著者
池田 耕二 山本 秀美 黒田 未貴 河野 茉梨絵
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.175-180, 2016
被引用文献数
3

〔目的〕がんサバイバー1人の二つの体験から理学療法ケア(心理的ケア,配慮,工夫など)構築のための有効な視点を提示すること.〔対象〕直腸がんによるストーマの造設と化膿性関節炎による大腿骨骨頭の切除を同時に体験した40歳代の男性1人とした.〔方法〕構造構成的質的研究法をメタ研究法においた事例─コード・マトリックス法とした.〔結果〕本男性の体験は,【排泄機能の変更体験】と【下肢支持機能の停止体験】という二つの体験事例と,【生活レベルの変化の感じ方】,【機能変更,停止による感情表出】,【機能変更,停止に対する受け止め方】,【患部に対する認識】,【患部に対する接触行動】,【機能変更,停止による新たな学習】の六つのコード(カテゴリー)から構成された.二つの事例比較からは,生活レベルの変化の感じ方や機能変更,停止による感情表出,受け止め方,新たな学習の内容に違いが認められ,患部に対する認識や接触行動の内容には共通したものが認められた.〔結語〕直腸がんによるストーマ造設後と化膿性関節炎による大腿骨骨頭切除後のがんサバイバーに対する理学療法ケア構築のための有効な視点が提示できた. <br>
著者
池田 浩 古川 久敬
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.86.14317, (Released:2015-03-13)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

This study examined the interactive effect of management by group goals and job interdependence on employee’s activities in terms of task and contextual performance. A survey was conducted among 140 Japanese employees. Results indicated that management by group goals was related only to contextual performance. Job interdependence, however, had a direct effect on both task and contextual performance. Moreover, moderated regression analyses revealed that for work groups requiring higher interdependence among employees, management by group goals had a positive relation to contextual performance but not to task performance. When interdependence was not necessarily required, however, management by group goals had no relation to contextual performance and even negatively impacted task performance, respectively. These results show that management by group goals affects task and contextual performance, and that this effect is moderated by job interdependence. This provides a theoretical extension as well as a practical application to the setting and management of group goals.
著者
池田 敦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

温暖湿潤な日本列島において,永久凍土がまとまって分布しうるのが富士山と大雪山である。富士山ではひときわ高い標高が,大雪山ではより高緯度にあって標高2000 m前後の山頂部が台地状に広がることが,永久凍土を分布させやすくしている。一方,日本アルプスの高峰でも,地表面付近の地温から永久凍土の存在が示唆され,実際に飛驒山脈立山の1点では永久凍土が直接確認された。そのため,そうした山脈の山頂高度はちょうど永久凍土帯の下限付近に位置すると解釈されてきた。ところが2000年代末から,富士山の永久凍土とその周辺の地温を網羅的に観測しはじめたところ,1970年代の記念碑的論文が想定したよりも,また同等の気温をもつ国外の山域に比べても,富士山ははるかに永久凍土が存在しにくい環境であることが明らかになった。その結果をもとに,ここでは従来ごく限られたデータから論じられてきた日本列島の永久凍土環境について見直すこととする。 富士山では秋季に地温が特異的な急上昇をする場所が多く,その誘因は降雨であり,その素因は雨水を浸透させやすい火山砂礫層であった。一般に季節的な凍結融解層では,熱伝導が地温をほぼ支配する。しかし,富士山では移流的な熱の移動が顕著に加わるため,表層の地温勾配が極端に大きく,地表面に比べ永久凍土上端(深さ約1 m)の年平均地温が約1℃高い。永久凍土が存在しない地点の地温勾配はさらに大きく,深さ2 mの年平均地温は地表より3~5℃高い。こうした場所において,地表付近の地温を従来の知見に参照させるだけでは,永久凍土分布を過大評価してしまう。これまで日本アルプスで永久凍土が表層地温から示唆されたところは,透水性のよい岩塊地が多い。そこでは深さ2 mの年平均地温を従来の見積もりよりも3℃は高く想定すべきで,そうすると日本アルプスでは永久凍土がほとんど現存しないことになる。立山で確認された永久凍土は,8月まで残存する積雪が降雨浸透を妨げる場所で観察されており,気候的な代表性をもつ永久凍土帯下限の証拠ではなく,極端に不均一な積雪分布を反映した非成帯的な永久凍土と理解する方がよいだろう。一方,台風や秋霖の影響をほとんど受けない大雪山では,おそらく永久凍土が富士山より高い気温のもとでも存在している。つまり,日本列島では気温の南北傾度に比べて,永久凍土帯下限の南北傾度が大きい。今後,仮に気候変化により,大雪山が台風や秋霖の影響を受けやすくなれば,それに応じて永久凍土が縮小に転じると考えられる。

