著者
野口 英之 ソウザ カシルダ アデリア サンパイオ シルバ ホジアニ オリベイラ オウリケ ルーカス 諏訪 錬平 梶本 卓也 石塚 森吉 ピント アルペルト カルロス マーティンス リマ アドリアーノ ジョゼ ノゲイラ サントス ジョアキン ヒグチ ニーロ
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.124, 2013

細根は森林の炭素循環の重要な構成要素であるが、その動態を測定する各種の手法には、微環境の改変や測定値の信頼性、機材の価格等、それぞれに問題点がある。とくにアマゾン等の熱帯地域では細根の成長・枯死・分解のサイクルも早いと考えられるため、環境条件に応じた適切な測定方法の検討が不可欠である。本研究では、ブラジル・マナウス近郊の熱帯林において、砂質土壌が分布する斜面下部と、粘土質の土壌が分布する斜面上部で、フラットベッド・スキャナを用いて直径2 mm未満の細根の成長と枯死の動態を測定した。イングロースコアを用いた細根成長量の測定も併せて実施し、結果を比較した。また地形単位ごとに土壌含水率の変動も測定し、細根の動態との関係を検討した。スキャナによる測定では、とくに多雨期に斜面下部で活発な成長と枯死が観察されていたが、斜面上部では成長・枯死のサイクルは非常に緩慢であった。一方、イングロースコアによる測定では、斜面下部と上部で1年間の細根生長量にほとんど差がなかった。後者では埋設期間中の枯死分を測定できず、とくに斜面下部ではかなりの過小評価になっていた可能性が高い。
著者
岩尾 知頼 三間 大輔 久保 尋之 前島 謙宣 森島 繁生
出版者
一般社団法人 画像電子学会
雑誌
画像電子学会誌 (ISSN:02859831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.661-670, 2013 (Released:2015-11-06)
参考文献数
14

写実的なキャラクタアニメーションの実現のためには眼球運動を正しく再現することが重要である.しかしながら現在は,キャラクタの対話時の眼球運動を再現する際にアーティストの手作業による作りこみが必要となるため,多大なコストや労力がかかることが問題である.そこで本研究では人間の対話時の眼球運動に着目し,計測結果を基に眼球運動と瞬きを確率関数を用いてモデル化することで,眼球運動を自動生成する.まず,瞬きを含む対話時の眼球運動と固視微動とをそれぞれ計測する.次に,計測結果を基に対話時の眼球運動を跳躍運動と固視微動に分類する.さらに分類された跳躍運動と固視微動及び瞬きを,それぞれ確率モデルを用いて近似した後に,それらの確率モデルをキャラクタに適用することにより,リアルな眼球運動の自動生成を可能とした.
著者
塚越 大智 山本 周平 和田 洋典 寺島 さつき 大澤 竜司 松森 圭司 伊藤 駿 中村 幸男 長峰 広平 池上 章太 堀内 博志
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.20042, (Released:2022-01-14)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Coronavirus disease 2019 (COVID-19) has been spreading globally since 2019;however, comprehensive rehabilitation of elderly patients with COVID-19 pneumonia remains a challenge. A 76-year-old American woman with COVID-19 pneumonia was admitted to our hospital. Because her disease was complicated by acute respiratory distress syndrome (ARDS), she was treated with intensive care, including invasive ventilation and extracorporeal membrane oxygenation (ECMO). During and after intensive care, she exhibited physical symptoms such as weakness, pain, shortness of breath, and difficulty in movement and exercise. Furthermore, during approximately 3.5 months of hospitalization, she received swallowing and speech therapies along with physical therapy. These rehabilitation therapies enabled her to get home in the United States. Her rehabilitation schedule had to be carefully planned according to her symptoms and infectiousness of COVID-19. This paper highlights few important points regarding the difficulty in rehabilitation including that of physical function, mental health, and cognitive function of patients with COVID-19. Furthermore, this report provides a problem-solving approach for long-term rehabilitation in elderly patients with COVID-19 pneumonia.
著者
鈴木 康生 真柳 秀昭 福田 理 森主 宜延 西川 康博 田中 晃伸
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.571-582, 2005-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
7
被引用文献数
2

