著者
森 俊夫
出版者
京都文教大学
雑誌
人間学研究
巻号頁・発行日
vol.7, pp.89-101, 2006

欧米の1940年代から60年代にかけてのファインアートの分野では、作品を構成する諸要素の中で、純粋な造形性を追求することに重点が置かれてきた。その後、様々な動向を経て、1980年代以降は、物語性やメタファーなど言説性が重視される傾向にある。これはポスト・モダニズムの諸相と考えられている事柄とも一致している。この論文では、英国の現代アート作品における物語性を分析した上で、その特徴について考察をしている。
著者
古村 和恵 宮下 光令 木澤 義之 川越 正平 秋月 伸哉 山岸 暁美 的場 元弘 鈴木 聡 木下 寛也 白髭 豊 森田 達也 江口 研二
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.237-245, 2011 (Released:2011-11-16)
参考文献数
13
被引用文献数
3 4

より良い緩和ケアを提供するために, がん患者やその家族の意見を収集することは重要である. 本研究の目的は, 「緩和ケア普及のための地域プロジェクト」(OPTIM)の介入前に行われた, 進行がん患者と遺族を対象とした質問紙調査で得られた自由記述欄の内容を分析し, がん治療と緩和ケアに対する要望と良かった点を収集・分類することである. 全国4地域の進行がん患者1,493名, 遺族1,658名に調査票を送付し, 回収した調査票のうち, 自由記述欄に回答のあったがん患者271名, 遺族550名を対象とした. 本研究の結果から, がん患者と遺族は, 患者・医療者間のコミュニケーションの充実, 苦痛緩和の質の向上, 療養に関わる経済的負担の軽減, 緩和ケアに関する啓発活動の増加, 病院内外の連携システムの改善, などの要望を持っていることが明らかとなった. Palliat Care Res 2011; 6(2): 237-245
著者
古村 和恵 森田 達也 赤澤 輝和 三條 真紀子 恒藤 暁 志真 泰夫
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.142-148, 2012 (Released:2012-04-26)
参考文献数
20
被引用文献数
3 1

終末期がん患者はしばしば家族や医療者に対する負担感(self-perceived burden)を経験するといわれている. 負担感を和らげるためのケアが必要とされる一方で, どのようなケアが望ましいかを実証した研究はほとんどない. 本研究では, 終末期がん患者の感じている負担感の実態と, 患者の負担感を和らげるために必要なケアを調査するために, 28名のがん患者の遺族を対象に半構造化面接を行った. 内容分析の結果, 「がん患者の負担感の内容」(例: 下の世話をしてもらうのがつらい), 「がん患者が行っていた負担感に対するコーピング」(例: 家族の仕事や予定を優先するようにいう), 「家族の気持ちと対応」(例: 患者の遠慮は家族への思いやりの表れだと思った), 「患者の負担感に対して必要なケア」(例: ことさら何かを強調するのではなく, 自然な言葉がけをする)が抽出された. 収集された患者の負担感を和らげるためのケアの有用性の評価が今後の重要な課題である.
著者
松河 秀哉 北村 智 永盛 祐介 久松 慎一 山内 祐平 中野 真依 金森 保智 宮下 直子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.307-316, 2007
被引用文献数
4

本研究では,高校生から得られたデータに基づいて,データマイニングを活用した学習方略フィードバックシステム「学習ナビ」を開発した.システムの試験運用をふまえ,(a)モデルの妥当性(b)学習ナビで利用したメタファの有効性(c)ユーザからの主観的評価の観点から評価を行い,以下の結果を得た.(a)モデルが仮定する学力差が評価モニタにもみられ,モデルの妥当性が示唆された.(b)学習方略の達成度を表す信号機メタファについて,解説画面の閲覧時間の差から有効性が確認された.学習方略の順序性を表す一本道メタファは,評価モニタの約半数の理解を得た.(c)一部のユーザからアニメーションの長さを指摘された以外は,システム全体として好意的な評価を得た.
著者
相浦 沙織 氏森 英亞
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.131-145, 2007
被引用文献数
1