1 0 0 0 OA アマルナ語

著者
池田 潤
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.1-21, 1992 (Released:2010-03-12)

What is Amarnaic, the language of the Amarna letters sent to Egypt from Canaan? Once called “Canaano-Akkadian, ” “Amarna-Canaanite” or the like, it was believed by many scholars to be a barbarous Akkadian furnished with Canaanite glosses, but today we know otherwise. Moran in the 1950's, and 1960's, then Rainey in the 1970's revealed its syntax, verbal morphosyntax and verbal morphology to be nothing but Canaanite with obviously Akkadian lexical items.There are a number of languages in the world that are “mixed” in a very similar way to Amarnaic. They are known as “pidgins” or “creoles.” The aim of the present paper is to prove that Amarnaic is a pidgin at the expanded stage. A vehicle of communication such as this does not emerge suddenly; it presupposes the preceding jargon and stabilizing stages. The present paper argues on circumstantial evidence that Amarnaic emerged as a kind of contact jargon in Canaan in the early years of Egyptian 18th Dynasty, became stabilized prior to the enthronement of Thutmose III, and expanded during his reign as a sort of military pidgin.
著者
永井 成美 菱川 美由紀 三谷 信 中西 類子 脇坂 しおり 山本 百希奈 池田 雅子 小橋 理代 坂根 直樹 森谷 敏夫
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.263-270, 2010-12-10
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

本研究の目的は, 若年女性の肌状態に栄養, 生理学的要因が関与するかどうかを検討することである。横断的研究として, 肌状態, 生理学的検査, 2日間の食事調査, 精神状態, ライフスタイルに関するデータを皮膚疾患のない54名 (2022歳) の女子学生より得た。肌状態と生理学的検査項目 (体温, エネルギー消費量, 自律神経活動) は非侵襲的手法により測定した。統計解析の結果, 角層細胞面積とエネルギー代謝, 角層水分量とビタミンA・B<sub>1</sub>摂取量, 交感神経活動指標に関連が認められた。バリア機能の指標である経皮水分蒸散量と炭水化物, ビタミンB<sub>1</sub>, 野菜摂取量にも関連が認められた。また, 肌状態はメンタルな面や自宅での冷暖房使用とも関連していた。以上の結果から, 若年女性の肌状態には栄養的な因子とともに活発な代謝と自律神経活動が関与することが示唆された。
著者
井手 聡一郎 南 雅文 佐藤 公道 曽良 一郎 池田 和隆
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.11-15, 2005 (Released:2005-03-01)
参考文献数
43

近年,疼痛緩和ケアが重視される中で,情動が病態や治療に与える影響が注目されている.オピオイド神経系は,情動の中でも快と痛みに深く関係しており,その作動薬であるモルヒネなど麻薬性鎮痛薬は有用な鎮痛効果をもたらす.また,痛みを感じている状況下では依存が形成されないことなどから,オピオイドの快と鎮痛作用が分離出来る可能性が示唆されている.近年,ノックアウトマウスを用いた実験などでは,麻薬性鎮痛薬の主たる作用部位であるµオピオイド受容体が,モルヒネを始めとした多くの麻薬性鎮痛薬の鎮痛効果,報酬効果において中心的な役割を果たすことが示されてきた.しかし,オピオイド鎮痛薬の一つであるブプレノルフィンでは,µオピオイド受容体が欠損すると,鎮痛効果は完全に消失するが,報酬効果は残存することが明らかになった.オピオイドによる快と鎮痛発生機構はやはり一部異なると考えられる.また,アルコールや覚醒剤の報酬効果と鎮痛効果においてもメカニズムの違いが明らかになりつつある.快と痛みの詳細なメカニズムの解明は,Quality of Life(QOL)の向上をもたらすと考えられ,今後さらなる研究が期待される.
著者
坂本 昭二 倉石 沙織 小田 寛貴 江南 和幸 岡田 至弘 安 裕明 池田 和臣 河野 益近
雑誌
じんもんこん2010論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, no.15, pp.19-26, 2010-12-04

