著者
梅森 佳子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.517, pp.79-84, 2007-01-23

モンタギューの体系化した内包論理(intensional logic)には,その根本に重大な問題が指摘されている.その一つは,可能世界の概念による弱い内包性で,もう一つは,その依拠するタイプ理論である.前者は,命題態度の問題を扱えないという帰結を,後者は無限にして不十分なタイプを,その回帰的手法により生成してしまいうという帰結を生むことになる.本発表では,これら問題点を根本的に解決する意味論の枠組の試みを,名詞表現(固有名詞,一般名詞,名詞句)の分析を通して紹介する.結果として,本枠組は上記の問題点を解消するだけではなく,一般名詞の指示の問題や固有名詞のタイプの問題もうまく扱うことが示される.
著者
森 佳子
出版者
日本音楽学会
雑誌
音楽学 (ISSN:00302597)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.94-108, 2012-03-23

夢幻劇(フェリー)とは,構造的にメロドラムと共通の基盤を持った演劇の一ジャンルである。そもそも,18世紀末にルソーによって考案されたメロドラムはドイツで流行し,台詞とオーケストラ演奏を交互に行う形式を維持していた。しかし19世紀に入ると,フランスにおいてメロドラムは,大規模なオーケストラと舞台転換を伴った大衆的なジャンルに発展する。夢幻劇の場合,それらに加えてバレエが必ず挿入され,超現実的かつ喜劇的なテーマが扱われる。しかし,それ以上のことはあまり明らかになっていない。本稿では夢幻劇の音楽的構造を探るため,パリ・オペラ座図書館に所蔵される充実した台本コレクションに注目した。具体的には,大衆的な四劇場(アンビギュ・コミック,ゲテ,ポルト・サン・マルタン,フォリー・ドラマティック)で上演された作品の台本から,フェリーの特徴を備えているものを特定し,考察を行った。1861年(オスマンの都市改造計画によるタンプル大通りの消滅以前)までに出版されたそれらのうち,異なる時代の2作品-『青ひげ』(1823)と『500人の悪魔』(1854)を中心に全体を見ると,夢幻劇の歌唱部分は時代とともに増加し,オペラなど他ジャンルの要素を取り入れることもあったのではないかと推測される。中でも興味深いのは「パロディ」の習慣である。すなわち,一般的に夢幻劇における歌唱部分には,主に庶民層の観客を喜ばすための替え歌(パロディ)が使われるが,後になると一層増えていく。この習慣は,1807年の皇帝の勅令による劇場ジャンルへの規制に関係しているが,1850年代になってそれが緩くなった後も続いている。すなわち19世紀後半になると,メロドラムが下火になっていく一方,夢幻劇はパロディを利用して音楽部分を増やすことで生き残り,まさに構造的には広い意味での「大衆のための音楽劇」と呼ぶに相応しいものに変化したのではないだろうか。
著者
大森 明
出版者
愛知学院大学
雑誌
地域分析 : 愛知学院大学経営研究所々報 (ISSN:02859084)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.37-60, 2005-03-31

