著者
森末 道忠 上田 和宏 坂本 政祐
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C-II, エレクトロニクス, II-電子素子・応用 (ISSN:09151907)
巻号頁・発行日
vol.82, no.7, pp.398-406, 1999-07-25
被引用文献数
5

非同期式ディジタル回路を実現するための新しい単一磁束量子(SFQ)の一線式論理回路を提案している. 従来の非同期式計算機回路では, アクノリッジ(acknowledge)信号やリクエスト(request)信号を用いるハンドシェイク(handshak)方式が一般に用いられているが, ここではその欠点を補う方式の回路を考案した. ここで用いる方式は論理"1"をSFQの正方向信号, 論理"0"を負方向信号に対応させた一線式の方式であり, これにより"0"の入力信号を明確認識して, 非同期でシステムを動作させることができる. このような方式でのディジタル回路として排他的論理和回路, 否定回路及びAND回路を提案し, シミュレーションにより動作の確認を行っている. 排他的論理和回路の例では, 動作遅延速度は13ps/ゲート, 消費電力は24nW, 動作マージンは±36%であることを示した.
著者
森下 正明
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.269-289, 1996-04-25
被引用文献数
26

The influences of sample size on the index values of species diversity were examined for various indices which have been used hitherto in community studies, together with several indices newly proposed in this paper. Samples of various sizes ranging from 50 to 4,000 individuals were taken randomly from each of nine types of artificial communities which were set up using paper tips, each representing an individual, and the calculated index values of these samples were compared with each other for each community. The paper tips were made by cutting a card board in about 1×1 cm size. The indices which were least affected by sample size were divisible into three groups. The first group included the β index and allied ones. The indices of the second and third groups had values corresponding to the square root and the logarithm of the respective index values in the first group. The first and the second group satisfied the following quantitative relationship, which has preferable characteristics of diversity index : diversity=richness×evenness. A new method was proposed for estimating the total number of species in the mother community from a sample. The results of comparison between the estimated and actual numbers of species in artificial communities showed that the method might be effective for practical use. The samples of artificial communities were compared with the samples of natural communities, and a number of examples which showed fairly good similarity of structure were found in both communities. It is suggested that not only in artificial communities but also in natural ones, the number of species found in a sample would not reach half the number of species in the mother community when the sample size is smaller than 100 and the value of the β index is larger than 10.
著者
中澤 高清 森本 真司 塩原 匡貴 和田 誠 青木 周司 山内 恭 菅原 敏
出版者
東北大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

1998年7月、1998年12月〜1999年3月にスバールバル諸島ニーオルスンにおいて、大気中の温室効果気体やエアロゾルなどの実態の把握を目指し、集中観測を行った。これらの観測から、北極域におけるCO_2、CH_4、O_3の変動が詳細に捉えられると同時に、CO_2データは海水表層でのCO_2交換の評価のための基礎データとなった。エアロゾルについては今回の集中観測で多くの基礎データの蓄積がなされ、冬から春にかけての極域におけるエアロゾルの特徴をとらえることができた。北極域における大気微量成分の広域3次元分布、特に極渦の形成・崩壊期に着目した輸送・循環・変質の過程を調べるため、1998年3月6日〜14日の期間、航空機にオゾンおよびCO_2の連続測定装置、大気サンプリング装置、エアロゾル計測装置、エアロゾルサンプリング装置等を搭載し、観測を実施した。観測は北極点を通過し北極海を横断する長距離高高度飛行(巡航高度12km)を基本とし、その他、スピッツベルゲン島近海上空およびアラスカ州バーロー沖合上空では海面付近から高度12kmまでの鉛直プロファイルの観測を行った。機器は概ね順調に動作し、良好なサンプルやデータを取得することができた。その結果、(1)CO_2やO_3濃度は圏界面高度で不連続に変化し、圏界面を挟んで鉛直混合が大きく妨げられる様子が確認された、(2)CH_4とN_2O濃度に見られた正の相関は前年度にスウェーデンで実施された大気球による北極成層圏大気の観測結果と良い一致を示した、(3)硫化カルボニル(COS)の高度分布測定から、COSが成層圏エアロゾルの硫黄供給源であることを示唆する結果が得られた、(4)北極ヘイズ層は多層構造をなし対流圏上部まで到達することがあった、(5)エアロゾルの直接サンプリングにより、成層圏・自由対流圏では主に硫酸粒子、下部混合層では海塩粒子の存在が確認された。
著者
茅 陽一 手塚 哲夫 森 俊介 辻 毅一郎 小宮山 宏 鈴木 胖
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1988

