著者
多久 和真 播元 和貴 白井 康智 森田 大輔
出版者
公益社団法人 日本数学教育学会
雑誌
日本数学教育学会誌 (ISSN:0021471X)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.14-22, 2022-03-01 (Released:2023-04-25)
参考文献数
17

本稿の目的は,批判的に考える態度(批判的思考態度)の伸長を図った統計指導の設計ならびに実践を行い,生徒がどの程度,批判的思考態度の重要性を認識したかを明らかにすることである.教材開発にあたり,「現実の文脈の使用」「『読解の文脈』での活動の重視」「データの提示の方法」という点に留意した.そして,複数のデータの読み取りや,個人の考えを小グループで検討し,他者の考えを聞いた上で改めて個人の考えを再検討するという活動を導入した教材を開発した. 指導実践を通して,データの提示の仕方を工夫することで複数のデータを参照することの重要性が理解され,また,結論を何度も他者と意見交換することで,意見の変容が促され,他者との意見交流の重要性が理解された.そして,本実践を通して多くの生徒が批判的思考態度の重要性を認識したこと,また,批判的思考態度が表出する場面として,「新たなデータの必要性を問う場面」「複数のデータを参照して答えた場面」「最終的な意見を述べる場面」があることが明らかとなった.
著者
森田 裕介
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.71-72, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
4
被引用文献数
1

本稿では,STEM/STEAM教育のカリキュラムを構築するためのひとつの考え方として,探究活動と創造活動を往還するモデルを踏まえ,持続可能な実践のデザインを検討した.探究活動と創造活動の特性を併せ持つモデルとして,大谷(2021)はLearning by Designを挙げている.適切な「問い」と合わせて,初等教育,中等教育,高等教育へと発展的かつ継続的に,探究活動と創造活動をデザインしたカリキュラムの構築に向けて,議論をする必要があろう.
著者
小森田 龍生
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.99-107, 2021-03-23

本稿では、日本における性的少数者(ゲイ・バイセクシュアル男性)のメンタルヘルス悪化のメカニズムを要因間の関連性と、時間の経過に伴う影響力の変化に注目して明らかにすることを目的として実施した調査結果の一部を報告する。調査対象は、日本国内に居住する20~60歳までのゲイ・バイセクシュアル男性、および異性愛男性である(共に学生、および外国籍の者を除く)。調査の実施方法は民間調査会社に登録するアンケートモニターを対象としたインターネット調査である。回収数はゲイ・バイセクシュアル男性1,684件、異性愛男性1,854件であり、データクリーニング後のサンプルサイズはゲイ・バイセクシュアル男性1,668件、異性愛男性1,851件であった。回答者の平均年齢は、ゲイ・バイセクシュアル男性41.69歳、異性愛男性47.26歳であった。メンタルヘルスについて、K6尺度をもちいてたずねた結果、ゲイ・バイセクシュアル男性の平均値は異性愛男性に比べて高く、メンタルヘルスの状態が悪い傾向にあることが確認された。また、メンタルヘルスに影響を与える要因のひとつとして想定しているいじめ・ハラスメント被害経験についてもゲイ・バイセクシュアル男性において経験割合が高く、クロス集計の結果からも2つの変数の関連性が示唆された。
著者
靏巻 峰夫 藤川 滉大 中島 大雅 岡崎 祐介 佐藤 克己 吉田 綾子 森田 弘昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.II_333-II_342, 2020 (Released:2021-03-08)
参考文献数
22

人口減少下に入った我が国では,公共サービスの量と質の維持が,今後,問題となると考えられる.下水道,ごみ処理分野でも同様な状況であり,早急な対策が必要である.下水道直投型ディスポーザー(以下,「DP」)の導入は,可燃ごみの減量化と取り扱いに難がある厨芥類の除外によってごみ処理での効率化が期待できる.一方で,下水道に投入された厨芥類によって下水処理への水質負荷の増大による負の側面がある.本研究ではDP排水の管路内での水質模擬実験のデータに基づき下水処理施設に到達する水質負荷の変化を予測し,その結果を反映した温室効果ガス(以下,「GHG」)排出量予測によって下水処理,可燃ごみ処理の影響を検討した.結果として,DP排水による下水処理での増加に比較して可燃ごみ減量による削減が大きく,直投型DPの導入はGHG排出量削減に寄与することを明らかにした.
著者
髙山 哲志 迫 秀則 安部 由理子 阿部 貴文 森田 雅人 田中 秀幸
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.320-323, 2019-09-15 (Released:2019-10-02)
参考文献数
15

