著者
藤森 伸也
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.155-168, 1995-01-25
被引用文献数
21

チタンの表面を方向性のない凹凸面, あるいは方向性のある平滑面になるように準備した.方向性のない凹凸面はワイヤ放電加工(Wire-EDM)およびプラズマコーティング(Plasma)で作製した.平滑面は#1500のエメリー研磨紙で研磨することにより作製した(Emery).チタンの表面性状を, 表面粗さの測定, SEM観察, XPS分析およびX線回折分析により表面分析した.マウス由来の骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)を各チタン試験片上に播種し, 15日間培養した.細胞増殖のマーカーとしてDNA量を, 細胞分化のマーカーとしてアルカリフォスファターゼ(ALP)活性およびCaとPの生成量を測定した.コントロールとして培養用のガラス板(TCP)を用いた.Wire-EDM, Plasma, Emeryの表面粗さ(Rmax)はそれぞれ20.5, 31.4, 0.80μmであった.Wire-EDMは多数の小さな凹凸の集合した不規則形状を有していたが, くぼみの深さは比較的均一にそろっていた.一方Plasmaは凹凸がより不規則であり, 多孔質形状を有していた.Wire-EDM表面にはPlasmaやEmeryよりも有意に厚い酸化皮膜が生成しており, それらは表層から内部へ向かってTiO_2, TiO, Ti_2Oで構成されていた.細胞のDNA量は全ての試験片上で経時的に増加したが, 9日目以降はWire-EDMとPlasmaでEmeryおよびTCPよりも有意に増加した.今回用いた細胞は増殖および分化することによりALP活性を発現することが認められている.DNA 1μm当たりのALP活性は, 9日目以降Wire-EDMとPlasmaでEmeryおよびTCPよりも有意に増加した.15日目のWire-EDMおよびPlasma上の細胞が生成したCa/P比は1.26, 1.28であり, EmeryおよびTCPよりも有意に上昇していた.以上の所見より今回用いた骨芽細胞様細胞は, 同じチタン試験片上でも方向性のある平滑面よりも方向性のない凹凸面上で増殖が加速され, 細胞分化も活発になっていることが認められた.細胞の形態観察によると, Wire-EDMやPlasmaでは, 細胞は凹凸の縁に橋渡しをするように突起を成長させながら伸展していくことが認められた.従って細胞の形態の変化が分化を誘導したものと考えられる.今回の実験結果より, インプラントの骨接触面には方向性のない凹凸面が好ましいことが示唆されたが, 最適なミクロ形状を付与するためにさらに研究が必要である.
著者
内田 勝也 矢竹清一郎 森 貴男 山口 健太郎 東 華枝
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.16, pp.327-331, 2007-03-02
被引用文献数
9

企業、組織において、IT 技術の革新により対象業務が飛躍的に高度化し、システム管理者や管理職に対して、組織をより強固にするために、IT 技術に関する調査、攻撃者の動機、組織の脆弱性を考慮することが求められてきた。近年、脅威は多様化しており、多くの攻撃者は人間の脆弱性を攻撃する手法、いわゆる"Social Engineering"を利用するようになってきた。このような攻撃に対して近年の技術的対策や物理的対策だけで解決することは非常に困難になっている。このため、攻撃者、利用者や管理者に関する心理学的研究は、従来の情報セキュリティ対策を飛躍的に向上させることが考えられる。本論文では心理学的な側面からの研究を「情報セキュリティ心理学」とし、その確立を目指したい。Developing information technology and hardware technology makes System Administrators and Managers consider not only many information technologies to make organizations become more secured but also attackers motivation and organization's vulnerability. Recently the threat has become diversification, many attackers take advantage of "Social Engineering" which can be regarded as 'hacking a psychological weakness'. It is very difficult to protect or to prevent these attacks by recent system solutions & physical solutions. Therefore information security level can be improved by psychological research for attackers, end users, and managers of the information systems. We propose for establishing "Information Security Psychology" in the information security.
著者
加藤 みゆき 田村 朝子 水落 由美子 大森 正司 難波 敦子 宮川 金二郎
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.561-565, 1993-07-15
被引用文献数
5

