6 0 0 0 OA 李義山詩講義

著者
森槐南 著
出版者
文会堂書店
巻号頁・発行日
vol.上巻, 1917
著者
森 敏昭
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.57-61, 1980
被引用文献数
3

文章を黙読した場合と音読した場合とでは, 文章の記憶及び読解の成績にどのような違いが生じるかという問題を, 大学生を被験者として検討した。その結果, 音読することは, 文章を逐語的に記憶する場合には有効であるが, その効果は一時的であることがわかった。これに対し, 黙読することは, 文章を逐語的に記憶するというよりも, 文章の内容を体制化して記憶する場合に有効であり, その効果は音読の場合よりも永続的であることがわかった。<BR>一方, 黙読するか音読するかということによって, 読解の成績には顕著な差はみられなかった。このことは, 黙読するか音読するかという事が読解と無関係であるというより, 読解テストのやり方自体に方法上の改善をほどこす必要があるということを示唆するものと考えられる。
著者
森本 公誠
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.85-110,204, 1976 (Released:2010-03-12)

One of the most important institutions characterizing the early Caliphate was the system of diwan set up by 'Umar I. It had two aspects, i. e., one as a system of collecting taxes from the conquered peoples, and the other as that of distributing them, as pensions, to the Arabs. The latter is noteworthy because this system had influence not only on the Arab community but on the political, military and judical institutions in the Arab empire. In spite of this importance of the system, only the diwan of Medina established by 'Umar I has by now been examined and introduced to the scholarly world, no studies of those of the garrison towns (amsar) being available, except the case of Basra. Thus, the purpose of this paper is to shed light on the contents of diwiins which functioned as Arab rosters in Egypt, clarifying that they form the basic material of studies of the system of registration and pensions in the early Islamic Period. The first diwan of Egypt, including the names of 12, 300 to 15, 000 fighting men, was drawn up in A. H. 21, immediately after the Conquest. It is perceptible that three principles were adopted on the occasion of the registration: (1) to preserve the existing tribal groups as much as possible, (2) to reorganize tribes so that each group consists of a definite number of persons, and (3) to treat preferentially persons who contributed toward the expansion of Islam. As regards the second diwan drawn up by the governor 'Abd al-`Aziz b. Marwan, we have an important Greek papyrus from which we can infer the content of the diwan. This papyrus raises and answers many historical problems. For instance, the conclusion may be derived that unlike the common opinion of scholars, the use of Greek as official language before A. H. 87, when the Arab authority abolished it, was not restricted to the financial operations, but adopted for the registration of Arabs and the payment of pensions to them. Even if we admit that once the first diwan was drawn up in Arabic, it will not affect the above said conclusion.
著者
藤井 廉 今井 亮太 西 祐樹 田中 慎一郎 佐藤 剛介 森岡 周
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11694, (Released:2020-08-06)
参考文献数
36

【目的】運動恐怖を有する腰痛有訴者における重量物持ち上げ動作時の体幹の運動障害の特徴を明らかにすることである。【方法】腰痛がある労働者(以下,腰痛群)26 名と腰痛がない労働者(以下,非腰痛群)18 名が参加した。課題は重量物持ち上げ動作を5 回行い,動作時の体幹屈曲・伸展角速度および運動時間を計測した。運動恐怖の指標であるTSK を基に,腰痛群を低恐怖群(12 名)と高恐怖群(14 名)に群分けし,3 群間における体幹角速度,運動時間の比較および痛み関連因子との関係性を分析した。【結果】高恐怖群は非腰痛群,低恐怖群と比較して,1 試行目の体幹の伸展運動に要する時間に有意な延長と,体幹伸展角速度に有意な低下を認めた。腰痛群における1 試行目の体幹伸展角速度と運動恐怖に有意な正の相関を認めた。【結論】運動恐怖を有する腰痛有訴者は,重量物を挙上する際の体幹伸展方向への運動速度が低下することが明らかとなった。
著者
清水 忠 上田 昌宏 大森 志保
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.2017-021, 2018 (Released:2018-08-24)
参考文献数
13

