著者
鶴 剛 森 浩二 幸村 孝由 田中 孝明 武田 彩希
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

宇宙最初期に誕生する超巨大ブラックホール「ファーストブラックホール」を探査・研究し,銀河も含めた形成と進化を読み解くことが本研究の科学的最終目標である.現在宇宙X線観測で主流のX線CCDでは読み出し速度が遅く,非同時計数によるバックグラウンド除去ができないので,科学目標に必要な微弱な天体のX線精密分光撮像が不可能である.そこでイベント駆動X 線SOIピクセル検出器(SOIPIX)を開発する.実際のサイエンス実験にも使用可能な25mm×15mmサイズのXRPIX5をフレーム読み出しで動作させることに成功し,場所による性能変化がほとんどないことを確認した.XRPIX5の改良版であるXRPIX5bのプロセスを行なった.この素子を最大4枚重ねて,偏光X線検出実験などを行うことを目的に,読み出しシステムの開発を開始した(スタックXRPIX).FY2017にその具体的な実験を行う予定である.読み出しノイズの低いXRPIX3bを用いて,裏面の低エネルギーX線感度の評価実験を行なった.その結果,昨年の不感層厚み1μmを半減し,0.,5μmにすることに成功した.開発目標が1μmであり,目標をクリアすることに成功したことを意味する.開発開始当初より,常温から0℃までは,温度を下げることで暗電流は下がるのだが,そこから減らない現象があった.この現象の解明に努力し,X線検出ノードでの保護回路のオフリークだろうという結論を得た.この暗電流を削減する素子の製造を行なった.前年度までの研究で,二重化SOIウェハを用いることで読み出しノイズ性能を向上をさせる見込みを得た.そこで今年度,XRPIX6Dとしてプロセスを行い,性能評価を行なったところ,15e(rms)の読み出しノイズを得た.シングルピクセルであれば,10e(rms)である.この値は開発目標値であり,まずは目標に到達できたことを意味する.
著者
武田 和也 河島 信樹 矢部 恭一
出版者
THE JAPAN SOCIETY FOR AERONAUTICAL AND SPACE SCIENCES
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.27-32, 2008
被引用文献数
1 5

我々は半導体レーザーを用いた飛翔体へのエネルギー伝送システムを構築した.これはレーザーでエネルギーを受けている間飛行し続けることができるシステムである.これを用いた飛行実験を大阪ドームにおいて行った.その結果,高度50mを旋回飛行する無人飛翔体へ,自動追尾によってエネルギー伝送を行い,長時間飛行に成功した.
著者
武田 史朗
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.809-812, 2005-03-31
参考文献数
17
被引用文献数
2 5

There has been an ongoing increase in the number of the "natural burial grounds" in the U.K. since 1993, where burial and nature reserve are both regarded as main objectives. The movement towards this type of burial has multiple origins, which includes each independent effort by citizens and a naturalist social worker for Do-It-Yourself burials, and by a cemetery officer for an eco-friendlier and more cost-effective burial style. These efforts were integrated into a single movement by a group of psychotherapists as part of its search for an un-institutional style of death, under the consideration for environmental issues. The rapid progress of the movement was possible partly because of the absence of the general laws that regulate the burial activities by private parties. The government has started to consider the potential of a nationwide standard for burials and cemeteries, which may legalize the natural burial grounds and improve the currently unregulated management of them in future. In such governmental efforts the accumulation of expertise and the codes of practice developed by the private institutions have been playing considerable roles. To establish sustainable management strategies to maintain the sites healthy as both burial grounds and woodland is considered to be the case in point.
著者
土井 捷三 武田 義明 五味 克久 田結庄 良昭 今谷 順重 小石 寛文
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本研究は次のことを目的にして行われた。1.「災害と防災」に関する教授用モジュ-ルを作成し、それらを統合し、カリキュラム化する。2.「災害と防災」についての意識調査を実施しながら、地域教材が子どもの学習意欲形成に果たす影響を解明する。3.これらを通し、カリキュラムの研究方法を明らかにしながら、災害と防災のカリキュラムを構想する。第1の目的を具体化するために、教材集を作成することにした。教材集は三年間でほぼ核となるモジュ-ルを完成させるようにし、第一年目は地形と地質に関係した災害と防災の現状を、第二年目は植生と植林に関係した防災対策を、第三年目は災害の原因の契機の一つとなる開発の問題と防災対策を取り上げ、教材化を行った。この場合、六甲山という我々の身近にある山を素材にすることにし、また、研究題目にある「地域性を生かした」としたのもこのことを念頭にしているのである。第2の目的を具体化するために、これらモジュ-ルによる授業前と後に調査を行い、地域学習の、学習意欲の形成への効果について解明した。この結果、これら教材は学習の意欲づけに資するということがわかった。第3の目的については具体化へ向けての方向づけを行った。また、現在のところ地域学習の中で実施することが適当であると提案した。以上が三年間に行ってきた成果である。しかし、カリキュラム化の構想が方向づけに止まっていることは不満であるが、これらの研究に比肩しうるものが不在であることを思うと、十分に成果は達成できたと考える。
著者
武田 多一
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.130, no.4, pp.589-591, 2010 (Released:2010-04-01)

