- 著者
-
森川 洋
- 出版者
- 日本都市地理学会
- 雑誌
- 都市地理学 (ISSN:18809499)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, pp.1, 2021 (Released:2023-09-19)
日本とドイツの比較地理においてとくに注目されるのは,一極集中型の日本と多極分散型のドイツである.これと関連した対照的現象には,大都市人口比率や都市システム,地帯構造,企業本社立地,大学立地,国土政策などの差異が挙げられる.また高度経済成長期に対する対応の差異は両国の都市システムにも影響する.ドイツでは日本とは違って,大都市人口が少なく,企業本社も州立大学も全国的に分散的に立地し,大都市を中心とする全国的な地帯性はみられない.これに対して,日本では今日まで東京の成長が著しく,東京を中心とした地帯構造が形成されている.国土政策ではドイツにおいては「同等の生活条件」の確立が基本とされてきたが,最近になって成長目標が重視され,11のメトロポール地域も設定されている.日本の全国総合開発計画では「国土の均衡ある発展」が謳われ,東京一極集中の是正について考えられてきたが,大企業本社も大学も東京に集中しており,日本経済の牽引車として東京の機能を低下させるような厳しい措置が講じられることはこれまでになく,一極集中の是正策が十分な成果を収めたことはなかった.日本では東京圏と地方圏,そしてその両者を結ぶ地方大都市からなる地域社会が形成されている.地帯性の下では狭い国土が十分に活用されないし,東京圏では自然災害の危険性も強く,ドイツと比較するとき,東京一極集中は日本の社会経済の発展に真に役立つかどうか疑問に思われる.