近年,Evidence-based Medicine(EBM)の実践が薬学教育においても取り入れられるようになっている.今回我々は,薬学部3年次学生に対して実施した,講義および演習を組み合わせた授業方略について,学習効果の確認と改善点の抽出を行った.授業は,臨床疑問の定式化,医学論文の吟味,患者への適用,文献検索の順に行った.学習効果の評価は,8週目授業開始前のプレテスト,医学論文の吟味と適用まで終了した12週目の授業後に実施したポストテスト(19点満点)の結果を比較した.さらに,授業内容に対する受講生からの評価も行った.その結果,ポストテストの得点は有意に向上した(pre: 1.72 ± 1.89, post: 11.38 ± 4.16).本授業形態により受講生が受講後にEBMの概念や論文の吟味ポイントについての基本的知識を得ることはできたと考えられるが,受講生がエビデンスを活用して実践する能力を身につけたかについては,適切に評価できておらず,学習方略および評価方法を改善する必要がある.
著者
稲野 利美 山口 貞子 千歳 はるか 梅沢 亜由子 長橋 拓 岡垣 雅美 青山 高 森 直治 東口 髙志 大前 勝弘 盛 啓太 内藤 立暁 高山 浩一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.71-80, 2020 (Released:2020-04-21)
参考文献数
56

【目的】本研究の目的は,進行がんを有する高齢者に対する集学的介入(NEXTAC-ONEプログラム)の栄養介入について詳細を示し,その忍容性を評価することである.【方法】初回化学療法を開始する70歳以上の進行非小細胞肺がんおよび膵がんを対象とし,8週間に3回の栄養介入を行った.標準的な栄養指導に加え,摂食に影響する症状,食に関する苦悩,食環境の問題への対処法を含めたカウンセリングを行い,分枝鎖アミノ酸含有の栄養補助食品を処方した.【結果】計30名の試験登録者のうち29名(96%)が予定されたすべての介入に参加し,遵守率については日記記載率90%,栄養補助食品摂取率99%であった.また治療期間中に栄養状態の悪化を認めなかった.【結論】悪液質リスクの高い高齢進行がん患者において,われわれの栄養介入プログラムは高い参加率と遵守率を有し,化学療法中の栄養状態の維持に寄与した可能性が示唆された.
著者
辻森 樹 石渡 明 坂野 昇平
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.5, pp.353-362, 2000-05-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
35
被引用文献数
28 34