Emergency medicine is an interdisciplinary area that covers medical care in an emergency room, trauma center and intensive care unit. It also provides prehospital emergency medical service and disaster medicine. Pharmacists are expected to play major roles as a member of the emergency medical team. The roles of pharmacist include inventory management, formulary management, administration guidance, medication delivery, identification of a tablet, analysis of intoxicating substance, and therapeutic drug monitoring. During disaster response, accompanying disaster relief team to provide supervision for stock and prescription of medications could also be an important mission of a pharmacist. As a member of the emergency medical team, knowledge and skills for effective communication is essential to discuss patients' condition and therapeutic strategy with other healthcare providers. Basic life support and first-aid ability are mandatory to all the medical professionals who take care of patients. Safety and security management at the emergency or disaster scene is another important requirement. We hope more pharmacists will join the emergency and disaster medicine and contribute to extend a hand to the sufferers.
著者
河原 達也 住吉 貴志 李晃伸 武田 一哉 三村正人 伊藤彰則 伊藤 克亘 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.100, pp.37-42, 2001-10-19
参考文献数
20
被引用文献数
24

連続音声認識コンソーシアム(CSRC)は、IPAプロジェクトで開発された「日本語ディクテーション基本ソフトウェア」の維持・発展をめざして、情報処理学会 音声言語情報処理研究会のもとで活動を行っている。本稿では、2000年度(2000年10月-2001年9月)において開発されたソフトウエアの概要を述べる。今回、大語彙連続音声認識エンジン Julius の機能拡張、大規模なデータベースを用いた音響モデルの作成、種々の音響・言語モデル及びツール群の整備を行った。本ソフトウエアは現在、有償で頒布している。Continuous Speech Recognition Consortium (CSRC) was founded last year under IPSJ SIG-SLP for further enhancement of Japanese Dictation Toolkit that had been developed by the IPA project. An overview of the software developed in the first year (Oct. 2000 - Sep. 2001) is given in this report. We have revised the LVCSR (large vocabulary continuous speech recognition) engine Julius, and constructed new acoustic models using very large speech corpora. Moreover, a variety of acoustic and language models as well as toolkits are being set up. The software is currently available.
著者
平林 公男 山本 優 武田 昌昭 花里 孝幸 中本 信忠
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.91-101, 2003-10-30
参考文献数
34
被引用文献数
2

諏訪湖周辺地域においては,ユスリカ類の成虫が恒常的に大量飛来し,周辺住民や観光客から不快害虫として嫌われている.本研究では,湖から発生するユスリカ成虫の防除対策を検討するたあに,成虫の飛翔行動(飛翔時間と飛翔高度)のパターンを調査し,その特徴を把握することを目的として,1989年4月18日から20日まで,同年6月5日から7日まで,1999年6月5日から6日まで,2000年9月4日から6日までの期間,観測を行った.調査は湖東岸に位置する信州大学山地水環境教育研究センターにて行い,ライトトラップを異なった高さ(地上1m,9m,16m)に1器ずつ設置し,オオユスリカとクロユスリカについて捕獲数を調べた.オオユスリカ成虫は16mに設置したトラップで最も多く捕獲されたのに対し,クロユスリカ成虫は,9m設置のトラップで最も多く捕獲された.飛翔時間帯を明らかにするために,調査期間中,2時間おきに調査した結果,オオユスリカ成虫の場合,季節により異なり,春と秋では18:00から20:00まで,夏は18:00から翌朝の6:00までの間,捕獲数が多かった.一方,クロユスリカ成虫の場合は,発生期間をとおして18:00から20:00に多かった.以上のことから,飛翔高度は種ごとに異なり,また,特にオオユスリカについては,季節により飛翔時間帯が異なることが明らかとなった.
著者
庄野 浩資 関 朝美 山口 香子 松嶋 卯月 小出 章二 武田 純一
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.122-129, 2009 (Released:2009-10-01)
参考文献数
8
被引用文献数
2