本研究では、4世紀の李柏文書から20世紀までの古文書等の様々な料紙を対象として、これらの料紙を科学的に分析したデータを用いて料紙の比較分類を試みた。まず、紙の色情報によって料紙の分類を行った。この結果、時代的に古い紙は比較的黄色味を帯びた暗い色をしているが、新しい紙では黄色味が減少して白い紙が多いことを示した。次に、蛍光X線元素分析によって料紙に含まれる元素の種類を調べ、時代的に古い紙が含む元素の種類数は多く、新しい紙に含まれる元素の種類数は少ないことを示した。特に大谷文書の多くに元素Fe, Ti, Alが含まれていることを確認した。
著者
大西 献 光畑 幸史 宿谷 光司 池田 健太郎 森家 康文
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.460-469, 2015 (Released:2015-08-15)
参考文献数
25

Operativity will be spoiled if the thick cable of an end effector is in the exterior of a manipulator. The less wiring device adapting Power Line Communication technology has been developed. Transmission of the information and transfer of power on an end effector are realizable with one pair of twisted pair wires. The technical details, peripheral technology, example of application and future subjects of this device which can be used, such as not only a robot but onboard equipment and plant apparatus, are reported.
著者
吉益 光一 藤枝 恵 原田 小夜 井上 眞人 池田 和功 嘉数 直樹 小島 光洋 山田 全啓 窪山 泉
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.547-559, 2019-09-15 (Released:2019-10-04)
参考文献数
55

目的 精神科救急医療体制の構築と関連する法律の整備に関して,現代の日本における課題を明らかにし,解決策を探ること。方法 日本公衆衛生学会モニタリング・レポート委員会精神保健福祉分野のグループ活動として,2014年度から2017年度にかけて精神科救急および措置入院に関する情報収集を行った。各年次総会に提出した報告書を基に,必要に応じて文献を追加した。結果 地域における精神科医療資源の偏在や,歴史的な精神疾患に関する認識の問題なども絡んでいるため,全国均一的な救急医療システムの構築のためには越えなければならないハードルは高い。また,強制入院の中で最も法的な強制力が強い措置入院制度に関しては,その実際的な運用を巡って全国でも地域差が大きいために,精神保健福祉法に,より具体的な記載が盛り込まれるとともに,厚生労働省から一定のガイドラインが提示されている。とくに近年は凶悪犯罪事件との関連を巡って,社会的にも関心が高まっており,一部では措置入院の保安処分化を懸念する声が上がっている。精神疾患は今や五大疾病の一つに位置づけられているが,その性質上,生活習慣病などに比べて,疫学的エビデンスが圧倒的に不足しており,これが臨床や行政の現場での対応に足並みが揃わない主要因であると考えられる。結論 日本公衆衛生学会は,医療・福祉・行政などに携わる多職種から構成される学際的な組織である強みを活かして,多施設共同の疫学研究を主導し,措置入院解除および退院後の予後に関する,すべての関係自治体が共有しうるデータベースとしての疫学的エビデンスの構築を推進する役割を担っている。
著者
池田 新介
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.156-159, 2009-09-30 (Released:2016-12-01)

Based on Ikeda et al. (2009), I discuss whether interpersonal differences in body mass are related to those in time discounting and its anomalies reported in behavioral economics. The effects of time discounting on body mass index (BMI) and the probabilities of being obese, severely obese, and underweight are detected by incorporating three properties regarding time discounting: (1) impatience, measured by the level of the respondents' discount rates; (2) hyperbolic discounting, where discount rates for the discounting of immediate future choices are higher than those for distant future choices; and (3) sign effects, wherein future negative payoffs are discounted at a lower rate than are future positive payoffs. The results imply that body mass is determined as an outcome of intertemporal decision makings, so that it can be affected by controlling in the intertemporal structure of medical care costs and the price of a calorie.
著者
竹田 里江 山下 聖子 宮田 友樹 竹田 和良 池田 望 松山 清治 船橋 新太郎
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.384-393, 2016-08-15

要旨:日常生活場面を取り入れ,個人の興味・関心に配慮したワーキングメモリ課題を開発し,保続性の反応を呈する統合失調症患者に実施した.その結果,保続性の反応が改善し,BACS-Jのワーキングメモリ,運動機能,遂行機能の改善を認めた.また,意欲や活力,心の健康の改善が得られた.これらの結果は2回目介入時に再現性を認めた.本課題は,実生活の一場面をモデルに,思考・計画・判断・意思決定をするという特徴をもち,個人の興味・関心や遂行能力にテーラーメイドできる.興味・関心に配慮することは,課題に対する注意集中,記憶,思考,選択のしやすさに繋がり,潜在能力を喚起し,認知機能や意欲の改善に寄与することが示唆された.