蓮華変成帯, 新潟県青海町上路(あげろ)地区湯ノ谷にエクロジャイト質藍閃石片岩が産する.この岩石は主として藍閃石(37%), ざくろ石(21%), オンファス輝石(19%), 緑れん石(19%)と少量の石英, 曹長石, フェンジャイト, 緑泥石, ルチル, チタン石から構成される.エクロジャイト相鉱物組み合わせ 'ざくろ石+オンファス輝石+藍閃石+緑れん石+石英+ルチル' はマトリクスの片理(S1)を構成し, わずかに二次的な緑泥石, 曹長石, 方解石に置換され, S1片理形成以前の緑れん石青色片岩相の鉱物組み合わせ '藍閃石+緑れん石+チタン石+石英+曹長石' の包有物列(S0)がざくろ石のコアに観察される.蓮華変成帯では, これまでにも残存エクロジャイト相鉱物の報告はあったが, 今回, 岩石組織と鉱物化学組成・累帯構造から, 初めて, 緑れん石青色片岩相からエクロジャイト相への累進変成作用を読みとることができた.
著者
小林 道彦 森 靖夫 瀧井 一博 西田 敏宏 奈良岡 聰智 松本 浩延
出版者
北九州市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、山県有朋および山県系官僚閥に関する内外史料の収集と整理・分析を通じて、新版『山県有朋意見書』を編集・公刊し、「日本の近代」の再検討を行おうとするものである。底本には大山梓編『山県有朋意見書』(原書房、1966年刊行、以下「大山本」と略称)を用いる。大山本は日本近代史研究などの学問分野における最も基本的な「データベース」として、長年多くの研究者に利用され、多大なる学問的恩恵をもたらしてきた。本研究は爾後半世紀あまりにわたって関係諸機関によって、収集・公開されてきた史料を中心に、新たな史料の探索にも注力しつつ、それらを整理・統合した新版『山県有朋意見書』を公刊することを目的とするものである。2年度目にあたる本年度は、研究実施計画に沿って着実に研究実績を積み重ねることができた。その概要は以下の通りである。①大山本に掲載されている意見書の典拠確認・史料原本の複写作業はほぼ完了した。ただし、10点あまりは典拠不明である。②『公爵山県有朋伝』『明治天皇紀』『明治天皇御伝記史料・明治軍事史』『陸軍省沿革史』等の刊本からの、関連箇所の複写とデータ入力作業は完了した。上記作業に関しては、松本浩延(同志社大学法学研究科博士後期課程)、徳重伸(同博士前期課程)、井本莞司(同博士前期課程)を研究協力者として作業を行った。③前年度に引き続き、大山本に収録されていない意見書の探索を、国立国会図書館憲政資料室、防衛省防衛研究所図書館、国立公文書館、奥州市立後藤新平記念館、憲政記念館、山口県文書館などで進めており、43点あまりの未刊行の新出意見書を見つけ出すことができた。また、海外での史料調査も適宜実施した。④以上の史料リストを全部統合した「統合リスト」を作成し、それを元に出版社(千倉書房)との出版交渉を行った。
著者
末森 明夫 高橋 和夫
出版者
学習院大学人文科学研究所
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.14, pp.137-148, 2015

「高宗諒陰三年不言」論争は服喪説と非服喪説が主流を占めてきたものの、非服喪説においても疾病説は等閑に付されてきた。本稿では障害学的視座に立脚し、疾病説(言語障害・聴覚障害)の再検証をおこなうと共に、文献に見られる「作書」という文脈に意志疎通手段における障害学的見解を照射し、「三年不言」という文脈の解釈における外延を図った。本稿の眼目は疾病説の妥当性の主張にはなく、疾病説が論争の傍流に甘んじてきた背景を障害学的視座に立脚して再検証し、論争の主流を占めてきた訓詁学と疾病説の派生的連続性を前景化し、古代中国文献学や古代中国福祉体系の探求に資することにある。 There has been controversy about the word "ryôin (諒陰)" and the sentence "Kôsô did not speak for three years( 高宗三年不言)" in a Chinese historical passage, as many hold the opinion that Kôsô had been mourning or deliberating apolitically; however, another opinion has been neglected, namely, that Kôsô was only temporarily mute. We therefore re-examined thise controversial issue from the viewpoints of speech impairment and/or hearing impairment based on disability studies, suggesting the derivative continuity between the opinions based on disability studies and exegetics of the passage, and contributing studies on welfare in ancient Chinese society.
著者
塚田 森生
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.90, no.5, pp.348-355, 2008 (Released:2009-01-20)
参考文献数
55
被引用文献数
1

シカの個体群密度が数百年にわたって高密度で維持されている奈良公園では,植生の単純化によりカメムシ目の植食性昆虫トサカグンバイの寄主植物が事実上アセビしかない。このため,通常はアセビおよびネジキの2種の寄主植物間で季節的な寄主転換を行う本種が,奈良公園では寄主転換を行わない。長期間にわたるこのような生活環の違いがどのような遺伝的な変化をもたらしているのかを実験的に調べた。同じ条件下で羽化させた場合でも,寄主転換する京都個体群の個体は奈良個体群の個体より産卵数が少ない傾向があった。どちらの個体群の虫にとっても,ネジキはアセビよりもはるかに多い産卵数を達成できる質の良い寄主であったが,通常ネジキを利用している京都の虫にこの傾向がやや強かった。同じ条件で飼育したあとでも,京都の虫は奈良の虫と比較して,ネジキを強く選好する傾向がみられた。寄主転換を行う場合,特に寄主間の移動を行う世代で相対的な翅長が長くなることから,産卵数の減少はそれにともなうコストと考えられた。