岩手県における重要な花卉作物の一つである切り花リンドウの収穫後の商品価値を長く保つためには,鮮度を長く維持し得る生育ステージの個体を選別・収穫することが有効と考えられるが,現状では,生育ステージの非破壊・非接触的な判定手法は開発されていない.ここで,庄野・関ら(2007)は,花冠の波長域700~900 nmにおける分光情報の生育ステージ判定における有効性を指摘したが,波長域400 nm以下のいわゆる紫外線領域に関しては未検討である.そこで本研究では,リンドウ花を紫外線領域(UVA)で撮影した画像の画素値に基づく生育ステージの判定手法の可能性を検討した.その結果,特定の一品種において同画像の花の画素値は,花粉が成熟して飛散を始めるとほぼ同時期に顕著に上昇した.ここで,花粉はミツバチなどの花を痛める昆虫を内部に誘引する要因の一つである.このため,同画素値は,これらの有害な昆虫の飛来時期を推定し,最適な収穫時期を決定する上でも有用な情報と期待される.以上の結果から,リンドウの生育ステージの非破壊・非接触的判定システムの実現において紫外線画像が果たす役割は大きいと期待できる.
著者
武田 靖 村井 祐一 田坂 裕司
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

気流の空間的構造を定量計測するPIV(Particle Image Velocimetry)を技術開発することを目的とし3年間の研究の実施を通じて多面的な成果を上げた. 大規模な気流計測における主要な問題は, 環境負荷の少ないトレーサを開発すること, ならびに三次元非定常構造を定量捕獲するための光学設計, さらには速度ベクトルデータの高密度化であった. 平成18年度は, トレーサの開発としWatermist法, Soap Bubble法, ならびにTuft Resonance法について検討を行い, さらにPIVに適合したトレーサの注入方法を設計・検定した. これと同時に300m規模の大気流動場を三次元計測する問題点提起実験を実施した. 平成19年度は開発したトレーサ注入法と光学系を実例計測によりデモンストレーション実験した. 計測対象は竜巻のPIV計測, 樹木や鉄塔をモデル化した透過性物体の周囲空間流動のPIV計測である. 平成20年度は大気ダウンバーストを室内モデル実験置換し, カラートモグラフィックPIV技術の実証実験を実施した. これらの開発の結果, 従来まで低密度データの2次元計測に制約されてきた気流構造計測が, 3次元高密度データ取得が可能となるに至った. また応用実験から気流のもつ固有の流動場が新たに発見され, これらについてのダイナミクスを論文等で発表した.
著者
武田 尚子
出版者
武蔵社会学会
雑誌
武蔵社会学論集 : ソシオロジスト : Journal of the Musashi Sociological Society (ISSN:13446827)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.14, pp.1-34, 2012-03-22

本稿は, イギリスのB.S.ロウントリーが1899年に着手したヨーク第一次貧困調査の企画・構想のベースについて探る。当時, イギリスは深刻な不況にみまわれ, 如何にして「効率性」を高めるかが社会的な議論のテーマになっていた。「効率性」議論の場を積極的に形成していったのはウェッブ夫妻である。ウェッブ夫妻など社会主義者と異なる視角から, 貧困・失業問題への対策を構想したのが20世紀初頭の新自由主義者の集団で, B.S.ロウントリーは新自由主義者の集団と近しい関係にあった。B.S.ロウントリーは食品製造業経営者の家に生まれ, 20歳代に10年間食品化学の実験に携わり, 急成長する食品会社の中枢で, 製造方法や組織運営の経験を積んだ。ミクロな側面から経営効率や, 企業成長の推進力を生み出すしくみについて考察を重ねる豊富な機会に恵まれていた。このような環境で育成された緻密な数値, プラグマティックなものへの関心が, 都市貧困調査において食物の必要量, 栄養価を克明に調査することにつながっていったと考えられる。
著者
滝本 知彦 武田 昭二
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.431-442, 1991-07-25
被引用文献数
11

抽出法による細胞毒性試験において, 初期細胞数, 毒性因子の作用時間および判定法が細胞毒性に与える影響について検討した.すなわち, 種々な濃度に調整した8種類の金属塩をマウス結合織由来のL-929細胞に1日, 3日および5日間作用させ, 金属イオン濃度と細胞生存率の関係についてしらべた.その結果, 初期細胞数が多いほど, 金属イオンの細胞阻止濃度は高くなった.また, 金属イオンの作用時間が長くなるほど, 金属イオンの細胞阻止濃度は低くなった.ニュートラルレッド法, MTT法, クリスタルバイオレット法およびタンパク定量法の4種類の判定法を比較すると, 金属イオンの種類によって各判定法間で細胞阻止濃度にわずかな差が認められた.とくに, BeイオンとCuイオンにおいて, MTT法と他の判定法との間における差が顕著であった.20%と80%の細胞阻止濃度から求めた濃度-反応曲線の傾きは, 金属イオンの種類, 初期細胞数, 毒性因子の作用時間および判定法によって異なっていた.以上の実験結果から, 抽出法による細胞毒性試験において初期細胞数, 毒性因子の作用時間および判定法が細胞毒性評価に大きな影響を及ぼすことが明らかとなり, 今後, 歯科材料の細胞毒性試験実施に当たって有益な示唆を与えるものと思われる.