著者
石毛 美代子 新美 成二 森 浩一
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.347-354, 1996-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
25
被引用文献数
4 3

声帯振動の状態を調べる方法の一つにElectroglottography (以下EGG) がある.EGGは非侵襲的で, 操作が容易, かつ装置が高価でないなど, 音声の研究のみならず臨床においてもすぐれた有用な特徴を持っている.欧米では音声障害患者のルーチンの検査として用いることも少なくない.しかしわが国においては, EGGを使用している施設はむしろ限られており, 声帯振動の一般的な評価方法として普及しているとはいい難い.そこで, あらためてEGGの原理や必要最小限の装置としてどんなものがあれば実際に使用することができるか, 波形から声帯振動の何がわかるか, さらにEGGの模式波形と実際の波形はどのように異なるか, などについてこれまでの研究結果を概説し, EGGが声帯振動の評価として, また音声訓練のバイオフィードバックとして, 簡便でかつ有効な方法であることを述べた.
著者
大坪 庸介 島田 康弘 森永 今日子 三沢 良
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.85-91, 2003 (Released:2004-02-17)
参考文献数
16
被引用文献数
8 6

本研究では,日本の医療機関において職種内・間の地位格差により円滑なコミュニケーションが阻害されることがあるかどうかを,質問紙調査により検討した。質問紙では,職場の特定の対象が投薬量を間違っているのではないかと感じられる場面を想定してもらい,その相手に対してエラーの指摘をするのにどの程度の抵抗感を感じるかを尋ねた。調査対象は医師・看護師・薬剤師であり,それぞれの対象者ごとに同僚・先輩・後輩・その他の職種などを指摘対象として想定してもらった。結果は,同職種内では後輩より同期の相手に,同期より先輩に対して指摘に抵抗感があることを示していた。また,異職種間でも,看護師・薬剤師が医師に対して指摘する場合の抵抗感の方が,医師が看護師・薬剤師に対して指摘を行う場合の抵抗感よりも強かった。したがって,職種内・間の両方で程度の差こそあれ地位格差によるエラー指摘への抵抗感が存在することが示された。また,エラー指摘の抵抗感の程度には病院差があることも示された。今回の質問紙調査の限界と,今後,医療事故を減らしていくために必要とされる研究について考察した。
著者
森 信介 中田 陽介 Neubig Graham 河原 達也
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.367-381, 2011 (Released:2011-12-28)
参考文献数
15
被引用文献数
3 6

本論文では,形態素解析の問題を単語分割と品詞推定に分解し,それぞれの処理で点予測を用いる手法を提案する.点予測とは,分類器の素性として,周囲の単語境界や品詞等の推定値を利用せずに,周囲の文字列の情報のみを利用する方法である.点予測を用いることで,柔軟に言語資源を利用することができる.特に分野適応において,低い人的コストで,高い分野適応性を実現できる.提案手法の評価として,言語資源が豊富な一般分野において,既存手法である条件付き確率場と形態素 n-gram モデルとの解析精度の比較を行い,同程度の精度を得た.さらに,提案手法の分野適応性を評価するための評価実験を行い,高い分野適応性を示す結果を得た.
著者
竹森 啓子 下津 咲絵 佐藤 寛
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.163-171, 2022-05-31 (Released:2022-07-28)
参考文献数
27

本研究は教員のメンタルヘルスリテラシー(MHL)と児童のサポート知覚、抑うつ、不安の関連を検討することを目的とした。14名の教員とその担任学級の児童425名を対象に質問紙調査を実施した。その結果、教員のMHLと児童のサポート知覚は相関関係にはないことが示された。また、階層線形モデリングの結果、児童の抑うつ症状の抑制には教員からのサポートを学級全体が知覚することと、児童個人が知覚することの両方が有効であるであることが示された。一方で児童の不安症状の抑制には児童個人がサポートを知覚することのみが有効であった。さらに教員が対処法に関するMHLが高いことが児童の不安が抑制されることが明らかになった。以上の結果を踏まえて、教員対象のMHL教育の在り方を議論した。
著者
森田 亜矢子
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.41-64, 2019 (Released:2019-11-30)