1)統合型エネルギーシステムに関する研究 近年の地球環境、中でも温室効果問題の関心増大を考慮して、現在はCO_2(二酸化炭素)の発生抑制を基本目標として作業を行なった。a)LPモデルによるCO_2の発生抑制シナリオの検討、b)化石燃料の2次エネルギー転換時のCO_2の除去のためのプロセスの化学工学的概念設計、c)エネルギーシステムの個別機器及びシステムの規模の経済性の検討。a)従来システムと異なる化石燃料の二次エネルギー(CO、H_2等)への転換設備を含むLP型システムモデルを開発し、CO_2の抑制量を変化させた時、そのシステム構成・総コストの変化を検討した。この結果CO_2の数十%迄の抑制は、海洋投棄がエコロジカルに可能ならば、さほどの不経済を伴わないが、それ以上の抑制は電力の熱需要充当を必要とし、システム効率の大幅な低下をもたらす、との結果を得た。また、従来型システムに比して原料価格変動に遙かに強いことを立証した。b)化石燃料からメタノールに至る変換の過程で、かなり工業的に可能性の高いCO_2除去プロセスが可能であるとの示唆が得られた。c)電力系統中心の分析の結果、個別の機器については、送配電部門でデメリットが現れている可能性が高い。2)都市を中心とするエネルギーシステムの研究近畿地域を対象とし、研究基盤であるエネルギー需要モデルの改善とデータの更新した。そして太陽光発電及び都市ガスコージェネレーションを想定し、モデルによりそれが従来システムに代替するポテンシアルを推定した。更にコージェネレーションシステムについては、民生用を対象とし、建物用途・規模・運転時間帯を入力可能とするモデルを作成し、建物用途毎に(事務所・デパート・ホテル)適したシステム構成・運転方式・建物規模を検討すると共に、システムの運転時間帯の影響も検討した。また、蓄熱諸方式の経済的・技術的特性の予備調査も行った。
著者
山田 古奈木 森 健 入江 誠治 松村 万喜子 中山 勝司 平野 隆雄 須田 耕一 押味 和夫
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.1103-1108, 1998 (Released:2009-04-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1

症例は41歳男性。平成7年10月発症の急性骨髄性白血病(M1)。2回の寛解導入療法に不応であったが,3回目の治療後寛解を得て,平成8年4月HLAの一致した兄をドナーとして同種骨髄移植を行った。移植後好中球数は20日目に500/μlまで回復し,その後さらに増加したが,移植前より合併していた真菌症が急速に悪化し移植後31日目に死亡した。剖検では,全身性真菌症の所見を呈し,心筋刺激伝導系への真菌の浸潤が死亡の直接の原因と考えられた。急性GVHDはみられなかった。剖検時に採取した患部組織の培養より,Aspergillus flavus (A. flavus)が検出され,アフラトキシン産生株であることが判明した。アフラトキシン産生性のA. flavusが臨床検体から分離されたのは本例が初めてである。
著者
森 雅生
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.12, pp.211-216, 2002-02-14

安全な暗号プロトコルの十分条件について、Dolevら[4]が提唱したピンポンプロトコルをモデルとして考察する。この条件は暗号化する前のメッセージに送り手の名前を挿入するものであり、本論文では、これが一般のピンポンプロトコルで安全であること十分性の証明を与える。A sufficient condition for secure protocols is studied adopting the model proposed by Dolev et al. This condition, called name-suffixing, is essentially to insert identities of participants in messages. We prove its sufficiency and discuss the feature of security in terms of name-suffixing.
著者
鈴木 和夫 伊岡森 信臣
出版者
公益社団法人日本船舶海洋工学会
雑誌
日本造船学会論文集 (ISSN:05148499)
巻号頁・発行日
no.185, pp.9-19, 1999-06
被引用文献数
12 13

In the original Rankine source method suggested by Dawson, free surface panels are arranged by means of the stream line tracing method based on the double model flow. In the present study, however, it is replaced by an elliptical type panel arrangement. In order to satisfy the radiation condition on the free surface, the upstream difference operators are introduced in computational domain corresponding to those panels. By employment of this new type free surface panels, more accurate results can be obtained for a practical hull form, because it becomes very easy to increase the density of panels in near field of the ship. According to this improved Rankin source method, a hull form improvement problem to minimize the wave making resistance is discussed, in which the optimization is carried out, under the prescribed design constraints by means of the nonlinear programming technique. In the optimization process, a weight function is introduced to represent an improved hull surface, which can generate a new smooth hull surface by multiplying it to the offset data of the initial hull surface. Design parameters expressing this weight function can be determined from the optimization process based on the nonlinear programming technique. In this paper, SQP (Sequential Quadratic Programming) is employed as the nonlinear programming. As an example of the hull form improvement, the HTC (Hamburg Test Case) container ship is selected as the initial hull form to be improved.
著者
森 淳哉 加藤 潤 天目 真樹 奥田 知明 田中 茂 He K. Ma Y. Yang F. Yu X.
出版者
社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
no.43, 2002-09-11