Awa-bancha, a kind of post-heating fermented tea, is produced locally at remote and secluded place in the mountains of Tokushima prefecture in Japan. The present study was undertaken to investigate the changes of the components in Awa-bancha during the manufacturing process. Optical density of the tea infusion at 380 nm increased, but amounts of catechins and amino acids in the infusion decreased with the proceeding of the process. The presence of organic acid such as oxalic and citric acids were found before the fermentation. In addition to the above acids, lactic and acetic acids were identified after the fermentation, which were thought to be products of microbiological fermentation. Content of caffeine did not change during the process.
著者
森田 圭介 中脇 博文 渡辺 敏正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション
巻号頁・発行日
vol.95, no.13, pp.11-20, 1995-04-21
被引用文献数
4

ペトリネットの発火系列問題とは与えられた初期マーキングから順次発火できるトランジションの系列で,各トランジションが予め指定された回数だけ出現するものを見つける問題である。まず,ステートマシン(トランジションの入出力枝がそれぞれ1本以下のペトリネット)の発火系列問題に対して,計算時間,記憶容量共にO(|X|)に短縮した解法を提案する。ここで|X|は各トランジションの出現回数の総和である。次に,その拡張である枝重み付ステートマシンの発火系列問題に関して,技重みが2種類であるいくつかの部分族に対する線形時間解法についても述べる。
著者
鄭美紅 成田 佳慶 樫森与志喜 星野 修 神原 武志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.37, pp.27-30, 2001-05-10

突発的騒乱に対して魚群が示す秩序的集団対応において個体間の相互模倣がどのような働きをするのかを調べるために 我々は魚群の群行動をシミュレーションするモデルを提案した。このモデルは個体の意志決定のルールに基づくモデルである。近隣個体に対する模倣は群れ行動になる一つの要素として考えられている。そのほか 衝突回避行動も群れ行動になるもう一つの方策と思われている。我々の研究では 個体が隣魚の何をどのように、そしてどの程度真似することについて調べた。スクール運動に最適な相互模倣をする群れは自己組織臨界状態であることを明らかにした。さらに 最適模倣の群れは 突発的騒乱に対して優れた動的安定性を持つのかについて調べた。本研究では 魚群の突発的分裂および発散を二種類の突発的騒乱として採用された。魚群の動的安定性を評価する量は分裂及び発散された群れが一つの群れに戻る回復時間と回復臨界距離の二つの量である。調べた結果により我々のモデルは突発的騒乱に陥った魚群の秩序的対応に対しても有効であることが分かった。A simulation model of collective motion of a fish group was presented to investigate the role of allelomimesis of fish individual in emergence of dynamically stable schooling behaviors. It was shown that the schooling behaviors generated using the optimal values of the allelomimesis rate correspond to a self-organized critical state. The main purpose of the present modeling is to investigate whether the tactics of individual decision-making suited to generate good schooling behaviors work well also in maintaining dynamical stability of the fish school under emergent affairs. It was found that the tactic suitable for schooling generates the dynamically stable response of the school to emergent affairs.
著者
重松 峻夫 石沢 正一 森川 幸雄 倉垣 匡徳
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.5-15, 1965-01-20

九州の四つの大手炭坑と137の中小炭坑をそれぞれ合して,その従業員及び扶養家族の1961年度における生命表を,社会保険,労災保険の資料により作製した。得られた平均余命・生存率・その他の生命表指数を検討し,次のような結果を得た。 1) 大手炭坑の従業員ならびにその家族の生命表からみた健康度は,全国平均よりも遙かに優れていた。 2) 中小炭坑の従業員並びにその家族の健康度は,全国平均より優れているが,大手炭坑よりも劣っていた。 3) 大手炭坑の20∼54才の従業員の健康度は,同年令階級の全国平均よりも非常に優れているが,中小企業では逆に著しく劣っていた。 4) 55才における平均余命は,中小炭坑の従業員がもっとも大であって,全国平均のみならず,大手炭坑よりも優れていた。 5) 大手炭坑の男の従業員ならびにその家族は,55&Sim;60才の年令階級を除き,他のすべての年令階級において,全国平均より健康度において優れていた。55∼60才の年令階級においては,大手炭坑の男は全国平均より劣っていた。 6) 大手炭坑について調べたところでは,坑内労働者およびその家族の健康度は,坑外労働者およびその家族よりもかなり劣っていた。家族を除き労働者のみを比較しても,坑内労働者は坑外労働者に比し劣っていた。ただしこの坑内・坑外の差は,過去に比し小さくなったと考えられる。
著者
垂水 公男 萩原 明人 森本 兼曩
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.269-276, 1993-07-20
被引用文献数
9 4