発達障害児をもつ母親は,診断が確定しにくい点から,母親は子どもが障害を持っているかどうかの疑いの時期が長く,障害の肯定・否定の葛藤を繰り返すといわれる(中田,1995)。葛藤を起こしている状態は,心理的に危機的な状態だといえ,障害の疑いの時期から診断名がつくまでの時期における母親を対象とした事例を中心に調査研究を行うこととした。その結果,障害の疑いから診断までの時期が平均して,2年1ヶ月の期間を要しており,先行研究と同様に,診断までの期間が長いことが発達障害児の特徴であることが明らかになった。この期間に対象者全員が,障害があるかどうかの葛藤や不安を感じており,つらかった時期であった。また,10人中8人の母親は,子どもを養育する中で最もつらかった時期としてこの時期をあげた。このような疑いから診断までの時期で,母親の心理的過程に影響を与えたものは,特に,夫からの心理的サポート,同じ悩みをもつ母親同士のピアサポート,専門機関や病院からの実際的サポートであった。以上より,臨床家によって夫への子育ての参加を促す場,同じ悩みを持つ母親同士のピアサポートが得られる場,専門機関や病院につなげるサポートなどの提供が必要であると考察された。
著者
上原 真人 吉井 秀夫 森下 章司 阪口 英毅
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、古墳とその副葬品の検討を通して、古墳時代前期における対外交渉の具体的な様相とその歴史的意義を明らかにすることを目的とした。具体的には、中国や朝鮮半島と関係が深い副葬品が発掘され、古墳時代前期を代表する前方後円墳として知られている、大阪府茨木市所在の紫金山古墳を主たる研究対象としてとりあげることにした。まず、紫金山古墳の墳丘規模と構造を明らかにするために、墳丘の測量調査と発掘調査をおこなった。その結果、墳丘の全長は約110mであり、前方部と後円部はそれぞれ2つの平坦面と3つの斜面からなり、斜面には葺石が葺かれていたことが明らかになった。また、出土した埴輪の検討によって、紫金山古墳の築造時期が古墳時代前期中葉でも新しい段階に当たると推定することができた。さらに、北側くびれ部から出土した翼形の鰭がつく円筒埴輪は、大阪府松岳山古墳で出土した鰭付楕円筒埴輪と形状が類似しており、古墳時代前期における地域間関係を明らかにするための新たな手がかりを提供した。次に、1947年に発掘調査された、後円部竪穴式石槨から出土した遺物の整理作業をおこなった。まず、全ての遺物の実測と写真撮影をおこない、出土遺物の全容を明らかにした。次に、出土鉄製品に付着した有機物の材質、竪穴式石槨内の赤色顔料の成分、出土石製品石材の産地について、自然科学的な分析・検討をおこなった。さらに、鉄鎌・甲冑・又鍬・銅鏡・筒形銅器・腕輪形石製品・貝輪についての考察を進め、当時の対外交渉や地域間関係の様相を明らかにするための新たな知見をえた。本研究により、紫金山古墳が、古墳時代前期の対外交渉を考古学的に研究する上で重要な古墳であることを明らかにすることができた。今回の研究成果は、日本の古墳時代研究のみならず、同時代の東アジア世界各地における考古学的研究に、少なからず寄与することができるであろう。
著者
森嶋 彌重 伊藤 哲夫 古賀 妙子 近藤 宗平
出版者
近畿大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

