著者
中川 裕太 笠松 悠 福岡 里紗 森田 諒 山根 和彦 小西 啓司 麻岡 大裕 中河 秀憲 白野 倫徳 天羽 清子 外川 正生 後藤 哲志
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.94, no.6, pp.814-820, 2020-11-20 (Released:2021-06-10)
参考文献数
11

大阪市立総合医療センターに入院したCOVID-19関連肺炎13例において,再検例を含むのべ20件の胸部CT画像について検討した.全例で胸膜直下の病変とground-glass opacity(GGO)を認めたが,胸水,心嚢水,縦隔・肺門部リンパ節腫脹,空洞形成は認めなかった.また,酸素投与を要した3例は下葉のvolume loss とともに胸膜直下の病変と結合する気管支血管束の病変が認められた.発症時期から画像所見を分類するとGGOは発症早期(10日未満)に多く認められ,crazy-paving pattern,consolidation,背側のconsolidation の帯状の融合像は発症後期(10日以降)に多く認められた.鑑別疾患としてはインフルエンザなどによるウイルス性肺炎と器質化肺炎が重要と考えられた.詳細な問診による発症からの期間と胸部CT画像の特徴的な所見や経時的変化を合わせて理解することで,COVID-19の事前確率を適切に評価し,診断と治療および感染対策につなげることが重要である.
著者
岡野 高之 大森 孝一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.124, no.5, pp.715-723, 2021-05-20 (Released:2021-06-02)
参考文献数
59

超高齢社会を迎えた日本では介護予防プログラムとして認知症予防が挙げられており, 介入方法の探索や有効性の検証が社会的急務となっている. 難聴と認知症の関連は以前から調査が行われており, Livingston らによるメタアナリシスでは, 中年期の難聴をほかの8つの因子とともに認知症のリスク因子として挙げている. 今後難聴に対する早期介入による認知症の予防効果の評価が待望されている. 本稿では補聴器装用による認知機能への影響を検討した従来の報告の概要をまとめるとともに, 臨床研究を行う上で特に臨床試験デザイン, 難聴や介入する対象の定義,用いる認知機能評価尺度の問題点について示した. また難聴の存在が認知機能評価の結果に与える影響を現在頻用される評価尺度の特徴とともに解説し, 今後行われるべき補聴器装用等の介入による認知症予防効果の検証の際に想定される留意点を述べた. さらに認知症に伴う聴覚や音声の変化についても記載した. 最後に聴覚や音声に依存しない認知機能評価について従来の報告と著者らの開発した ReaCT Kyoto について紹介した. 今後 ReaCT Kyoto を検者の技量や習熟度に依存しない認知機能の評価方法として活用し, 難聴者を含めた簡便な認知症患者のスクリーニング方法の一つになることが期待される.
著者
前田 守 長谷川 佳孝 月岡 良太 森澤 あずさ 大石 美也
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.74-83, 2020 (Released:2020-10-26)
参考文献数
15

国際的な課題の一つである薬剤耐性菌感染症への対策として,抗菌薬の適正使用に向けた薬剤耐性(AMR)対策アクションプランが厚生労働省により 2016 年 4 月に策定された.本研究では,当社グループが 2013 年 4 月~2019 年 3 月に運営していた 248 薬局の処方箋データを用い,抗菌薬の処方回数と処方日数を調査し,有意水準 0.05 とした分割回帰分析で解析した.アクションプラン策定前後で,処方回数推移は−202.3 回 / 月(95%信頼区間(CI):−325.7,−79.0),処方日数推移は −1905.9(95% CI:−2969.0,−842.9)となった.また,2015 年 4 月~2019 年 3 月の第三世代セフェム系,14 員環マクロライド系,ニューキノロン系の月平均処方回数も有意な減少傾向であり,AMR 対策アクションプラン策定が保険薬局の抗菌薬の処方回数と処方日数の減少の一因となった可能性が示唆された.
著者
森 功次
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.31, pp.409-419, 2021-01-01 (Released:2021-12-10)

近年「アートをビジネスに活かそう」というメッセージを掲げた本が多数出版されている.本報告では,近年のこの動向をまとめつつ以下の4点を指摘する.この動向の書籍では,(1)「アート」という語は基本的に価値語として用いられている.(2)「解釈は自由だ」とされる一方で,アートの文脈の豊かさも強調されている.(3)「アート」「アーティスト」に関する主張が不適切に一般化されたり,逆にことさらアートのことでもない話がアートの特徴として語られたりしている.(4)想定されている芸術形式や芸術的価値に偏りがある.最後に,この動向を大学教育に導入するさいの注意点を,対話型鑑賞教育,授業履修者数,アーティスト・イン・レジデンスの3つに関して述べる.
著者
藤森 大輔 本村 友一 山本 晃之 原 義明 西本 哲也 高橋 希 柄澤 智史 高橋 功
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
pp.36.3_06, (Released:2022-03-30)
参考文献数
8