歯科大学・大学歯学部における小児歯科学の教育,障害児歯科の教育ならびに大学(附属病院)における障害児(者)の歯科診療の現状を知る目的から,29歯科大学・大学歯学部を対象にアンケート調査を行った.小児歯科学の教育については,講義学年や講義時間数の設定等は多様化の傾向がみられた.また小児歯科学の講義学年では,4学年が多いが,低学年や複数学年にまたがる場合もみられた.障害児歯科の教育については,9大学で「障害者歯科学講座」等が設置され,他の多くの大学でも授業科目としての「障害者歯科学」が設けられていた.また,小児歯科学の中での「障害児歯科」の教育は,大多数の大学で講義がなされていた.「障害児歯科」の講義内容については,「心身障害児の歯科診療」,「小児疾患と歯科治療」について多くの大学で講義されていた.また,「症候群・先天異常(染色体異常・遺伝性疾患)」はほとんどの大学の小児歯科学の中で講義されていた.大学(附属病院)における障害児(者)の歯科診療の現況については,「障害者歯誌科」等の診療科が設置されているのが22大学であった.また診療科がない場合の受け入れ窓口は,小児歯科,あるいは小児歯科と他科とで担当していた.また小児歯科における障害児の歯科診療は,大多数が15歳以上も対象としており,20歳以上の障害者も対象として診療を行っている大学も多くみられた.
著者
森高 初恵 中西 由季子 不破 眞佐子 谷井 涼子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.115-122, 2012-04-05
被引用文献数
2

米飯摂食後の血糖値上昇抑制を目的として,米飯へ0〜2.5%寒天を添加した効果について,嗜好特性,熱特性ならびに血糖値を測定して検討した。高い濃度の寒天を添加した米飯においては,味,香り,外観は悪いと評価され,硬さは硬いと評価された。昇温DSC曲線における最も高温の吸熱ピークは,寒天添加により高温側へシフトし,エンタルピーは小さくなった。米飯摂取後120分間の血糖応答曲線において,寒天の添加により血糖値は緩慢に増加し,最大血糖値は低下した。グリセミックインデックスは,寒天無添加米飯で大きく,寒天濃度が増加すると減少した。
著者
末森 明夫
出版者
九州大学大学院比較社会文化研究院
雑誌
障害史研究
巻号頁・発行日
no.2, pp.41-62, 2021-03-25