チェルノブイリ原発事故が発災災生し、3年を経過した。日本本土のほぼ中央に位置する琵琶湖生態圏における放射性核種の動向および経時変化について観察した。(1)琵琶湖水については、表層水1m^3を採取し、検出された放射性核種は半年後以降Cs-137のみとなり、ほぼ1/10以下で平衡行状態を示し、現在は事故以前の濃度0.2mBq/1に減少した。(2)湖泥のCs-137の深度分布は表層土より10〜20cmで最高値を示し、その濃度は粘土成分の多い所で高く、場所により2倍の変動を示した。このCs-137は、チェルノブイリ原発事故以前の放射性降下物による影響が大きいと思われる。これはチェルノブイリ事故の降下物中のCs-134/Cs-137比が1/2であるが、Cs-134の沈着が少ないことより推測される。(3)琵琶湖に生育している生物には、3年後でもCs-137が検出され、その濃度はブラックバスの肉部で0.5Bq/kgとなり、半年後の最高値2.0Bq/kgに比べ、約25%と経時的に減少している。(4)水草中のCs-137濃度は、夏に低く、冬に高い傾向を示しながら徐々に減少していく。これは冬季は枯れて芽体で越冬し、夏には生長して生物学的希釈を生じるものと思われる。(5)湖水中のCs-137濃度に対する生物中の濃度比を濃縮係数とすると、ブラックバス、モロコ、ブル-ギルは1000〜4000コイ、フナは200〜1000、貝は100〜170と低かった。原発事故などにより放出される核分裂生成物の生態圏への影響を知る上で指標生物としては濃縮係数の大きい生物が望まれるが、ブラックバスなどが有効であると思われる。
著者
森岡 清志 安河内 恵子 江上 渉 金子 勇 浅川 達人 久保田 滋
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.本研究の目的は,年賀状をデータベースとして事例調査を実施し,拡大パーソナルネットワーク(親しい人びとだけでなく知人とのネットワークを含むもの)を捉えること,また標本調査を実施し,親しい人びとのみに限定されたネットワークの内部構造を捉えることの二つである。平成11年度〜平成12年度にかけて事例調査と標本調査を実施し,その成果を報告書にまとめている。2.事例調査は,3地点でそれぞれ異なる研究課題のもとに実施された。三鷹市では,コミュニティ・センター運営委員を対象者として,地域社会への関与の様相と拡大パーソナルネットワークとの連関を捉えることに,福岡市では,中央区と西区の高齢者を対象者としてライフコースに伴う拡大パーソナルネットワークの変容過程を捉えることに課題がおかれ,かなりの達成をみた。徳島市では住民運動のリーダーを対象者として署名集めの資源としてのネットワークの動員過程を明らかにすることとし,多くの興味深い知見をえることができた。3.平成11年度に実施したプリテストの結果から,回答者の挙げる親しい人5名の相互関係を問う質問項目において,個別面接調査と郵送調査とで,回答の精度に差がみられないことが明らかとなった。そこで平成12年度は,東京都市区全域から8市区をランダムに抽出し,対象者総計2000名に対する郵送調査を実施した。8市区は,文京区・品川区・大田区・世田谷区・八王子市・青梅市・東村山市・多摩市であり,各市区の人口比にしたがって2000名を配分した。有効回収票は656票(回収率33.2%)であった。データクリーング後,集計解析を実施し,ネットワーク構造を規定する要因群の析出,地位達成とネットワーク構造との関連などをテーマとして報告書を作成した。報告書のI部はこの成果が,II部は事例調査の成果が載せられている。
著者
町田 玲子 三橋 俊雄 奥村 萬亀子 大谷 貴美子 森 理恵 南出 隆久
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は「しまつ」などの京都らしい暮らし方について、衣食住の各側面から考察し、その伝承のされ方、次世代への生かし方について明らかにすることを目的とする。衣分野:京の暮らしぶりの特性に「しまつ」がある。衣生活については一方で「京の着だおれ」と評される特性がある。京の女たちはこの両側面をうまく成り立たせる工夫や心がけを持っている。また、この両側面にかかわる商人としての悉皆屋がある。彼らはきものの管理・再生から流行のきもの作りまでを手がける。そして、京の人々の暮らしと深くかかわり、「しまつ」な暮らし方と流行のゆくへを伝授する。京の「しまつ」な暮らしは生活者の行動意志と同時にそれを支える産業組織から成り立っていたのである。食分野:都として栄えた京の郷土料理とも言える京料理と町衆のおかずであるおばんざいに光をあて、「しまつ」に関する知恵を探った。京料理には、材料を生かす精進の精神(無駄をしない、持ち味を生かす)が、薄味や旬の素材の利用に生かされ、おばんざいには、粗末なおかずをも、様々な意味づけをして生活を楽しむ知恵や、また乾物等の調理方法に栄養素を無駄なく利用する知恵などが認められた。住分野:京都市上京区・中京区・下京区の居住者に、住生活を維持するための昔の知恵について調査をした。その結果、昔は大掃除や日々の掃除を家族で行なっていたので、子どもへも自然に掃除の知恵が伝承されていたこと、住に関するしまつ意識は高齢者同居世帯において高いこと、近隣づきあいは相手の領域に安易に踏み込まない暗黙の了解があり、高齢者層ほどその認識度が高い傾向がみられること、などが明らかになった。
著者
宮入 暢子 森 雅生
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.206-213, 2021-05-01 (Released:2021-05-01)