6 0 0 0 OA 交隣須知

著者
雨森芳洲 (東) 著
出版者
白石直道
巻号頁・発行日
vol.元, 1883
著者
南 基泰 森 高子 米村 惣太郎
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.360-364, 2018-11-30 (Released:2019-05-14)
参考文献数
13
被引用文献数
1

横浜市においてイロハモミジ(Acer palmatum),ヤブツバキ(Camellia japonica)及びヤマザクラ(Cerasus jamasakura)を用いた地域性に配慮した緑化工を実施するために,葉緑体DNA情報を利用した地域性判定技術の開発を行った。地域性判定に用いる葉緑体DNA領域を検索するために,これら3樹種の新鮮葉(もしくは越冬芽)を東北から南九州の地域で網羅的に採集し,葉緑体DNAの遺伝子間領域及びイントロンの合計16領域のDNA多型を検索した。その結果,横浜市の地域性を判定できるDNA領域として,イロハモミジはtrnV-trnM遺伝子間領域,ヤブツバキはtrnT-trnL遺伝子間領域,ヤマザクラはtrnH-trnK遺伝子間領域を見出した。関東地区の種苗会社で育成されている地域性が不明なこれら3樹種の苗木から,本技術を用いて横浜市の地域性に適合した苗木を選抜し,外構植栽に用いることができた。また,本技術は3樹種の横浜市だけでなく,東北から南九州の地域性も判定することが可能な技術であることから,今後はこれら3樹種の地域性判定への応用にも期待できると考えられた。
著者
木野 佳音 阿部 彩子 大石 龍太 齋藤 冬樹 吉森 正和
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

大気中二酸化炭素濃度の増加に伴う地球温暖化が特に極域で大きく現れることは極域気温増幅としてよく知られており、南半球高緯度においては、気候モデルを用いた研究によって温暖化要因の分析がされている (Lu and Cai, 2009)。また、南極氷床コアを用いた最新の研究では、地球の軌道要素である地軸の傾きや離心率の周期変動と現地気温の変動について、詳細な位相関係の議論が行われている (Uemura et al., 2018)。そこで、本研究では気候モデルMIROCを用いて、地球軌道要素が変化したときの南半球高緯度温暖化がどのようになるか大気中二酸化炭素濃度増加の場合と比較を行い、気候フィードバックの違いを調べた。大気大循環モデルに海洋混合層モデルを結合したMIROC(Hasumi and Emori, 2004)を用いて、地軸の傾きを過去にあり得る最大値とした実験、離心率を過去にあり得る最大値でかつ近日点に冬至がくるとした実験を行い、南半球高緯度の気候変化を解析した。さらに、地表面での放射収支解析 (Lu and Cai, 2009) を行った。結果として、南極氷床が存在する南極大陸上の温暖化は、地球軌道要素が変化する場合、日射が雲に遮られない晴天域の短波放射の変化によって主に決められていた。このことは、長波放射による強い加熱が温暖化をもたらす大気中二酸化炭素濃度増加の場合と対照的だった。また、南大洋上の温暖化の定性的な季節性は、放射強制力にかかわらず共通していて、夏にほとんど温暖化がみられず、秋から冬にかけて強い温暖化がみられた。放射収支解析から、この季節性をもたらす要因は、北半球高緯度の場合と共通しており、夏に海洋に吸収されたエネルギーが 冬に大気へ放出されることであるとわかった。また、定量的には、秋から冬の温暖化の強度が異なった。これには、特に春から初夏にかけての放射強制力の違いが海氷融解に与える影響が、重要であることがわかった。今後は、大気循環や降水分布の解析も行っていく。また、海洋大循環も考慮したモデルの結果も解析する予定である。
著者
森 一郎
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大学紀要論集 (ISSN:04934350)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-23, 1996-09