中国北京市において、大気粉塵による環境汚染は非常に深刻な状況にある。大気粉塵の主要な発生源は、石炭燃焼などによる人為起源の粒子と、内陸部の砂漠乾燥地帯から発生する砂塵嵐に起因する土壌(黄砂)を含む自然起源の粒子に大別できる。これら両起源の大気粉塵は、世界各国の首都圏のこれらの大気濃度と比べても極めて高く、人為起源の大気粉塵と自然起源(主に黄砂)の大気粉塵が高濃度で混ざり合った大気汚染は、北京市特有のものである。東アジア地域の環境(Environment)・エネルギー(Energy)・経済(Economy)の問題の実態を把握し、その対策を提言する目的で、1998年より、中国・清華大学と慶應義塾大学との共同研究(3E研究プロジェクト)が開始された。そして、北京市の大気汚染の実態を把握する為、3E研究プロジェクトの一環として、2001年3月より中国・清華大学と共同で北京市において大気観測を行った。本研究では、大気粉塵濃度及び粉塵中水溶性イオン成分濃度を測定することによって、中国北京市における大気粉塵による大気汚染の実態の把握とともに、北京市における大気粉塵の化学的な特徴を明らかにし、その存在形態についても検討を行った。
著者
矢野 理香 森下 節子 岩本 幹子 中澤 貴代 良村 貞子
出版者
看護総合科学研究会
雑誌
看護総合科学研究会誌 (ISSN:1344381X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.3-14, 2005-10-26

本研究の目的は、看護過程の理論的枠組みと実践の統合を目指した帰納的な教授方略の効果を明らかにすることである。授業の展開;1年次、学生は右半身麻痺のある事例に、技術を実践して、ロールプレイをし、VTRを作成した。また技術が対象者にとって安全・安楽であったかを客観的に評価した。2年次、学生はこの学習を想起し、看護過程の理論的枠組みについてグループワークをした。研究対象;本看護学科2年次の学生80名。研究方法;授業評価アンケートを実施し、度数分布を算出した。また学生に、授業から理解できたことについてレポートを記述してもらった。その内容を類似する内容に分類してカテゴリを抽出した。結果・考察;アンケートの結果、80%以上の学生が授業は有益であったと回答していた。レポートでは、【実践をもとにした理論の理解】【看護過程と各理論の関連性】【理論をもとにした実践の評価】【看護過程と相互作用・コミュニケーションの関連性】の4つのカテゴリが抽出された。以上から、帰納的な教授方略は、理論と実践の統合を深める点で有効であったと考えられた。Purpose; The purpose of this study is to clarify the effect of the inductive learning strategy that aims at the integration of the theoretical framework for nursing process and practice. Class structure; First-year nursing students role-played simulations involving a case of right hemicorpus paralysis. They practiced skills they had already learned and taped their group's demonstrations, then evaluated them objectively. In second year they continued their studies into the theoretical framework of nursing process through group work. Methods; The sample consisted of 80 second-grade nursing students from a junior college. The students reported their understanding obtained through the class. Those contents were classified by similarities of contents and categorized. The authors reviewed the class evaluation questionnaire and calculated the frequency distribution of each item. Results and discussion; From the contents of the reports, the following four categories were obtained. 1.Relation between nursing process and each theory, 2.Understanding of theory based on practice, 3.Evaluation of practice based on theory, 4.Relation between nursing process, interaction and communication. In the questionnaire, more than 80 percent of the students answered that the class was useful. The authors therefore consider that the inductive learning strategy was effective in deepening integration between theory and practice.
著者
大平 久司 飯村 龍 森 俊洋 辻本 誠
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.19-26, 1996-11

