著者
森 章 樋口 良彦 武田 博清
出版者
応用森林学会
雑誌
森林応用研究 (ISSN:13429493)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.13-17, 2000-09-25
被引用文献数
6

DGPS(ディファレンシャルGPS)の林内での測位精度を調べ,様々な林分間で比較した。DGPSにより測位した点は,SA(選択利用性)の影響のもとで,測位の平均点から1m円内にほとんどの点が含まれた。また,測位誤差は,樹幹に近づくほど大きくなった。測位誤差の林分による違いは,落葉済みの落葉広葉樹林内で,林外と誤差に有意な差はなかったが,常緑樹林内は,広葉樹林,針葉樹林ともに,林外より誤差が有意に大きくなった。これらの結果,林内でDGPSを使用する際には,できるだけ樹幹よりDGPS受信機を離して測位を行うこと,落葉広葉樹のある林分では落葉済みの冬季に測位を行うこと,常緑樹林内では上層の開空度の高い位置で測位を行うことで精度が高まると考えられた。さらに,実際の森林でのDGPSの使用方法として,林内の毎木調査の例を挙げると,できるだけ樹幹より離れており,かつ,上層の開けた位置にDGPS受信機を設置し,そこからレーザーレンジファインダーなどでオフセットして,測位を行うことで,精度が高まると考えられた。
著者
北島 英樹 武田 篤
出版者
秋田大学
雑誌
秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要 (ISSN:13449214)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.75-87, 2009-05-30

近年,AAC(AugmentativeandAlternativeCommunication)が注目されるようになり,自閉症児に様々なAAC手段を活用したコミュニケーション指導が行われるようになってきたそこで本研究では,特別支援学校の教員を対象に,自閉症児のコミュニケーション能力を高めるために,どのようなAAC手段を活用しているか,また,指導にあたる教員のAACに関する意識について調査をすることとした.結果は以下の通りである.1)自閉症児へのコミュニケーション指導は,小学部・中学部・高等部のいずれの学部でも,特定の時間を設けて指導するよりは学習全般をとおして行っていた.2)教員が有効と思うAAC手段としては,絵や写真カードは多かったが,マカトンサインやVOCAは少なかった.有効と思うこれらのAAC手段について,学部の問に差を認めなかった.3)自閉症の教育を推進する特別支援学校では,他の学校に比べ,教員のAACに関する知識や理解も高く,積極的な活用が行われていた.これらの結果をもとに,AACを活用した自閉症児へのコミュニケーシヨン指導のあり方と課題について検討した。"In recent years , the Augmentative and Alternative Communication(AAC) technique is drawing increasing interest , and various communications training programs applying this technique are gradually being carried out for autistic children. In this study , a survey was conducted on special support schools teachers to investigate the AAC methods applied to enhance communication skills in autistic children , and the views of teachers on AAC. The following are the results.l)In elementary , junior high , and high school , communication training for autistic children is generally carried out in all classrooms , instead of setting aside a special class for such training.2)ACC methods which teachers consider effective mostly use drawings , photos , and character cards. Not many gave Makaton sign and Voice output communication aid as effective . No significant differences were found between the different grades regarding the ACC methods which the teachers consider useful.3)Compared to other schools , teachers at special support schools which promote education for autistic children have better knowledge and understanding of AAC , and carry out AAC related activities keenly.Based on these results , the ideal methods of teaching communication skills to autistic children using AAC and the tasks involved were reviewed."
著者
武田 宏
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.125-129, 2005-12-25
参考文献数
14
被引用文献数
1

耕作放棄水田における林地化の試みとして,1994年春に新潟県内の3調査地にハンノキとスギを植栽し,2001年まで経過を調査した。ハンノキは2調査地で1999年と2000年までに全て死亡し,残りの1調査地でも2001年には13%に低下していた。一方,スギは最低でも55%の生残率だった。ハンノキの死亡要因では,コウモリガ被害,誤伐,雪害が多かったが,その比率は3調査地で異なっていた。一方,スギの死亡要因では3調査地とも誤伐が最も多いことで共通していた。いずれの調査地もハンノキよりスギの成長が上回っていた。ハンノキは過湿な土壌環境で成育が期待できたが,耕作放棄後の時間が経過すると草本植物の繁茂によりコウモリガ被害が増加するため,草本植物が繁茂しないうちに植栽する必要があると考えられた。
著者
武田 洋一 石田 宏二
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.729-734, 2004-07-05
被引用文献数
2 4

