らなかった。2010年度3月に予定していた養成講座は、東日本大震災により開催できなかったが、25名の参加希望者があった。A小学校区内の小地域での1回目の予防教室の参加者は16名であった。大学の学園祭での「測るんです」の体力測定には139名の参加者があり、そのうち数名であるが教室の参加者も来場された。【考察】 事例より、予防教室後に参加者が自主活動するには、活動できる人数の参加者がいること、リーダーとなる人材がいること、自主活動の運営に大きな負担がないことなどの要因があった。自主グループの活動やそれを継続には、2011年3月の地震後、高齢者の体力維持・増進が重要という意識の高まりも影響を及ぼしている。C小学校区の事例で、自主活動できなかった要因を考えるうえで、A・B小学校区と異なる地域特性、地域診断を詳細にする必要性があると考える。リーダーを養成することでC小学校区での高齢者が自主活動できるか検討する必要もある。高齢者の身体状況に合わせて、自主活動できる場所を小学校区単位、小地域単位で検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】 介護予防事業を包括センター、予防事業所などだけが取り組む事業ではなく、理学療法士が地域の社会資源としてそのことに取り組み、さらに介護予防、健康増進、障害、介護に関することなどの地域社会にある課題を住民とともに解決するための地域システムを構築していくことは、現在の社会のなかでは必要であると考える。
著者
原田 勇彦 加我 君孝 水野 正浩 奥野 妙子 飯沼 寿孝 堀口 利之 船井 洋光 井上 憲文 安倍 治彦 大西 信治郎 牛嶋 達次郎 宮川 晃一 伊藤 修 佐久間 信行 北原 伸郎 土田 みね子 飯塚 啓介 小林 武夫 杉本 正弘 佐藤 恒正 岩村 忍 矢野 純 山岨 達也 広田 佳治 仙波 哲雄 横小路 雅文 鈴木 光也
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.380-387, 1994-06-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
15

鼓膜炎, 慢性化膿性中耳炎, 真珠腫性中耳炎の感染時, 中耳術後の再感染症例を対象として, オフロキサシン (OFLX) 耳用液の有用性と耳浴時間に関する臨床的研究を行った。研究参加施設を無作為に2群に分け, 1群では1回6-10滴, 1日2回, 7日間以上の点耳を行い, 毎回点耳後約10分間の耳浴を行うよう, II群では同様の点耳後に2-3分間の耳浴を行うよう患者に指示した。総投与症例は258例で, 全体では83.3%の改善率, 86.7%の菌消失率 (143例中) が得られた。副作用は1例もなく, 全体としては82.9%の有用率であった。統計学的検定により1群とII群の比較を行ったところ, すべての項目で両群間に有意の差はみられなかった。以上の結果から, OFLX耳用液は鼓膜, 中耳の炎症性疾患に対して極めて有用かつ安全なものであり, その点耳後の耳浴時間は2-3分でも十分な効果が得られるものと考えられる。