地震被害への対策は,時系列でみると,事前の予防的対策,発生直後の緊急対応,復旧,の3段階に分けられる。本研究では,地震被害に対する目標としてあげられる,人命安全,財産保護,機能維持,の3段階のうち,人命は経済換算できないことから,地震直後の対応により人命損失をできるだけ少なくすることを目標とする。救命率の高い地震発生後48時間は人命救助活動を最優先として,人命救助活動の妨げとなる恐れのある他の活動を制限することが考えられる。本研究では,阪神・淡路大震災における被害データを用いて,地震発生直後の緊急対応による人的被害減少の可能性について,消火,救助,医療の側面から検討を行うとともに,これらの対応と関連する道路交通についての分析を行った。阪神・淡路大震災における延焼地区での死亡率の分析では,地震発生直後に延焼した地区の死亡率が高いことがわかった。一方,地震発生直後の同時多発火災に対応できるだけの消防力はなかったことから,消防の消火活動によってこれらの死亡者を救助することは困難だと判断される。緊急車両,一般車両を含めた地震発生後2日間の道路交通量の推定を行った結果,通勤,買い物といった目的の車両が走行していなければ,渋滞によって緊急車両の走行が妨げられることはないとの結論を得た。一方,渋滞によって,どの程度死亡リスクに影響があったかについては現時点では明らかにできていない。
著者
宮地 充子 近澤 武 竜田 敏男 大塚 玲 安田 幹 森 健吾 才所 敏明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.176, pp.43-52, 2006-07-14
被引用文献数
9

情報社会の進展に伴い,安全な社会システムの構築が産官学において進められている.情報セキュリティ技術の国際標準化活動は,安全な社会システムの構築にとって重要な役割をもつ.ISO/IEC JTC1/SC27/WG2では,情報セキュリティのアルゴリズム及びプロトコルに関する国際標準化規格の策定を進めている.本報告書は,現在,ISO/IEC JTC1/SC27/WG2で審議事項を解説すると共に,特に今年の5月に行われたマドリッド会議に関して報告する.
著者
土屋 健伸 藤井 太郎 森田 幸二 穴田 哲夫 遠藤 信行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波
巻号頁・発行日
vol.96, no.472, pp.39-44, 1997-01-24
被引用文献数
2

海洋での音波伝搬を解析する手法として放物型方程式(Parabolic Equation)法や音線理論が知られているが、それぞれ音速プロファイルが伝搬方向に変化する場合に解析精度が落ちたり、音圧分布を求める事が困難であるという欠点がある。そこで、これらの点を改善した広角波動伝搬法を導入して、その有効性について検討した。また、堆積物の影響を考慮した海底での反射を計算するための境界条件として、透明境界条件(Transparent Boundary Condition)を導入する事を提案した。さら二本手法の正当性を評価するために深海と浅海における音場を解析した。また、実際海域を考慮して、音速プロファイルが変化する場合について解析して音線追跡法と比較・検討した.
著者
森 定雄 西村 泰彦 高山 森 後藤 幸孝 永田 公俊 絹川 明男 宝崎 達也 矢部 政実 清田 光晴 高田 かな子 森 佳代 杉本 剛 葛谷 孝史 清水 優 長島 功 長谷川 昭 仙波 俊裕 大島 伸光 前川 敏彦 中野 治夫 杉谷 初雄 太田 恵理子 大関 博 加々美 菜穂美 上山 明美 中橋 計治 日比 清勝 佐々木 圭子 大谷 肇 石田 康行 中村 茂夫 杉浦 健児 福井 明美 田中 鍛 江尻 優子 荻原 誠司
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.497-504, 1995-06-05
被引用文献数
9 9

サイズ排除クロマトグラフィーによる分子量測定において, 異なる測定機関における分子量測定値がどれくらい異なるかを知る目的で, 傘下26測定機関で共同測定を行った.試料はポリスチレン(PS)3種, ポリメタクリル酸メチル(PMMA)2種で, 被検試料の測定条件と較正曲線作成条件は各測定機関で用いている要領で行った.その結果, 各測定機関での相対標準偏差は1〜3%と良好であったが、26測定機関による全平均値の相対標準偏差は13〜32%となった.測定データを吟味し, 望ましい測定条件からかけ離れているデータを除外した場合, PSのRSDは数平均分子量で13.6〜15.5%, 重量平均分子量で6.0〜9.4%となり.又PMMAではそれぞれ14.3〜16.0%, 7.8〜12.2%であった.
著者
笹原 妃佐子 貞森 紳丞 津賀 一弘 河村 誠
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.148-155, 2006-04-30
被引用文献数
2