本稿では、「快によって調整されたヒューリスティックな方略を可能にする情報処理機構」の存在を仮定して、可笑しみを「不快を快で凌駕する能動的体験」ととらえ、可笑しみの生起過程における主体の記憶や学習および主体内部の情報ネットワークとの関連に着目しながら、他性との接触を継続するよう私たちを導く可笑しみの体験について考察を試みた。
著者
森田 有香
出版者
日本小児放射線学会
雑誌
日本小児放射線学会雑誌 (ISSN:09188487)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.69-74, 2022 (Released:2022-10-20)
参考文献数
11

頭部MRIは被ばくすることなく,多くの形態学的情報・機能的情報をもたらすことができる画像検査である.しかしながら,MRIは検査時間が長いため,未就学児のほとんどや障害のある児では鎮静処置が必要となる.また,成人や年長児の脳と比較して水分含有量の多く,髄鞘化の未熟な新生児や乳幼児では,小児に合わせたパラメータ設定や,必要な撮像シークエンスの選択を予め行っておかなければならない.本稿では,小児頭部MRIを撮像する上で知っておいていただきたいコツについて解説する.
著者
森島 恒雄
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.59-66, 2009-06-25 (Released:2010-02-01)
参考文献数
18
被引用文献数
4 3

小児の急性脳炎・脳症は,毎年約1,000例と多数の報告がある.その一方,詳細な病因別頻度,予後,病態など不明な点が多く,単純ヘルペス脳炎やインフルエンザ脳症など一部の疾患を除いては治療法も確立していない.ここでは,厚生労働省「インフルエンザ脳症研究班」および文部科学省基盤A研究班のデーターを中心にこの領域における最近の知見をまとめてみたい.
著者
前川 慶之 阿部 修一 内田 徹郎 浜崎 安純 黒田 吉則 水本 雅弘 中村 健 貞弘 光章 森兼 啓太
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.1405-1410, 2015 (Released:2016-12-15)
参考文献数
6

背景 : 1999年に米国疾病管理センターが発表した手術部位感染予防のガイドラインにおいて, 手術時に留置されたドレーンは可及的速やかに抜去すべきとされている (カテゴリーⅠB) が, ドレーン留置期間と手術部位感染の関係を定量化した報告はない. 目的 : ドレーン留置期間と手術部位感染の罹患率を定量化すること. 対象と方法 : 当院で開心術を受けた連続457例 (男298 : 女159, 年齢67.5±11.7歳). ドレーン留置期間, 手術部位感染の罹患率, 抜去時のドレーン先端培養汚染を評価した. 結果 : ドレーン留置期間は中央値5日 (四分位範囲3-7日) であり, 457例中19例 (4.1%) が手術部位感染を発症, また13例 (2.8%) のドレーン先端が細菌汚染を起こしていた. ドレーン先端培養陽性と手術部位感染には統計学的相関を認めた (χ2検定, p<0.001, オッズ比12.7, 95%信頼区間3.5-45.9). ロジスティック回帰分析より, ドレーン留置期間と手術部位感染 (p<0.01, 寄与率6.1%), ドレーン留置期間とドレーン先端汚染 (p<0.01, 寄与率6.8%) と相関関係が認められた. 手術部位感染の起因菌は黄色ブドウ球菌が多数を占めた (14/19例) 一方, ドレーン先端汚染はコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が半数を占めた (7/13例). 結論 : 開心術後において, ドレーン留置期間, 先端培養汚染, 手術部位感染はそれぞれ関連性があった.
著者
林 伸和 森 直子 内方 由美子 是松 健太 可児 毅 松井 慶太
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.434-444, 2021 (Released:2021-07-03)
参考文献数
9