都市部の企業に勤務する21〜60歳のホワイトカラー(男子)を対象に,労働に起因する精神心理的負担と血圧との関連性についての横断調査を行った.高血圧を招来しうる可能性がある疾患を有するものを除外した570名について検討した.このうち,健康診断時の血圧値の変動が大きい109名を除いた461名を対象に,血圧区分を目的変数(正常血圧群: 386名,高血圧群: 75名)に,従来から指摘されている血圧変動要因である年齢,肥満,飲酒,喫煙,運動習慣,客観的な労働負担要因として労働時間,通勤時間,年次有給休暇取得,家族との同居,また主観的な労働負担要因としてKarasekのjob strainの10変数を説明変数とするロジスティック回帰分析を行った.その結果,job strainは,従来からの血圧の変動要因や客観的な労働負担要因を調整した上で,統計的に有意なodds比を示した.しかし,その関連性は,job strainが低い場合に高血圧の頻度が高くなる方向で関連していた.その理由として,高血圧の家族歴に代表される個人特性が介在していることが推測された.一般的な理解とは逆に,Theorellは,高血圧の家族歴を有するものでは,外界の刺激に対する反応性が低い傾向があることを指摘しており,こうした個人特性が今回の結果にも関連していると考えられた.労働に起因する精神心理的負担は,最近問題になっている作業関連疾患の概念とも関連して重要であり,さらにこうした個人特性や客観的な労働負担を勘案した追跡調査によってその影響が検討される必要がある.
著者
茅 陽一 手塚 哲央 森 俊介 辻 毅一郎 小宮山 宏 鈴木 胖
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

I.統合型エネルギーシステム(IES)1)システム構成の分析と効果の評価:3種の統合概念を提案した。第一は供給面での統合で供給の量・価格変動に対処し、第二は需要面の統合で需要の変動に容易に対応し、第三は規模の統合で同一システム内で異なる規模の設備を包括、両者の欠陥を補完する。これらの利点を数値的に示し、更にこの柔構造を有するシステムがCO_2削減にも効果的に対応出来ることを示した。2)CO_2の海洋循環と回集技術:地球温暖化対策の基礎として海洋での炭素循環を検討し有機炭素の役割の重要性を数値的に示した。また、産業から排出されるCO_2回収と海洋への廃棄の基礎的検討をした。3)高温核熱によるCO_2排出削減:IESの一つの方式は原子力の拡大利用で、高温核熱がエネルギー変換に有効に利用出来、結果的にCO_2削減に有効であると示した。4)規模の経済性の検討:電力システムを対象に検討し、設備建設コストの規模の経済性が認められる一方で、稼動率やシステムの周辺コストで規模のデメリットが認められることを示した。II.広義のロードマネージメントの研究1)分散型エネルギーシステム導入のポテンシアル:近畿地方を対象に、地域的需要分布を詳細に調査・モデル化し、太陽光及び燃料電池の導入のポテンシアルを検討し、かなり高い可能性があることを示した。2)民生部門におけるロードマネージメント:近畿地域対象の詳細民生需要モデルを作り、その調整可能性を検討した。電力のロードマネージメントの有効化にはガス冷房の普及が鍵となること等興味ある知見を数多く得た。3)コージェネレーションの民生利用評価:民生建築物を対象に運用モデルを作成、特に需要パターンがシステム選択に及ぼす影響を検討し、システム評価手法を提案した。4)産業用の共同火力運用プログラムの開発:産業での自家発電設備やコージェネレーションの運用に多大の示唆を与える知見が得られた。
著者
安本 亮二 浅川 正純 尾崎 祐吉 堀井 明範 梅田 優 田中 重人 森 勝志 西島 高明 山口 哲男 川喜多 順二 西尾 正一 前川 正信
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1765-1768, 1988-11-20
被引用文献数
2