希土類元素の新しい分離系の開発を目的として,弱酸性陽イオン交換体カルボキシメチルセルロースに対するプロメチウムを除く全希土類元素の吸着挙動を塩化ナトリウム水溶液系について塩濃度の関数として薄層クロマトグラフィーにより調べた.本系における希土類元素のR_f値の決定には,カルボキシメテル基への競争的陽イオン交換,表面錯体の生成,塩析効果が重要な役割を果たし,希土類元素系列内の配位数の変化も影響を及ぼしていると思われる.通常,イットリウムは重希上類元素に属するが,本系ではイットリウムはランタンに極めて近いR_f値を示すので,ランタン以外の希土類元素からの分離が達成された.
著者
湯山 トミ子 武田 紀子
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

社会的需要を背景に、大学教養課程での中国語学習者が増大しているが、中国語の言語学的特色、授業時間数の制約から、学習者が望む言語能力の習得はなお未達成である。本研究は、この課題に応えるべく構想、開発されたe-Learning活用中国語教育プラン & システム"游"の使用成果を基礎に、自律的な学習能力をもつ意欲的な学習主体の創造、学習状況に基づく教員と学習者の相互啓発による双方向性教育を可能とする学習情報活用型教育法と、それを実現するためのシステムを構築した。
著者
西村 竜一 梶田 将司 武田 一哉 板倉 文忠 鹿野 清宏
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827837)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.605-613, 2001-03

本論文では, Webベースのオンライン教育環境に音声入力機能を加えるWebSPEAC(Web SPEech Acquisition for Courseware)Systemを提案する.これまで, Webベースオンライン教育環境では, 音声を出力する教材の作成は可能だったが, 音声入力のできる教材やコミュニケーションツールの提供はできなかった.本システムは, (1)Webブラウザには音声入力機能のみを提供し, 音声を用いるアプリケーションプログラムはWebサーバ上で一括管理するので保守性が高い, (2)クライアント側は, 簡単な初期設定のみで利用できる, (3)サーバプッシュを利用してWebでの音声入力インタフェースを実現している, という特徴があり, 音声を用いたインタラクティブなWebベースのオンライン教材の作成を可能にする.また, 本システムの応用例として, Webベースの入力音声分析ソフトウェア, 音声確認システム, 受験者認証システムを作成した.このうち, 音声入力部分について, 入力音声分析ソフトウェアを利用してファイルアップロードによる従来システムとの比較実験を行った.その結果, 本システムはステップ数, 誤りステップ数, タスク完了時間において操作コストを削減できることが確認できた.
著者
松村 冬子 加藤 文彦 大向 一輝 武田 英明
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

学術会議の参加者は会議中の有益な議論と共に,限られた余暇の時間に開催場所の国や都市の文化などに触れる機会も期待している.本稿では,発表や会場などの会議に関する情報,会場周辺の観光,飲食,交通などの開催場所の地域情報をLinked Data化し,有意義な滞在のための情報提供を行う会議支援システムを構築した.実際に学術会議での運用から得られた知見より,必要とされる機能やデータなどについて議論する.
著者
武田 雅子 岡村 眞紀子 岡村 眞紀子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.117-122, 2012-01-31