本研究では,質問紙により顎関節症の罹患状況の現状と経過を把握し,その現状や経過とデンタルプレスケール^[○!R]を使用した咬合の状態との関連を検討することを目的に疫学調査を行った.最初に,大学もしくは専門学校の1年次生に,顎の状態を尋ねる質問紙調査を行った.その後,1名の検者が感圧フィルム-デンタルプレスケール^[○!R](50H: Rタイプ,富士フィルム社製)を用いた咬合の状態の診査(有効咬合面積の割合,咬合面積,平均咬合圧,最大咬合圧および咬合力),および最大開口量の測定を行った.分析は,18歳から20歳までの男性359名,女性336名の計695名について行った.その結果,約半数の学生が顎の異常を経験していたが,調査時点で日常生活の不都合を訴えたものは少なかった.顎の異常を経験した学生のほとんどで症状は改善もしくは無変化であり,悪化を経験した者はまれであった.しかし,治療で症状の改善した者はわずか21名であった.顎関節症の罹患状況と咬合の状態との関連では,女性において,顎の状態の良い者ほど咬合接触面積が広く,咬合力が大きかったが,男性では,顎の状態の良い者ほど有効咬合接触面積の割合が小さく,最大咬合圧が大きかった.そこで,顎関節症は思春期には非常に一般的な疾患ではあるが,重症者は少なく,自然治癒が起こりうる疾患であると思われた.しかし,顎関節症の自覚症状と咬合の状態との関連については,性差の原因が不明であり,今後の検討が必要である.
著者
矢嶋 聰 東岩井 久 佐藤 章 渡辺 正昭 森 俊彦 星 和彦 米本 行範 鈴木 雅洲
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.1657-1663, 1978-12-01
被引用文献数
1

(1) 宮城県の子宮頚癌住民検診は,昭和50年末までに,のべ受診者数が553,954人に達した.この間に発見された浸潤癌および上皮内癌患者数はそれぞれ707人,および701人であつた. (2) 昭和50年の年令階層別受診者は,40才台が最も高く対象婦人の27.4%であつた.高年令層は頚癌のhigh risk groupであるにもかゝわらず受診率はきわめて低い. (3) 頚癌の継続検診を行なうと,上皮内癌,浸潤癌の発見率は年度の推移にしたがつて減少するが,高度異型上皮の発見率はほゞ一定である. (4) 昭和40年,45年および50年のCytology Activity indexは,それぞれ60.0, 116.7および193.2であつた. (5) 検診車法による受診者の上皮内癌および浸潤癌のprevalence rateは,昭和45年および50年でそれぞれ192.8, 99.9,および102.3, 71.5であり,両者とも検診の継続により減少した. (6) 宮城日母登録方式による上皮内癌prevalence rateは,昭和45年,50年でそれぞれ213.3および205.1であり年度の推移による変化はほとんど認められなかつた.この方式による浸潤癌のprevalence rateはそれぞれ769.2および636.0であつた. (7) 昭和44年〜47年における宮城県の子宮頚浸潤癌incidence rate(年間)は32.9であつた. (8) 県下の子宮癌死亡率は5.0(10万人当り)から4.0程度であり,速度はおとろえたとはいえ,減少を続けているのが近年の傾向である.
著者
片柳 憲雄 武藤 輝一 田中 乙雄 鈴木 力 藍沢 喜久雄 西巻 正 田中 陽一 武藤 一朗 武田 信夫 田中 申介 鈴木 茂 田中 典生 藪崎 裕 大森 克利 多田 哲也 鈴木 聡 大日方 一夫 曽我 淳
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.968-976, 1991-04-01
被引用文献数
18

1989年末までの22年間に経験した食道癌症例814例のうち,他臓器に重複癌のある64例(7.9%)を対象として,手術術式,治療成績を中心に検討した.同時性2臓器重複癌は37例,異時性2臓器重複癌では食道癌先行が10例,他臓器癌先行が11例あり,3臓器以上の重複癌も6例に認めた.同時性重複癌の重複臓器は胃が25例と圧倒的に多く,このうち16例は早期胃癌であった.胃癌合併例では,早期癌が胃管作製時の切除範囲に含まれる場合を除いて胃全摘,結腸による再建を原則とした.同時性重複癌の両癌切除例の5生率は34.6%であり,少なくとも一方が非切除であった症例に対して有意に(p<0.05)良好であった.さらに,食道癌治癒切除例の予後は,5生率58.3%とほぼ満足できる成績であった.治療成績向上のためには,重複癌の存在を念頭においた診断と,両癌の治癒切除を目指した積極的な手術が重要であると思われた.