過酸化ベンゾイルゲル(ベピオ®ゲル 2.5 %,以下,本剤)は,2014年12月に尋常性痤瘡を効能として承認された,抗菌作用および角層剥離作用を有する薬剤である.2015年7月より本剤の日常診療下における尋常性痤瘡に対する特定使用成績調査を実施し,観察期間12ヵ月間での安全性および有効性について検討した. 安全性解析対象症例の15.2%(169/1109例)に副作用が認められた.重篤な副作用として適用部位紅斑が1例認められたが,それ以外は非重篤であった.副作用発現症例169例すべてに,医薬品リスク管理計画で「重要な特定されたリスク」とされている皮膚刺激症状がみられており,そのうち119例は本剤使用1ヵ月以内に発現していた.女性や乾燥肌,敏感肌の症例等で皮膚刺激症状の発現頻度が高い傾向がみられたが,特に本剤の使用を回避すべき患者層はなかった. 全顔の皮疹数の減少率(中央値)は,12ヵ月後までの最終評価時において,炎症性皮疹が80.0%,非炎症性皮疹が66.7%,総皮疹が73.9%であった.また,最終評価時の全般改善度「著明改善」または「改善」と判定された症例は,顔面で71.4%(788/1103例),顔面以外で64.1%(59/92例)であった.Skindex-16日本語版を用いたquality of life評価において,症状,感情,機能および総合スコアの全てが本剤使用開始時と比べて3ヵ月後に有意に減少しており,本剤使用12ヵ月後においても減少状態が維持されていた. 以上より,本剤は実臨床において,急性炎症期だけでなく長期使用した場合にも有用な薬剤であることが示された。
著者
森下 葉子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.182-192, 2006-08-20 (Released:2017-07-27)
被引用文献数
14

父親は,子どもとの関わりを通して精神面・行動面においてどのような変化を遂げるのだろうか。本研究は,その内容を明らかにし,その規定因を育児関与の頻度および個人的要因・家族要因・職場要因の3要因から検討したものである。まず,父親の発達の内容を明らかにするために,3〜5歳の子どもの父親92名を対象に自由記述による質問紙調査を,さらにそのうちの23名に対し個別面接調査を行った。そこで得られたエピソードから尺度を作成し,それを用いて第1子が未就学児である父親224名に質問紙調査を行った。その結果,父親になることによる変化として&lceil;家族への愛情&rfloor;,&lceil;責任感や冷静さ&rfloor;,&lceil;子どもを通しての視野の広がり&rfloor;,&lceil;過去と未来への展望&rfloor;,&lceil;自由の喪失&rfloor;の5因子が抽出された。これら5因子と育児関与,性役割観,親役割受容感,親子関係,夫婦関係,職場環境,労働時間との関連を検討した結果,&lceil;自由の喪失&rfloor;以外の4因子は,育児に関心をもつことにより促され,そして,育児への関心は親役割を受容していること,平等主義的な性役割観をもっていること,夫婦関係に満足していること,子どもとの関係を肯定的に認識していることにより,促されることが示された。
著者
森田 学 西川 真理子 石川 昭 木村 年秀 渡邊 達夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.158-163, 1997-04-30 (Released:2017-10-20)
参考文献数
22
被引用文献数
3

つまようじ法とフロッシングを併用したバス法の2種類の刷掃法について,歯肉炎に対するマッサージ効果を比較した。実験的歯肉炎を有する24名の男子学生を対象とした。各被験者の上下顎を左右に2分割した。それぞれランダムに,一方をつまようじ法で刷掃する部位,残りの2分の1顎をバス法で磨き,かつデンタルフロスで清掃する部位とした。以降,歯科医師が毎日1回,21日間,染色された歯垢が完全に取り除かれるまで,被験者の口腔内を清掃した。刷掃方法の割付を知らされていない歯科医師が,歯周ポケットの深さ(PD)とプロービング時の出血(BOP)を診査した。また,上顎第1小臼歯の頬側近心歯間乳頭と頬側中央部の遊離歯肉の上皮の角化程度を,パパニコロ染色法により判定した。その結果, 1. 21日後には,つまようじ法で刷掃した部位のBOP値が,バス法とデンタルフロスで清掃した部位の値よりも有意に低かった。2. つまようじ法で刷掃した歯間乳頭部のみ,ベースラインと比較して,21日後には角化細胞数の割合が有意に増加した。3. 歯垢が完全に除去されるまでに要した時間では,つまようじ法の場合は,バス法とデンタルフロスを併用した場合の約70%であった。以上の結果から,つまようじ法はデンタルフロスを併用したバス法と比較して,短時間で,より有効なマッサージ効果を得られる可能性が示唆された。
著者
春日 光 森本 弘一
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.11-18, 2016-07-12 (Released:2016-08-09)
参考文献数
9