原著Ryme's Reason [Rhyme's Reason]は、詩、特に英語の詩・韻文の法則、またその特質を、実際に詩を使って分かりやすく説明した書である。「詩」で「詩」を、「韻文」で「韻文」を説明するところが、本著の特色であり、面白くユニークなところである。そこがまた翻訳を困難にしてもいるのであるが。本稿はその冒頭「詩とは何か」から「韻律について」の前半部分の翻訳である。「詩」は、我々の生に不可欠なものとして確と存在するが、その定義は不可能に近い。一方、「韻文」はまず、その韻律から説明が可能になる。英詩はヨーロッパ古典の伝統に則りつつも、言語の特質の違いから、韻律の拠って立つところが、音節の「量」(quantity)から「強さ」(stress)へと大きく変化し、独自性を形成した。その独自性を活かした韻律をiamb(弱強格)、trochee(強弱格)、spondee(強強格)、dactyl(強弱弱格)、anapest(弱弱強格)と分類する。また行における「歩」の数からも説明が可能となり、iambic pentameter(弱強五歩格)といったふうに詩型は定義付けられる。
著者
HE Wen-Rong TAKAGI Koichiro YOSHIMOTO Takanobu NARUSE Mitsuhide NARUSE Kiyoko DEMURA Hiroshi NAKABAYASHI Masao TAKEDA Yoshihiko 赫 文栄 高木 耕一郎 吉本 貴宣 成瀬 光栄 成瀬 清子 出村 博 中林 正雄 武田 佳彦
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.330-337, 1996-05-25

エンドセリン-1(ET)は培養血管内皮細胞より発見された強力な血管収縮性ペプチドであり,低酸素環境下でその産生が増加することが知られている.ETはその受容体とともに胎盤で発現することから,慢性胎児低酸素症の胎盤血流調節因子としてのETの関与を明らかとするために,ラット胎盤でのET遺伝子発現を検討した.今回我々は,妊娠18日齢のSprague-Dawleyラットの片側の子宮動脈を結紮し,非結紮側を対照として結紮の6,12,24,48,72時間後に胎盤を摘出後,RNAを抽出した.RT-PCR法によるサザンプロット解析によりET遺伝子発現を検討した,また,比較として母体低栄養による胎児発育遅延を妊娠18日から21日までの72時間,水分のみを与えることによる飢餓により作製し,胎盤のET遺伝子発現を同様に検討した.その結果,子宮動脈結紮後,胎仔体重,ならびに胎盤重量は24時間以降で減少を示し,72時間ではそれぞれ対照の62%(n=31, p<0.01),75%(n=31, p<0.01)となった.一方,母体低栄養では胎仔体重,ならびに胎盤重量はそれぞれ対照の79%(n=20, p<0.01), 83%(n=20, p<0.05)と減少した.ラット胎盤のETmRNA relative abundance (preproET-1/GAPDH; mean±SEM)は慢性胎児低酸素症モデルでは対照群と結紮群でそれぞれ0.128±0.011 vs 0.237±0.022 (p<0.01)と結紮群で約2倍の有意の増加を示した.一方,母体低栄養モデルでは胎盤のET mRNA relative abundanceは対照群と低栄養群とでそれぞれ0.135±0.010, 0.145±0・006と差を認めなかった. 以上より,子宮動脈結紮によって惹起された慢性胎児低酸素症モデルにおいて,胎盤のET遺伝子発現の増加を確認した.子宮動脈結紮により母体からの胎児への栄養の物質輸送の障害が胎盤のET遺伝子発現に関与している可能性は,母体低栄養によるIUGRにおいて胎盤のET遺伝子発現に差が認められなかったことから否定的と考えられた.以上より,ETは低酸素負荷に反応して胎盤局所で産生,放出されるautocrmeあるいはparacrme因子として胎盤血管の収縮にあずかっていると考えられた.A vasoactive peptide, endothelin-1 (ET-1) has been identified in the mammalian placenta. Its increase in the fetal circulation was demonstrated not only in acute but also in chronic fetal hypoxia in human. The aim of this study was to examine the effect of chronic fetoplacental hypoxia induced by uterine artery ligation on ET-1 gene expression in the rat placenta. Unilateral uterine artery ligation was performed to the pregnant Sprague-Dawley rats on Day 18 of gestation and the pregnancy was terminated on Day 21 of gestation. The effect of maternal starvation on the placental ET-1 messenger ribonucleic acid (mRNA) levels was also examined for comparison with the same time