2012年10月にレジストリサービスの提供を開始したORCID(Open Researcher and Contributor ID)は,世界中で各種の学術情報システムやサービスに広く実装され,総登録者数は2020年末までに1,000万人を超えている。本稿では,運営組織としての非営利団体ORCIDや,研究者情報基盤としてのORCIDの特徴と提供サービスについて概観し,1,000を超える機関メンバーや23のコンソーシアムによって支えられるORCIDコミュニティの現況について解説する。
著者
田村 朝子 加藤 みゆき 大森 正司 難波 敦子 宮川 金二郎
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.1095-1101, 1994-12-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
13
被引用文献数
2

後発酵茶の一種である阿波番茶, 碁石茶, 石鎚黒茶それぞれの, 各製造工程から微生物を分離し, 同定を行った.(1) 阿波番茶, 碁石茶, 石鎚黒茶から嫌気性菌, 好気性菌, カビがそれぞれ分離され, その形状, 諸性質より Lactobacillus, Streptococcus, Bacillus, Pseudomonasなどの存在が明らかとなった.(2) 阿波番茶, 碁石茶からの分離菌株 Pseudomonas aeruginosa および P.cePaciaを用いて至適温度, 至適pH, 耐熱性試験を行った.その結果至適温度はそれぞれ40℃, 37℃, 至適pHは5.5, 5.0~7.0, 耐熱性は70℃および80℃までそれぞれ増殖が可能であった.
著者
森田 琢也 花岡 伸治 佐藤 澄 市橋 良夫 越智 薫 勝間田 敬弘
出版者
一般社団法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.832-835, 2014-09-15 (Released:2014-10-03)
参考文献数
3

症例は多発性外骨腫のある12歳男児.外傷の既往なく胸痛発症後1ヵ月に血胸をきたし緊急手術を行った.開胸時壁側胸膜と臓側胸膜の双方から出血を認め,胸腔内に突出した第6肋骨の一部と肺中葉臓側胸膜の癒着の破綻が出血源と考えられた.手技は壁側胸膜の止血と肺部分切除術を行うにとどめ,胸腔内突出は軽度であったことから骨切りは行っていないが,術後1年3ヵ月の経過観察期間中,血胸の発症は認めていない.外骨腫による血胸の報告数自体が少ないこともあり術後再発や反対側発症の報告は見当たらず,手術時の適切な対応に関するコンセンサスも得られていない.呼吸器外科医は多発性外骨腫が外傷のない小児血胸の発生原因となることを知らねばならない.
著者
横畑 綾治 石田 悠記 西尾 正也 山本 哲司 森 卓也 鈴木 不律 蓮見 基充 岡野 哲也 森本 拓也 藤井 健吉
出版者
一般社団法人 日本リスク学会
雑誌
リスク学研究 (ISSN:24358428)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.5-28, 2020-09-25 (Released:2020-10-09)
参考文献数
87
被引用文献数
9