わが国では, 環境省による環境会計ガイドラインの公表以降, 外部環境会計の分野が急速に進展してきている。しかし, 開示された会計情報の有用性が課題とされている。本稿では, 特に, 環境コストをかけた成果としてのベネフィットないし効果の測定について検討する。環境会計における効果の測定は, 物量単位または貨幣単位によってなされるが, 環境コストが貨幣単位によって測定される以上, 理想的には環境効果もまた貨幣的に測定されるべきである。環境省ガイドラインでは, 効果の貨幣的測定や経済効果の測定に関して慎重な姿勢を崩していないが, 先進的な企業では, 積極的に効果の貨幣的測定に取り組んでいる。本稿では, これらの先行事例をレビューしつつ, 環境経済学の分野で進展してきている環境の経済評価法の環境会計への援用を検討する。その代表的な手法であり, また近年注目されているCVMやコンジョイント分析は, 信頼性や正確性の観点から, 貨幣的測定の手法としては今後の研究を待たねばならないと考えている。また, 環境会計は, 悪化した環境の改善, 換言すれば環境ストックの向上をもたらしているか否かを判断できるツールとなることを本来の任務とするべきである。しかし, 近年展開している環境会計はフローの側面のみを重視し, ストック面についてはあまり考慮されてこなかった。そこで, 本稿では, 汚染ストックの改善こそが環境コストをかけた成果であると捉える。具体的には, 維持コスト評価法を用いた予算を編成することによって, ストックの改善を明らかにできる仕組みとしての環境会計を提案することにしたい。
著者
内藤 紀代子 岡山 久代 遠藤 善裕 森川 茂廣 高橋 里亥
出版者
びわこ学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、女性の2~5割が腹圧性尿失禁を経験しており、生活の質を低下させている。その要因として妊娠・分娩による骨盤底の損傷等が指摘されている。そこで、本研究に置いて育児中の女性にとって簡便で負担が少なく、腹圧性尿失禁予防・改善効果の高いセルフケアを検証し、さらには、有効性の検証されたセルフケアの指導を行い普及の効果を調査した。結果、腹圧性尿失禁予防に重要な骨盤底筋力を高めるセルフケアは、サポートパンツであり、次いで骨盤底筋体操が有効であることが検証された。また、産後早期にセルフケア指導を行うことにより、指導を受けた対象の7割が長期的にも情報を活用していることが明らかになった。
著者
香川 考司 富永 浩之 白岩 真一 堀井 達也 池田 秀聴 横山 裕一 韓 根鎖 吉崎 翔 平川 裕弥 長江 明彦 白神 佑典 尾崎 陽一 末友 貴大 鳥原 悠平 藤沢 尚樹 森田 昌樹
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

Webベースプログラミング学習支援環境のサーバー側プログラムに、Scalaスクリプトによる柔軟なカスタマイズ機能を提供できるプラットフォームを構築することを目的として、教師用システムと学習者用システムの間のファイルシステムを利用した疎結合インターフェイスの設計と、プロトタイプによる基本機能の確認を行った。教師用サーバー側プラットフォームにScalaインタプリターとのインターフェイスを実装した。また、プログラム可視化ツール、スクリプト入力支援ツールなどのクライアント側の補助的なツールを設計・実装した。
著者
鈴木 眞知子 陳 和夫 玉木 彰 清川 加奈子 野口 裕子 森友 和仁 上田 真由美 田中 優子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、超重症児の在宅療養支援プログラムの開発であり、先行研究で作成したプログラムモデル(案)の効果を検証することである。研究方法は、アクションリサーチであり、(1)個別支援、(2)地域を対象とした事業を主軸とした実践を試みた。その結果、本モデルは(1)個を中心につなぐ役割の効果(窓口に働きかけ、橋渡しをする、当事者と関係者との隙間を埋める)、(2)医療依存度の高い重度障害児の発達を促し、自律(から自立)を支え、社会参加の促進に向けた「子育て」とその支援を強化することが確認された。
著者
森田 克徳
出版者
静岡県立大学
雑誌
経営と情報 : 静岡県立大学・経営情報学部/学報 (ISSN:09188215)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.41-54, 1998-06-30

This paper attempts to clarify the business activities of Taichiro Morinaga and Saburosuke Suzuki, especially of marketing. The former is the founder of Morinagaseika which was inagurated in 1899, and the latter is the founder of Ajinomoto established in 1908. Morinagaseika is a first-mover in the confectionery industory in Japan and Ajinomoto in the seasoning industory too.
著者
森長 誠 松井 孝典 月岡 秀文
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.28, 2014