74歳男性. シートベルトを着用し軽乗用車運転中に意識を失い前方の車両に追突し, フロントエアバッグが作動した. ドクターヘリで当院へ搬送され, CT検査で胸骨骨折・内胸動脈損傷・多発腰椎圧迫骨折の診断となり, 経カテーテル的内胸動脈塞栓術を施行した. 入院後より経時的に血中CPK値が上昇し, 代謝性アシドーシスと高乳酸血症も進行した後, 心停止・自己心拍再開を経て腸管虚血に至り, 第4病日に死亡した. 経過中のCT検査より胸部大動脈原性の両下肢の筋梗塞を含む多発塞栓症が疑われた. 安全装置であるエアバッグとシートベルトによる鈍的胸部外傷に起因した二次的な大動脈原性塞栓症で広範な筋梗塞を認めた例は稀有であり報告する.
著者
森田 幸 根ヶ山 清 三好 そよ美 堀尾 美友紀 荒井 健 村尾 孝児
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.767-771, 2015-11-25 (Released:2016-01-10)
参考文献数
6

MRSA選択分離培地(MRSA-CI寒天培地,CHROMagar MRSA II寒天培地,MDRS-K寒天培地)について発育支持能および鑑別性能の比較検討を行った。発育支持能をMiles & Misra法により評価した結果,3種類の培地に差は認められず,ほぼ同等の発育支持能を有していた。鑑別性能については,鼻腔分泌物等の臨床材料120検体を用いて,24時間および48時間培養後に発育状況を判定した。24時間判定におけるそれぞれの培地の感度/特異度は,MRSA-CIが88.4% / 100%,CHROMagar MRSA IIが90.7% / 100%,MDRS-Kが88.4% / 100%であった。48時間判定においては,MRSA-CIが95.3% / 100%,CHROMagar MRSA IIが95.3% / 100%,MDRS-Kが95.3% / 97.4%であり,3培地ともほぼ同程度であった。また,いずれの培地においても24時間判定に比べて48時間判定で検出感度が向上した。MRSA選択分離培地は,簡便性に優れたMRSA検出法であるが,菌量が少量の場合や呈色が弱い菌株では,検出・判定が困難となることもあり,各培地の特性を十分把握したうえで適切に使用する必要があると考えられた。
著者
森田 直之 簗瀬 立史 星 輝彦 林 克征 浅見 大治 川端 康正 中込 秀樹 早川 信一 金田 裕治
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 39 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.300-301, 2015 (Released:2018-08-03)
参考文献数
1

東京都立多摩科学技術高等学校(以下、本校)は、平成22 年に開校した東京都でも比較的新しい高校で、平成24 年に文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され、3 年が経過した。この間、本校で課題となったのは倫理教育の在り方についてであった。本校では、SSH 指定科目である「科学技術と人間」という科目で「技術者倫理」という単元を用意し授業を展開してきたが、生徒へのメッセージ性は不十分というのが我々教員の印象であった。そこで、生徒たちに考えさせることを主軸においた教育活動の実践として、未来の科学技術を多く取り上げたウルトラセブンを題材に倫理教育を行なうプロジェクトチームを立ち上げた。本研究では、我々の教育実践と教育効果の考察について報告する。
著者
森 克己 山田 理恵 渡邉 修希 蔭山 雅洋
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.69, pp.276_1, 2018

<p> 高校野球は、日本固有の形態をもつスポーツ文化である。また、高校球児=丸刈りというイメージが広く国民全般に定着している。例えば、2016年3月に開催された選抜高等学校野球大会に21世紀枠で出場し選手宣誓した小豆島高校の主将が長髪であったことが大きな話題となったように、他の競技では選手の頭髪が自由であるのに対し、野球だけが選手の頭髪は丸刈りであることが当然視されている。このことは、高野連には高校球児の頭髪を丸刈りとする明文の規定がないにもかかわらず、高校の野球部員や指導者が高校球児=丸刈りという慣習法的なルールにとらわれてきた結果であると考えられる。また、その背景には、精神の鍛練がスポーツの重要な使命であることを説いた飛田穂洲の著作の中にみられる選手の頭髪についての記述のように、野球を単なるスポーツではなく精神修養を伴う「野球道」の思想等とも関連づける考え方の存在があると言える。以上のことを前提として、本研究では、高校球児の髪型=丸刈りという慣習法が成立した経緯やその慣習法の成立構造について、文献・資料及びアンケート調査結果に基づき考察する。</p>
著者
橋田 英俊 本田 俊雄 森本 尚孝 相原 泰
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.700-703, 2001
被引用文献数
5