症例は73歳女性.主訴は心窩部不快感とふらつき.前医循環器科にて,重度の大動脈弁閉鎖不全症と僧帽弁閉鎖不全症によるうっ血性心不全と診断され,入院となった.薬物療法に抵抗性で内科的治療では心不全コントロールが困難であり,外科的治療目的で当院紹介入院となった.当院入院後も心不全増悪傾向を示し,緊急で手術を行った.術中所見では大動脈基部-上行大動脈瘤と,右冠尖と無冠尖の間の交連部に離開を認めた.上行大動脈置換術と,Florida sleeve法に準じた大動脈基部置換術および二弁置換術を行い良好な結果を得た.離開部の病理組織検査では粘液腫様変性を認め,交連部離開の原因となった可能性が示唆された.
著者
松本 五十生 落合 勝義 船越 昭治 中村 公一 真野 光雄 森田 貞夫
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.74, pp.1-9, 1991-12-10 (Released:2009-07-31)
参考文献数
6

緑茶の消費向上と嗜好の多様化に対応するため,緑茶にない芳香をもち,苦渋味の少ない新香味茶の製造方法について検討し,図2に示す技術を確立した。(1)萎凋と発酵は煎茶用自動乾燥機を用い,温風温度35~40℃で30分が適当であった(重量減7~10%)。(2)攪拌は中揉機に金網胴をとりつけ,60分処理で好結果が得られた(重量減15%)。(3)静置は生葉コンテナーを用い,室温(27℃)に60分放置した。これにより強い芳香が発揚した。(4)マイクロ波加熱による殺青(ブランチング)は出力4KW,照射時間50秒,重量減45~50%が良好であった。(5)整形及び乾燥は揉捻機,再乾機,乾燥機を用い,揉捻15分,再乾と乾燥はともに60℃の排気温で,それぞれ40分が好適であった。(6)仕上げは火入れを行って青臭みを除き,9号で切断し,10号の篩目で仕分け,整形した(平均粒度1.27mm)。(7)一般消費者に対して,代表的試製茶の嗜好調査を実施したところ,46%の人が好き,やや好きと答えており,市販された場合購買嗜好も高く明るい見通しを得た。
著者
福山 佑樹 森田 裕介
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.365-374, 2014-02-20 (Released:2016-08-10)
被引用文献数
1

社会的ジレンマにおいて協力行動を取ろうとする「道徳意識」を獲得するためのカードゲーム教材である「The irreplaceable Gift」を開発した.ゲームは,参加者にこれまでのゲームでは体験できなかった「社会的ジレンマによる悪影響の時間的遅れ」を体験させ,協力行動を取ろうとする道徳意識を獲得することができるようにデザインされた.「The irreplaceable Gift」を用いた実験群と,「時間的遅れ」の要素を除いたゲームを用いた統制群との比較実験の結果,本ゲームの参加者は「道徳意識」を獲得しており,その獲得はゲーム終了時のリフレクションを通して「未来への世代」への影響を参加者が判断した結果によることが示唆された.
著者
野村 亮太 石田 聖子 福島 裕人 森田 亜矢子 松阪 崇久 白井 真理子
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.111-114, 2022 (Released:2023-02-27)

笑いに関する研究は世界中でおこなわれています。本欄では、英語で発表された笑い学の最近の研究成果を紹介しています。笑いに関する研究は、医学、心理学、社会学、哲学、文学、言語学、動物行動学など、多様な学問領域の専門雑誌に掲載されています。幅広い分野で展開されている世界の研究動向について共有することで、国内での笑い学の研究がさらに発展することにつながればと考えています。 本号では計6本の研究論文についての紹介記事を掲載することになりました。記事の執筆には、6名の研究者にご協力いただきました。どうもありがとうございました。
著者
簑下 成子 佐藤 親次 森田 展彰 中村 俊規 松崎 一葉 菊地 正 小田 晋
出版者
Japan Human Factors and Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.79-86, 1997-04-15 (Released:2010-03-12)
参考文献数
41
被引用文献数
5 6