Coronavirus disease 2019 (COVID-19) is an emerging social risk with a rapid increase in cases of 5,200,000 and deaths of 330,000 (23/May/2020) since its first identification in Wuhan China, in December 2019. The COVID-19 is spreading all over the world as an emerging pandemic, and global society need fundamental risk management concepts against SARS-CoV-2 infection. Human-to-human transmissions have been facilitating via droplets and contaminated surfaces to hands. Therefore, we developed the systematic review comprehensively using available information about coronaviruses on environmental surfaces and inactivation mechanisms of antiviral chemicals possible to apply as chemical disinfectants. The analysis of literatures revealed that SARS-CoV-2 can persist on environmental surfaces like plastics and glasses for up to 7 days, but might be efficiently inactivated with 45–81% ethanol, 50–80% 2-propanol, 0.05–0.3% benzalkonium chloride, various detergents, >0.5% hydrogen peroxide or >0.045% sodium hypochlorite within 30 sec–10 min or 30 min. As no specific therapies are available for SARS-CoV-2, we propose the risk mitigation on the contact infection route by anti-virus household products is promising for prevention of further spread via hands to mouth, nose, and eyes. and to control this novel social problem.
著者
藤森 克彦
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.5_10-5_13, 2018-05-01 (Released:2018-09-14)
被引用文献数
2 1
著者
田尻 慎太郎 杉森 公一 堀川 靖子 伊勢 康平
出版者
日本インスティテューショナル・リサーチ協会
雑誌
大学情報・機関調査研究集会 論文集 (ISSN:24363065)
巻号頁・発行日
pp.160-161, 2023-11-19 (Released:2023-11-24)

北陸大学では教学IRデータを一元的に管理しているが、学生の授業内学習行動データ(LAデータ)の収集は未実施だった。そこでSaaS型LMS「manaba」の学修行動ログを利用し、LMSの利用度が高い科目であある「統計学Ⅰ:の成績予測を機械学習で試みた。XGBoostモデルを用い、教学IRデータの入学時アンケートの回答データを説明変数に加えたところR2値はわずかに向上した。単位修得の予測ではほぼ100%の精度を達成した。
著者
今中 忠行 森川 正章
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

【1】HD-1株宿主-ベクター系の開発HD-1株を宿主とした形質転換系を構築することを目的としてまず、各種抗生物質に対する耐性をしらべた。その結果、カナマイシン(Km)、テトラサイクリン(Tc)、アンピシリン(Ap)、クロラムフェニコール(Cm)、カルベニシリン(Cd)に対する耐性は全くなく(5μg/ml以下)、ストレプトマイシン(Sm)に対しては10μg/mlが生育限界濃度であった。続いてこれまでに開発されたPseudomonas属を含むグラム陰性細菌に広く利用されている広宿主域ベクターや大腸菌用のベクターなどを中心にエレクトロポレーション法によるHD-1株の形質転換実験を行った。それぞれのベクターにコードされている各種薬剤耐性を獲得した細胞を形質転換体として選択した。その結果、グラム陰性用広宿主域ベクターRSF1010によってHD-1株の形質転換が可能であることが判った。細胞を懸濁する溶液としては10%グリセロールが適していると思われた。実際に、Sm耐性株(形質転換体)からプラスミドを抽出してアガロースゲル電気泳動で調べた結果、RSF1010の存在が確認できた。この結果は、RSF1010はHD-1株細胞内で独立複製可能であることも示している。種々の条件を検討した結果、HD-1株の形質転換最適条件は以下の通りである。宿主(HD-1株),定常期前期菌体:ベクター,RSF1010(Sm^r):選択圧,Sm20μg/ml:電気パルス(方形波):電界強度,5kV/cm:パルス幅,1ms:遺伝子発現までの培養時間,3時間。以上の条件で得られる最大形質転換頻度は3.3×10^<-5>transformants/viable cell、最大形質転換効率は1.1×10^5transformants/μgDNAであった。【2】アルカン/アルケン生合成経路の解明まず、生物学的にCO_2からアルカン/アルケンを合成する経路のなかで最も研究が遅れており、実際反応律速になっている可能性が高いと思われる脂肪酸からアルカン/アルケンへの変換反応について検討した。緑藻類などを用いた研究成果からは脂肪酸から直接アルカン/アルケンを合成しているのではなく、脂肪酸からアルデヒドになった後アルカン/アルケンに変換される可能性が示唆されている。そこでHD-1株が最も多く蓄積していたヘキサデカン(C16)の前駆物質であると予想されるパルミチン酸あるいはヘキサデカナ-ルを使ってアルカン/アルケンの生成が実際に起こるかを調べた。^<14>C-パルミチン酸は市販のものを利用した。^<14>C-MEKISAデカナ-ルは入手不可能であったため^<14>C-パルミチン酸から化学合成した。アルカン/アルケンの生成反応は以下のようにして行った。基質である^<14>-パルミチン酸あるいは^<14>C-ヘキサデカナ-ルを含むリン酸緩衝液(pH7.0)/1%Triton X-100をナスフラスコ内でArガス通気により脱酸素処理する。同様に脱酸素処理した細胞抽出液を嫌気性ボックス内で添加後密栓する。これを遮光した湯浴中で37℃24時間保温した。反応産物を含む疎水性画分をクロロホルム抽出し、基質のみで保温したコントロールと共にシリカゲル60TLC(ヘキサンおよびヘキサン,ジエチルエーテル,ギ酸)で展開し、脂肪酸あるいはアルデヒド画分(Rf=0.5-0.7)をアルカン/アルケン画分(Rf=0.9以上)を厳密に分けて回収した。液体シンチレーションカウンターによりそれぞれの放射活性を測定した。この結果から、微量であるが細胞抽出液を加えた場合にのみアルカン/アルケの生成が確認できた。さらに脂肪酸にくらべてアルデヒドの方がアルカン/アルケンの生成率が良いことから、細菌においても脂肪酸はアルデヒドを経由してアルカン/アルケンに変換されることが強く示唆された。現在細胞抽出液をカラムクロマトグラフィーなどにより分画して、本酵素活性(アルデヒトデカルボニラーゼ)の精製を目指している。
著者
長谷部 理佐 坂本 壮 中村 聡志 藤森 大輔 吉田 隆平 糟谷 美有紀 伊藤 史生 高橋 功
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.246-249, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
10