従来の障害史研究は文字史料に偏っており、非文字史料を活用し切れていないという反省に立ち、障害史研究の展開における歴史図像学の援用をはかるべく、中世日本絵画史料の《融通念仏縁起絵》《遊行上人縁起絵》《聖徳太子絵伝》にみる不具や癩の描写の変化をたどり、中世日本の信仰の世界にみる障害認識の変容を明らかにすることを通して障害史研究に資することを試みた。 / まず《遊行上人縁起絵》諸本〈甚目寺施行〉にみる不具や癩の図様ないし構図の対比をおこなった。不具描写には躄跛や盲がみられたものの、いずれも乞食非人の輪の周縁に描かれており、乞食や不具の層の内部に階層性が存在することが窺われた。続いて《聖徳太子絵伝》諸本の〈無遮会〉にみる不具・癩描写の対比をおこなった。鎌倉時代以降の南都および真宗系諸本には癩描写がみられた他、南都系諸本には躄や跛の描写もみられた。最後に《融通念仏縁起絵》諸本の〈念仏勧進開始〉にみる不具や癩描写の対比をおこなった。祖本の影響が強く見られる甲系諸本よりも乙系諸本のほうが躄が早く描かれる傾向が窺われたものの、明徳版本ではさまざまな不具や癩の描写が同じ円座の下に描かれるようになる経緯が窺われた。 / 《遊行上人縁起絵》《聖徳太子絵伝》《融通念仏縁起絵》にみる不具や癩の描写は時代が下ると共に、階層性が薄れていく様相が窺われ、穢れを始めとする中世日本にみる不具・癩に対する認識の収斂と分岐が平行して生じていることが窺われた。一方、聾や瘖瘂に関する記述は文字史料には普通にみられるにも拘わらず、《融通念仏縁起絵》《遊行上人縁起絵》《聖徳太子絵伝》に聾や瘖瘂の図像を認めることはできず、不具描写にみる顕性的ないし潜性的不具図像とでもいうべき特性の違いがみられた。This note canvasses transitions of disabilities and/or lepers depicted in medieval manuscripts comprised three well-known pictures, "Yugyō Shōnin Engi", "Shōtoku Taishi Eden", and "Yūzū Nembutsu Engi" in Japan to contribute to the historical iconography from the viewpoints of changes of social recognition for the disabilities and/or lepers. / First, we compared design/layout of disabilities and/or lepers depicted in scenes of "Jimoku-Ji Segyō(tr. Charity for the poor, beggars, disabilities, and lepers)" concluded in the "Yugyō Shōnin Engi", indicating only cripples and blind persons who were portrayed around a communal dining circle for beggars. This arrangement strongly suggested visually a hierarchy in the class of beggars and disabilities. Second, measuring scenes of "Mushae(tr. Charity)" in manuscripts of the "Shōtoku Taishi Eden", providing new knowledge that disabilities and lepers had become popular as a subject painted in the scenes in addition to the poor and beggars since the late middle ages. Finally, observing scenes "Nembutsu Kanjin (tr. a mass in Buddhism)" concluded in the "Yūzū Nembutsu Engi", uncovering a change that disabilities and lepers were equally arranged with un-disabled beggars in a communal dining circle in the latest manuscript, however, that the disabilities had painted prior to the lepers in early manuscripts. / The finding regarding the layout of the disabilities and lepers in the medieval pictures profoundly indicated reduction of the hierarchy in the poor, beggars, disabilities, and lepers with the times in the middle ages because of the changes, which comprised the convergence and divergence, of recognition for the disabilities and/or lepers. However, the deaf or deaf-mute was not observed in above mentioned pictures, suggesting an aporia that there were dominant icons for the disabilities such as the cripple or blind persons and recessive ones like the deaf or deaf-mute.
著者
飯野 京子 長岡 波子 野澤 桂子 綿貫 成明 嶋津 多恵子 藤間 勝子 清水 弥生 佐川 美枝子 森 文子 清水 千佳子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.127-138, 2019 (Released:2019-06-21)
参考文献数
11
被引用文献数
1

【目的】がん治療を受ける患者に対する看護師のアピアランス支援の実態と課題および研修への要望を明らかにすること.【方法】がん診療連携拠点病院等の看護職2,025名に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施した.調査内容は支援94項目,研修への要望等について多肢選択式,自由記述にて回答を求めた.分析は,記述統計量の算出,「支援の種類の多さ」に影響する因子のロジスティック回帰分析を行い,自由記述は質的記述的に分析した.【結果】分析対象は726名(35.9%),平均年齢42.5(24〜62) 歳であった.94項目中93項目の支援を提供していた.支援の種類の多さに影響する因子は,多様な情報収集および支援への自信などであった.アピアランス支援の課題・研修への要望は17項目生成され,「アピアランス支援の標準化」等,多様であった.この結果をもとに,医療従事者の研修プログラムの構築を検討する予定である.
著者
立木 孝 笹森 史朗 南 吉昇 一戸 孝七 村井 和夫 村井 盛子 河嶋 寛
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.241-250, 2002-06-29 (Released:2010-04-30)
参考文献数
31
被引用文献数
10 18

耳疾患, 耳症状などのない, 日本人正常成人の聴力が年齢とともにどのように変化するか, いわゆる「年齢変化」を確認することがこの研究の目的である。 そのため, 特別な生活背景のグループでない, 無作為の正常成人1521人の聴力を, 公的大病院の聴力検査用防音室で, 経験ある聴力検査技術員が, 日本聴覚医学会で定めた方法によって検査し, 年齢別, 性別に検討した。 年齢による聴力変化の成績は従来文献に報告されていた内外の成績とほとんど同じであり, 従って今回得られた結果は, 日本人正常成人の年齢変化として「標準」になるものと結論した。 性別の検討では, 高年齢, 高周波数について男性が女性より悪いという結果が得られたが, その程度はわずかであり, 欧米のように男女別々の基準を定める必要はないものと考えられた。
著者
森 武夫
出版者
日本犯罪心理学会
雑誌
犯罪心理学研究 (ISSN:00177547)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.31-41, 2019-08-15 (Released:2019-08-28)
参考文献数
14