本研究は精神障害者の表情認知特性を明らかにするためのテストツールを開発することを目的とする. 対人感情を含んだ微妙な感情を表現し, 同時に信頼性のある実験モデルとして有効と思われる能面を表情刺激画像として用いた. まず, 31名の被験者に, いろいろな向きの能面画像18枚のスライド写真を呈示し, その表情が表していると思われる感情について自由記述させた. 得られた感情表現をもとにして, 39の感情表現を尺度として抽出した. 次に, 被験者26名に, 得られた感情表現を尺度として, 能面を上下方向に変化させた8枚のスライド写真について, 4段階評定させた. 因子分析の結果, 能面の角度を変化させることによって表情認知の測定ができることが明らかになり, 能面から知覚される感情は8因子からなることが明らかになつた.
著者
山田 拓実 竹内 萌恵 成澤 拓実 福島 渓太 塩崎 洸 高橋 哲也 深谷 麻衣 森田 洋史 樋野 公宏
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画報告集 (ISSN:24364460)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.486-491, 2023-03-10 (Released:2023-03-10)
参考文献数
14

本研究は日本の9都市における、都市計画関連政策を1000 Cities Challengeの指標を用いて身体活動促進の観点から試行的に評価して、各都市の政策の現状を示すことを目的とする。結果として、身体活動促進につながる政策も散見されるが、文面を見る限りでは必ずしも身体活動促進を意識していると判断できない政策も多かった。指標別に見ると、自転車・歩行者インフラの整備についてはすべての市が、雇用分布や街路接続については、どの市も身体活動促進を意識した政策を持たなかった。
著者
森田 光宏 内田 諭 高橋 有加
出版者
The Japan Society of English Language Education
雑誌
全国英語教育学会紀要 (ISSN:13448560)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.129-143, 2019-03-31 (Released:2020-04-01)
参考文献数
35

Morphological knowledge is essential for expanding vocabulary. Considering that textbooks are the main source of English-language exposure for leamers in Japan, it is important to know to what degree these leamers are exposed to affixes and affixed words therein. This study aims to show the number of types of affixes and affixed words contained in Japanese junior high school textbooks. By adding more affixes and allophones than previous studies, the results of this study indicated that both the types and tokens of prefixes and suffixes in the textbooks are limited, thus suggesting that textbooks alone may not be sufficient, and that other materials and/or explicit instructions are needed to improve learners' morphological knowledge. Junior high school English teachers may utilize the information provided by this study to decide which affixes should be used for explicit instruction. Some implications for teaching affixes are discussed.
著者
森田 譲 前田 保憲 日隈 崇文
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.262-270, 2004-06-15 (Released:2017-05-29)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

本論文では、ニューラルネットワークを利用し、倒立振子制御におけるPIDゲインのセルフチューニングを行い、評価関数の最小となるPIDゲインが存在することを明らかにした。実システムの制御対象として無駄時間を含む1重倒立振子を考える。この制御系は1入力2出力系を構成し、台車、倒立振子および角度補償器と位置補償器を含めた系を伝達関数で表し、これに時系列処理を行いニューラルネットワークで同定する。このニューロエミュレータはPIDゲインをチューニングする際に必要なシステムヤコビアンを計算するときに用いる。つぎに実システムモデルに対して、別のニューラルネットワークを用いて、倒立しているが不安定なPIDゲインの初期値からセルフチューニングを開始する。この結果チューニングで得られたPIDゲインを用いて実験を行い、測定された振子の角度および台車の位置の情報とも整定時聞か短くなり、かつシミュレーション結果とよく一致することを示した。
著者
森田 邦正 松枝 隆彦 飯田 隆雄
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
衛生化学 (ISSN:0013273X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.42-47, 1997-02-28 (Released:2008-05-30)
参考文献数
27
被引用文献数
4 5