period. Relative abundance of the placental ET-1 mRNA was determined by quantitative reversed transcriptase polymerase chain reaction coupled with Southern blotting. Both maternal starvation and uterine artery ligation significantly reduced fetal and placental weight. In contrast, the placental ET-1 mRNA levels increased 2-fold by the uterine artery ligation whereas those in the maternal starvation group did not. Thus, it is unlikely that the reduced meterno-fetal transfer of nutrients by the uterine artery ligation could enhance the placental ET-1 gene expression. These results suggest that the enhanced placental ET-1 gene expression upon chronic fetoplacental hypoxia may contribute to the pathophysiology of the placental circulation in the fetal growth retardation.
著者
山中 由里子 池上 俊一 大沼 由布 杉田 英明 見市 雅俊 守川 知子 橋本 隆夫 金沢 百枝 亀谷 学 黒川 正剛 小宮 正安 菅瀬 晶子 鈴木 英明 武田 雅哉 二宮 文子 林 則仁 松田 隆美 宮下 遼 小倉 智史 小林 一枝 辻 明日香 家島 彦一
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中世ヨーロッパでは、辺境・異界・太古の怪異な事物、生き物、あるいは現象はラテン語でミラビリアと呼ばれた。一方、中世イスラーム世界においては、未知の世界の摩訶不思議は、アラビア語・ペルシア語でアジャーイブと呼ばれ、旅行記や博物誌などに記録された。いずれも「驚異、驚異的なもの」を意味するミラビリアとアジャーイブは、似た語源を持つだけでなく、内容にも類似する点が多い。本研究では、古代世界から継承された自然科学・地理学・博物学の知識、ユーラシアに広く流布した物語群、一神教的世界観といった、双方が共有する基盤を明らかにし、複雑に絡み合うヨーロッパと中東の精神史を相対的かつ大局的に捉えた。
著者
武田 徹
出版者
近畿大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、葉緑体のモデル型とされるラン藻synechococcusPCC7942のカタラーゼ-ベルオキシダーゼ遺伝子をタバコ葉緑体に導入し、最終的に活性酸素に起因する環境ストレスに耐性を有する植物の作出を目的としている。今年度得られた結果は以下に記すとおりである。1. すでに当研究室で確立されているタバコ葉緑体への遺伝子導入法を用いて、まず、トマトリブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼスモールサブユニットのプロモーターおよびトランジットペプチドの下流にSynechococcusPCC7942のカタラーゼ-ペルオキシダーゼ遺伝子(katG)を連結したプラスミドを構築した。2. 上記のプラスミドをAgrobacterium tumefacienceLBA4404を用いてリーフディスク法によりタバコ(Nicotiana tabacum cv.Xanllthi)に形質転換した。3. カルス化および再分化した後、植物体にまで生育したタバコとして6検体得られた。これら6検体のうち、サザンハイプリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーションおよびPCRによりキメラ遺伝子の導入が確認されたのは2検体であった。4. 上記2検体の形質転換タバコのカタラーゼ活性はコントロールタバコ(野生株)に比べて1.4-2.3倍であった。また、Synechococcus PCC7942のカタラーゼ-ペルオキシダーゼに対するポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティングより、これら2検体の形質転換タバコにカタラーゼ-ペルオキシダーゼタンパク質が発現していることが明きらかになった。5. 上記2検体の形質転換タバコのリーフディスクを用いてパラコート耐性実験を行った。その結果、形質転換体は野生株に比べて明らかにパラコートに対して耐性であることが明らかになった。現在、上記2検体の当代(To)の植物体を自家受粉させT1世代を作製中である。
著者
河原 吉伸 津田 宏治 鷲尾 隆 武田 朗子 湊 真一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IBISML, 情報論的学習理論と機械学習 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.476, pp.63-68, 2011-03-21
参考文献数
14