日本では古くから文学作品の中では心や魂のいろいろな面が書かれてきたが,心を科学的な目で見ることはなかった。明治維新以後,海外で心理学を学び帰国した教師たちによって心理学の研究や教育がなされるようになった。日本の大学で心理学を学んだ寺田精一は,刑務所にいる囚人の調査,研究により,多くの犯罪心理学の著書や論文を発表した。こうしたきっかけから内務省では多くの心理職員を嘱託として採用していたが,やがて正式の職員として採用するようになった。心理テストは精神科医による鑑定書に用いられた。
著者
森 義信
出版者
大妻女子大学
雑誌
大妻女子大学紀要. 社会情報系, 社会情報学研究 (ISSN:13417843)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-29, 2005

人類の歴史は,コミュニケーションの形態上の変遷という観点からみてみると,当初は長いあいだボディ・ランゲージの段階にあり,ついでオーラル・コミュニケーションがこれに加わり,最終段階で文字文化が加わったと言える。手は,こうしたあらゆる段階で,重要な役割を果たしてきたし,いまも果たしている。(1)手と腕は物理的な次元で攻撃と防御の道具であり,指先と手は物を巧みに作り,操る。(2)手は,感情や意志を巧みに表現し,ときには言葉以上の表現力をもっている。(3)手は,身体のうちでもっともシンボリックな機能を果たす部分であると言える。(4)手と指は,数をかぞえて表示もできるし,文字の代わり,眼の代わりもする。こうした機能性のゆえに,古来,手には奇跡を起こす力があるとの信仰がうまれた。キリスト教世界では,イエスはライ病患者に手を触れて癒したとされ,また,中世フランスの国王は,「王の病気」と呼ばれたルイレキの患者に手で触れて,治癒する力をもっていたとされる。また,聖遺物崇拝の習慣がある西欧では,聖人の手や腕が切り取られて箱に収められ,手にかかわる病を治癒したり技量を上達させたりする霊験があると信じられてきた。かくするうちに,手そのものが身体から切り離された形で,絵画に描かれ彫塑にほられ,信仰の対象としてシンボル化されてきた。ユダヤ教やキリスト教における「神の右手」,イスラム教の「ファーティマの手」は,そうした一例である。ここには,信じるからこそ,手のもつ超自然的な力の恩恵に浴することができるという,共同幻想の世界があった。手は法行為の世界でも重要な役割を果たしてきた。西欧の古代・中世法においては,奴隷=手で捉えられたものは,奴隷主の手を経て解放されなければならなかった。宣誓は右手を挙げて行なわれ,契約や和解,承諾や合意に際しても,手は重要な役割を果たしている。このように手は,人格の表象,法的行為能力のシンボルとして機能していた。それゆえにまた,ゲルマン系の部族法典は,人が法律に違反したり,契約を破ったりすれば,手の切断をもって罰すると規定している。それは単なる刑罰としての身体切除を意味したのではなく,「民事的な死」の宣告であり,当該者は以降,法律業務に就けなかったのである。手の切断は一種の法的無能力を作り出したのである。宗教改革以降,手への信仰は廃れ,法律行為における手の役割は減少し,これにともなって手への刑罰も激減したものの,反面,近代以降,対面式のコミュニケーションや演技の世界における手の象徴的使用は,一向に衰えを見せていない。
著者
沖田 学 森岡 周 宮本 謙三 八木 文雄
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.541-545, 2007 (Released:2008-01-31)
参考文献数
19
被引用文献数
3

立位姿勢バランスの維持に問題を有する脳腫瘍の症例へ足部機能に焦点を当てた運動療法を施行し,改善が認められたので報告する。この運動療法とは,重心の変化を知覚し制御する役割を担う足部の能力に対して,足部の変化を制御しながら変化を知覚して判断する認知過程を通じて運動学習していく認知運動課題である。この課題として,縦軸もしくは横軸の不安定板を水平保持させながら,両端のいずれかに配置した重量負荷の位置を判断させた。これを左右足に1日各10回施行し,正判断数を記録した。また,開眼・閉眼下における立位姿勢動揺を3,4日ごとに計測した。課題の進行に伴い立位重心動揺が減少したことから,視覚性外部情報ではなく,内部の感覚情報を手掛かりとして重心偏位を認知することにより,効果的で精密な立位姿勢バランス制御の達成が可能になることが示唆された。