The present paper presents the liver distribution and fecal excretion of polychlorinated dibenzo-p-dioxins (PCDDs) congeners, such as 1, 2, 3, 7, 8-P5CDD, 1, 2, 3, 6, 7, 8-H6CDD, 1, 2, 3, 7, 8, 9-H6CDD and 1, 2, 3, 4, 6, 7, 8-H7CDD, in male rats fed with Chlorella, Spirulina and chlorophyllin. The objective of this study is to evaluate the effect on PCDD excretion by the chlorophyllin foods. The rats were given some treatment diets containing 20% Chlorella. 20% Spirulina, 0.2, 2% chlorophyllin, 10% rice-bran fiber or 0.2% chlorophyllin + 10% rice-bran fiber for 5 d. Then, the animals were administered 4 g of each diet containing 0.5 ml of the causal rice-bran oil of Yusho that had occurred in the Southwest part of Japan in 1968 and kept on the same diet for another 5 d. The rice-bran oil contaminated with 1, 2, 3, 7, 8-P5CDD (6.86 ng/ml), 1, 2, 3, 6, 7, 8-H6CDD (31.4 ng/ml), 1, 2, 3, 7, 8, 9-H6CDD (22.4 ng/ml) and 1, 2, 3, 4, 6, 7, 8-H7CDD (121.7 ng/ml) was used for the animal experiments. PCDD congeners in the feces and liver were analyzed by high resolution gas chromatography-mass spectrometry. The fecal excretion of 1, 2, 3, 7, 8-P5CDD in the groups fed with Chlorella, Spirulina and 2% chlorophyllin were 7.4, 7.1 and 11.0 times higher (p<0.01), respectively, than that in the control group. Moreover, the fecal excretion of 1, 2, 3, 6, 7, 8-H6CDD, 1, 2, 3, 7, 8, 9-H6CDD and 1, 2, 3, 4, 6, 7, 8-H7CDD in the same groups were 4.4-5.3, 2.7-3.7 and 1.7-2.8 times higher, respectively, than that in the control group. These findings suggest that administration of Chlorella, Spirulina and chlorophyllin is useful as a new approach in the treatment of patients exposed to lipophilic xenobiotics.
著者
中田 潮雄 森田 大
出版者
日本建築仕上学会
雑誌
日本建築仕上学会論文報告集 (ISSN:13437739)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.15-21, 1998-03-10 (Released:2020-06-05)

In order to evaluate the suitable types of stainless steels for building materials in marine environment, structural simulations and exposure experiments using a test house have been performed. The experimental results show that the degrees of rusting in SUS304 and SUS316 are similar and that stainless steels whose pitting index (i.e.,[Cr]+3[Mo]+16[N]) isequal to 35 or more are required for restraint of rusting. The amount of sea salt deposit are also investigated in this work. It is shown that the sea salt deposit to roofs is ranging from 0.1 to 0.2 mg/dm^2 in C1-ions, regardless of the distance from sea, while the deposit to eaves is increasing up to apporximately 6 mg/dm^2 in C1-ion with approaching sea.
著者
森田 亜紀 早川 文代 大田原 美保
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-22-00084, (Released:2023-02-17)

ベーカリー製品に特化した分析型パネルを評価者として,ベーカリー製品9品目の官能評価の設計や品質情報の伝達の際に参照できるテクスチャー用語体系を構築する一助となる調査と解析を行い,以下の結果を得た.(1)ベーカリー製品9品目のテクスチャー描写に使われる用語のデータを得ることができ,そのうち69語が「ベーカリー製品の主要なテクスチャー用語」と位置付けられた.(2)ベーカリー製品と用語を集計し主成分分析を適用したところ,ベーカリー製品のテクスチャーは、「かたさに関連するテクスチャー」,「空気を含んだやわらかさに関連するテクスチャー」に加え,「油脂由来のテクスチャー」や「咀嚼中に口腔内で感じる水分に関連するテクスチャー」が重要であると解釈できた.(3)官能評価の設定や情報伝達に利用できるデータベースが作成でき,ベーカリー製品毎の代表的なテクスチャー用語とその語彙特徴が明らかとなった.