The significance of Heidegger's philosophy might be evaluated in terms of the "ontological turn" he gave to the phenomenological movement. In this essay, I attempt to show that this conversion as performed by Heidegger, is a repetition of another "great event" in philosophical history-Marx's reversal of dialectical thinking. In his famous essay "The Question Concerning Technique," Heidegger inquires in the essence of modern technique. According to his etymology, the word "technique" (tekhne), like the word "production" (poiesis), originally meant a mode of revealing (aletheuein). From such a aletheological point of view, Heidegger interprets the specific mode of modern technique as "Herausfordern" (challenging), by means of which anything on earth can become "Bestand" (stock). The claimant of this requisition is no longer an individual man, but some impersonal system of accumulation. Heidegger names this system the "Gestell" (gatheringsetting). When examined closely, the term "Herausfordern" is found to be equivalent to the key Marxian concept "Ausbeuten" (exploitation). Moreover, "Gestell" proves to be just another name for the monstrous master of the modern age, Capitalism. It is not accidental that we also encounter a question concerning technique in Marx's Capital. The subject of this book is "the capitalistic mode of production," so that Marx examines essentially the same modern technique, to which capitalism owes the development of its productive force. Guided by Marx's critique of the "economy of time," we can attain insight into the problems of the "technology of time." That is why Capital is still one of the most important philosophical approaches to the essence of technology.
著者
西山 美樹 江崎 秀男 森 久美子 山本 晃司 加藤 丈雄 中村 好志
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.480-489, 2013-09-15 (Released:2013-10-31)
参考文献数
25
被引用文献数
1

豆乳は栄養価に優れ,イソフラボン類などの機能性成分を含むが,その消費量は多くない.本研究では,豆乳の用途拡大および保健機能性の向上を目指して,豆乳から乳酸発酵豆乳,さらには豆乳チーズを試作するとともに,これらの抗酸化性の評価および主要成分の分析を行った.11菌株の乳酸菌で豆乳を発酵させたところ,9菌株において凝固が認められた.イソフラボン分析の結果,Lactobacillus plantarumおよびLactobacillus casei を用いた乳酸発酵豆乳では,豆乳中のグルコシル配糖体であるダイジンおよびゲニスチンは効率よく分解され,それぞれダイゼインおよびゲニステインを生成した.しかし,いずれの乳酸菌においてもマロニル配糖体は分解されなかった.Lb. casei MAFF 401404を用いた乳酸発酵豆乳は,滑らかなプレーンヨーグルト状に凝固し,官能評価においても高得点を収めた.この発酵豆乳よりカードを調製し,カマンベールチーズカビ(Penicillium camemberti NBRC 32215)およびロックフォールチーズカビ(Penicillium roqueforti NBRC 4622)を用いて豆乳チーズを調製した.いずれのチーズカビを用いた場合も,発酵·熟成にともない,ホルモール態窒素量および旨みを呈するグルタミン酸含量が顕著に増加した.また,官能評価においても高得点を得た.DPPH法による抗酸化試験の結果,豆乳チーズの抗酸化活性も発酵·熟成中に有意に(p<0.01)上昇し,カードの2~3倍に増大した.また,豆乳の乳酸発酵時には残存していたマロニル配糖体も,これらのチーズカビによって分解され,体内吸収性に優れたアグリコンに変換された.これらの結果より,この豆乳を用いたチーズ様食品は,将来,高付加価値をもつ新規食品として受け入れられる可能性が示唆される.