理科の授業において, 「観察・実験」は必要不可欠である。しかし, 小学校では必ずしも理科が得意な教員が授業をしているとは限らず, 多くの危険が潜んでいるといえる。本論文は, 過去の小学校理科実験の事故から明らかになった傾向を報告するものである。得られた知見は下記の通りである。(1)「金属, 水, 空気と温度」(第4学年), 「燃焼の仕組み」, 「水溶液の性質」(以上, 第6学年)の単元で事故が多く発生しており, 重大な事故につながりやすい。(2)現職の小学校教員に行った質問紙調査においても上記の単元の学習中に, 「危ない」と感じた経験があると回答する人が多い。(3)基本統計の傷害種別の事故件数の調査によると, 火傷よりも擦り傷, 切り傷等の傷害が多いことから, 日常的には実験中だけでなく観察活動中に負傷する事例も多いと考えられる。(4)児童1人あたりの年間事故件数の割合は, 偶然として無視できる確率(10–6)よりも高く, 事故件数をさらに減少させる必要がある。(5)過去30年を通して, 男子の方が女子に比べ負傷しやすい。以上のように, 本研究で明らかになった傾向は, 今後の理科実験における安全対策を考える上で貴重な情報を提供していると考えられる。
著者
丸山 翔永 森 太郎 大柳 佳紀
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.84, no.764, pp.911-918, 2019 (Released:2019-10-30)
参考文献数
12

Introduction Recently, highly insulated housings are increasing nationwide. Especially in Hokkaido, the development of wooden high insulated housing has been developed from the early days. The number of those housing supplied to the market was growing after the 1980s. Nowadays, those housings are renovating. It is a good opportunity to observe how various methods have influenced insulation performance and deterioration. The purpose of this research is to give insight into distribution of second-hand housing. We analyzed insulation performance such as Q-value and air-tightness of the housings with entire insulation renovation and the existing housings in Hokkaido.  Methods First, we conducted a questionnaire survey. The target housings are 51 housings (Hoppougata-Jyutaku) built in Asahikawa city, Sapporo city (Kita-ku, Toyohira-ku), Kitahiroshima city in the 1990s. Next, we conducted an inspection of the target housings. The target housings consist of 13 renovated houses (a1-a13) in Sapporo city, Kitahiroshima city, Tomakomai city and 17 existing houses in Sarufutsu town, Shimokawa town, Asahikawa city, Sapporo city and Takasu town (b1-b17).  Summary 1) The most frequent renovation was "painting or replacement the outer wall and roof." Also, there were many answers which conducted "replacement of heating and hot-water supply equipment at the same time." 2) About C-value of renovated housings, the RMSE of C-value was 0.56 cm2/m2 and the average absolute error rate was 43%. The C-value in the inspection, about ten years after renovation, were higher than the values just after renovation in many houses, and the airtightness was somewhat deteriorated. However, in most housings, no significant deterioration of the air-tightness was confirmed even after ten years from the renovation. It was confirmed that the performance can be maintained when wooden houses are adequately insulated and repaired.  About C-value of existing housings, those can be classified into the values under 2.0 that provide sufficient air-tightness compared with new houses and the values over 3.5 that not provide enough air-tightness. There were deteriorations such as moisture problem, dew, and fungi when the air-tightness was not enough. 3) About the Q-value, the average error between calculation values and measurement value was 0.32 W/m2K, and the average reliable section width was 0.36 W/m2K. Also, 36.4% of calculated values were within the reliable section, and few housings were below the calculation values. In the future, it is predicted that more reliable values can be calculated by conducting detailed examination of the heating area. 4) In this report, the housings with entire insulation renovation, the deterioration of insulation performance was hardly confirmed. However, in the case of cold climate areas, there is the possibility of deterioration in partial insulation renovation. Therefore, we will consider the finance system to achieve full insulation renovation, not partial renovation in the future.
著者
森光 高大 片岡 洋人 岡田 幸彦
出版者
日本原価計算研究学会
雑誌
原価計算研究 (ISSN:13496530)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.110-122, 2018 (Released:2021-09-15)
参考文献数
31

本稿は,筆者らが 2016 年 6 月から実施した日立製作所における調査・社内資料収集をもとに,当社の「超総原価計算制度」を採りあげ検討する。これは,販管費だけでなく,利子をはじめとする営業外費用を製品単位に配賦するなど,製品原価計算の一般論と異なる特徴を持つ。本稿の検討の結果,当該原価計算は,製品原価の集計のみならず,恒常的に価格決定や製品軸での採算把握に資する情報をも提供していることが明確になった。