除草剤の一種であるパラコートは, 致死率が高い製剤であることから本邦では1999年に生産が中止された。しかしパラコートを5%に希釈した低濃度製剤であるパラコート・ジクワット製剤 (以下, PGL) は現在も販売されており, PGL飲用による死亡例は現在も散見される。2015~2021年に当院で経験したパラコート中毒の5例を検討した。1例は誤飲が原因で, 4例は自殺企図で飲用された。1例はパラコートで, 4例はPGLであった。患者背景としては精神疾患が多いとされているが, 当院の症例も精神疾患やうつ状態の背景疾患があった。また, 農村地域・農家での報告が多く, 当院も農村地域に位置することから, パラコート・PGLが容易に入手できたと考えられる。中毒発生防止のためには行政的対応以外に保管者への啓発が重要と考える。
著者
岸本 昌子 森 貴久
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.61-68, 2017 (Released:2017-07-11)
参考文献数
31

ニホンヤマネGlirulus japonicusの体毛の特徴を,下毛と保護毛の密度と長さに着目して,アカネズミApodemus speciosusと比較した.さらにヤマネの体毛の特徴の地域的な差異を調べた.各地の博物館所蔵のヤマネの標本30体と採集したアカネズミ5個体を解析に用いた.ヤマネとアカネズミの体毛の密度と長さについて比較すると,ヤマネの方がアカネズミよりも全体の下毛密度と下毛割合が高く,長さも長かった.保護毛密度はアカネズミの方が高かった.また,ヤマネでは,胸の保護毛密度が他の部位に比べて低かった.さらに,ヤマネの体毛の特徴に基づいて標本をクラスター分析した結果,主に山形県,群馬県,埼玉県,岐阜県産からなる集団と鳥取県,静岡県,兵庫県産からなる集団の2つの集団に大きく分かれた.この集団は,これまでに知られている遺伝集団とは必ずしも一致せず,寒冷適応の程度と関係している可能性が示唆された.