最終濃度3,000μg/mlになるように作成したHPC-PEPを8例に,Saline-PEPを3例に投与し,両群における,1)尿中PEP濃度の経時的推移,2)PEPの血液内への移行,さらに,3)尿中PEP濃度を用いた薬物動態力学的パラメーターの違いを検討した.HPC-PEP法では,尿中PEPの時間的推移は投与後6時間後では61.0μg/ml(15〜90μg/ml),12時間後では16.4μg/ml(0.09〜73μg/ml),1日目では18.3μg/ml(0.3〜105μg/ml),2日目では13.1μg/ml(0.24〜50μg/ml),3日目では6.25μg/ml(0.07〜53μg/ml),4日目以降は平均値0.03μg/ml以下でいずれも測定限界以下であった.一方,Saline-PEPを膀胱内へ注入した場合,投与後3時間後では0.05μg/ml(0.04〜0.06μg/ml)を示したが,それ以降3日目まですべて測定限界値以下であった.薬物動態力学理論で解析すると,Saline-PEP法では半減期が平均4.18時間であるのに対し,HPC-PEP法では平均51.0時間と有意に延長しており,PEPの膀胱内での貯留性が示唆された.以上より,HPC-PEPの膀胱内注入療法は薬物動態の検討より,従来のSaline-PEP法より優れている臨床的に有用な膀胱内注入療法と考える.
著者
森 定雄 高山 森 後藤 幸孝 永田 公俊 絹川 明男 宝崎 達也 矢部 政実 高田 かな子 清水 優 大島 伸光 杉谷 初雄 大関 博 中橋 計治 日比 清勝 中村 茂夫 杉浦 健児 田中 鍛 荻原 誠司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.447-453, 1996-05-05
被引用文献数
7 2

較正曲線作成用標準試料の相違が平均分子量計算値にどのような影響を与えるかを比較し検討した.ここではポリスチレン(PS)試料の重量平均分子量(M_w)で, 示差屈折計で得られた値のみについて比較した.較正曲線作成に同一供給会社の標準試料を用いた場合(9測定機関)の第1回ラウンドロビンテスト(RR-1)(分子)と第2回テスト(RR-2)(分母)のM_wの比は平均値で1.03〜1.04となった.このうち最も大きい比は1.17,最も小さい比は0.95であった.高分子領域の標準試料濃度を低くし, 1溶液中の標準試料混合数は3〜4点とし, 同じけた数の分子量領域では標準試料使用数は少なくとも2点用い, 適切なカラム組み合わせのもとで測定することによりこの比は1.01〜1.03とすることができた.較正曲線作成用標準試料の供給元が異なっても, 測定点を通るスムーズな直線ないし三次式が求められる限り, 試料の分子量測定値に大きな差が認められないことが分かった.いいかえると, 同一標準試料を用いても, 測定点をスムーズに通らない較正曲線では分子量測定値に大きな差が認められた.比較検討の結果, 不適切なデータを除いたRR-1とRR-2の全平均値のRSDは約3.9%となり, このときの三つのPS試料のM_wは次のようになった.PS-1 3.98×10^5,PS-2 2.40×10^5,PS-3 1.66×10^5.これらの数値は標準試料の供給元の相違によらず, 現時点における適切な測定条件を考慮して得ることができる平均分子量値とRSDであると結論付けられる.
著者
森 悦朗 山鳥 重 須山 徹 大洞 慶郎 大平 多賀子
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.450-458, 1983 (Released:2006-08-11)
参考文献数
25
被引用文献数
3 2

Two cases with the mildest form of Broca's aphasia were studied neuropshychologically and neurologically. In case 1, a 58-year-old right-handed man had dysarthria, literal paraphasia, and literal paragraphia because of development of glioma. Comprehension was excellent. There were the right central and hypoglossal paresis and abolition of gag reflex. The site of lesion confirmed by computerized tomography and operation was in the lower part of the left precentral gyrus. A month after the resection of the tumor, only paragraphia improved. In case 2, a 58-year-old right-handed man developed the essentially same neurological and linguistic symptoms as those of case 1. Computerized tomography demonstrated a small hematoma probably restricted in the left inferior precentral gyrus. Three months later, the symptoms subsided except for slight dysarthria and dysgraphia. On the basis of literature and our two cases, it may be concluded that the left inferior precentral gyrus plays an important role not only in articulation but also in writing, and that this area is a more critical zone for Broca's aphasia than the foot of the left third frontal gyrus.