2013年の報告で,複数の測定点におけるジェット戦闘機騒音の録音データを基に, F-15, F-4, T-4 の分類をニューラルネットワークおよびSVMによるモデルで行った.本稿では,特徴ベクトルの精査に力点を置き,具体的には周波数特性の時間変化情報のパラメータ化,主成分分析を用いた高次元データの圧縮を行った。さらに,最適学習機械の選定を行った。
著者
齋藤 一 荒木 正純 吉原 ゆかり イアン カラザース 加藤 行夫 浜名 恵美 清水 知子 南 隆太 日比 嘉高 土屋 忍 佐野 正人 鶴田 学 高森 暁子 中根 隆行 波潟 剛 南 富鎭 齋藤 一 大熊 榮 荒木 正純 吉田 直希
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

国内外の英語文学研究者(日本、韓国、中国、台湾、マレーシア、インド、トルコ、フィリピン、シンガポール)と日本文学研究者が、研究課題について、英語論集(2007年、マレーシア)と日本語論集(2008年、日本)を出版し、国際会議(2008年、台湾)を行うことで、共同作業による英語文学研究を推進する知的基盤を確立することができた。
著者
堂本 信彦 王 鏗智 森 徹 木村 郁夫 郡山 剛 阿部 宏喜
出版者
公益社団法人日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.1103-1109, 2001-11-15
参考文献数
36
被引用文献数
12 13

ホキ, ミナミマグロ, ヤリイカをミンチし, 加熱殺菌後, 麹菌, 食塩, 水, 乳酸菌を添加しもろみを調製した。発酵中に酵母を添加し, 発酵調味料(魚醤油)を製造し, 6ヵ月間の熟成中の成分変化および最終品の品質について検討した。新規発酵調味料のpHは4.8∿5.0と穀醤油に近く, 全窒素分は1.78∿1.86%と従来の魚醤油(ニョク・マム)に近い値となった。また, 遊離アミノ酸ではグルタミン酸, アラニン, ロイシン, リシンの量が多かった。官能評価の結果, ニョク・マムを対照とした不快臭の強さは3種の試料すべてで低く, 従来の魚醤油の臭いが軽減された発酵調味料が得られた。また, 味の面では塩かどがなく, まろやかなことが特徴であった。
著者
山森 良枝
出版者
神戸大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

平成16年度は、<日本語の複数>表現の記述と仕組みの究明を目的に、アトムを基本単位とする意味対象領域を仮定し、質量性と複数性を連続的なものとみなす理論的立場から分析を試みた。その結果、以下が明らかになった。(1)一般的に、名詞述語には、quantized述語とcumulative述語がある。前者は可算名詞に対応し、非等質的集合に属する非連続的部分を増加して得られる外部複数を形成する。一方、後者は質量名詞に対応し、等質的集合を内的に分割して得られる連続的部分の範囲を複数として捉える内部複数を形成する、とされる。(2)しかし、日本語の普通名詞は質量性をその意味特徴とする。そのため、日本語ではquantized vs.cumulativeの対立ではなく、数量詞が結合する名詞の表す集合が等質集合か非等質集合かに応じて、前者の場合に外部複数、後者の場合に内部複数が形成される。(3)内部複数を作る典型的な装置には、単一の単位を表す類別詞、計量句や(計量単位として使用される)容器名詞がある。他方、区分を表す名詞、組織の下位区分を表す名詞は外部複数の装置である。(4)日本語では稀な数詞が直接普通名詞と結合される可算名詞構造は、当該名詞が予め規定され、前提された集合の最大範囲を表す場合にのみ使用される。(5)本質的に可算的アトムとして認定される集合名詞を除けば、日本語では、名詞の表す集合のサイズが規定されている場合には、それを内的に分割した部分の範囲を表す可算名詞構造によって、また、集合が規定されていない場合には、類別詞などを介して、(どちらの場合にも)内部複数を形成し、(可算性を特徴とする英語などの普通名詞と同じ)、アトム・レベルでの複数化を実現している。(6)以上から、日本語のような質量性を特徴とする名詞をもつ言語でも、計算のより容易なアトム・レベルでの計量が選好されていることが裏付けられる。