特徴選択は,所与の特徴(パラメータや属性,関数などの集合)の中から問題解決に有効なその一部を取り出すタスクであり,機械学習や統計科学,データマイニングなどにおける最も重要な課題の一つである.この問題は近年,解釈性や計算効率の有用性から,疎な解を誘導しやすいノルムを用いた正則化損失関数最小化の枠組みで議論される場合が多い.損失関数の多くは集合関数として見た場合,劣モジュラ性を有するため,本稿では,特徴選択を劣モジュラ関数最適化として定式化する.これは,最も疎な解を誘導しやすいl_0ノルムを用いた正則化損失関数最小化を直接扱っている事に相当する.著者らは,2分決定図(Binary Decision Diagram; BDD)を用いた解空間の表現,及び,特徴を選択する評価関数の劣モジュラ性を用いた効率的な探索により,厳密解を含む最適性の高い解を列挙する方法を提案する.さらに,提案手法の有用性に関する検証例を示す.
著者
武田 正則
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.28, pp.206-209, 2012-08-25

近年,ユビキタス情報社会の推進により協働的な学びの環境が整いつつある.そのような中で,教育の情報化ビジョンに対処した授業実践をすすめるには個別・協働・一斉学習などの様態(形態・能力)を弾力的に転移させながら,学習目標の達成に向けた展開が求められる.本研究では,国際援助計画手法であるPCM(project cycle management)手法を参考に,3つの参画領域から協働学習のモデル化をめざした.具体的には,プログラム評価の視点による単元学習指導案(teaching plan),タキソノミー的視点による学習促進案(facilitation plan)の開発および実践をおこなった.
著者
武田 篤志
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

本年度は、戦前に構成された「杜の都・仙台」の呼称とそれに相関する場所イメージが、終戦以降どのように変容したのかという点に留意しながら、仙台をめぐるローカルアイデンティティの現代的諸相について社会学的に明らかにした。まず、戦前の観光案内書や郷土書で流通していた「杜の都」の呼称が、昭和に入ると仙台をモチーフにした流行歌に用いられ、歌声の経験として場所の記憶となる局面に準目し、戦前に人気を博したレコード曲「ミス仙台」と戦後の仙台を表象する「青葉城恋唄」を取り上げ、両作品の歌詞に描かれた仙台像の比較分析から仙台の場所イメージの変容を明らかにした(その成果は『仙台都市研究』第3巻に論文発表)。加えて、仙台市の戦災復興事業に関与し、主に戦後仙台の緑地行政に従事してきた行政関係者OBへの聞き取り調査をおこない、「杜の都」の呼称が仙台市行政のシンボルとなっていった経緯についてオラールヒストリーをまとめた(その成果は、これまでの諸論文のなかで適宜活用している)。また、東北都市学会編『東北都市事典』(仙台共同印刷)の執筆依頼を受けたのを機に、戦前から戦後・現在にいたる「杜の都」の場所イメージの変化を通時的に概括した(武田担当項目:「杜の都」)。さらに、理論的研究として、近年再評価が進んでいるフランスの都市社会学者、アンリ・ルフェーヴルの空間生産論とその派生的議論を取り上げ、現在の都市社会学で注目されてきている「場所の社会学」論議への道筋を明らかにするとともに、その先駆的な研究として、英国の社会学者、ロブ・シールズの社会空間化論を検討した(その成果は『社会学年報』第33号に論文発表)。
著者
武田 弘志 辻 稔
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

5-HT_1A 受容体作動薬の 24 時間前処置により形成される急性ストレス刺激に対する情動的抵抗性が、海馬におけるヒストン H3 のアセチル化に経時的相関があることを見出した。さらに、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬であるトリコスタチン A を脳室内に投与することで、ヒストン H3 アセチル化に相関するストレス抵抗性が形成された。したがって、海馬ヒストン H3 アセチル化を主軸としたエピジェネティクス制御が、ストレス性精神疾患の治療および予防に有用である可能性が示唆された。
著者
川渕将太 宮島千代美 北岡教英 武田一哉
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.2, pp.1-6, 2013-03-08

楽曲検索に関して,楽曲の音響情報を用いて楽曲間の主観的類似度を推定する手法について検討する.本研究では,楽曲間の主観的類似度は楽曲間の音響的類似度と聴取者の個人性により決定されると考える.本研究はこのうち聴取者の個人性に焦点を当て,聴取者間にどのような差異があるかを明らかにし,主観的類似度推定のモデルに組み込むことを目的としている.聴取者の個人性に関する先行研究の結果より,楽曲が音響的にどの程度似ていたら似ていると感じるかに大きな個人差が存在することが示唆された.本稿ではこの 「音響的にどの程度似ていたら似ていると感じるか」 を聴取者の 「許容度」 と呼び,許容度を含んだ主観的類似判定のモデルを提案する.実験では,楽曲間類似度の主観評価データを用いて聴取者の許容度を推定すると共に,実用の場面においてこの許容度を少数の類似性評価の結果を用いて推定することが可能であるかを確認する.