75歳の男性が見当識障害, 構語障害, 歩行障害の増悪を来して入院した. 患者は4年前に頸椎症と診断され治療を受けていたが, 四肢の運動障害及びしびれ感は徐々に増悪していた. みかけ上の血清Cl値の上昇が端緒となり, ブロム中毒が疑われた. 10年来のブロムワレリル尿素含有鎮痛薬の内服歴及び血清ブロム濃度上昇を認めたため, ブロム中毒と診断された. 輸液により症状は軽減したが, 四肢の運動障害は残存した. 四肢の運動障害は頸椎症に加え慢性ブロム中毒による不可逆性の障害も関与している可能性が否定できない. 高齢者の精神・神経症状は, 老人性痴呆や加齢による影響と判断され積極的な診断や治療が見送られることが多い. ブロムワレリル尿素は市販の鎮痛薬等にも含まれている成分であり, 高齢者で精神・神経症状を呈した症例に対しては, ブロム中毒を念頭におく必要がある.
著者
森 銑三
雑誌
美術研究 = The bijutsu kenkyu : the journal of art studies
巻号頁・発行日
no.36, pp.10-19, 1934-12-30
著者
小林 武夫 熊田 政信 石毛 美代子 大森 蕗恵 望月 絢子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.31-34, 2014 (Released:2014-02-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

歌唱を職業とする者に,歌唱時においてのみ見られる痙攣性発声障害を「歌手の喉頭ジストニア(singer’s laryngeal dystonia)」と名づけた.痙攣性発声障害の一亜形である.通常の会話は問題がない.本症の発症前に過剰な発声訓練を行っていない.4例は第1例(女性31歳)ソプラノ,ポピュラー,第2例(女性28歳)ロック,第3例(男性40歳)バリトン,第4例(男性46歳)バリトンで,第4例のみが外転型痙攣性発声障害で,他の3例は内転型である.内転型は歌唱時に声がつまり,高音の発声障害,声域の短縮,ビブラートの生成が困難となる.外転型では,無声子音に続く母音発声が無声化する.治療は,内転型はボツリヌストキシンの少量頻回の声帯内注射が有効である.外転型では,後筋にボツリヌストキシンを注射する.
著者
佐鹿 万里子 森田 達志 的場 洋平 岡本 実 谷山 弘行 猪熊 壽 浅川 満彦
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 = Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.125-128, 2009-10

An immature male raccoon (Procyon loter) with severe mange was captured at Kita-Hiroshima City, Hokkaido, Japan, on February 2005. The severe alopecia and crusting lesion were found on dorsal side of the raccoon, and mites obtained from the lesion were identified as Sarcoptes scabiei by both morphological and molecular biological methods (2nd internal transcribed spacer: ITS-2). The present case is the first record of mange caused by S. scabiei from free ranging raccoons in Japan. 2005年2月,北海道北広島市にて腰部から尾部にかけ著しい脱毛と痂皮を形成したアライグマProcyon lotor雄幼獣一個体が捕獲され,当該病変部から多数の小型ダニ類が検出された。形態および 2nd internal transcribed spacer (ITS-2)の塩基配列から,これらのダニ類はSarcoptes scabieiと同定された。本症例は日本産アライグマのS. scabieiによる疥癬の初報告となった。
著者
大森 真紀
出版者
早稲田大学社会科学学会
雑誌
早稲田社会科学総合研究 (ISSN:13457640)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.37-51, 2012-12-25
著者
濵地 望 岡 真一郎 森田 正治 廣岡 良隆
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.227-232, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
37

〔目的〕男子大学生における血管内皮機能に影響を及ぼす因子を明らかにすることである.〔対象と方法〕対象は健常な男子大学生34名とした.血管内皮機能(flow-mediated dilation:FMD)と身体組成,血圧(SBP,DBP),強度別身体活動量(LPA,MPA,VPA,%MVPA)との関係を調査した.〔結果〕FMDの平均値は8.1 ± 2.2%であった.FMDはVPA,%MVPAと有意な正の相関(r=0.432,0.383),FMD正常群ではDBPと有意な負の相関(r=-0.445)を示した.また,FMD正常群は低下群に比べ,VPAが有意に高かった.〔結語〕男子大学生の血管内皮機能には,高強度の身体活動時間および拡張期血圧が影響することが示唆された.